帝京大学 化学
入試対策と勉強法
特徴と時間配分
出題範囲(分野)
本学は、試験日自由選択制を採用しており3日程分あるようですが、ここではそのうちの1日程分のみについて、検討しております。
2021年のある日程の問題では、第1問は「主に理論化学に関する小問集合」であり、様々な内容からの出題になっています。
第2問は「有機化合物の構造分析問題」ですが、その問題の中で、いろいろな知識を問う内容になっています。
第3問では「s軌道やp軌道などの電子配置に関する問題」が出題されています。 この内容は高校で教わらないことも多い発展的内容ですが、問題の中である程度の説明がなされており、その情報をもとに現場で考えさせる問題になってはいますが、事前に知っておく方が有利になることは間違いありません。
第4問は「高分子に関する小問集合」のような問題になっており、非常に幅広い知識・考え方が問われている、という印象です。
出題量と時間配分
2021年の化学の試験時間は選択科目の2科目で120分でしたので、実質60分でした。この試験時間に対して大問が4問ありました。したがって、基本的には大問1問あたり、約15分ずつの配分となります。この時間配分は、かなり厳しいという印象です。問題には難易度の差がある上に、受験生の得意・不得意もありますから、現場では細かい時間調整をしながら解きやすい問題から解いていくということになるでしょう。
出題形式
出題形式についてまず注意すべきは、大問4問構成という点です。また、各大問は同一テーマごとに構成されていますが、注意すべきは各大問内における小問の数の多さです。第1問には小問が6問、第2問には小問が7問、第3問には小問が6問、第4問には小問が8問、もあり、小問数を合計すると27問もあります。この小問数で60分を割ると小問1問あたり約2分しかなく、かなり効率的に解いていく必要があることがわかります。
解答形式
第1問から第4問までマークシート形式ではなく、解答のみを記載する形式です。選択肢から正解を選んで書かせる形式の問題も多数ありますが、計算問題において指定された有効数字で答えを書かせる形式の問題も多数あります。ただ、途中経過を書かせるような完全な記述式ではありませんので、その点は、精神的に楽になるかと思います。
攻略のポイント
医学部の化学の特長は、一般に難易度が高いことに加えて、理論分野から無機分野、そして有機の高分子分野まで幅広く出題される点にあります。そしてこの傾向は、本学を含む私立大学医学部において、より顕著といえます。そのため、最終的には難易度の高い問題を正解できるようになる必要はあるのですが、その前に高校化学のほぼ全範囲に対して、標準的なレベルの問題を解けるようになることが極めて重要と考えます。この段階にできるだけ早く達することが、医学部合格に向けての重要なポイントになります。
この点、「標準的なレベルの問題」のイメージとして最も良い例は、高校で配布されることが多い化学の教科書準拠の問題集の問題になります。例えば『セミナー化学+化学基礎』(第一学習社)であるとか、『リードαの化学+化学基礎』(数研出版)のような問題集の問題になります。
これらの問題集の良い点としては、①概ね全範囲をカバーした内容になっている点、②別冊の解説本が付属されており、解説が詳しい点、③チェックテスト・基本例題・基本問題・発展例題・発展問題のようにレベル分けがなされており、レベルに応じた問題の選択をしやすい点、などを挙げることができます。
これらの問題集を使って高校の定期テストの対策として、最初に「基本レベル」の問題をすべて解いておくことが理想的といえますが、受験生となった際にも一通り、解き直すことがよいと思います。その際に間違えた問題は必ずチェックしておき、できるようになるまで繰り返すことが重要です。そして、医学部受験対策としては結果的に「発展レベルまでが必須」という点に注意してください。別の言い方をすれば、医学部受験ではこうした問題集の「発展レベルの問題こそが主戦場」であり、基本レベルまでの問題は発展レベルの問題を理解するための単なる準備にすぎないということを理解しておきましょう。
そして、「発展レベルの問題」を終えた後であれば、受験予定医学部の「過去問を読む」ことは可能になっていると思いますので、できるだけ早くその過去問演習に入るべきだと思います。「過去問を読む」とは「解ける」ことではなく、「問題と解説の意味を理解できる」ということを意味します。「解ける」ようになるまで過去問演習をしないという姿勢は、医学部対策においてあまり適当とはいえません。なぜなら、そのような姿勢では医学部過去問のレベルを知る時期が、どうしても遅くなり、結果として医学部対策が遅れることになる可能性が高いからです。医学部過去問の演習を通してその内容の範囲・レベルを知った後に、これまで使ってきた問題集では足りないと判断した部分があれば、その時点で初めて追加の問題集を検討すればいいと思います。その方が、その「追加の問題集」を利用する動機付けが明確となるので勉強の効果は高まります。
推奨テキスト
(1)『化学の新研究』 卜部吉庸著 (三省堂)
難関大学又は医学部を目指す受験生にとって化学を受験科目として使用するのであれば、この参考書は必須と考えます。その理由は、とにかく内容が豊富であり「大学受験化学における最大範囲」を思わせる内容量になっているからです。実際にはこの本に直接載っていない内容でも出題されることはありますが、それでも、この本に載っていなければ当然、他の本にも載っていないと思わせる安心感もあります。また、この本に直接載っていない内容であればたとえ出題されても、解けない人が多いであろうというようにむしろ前向きに判断でき、他の問題に注力できるということもあるでしょう。この本の内容をすべて読み切ることは難しいかもしれませんが、少なくとも辞書的な使い方をすることはできるでしょう。または、辞書的な使い方がメインであっても特に苦手な項目についてだけは、すべての内容をよく読むという使い方もできるでしょう。「大学受験化学における最大範囲」を感じるべく、この本を手元に置いておく価値はあると考えます。
(2)『学校の教科書準拠問題集』
(『セミナー化学の化学+化学基礎』(第一学習社)、『リードαの化学+化学基礎』(数研出版)など)
上述しましたように『セミナー化学』や『リードα』のような問題集は、とてもよく出来た構成・内容になっていますので、もし抵抗がなければこれらの問題集を使ってみることをお勧めします。ただし、注意点が2点あります。1点目は、一般に「化学」分野は「化学基礎」分野を完全に含んでいるような見方をされることがありますが、常にそうとは限りません。実際、こうした問題集の「化学基礎」版には書かれてあった内容が、「化学」版には書かれていないということがあります。そのため、医学部受験生であれば必ず、「化学基礎+化学」版を使うか、または「化学基礎」版と「化学」版の2冊を使う必要があります。2点目は、上述したように医学部受験生であれば、これらの問題集の「発展レベル」まで理解する必要があるということです。以上の2点に注意してください。
(3)『大学過去問(赤本)』(教学社)
上述しましたようにできるだけ早く、受験予定校の過去問演習をやってみることが重要だと考えます。「解ける」必要はありません。今後の勉強方針を決定するために、できるだけ早く「やってみる(≒問題と解説を読んでみる)」ことが重要になります。 使用する過去問はいわゆる『赤本』がいいと思います。前年の本がまだ出版されていない場合は、その前年の本でいいと思います。受験勉強においては「敵を知る」、つまり「受験校を知る」ことがとても重要になります。できるだけ早めに「やってみる」ようにして下さい。
テキストは相性があります。できれば書店で手にとって選びましょう。
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