青山学院高等部 入試対策
2023年度「青山学院高等部の国語」
攻略のための学習方法
〇長文読解
文章量の多さが、やはり本校の特徴といえるだろう
例年、現代文2題で合わせて9000字ほど、これに古文を加えておよそ10000字の文章に目を通す必要があったが、2018年度では計7000字とやや文量が少なくなり、2019~2021年度では10000字ほど、2022年度では約6600字、2023年ではまた約12000字と年度により文量にばらつきがある。
設問は書き抜き・穴埋め・選択肢と一般的な国語の試験で見慣れた形式であるが、これだけの長文だと正解や手がかりを探すのに手間がかかる。読むスピードとともに要点を整理する手際の良さが求められる。
まずは長文読解の基本に忠実に。
説明的文章であれば、形式段落→意味段落の整理。段落の最初と最後に注意しながら要点のチェック。それらをまとめて要約し、要旨・結論を把握。本文を読み進めながら印や下線を用いて上記のようなポイントを目立つようにしておく。
文学的文章であれば場面・段落の変わり目をマーク。登場人物・筆者の気持ちや意見とその変化に最大の注意を払いながら、重要な発言や行動をチェック。そこからテーマとそれに対する人物や筆者の考えを読み取る。印・下線を使ってすぐ探せるようにしておくことはもちろん有効である。
長文の問題では、部分的に戻って確認する程度はできても、全体を読み返す時間はおそらく無い。1回の読みで上記のプロセスを終えなければならないので集中力と慣れが必要である。同程度の文量の問題でしつこく練習しておくこと。
と、理想を言えばそうなのだが、現実にはなかなかそうはいかない。本校のような長文の試験で全ての設問に時間をかけるのはやはり無理がある。全問に正解しようと気張らないことである。設問を見てピンと来ないものは後回し。できる問題をまずは拾って最後まで目を通すこと。
合格最低点は6割5分ほどである。
〇古文
他の中高一貫の高校にも言えることだが、試験を受けるのはまだ中学生なのに、出された問題はすでに高校レベルであるという点がなんとも厄介である。しかも本校の問題はなかなかに難しく、低レベルの大学ならこれくらいの問題は出してもおかしくない難易度である。
当然、中学で軽くなぞった程度の古文学習では足りないので、本校の古文に本格的に対策する場合は、いっそ高校古文の基本レベルの教材を使ってしまおう。
難しいとは言っても、難解な助詞・助動詞の区別や複雑な文法まで問われるわけではない。
おおよそは文章の内容理解が主で、あらすじが理解できれば答えられる問題が多い。最重要単語100~200や、基本的な文法だけ覚えて、なるべく多く文章にあたって古文に慣れておくことである。
また、問題構成を見ると現代文の長文読解25問・漢字8問・古文読解10問という割合(2023年度)で、現代文読解に比重がある点を考え、前半で点を稼げる自信があるなら古文は3~5割の正解でよしとするのもひとつの考えではある。
〇漢字・その他
漢字の読み・書きは毎年出題されている。手を抜かなければ得点できる分野なので、全問正解を望みたい。言葉の意味など、言語事項も数問出される。
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2023年度「青山学院高等部の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問は4つ。2023年度は論説(的随筆)文2題で8000字・古文1200字・随筆文(和歌)2700字で約12000字にもなり、昨年度よりだいぶ増えた。
やはり比重の大きい論説文2問をなるべく急いで、答えられる問題をしっかりこなし、残りを古文と随筆に当てるのが順当だろう。
漢字は8問出題され、できれば失点無しですませたいが、中学で習う漢字の中でもやや難しいものが見られるのでしっかり覚えておきたい。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:17分
「風土」とはその生きものにとってのみ意味のある「環世界」に通じるもので、主体=それぞれの人間が具体的に関わるものであるという和辻哲郎の論説に基づいて、筆者の考える日本人の自然との関わり方が述べられている。
問一 少し後の段落でベルクの言葉をそのまま繰り返している。「それは主体的な人間の表現としてであって……」の部分である。
問二 4. 「かけやすいお気に入り」は筆者個人にのみ意味のあることである。
問三 「時間性」は現存在の個別的な生き方に限って論じられるのに対し、「歴史性」は現存在とその属する共同体との関連についての議論である……というのがハイデガーの「時間における歴史性」論の骨子であるが、中学生がそんな論を知るはずもなく、文中に補足の説明もない。「空間」の対義語として「時間」を入れるしかないというところであり、受験生にとっては不親切な問題であろう。
問四 「それぞれの人が具体的に触れている自然」を考えるのではなく、「一つの尺度で機械的に分析する」ために一般的な抽象化が行われるのである→選択肢2が合う。
問五 3. 「風土」における「自然」とは「主体=それぞれの人間が、具体的に感じと」り、心的に様々に立ち現れるものなのである。
問六 環境との関わりは主体的に感じるものであり、それを表現したものである→選択肢2。
問七 1. 次段落の最後に、「自然の中にあるという原則を持ちながら人工を生かす」のが日本人の生き方であると述べられている。
問八 1. 和辻が間接的に影響を受けているのはユクスキュルのほうである。
3. 「すべてを一つの尺度ではか」るのであるから、合わない。
4. 山桜であったろうと推測しており、梅だったとは言っていない。
6. 環境問題が抽象化されてしまうとは書いてあるが、「関心が薄い」とは述べられていない。
問九 (ア) 花を愛でる気持ちは昔からあった。「ただ」、その花も人の手が加えられたものであった。
(イ) 自然の中にありながら人工を生かす、「つまり」人工を否定しない。
(ウ) 人工を否定しない。「それどころか」フルに生かすことが必要。
問十 a. 詳細 b. 削(り) c. 典型
【大問二】随筆文の読解
- 時間配分:16分
百人一首の選者とされる藤原定家についての筆者の考察が語られる。
問一 「身すぎ」は暮らしを立てていくこと・そのなりわい。すこし前に「生計」があるので抜き出す。
問二 俳句の作者は正岡子規。『病牀六尺』は病に伏した子規がさまざまな事象への所感を記したもの。
問三 若い時代のみずみずしさが失われるのと引きかえに、老いては発展と円熟を得るのである。
問四 定家が理想とした妖艶・有心の歌論は、もてはやされるにつれて誤解も受け思わぬほうに流れていき、流行に流されず優れたものを見分ける定家の真意が理解されるには長い年月がかかったのである。
問五 「勅撰集とは違って」、個人の依頼だったことで「のびのびとした気分」だったのではないかと、筆者は考えている。
問六 「小倉色紙」が今日まで生きながらえたのは、大衆に強く訴える力を持っていたからだ、とある。定家が宇都宮氏の娘と結婚したのも、『万葉集』その他を源実朝に贈ったのも、「公家より武家の生活力を信じ」、「庶民の中に歌の心を伝えることを願った」からかもしれない、と筆者は考えているのである。
問七 定家ゆかりの場所に身を置くことで、定家のような歌心が自分にも宿らないかと願った筆者だったが、叶わなかったようである。
問八 六十の手習い
問九 a. 無謀 b. 比較 c. こうずか d. 風情 e. 衝動
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:10分
母への孝行の厚い娘が起こした不思議な出来事。
問一 母が「苦しくはない」と答えているので、選択肢2が合う。
問二 「こんなに幼いのに、親の苦しむようなことはせず、親は労うものであると、よく理解していた」
問三 「嫗」は老女。「(おそらく)おばあさんが亡くなり、(悲しみで)親子はものを食べなくなってしまった。娘は母が何も食べなくなってしまったのを悲しんで、どうにかして母を養いたいと思うが……」
問四 「こんなかわいい子を、このように外に出して歩かせるのは、だれ(どんな親)だろう」と周囲が思っているので、母に批判が向かないように「遊んでいる」と答えた。
問五 「らうたがりて」「われ、釣りてとらせむ」――かわいらしいので、自分が釣って、魚をあげよう。
問六 夢――はかなく頼りないもの。文中では量の少なさを表している。
問七 現状、母は娘の取ってくる魚しか食べておらず、河が凍って魚が取れなくなったら母の食べるものがなくなってしまうのである。
問八 自分が孝行な娘なら氷が解けて魚が出てきて欲しいと願ったところ、その通りに魚が取れて、母に「じぶんは本当に孝行な子どもだった」と言った。
問九 「など」は疑問詞、「どうして」。
問十 妙なり――神秘的である。巧妙である。
【大問四】随筆文の読解
- 時間配分:7分
カレンダーを掛け替えることに感じた思いと連想が語られる。
問一 古いカレンダーを捨てずに取っておきたいというのは「未練」であろう。
問二 大人の男性が少女雑誌を買うのは「恥ずかしい」。
問三 袖にする――親しくしていた人を冷淡にあしらう。
問四 擬人法が使われているので選択肢1と同じである。4は「郵便局の人」の省略である。
問五 前出の俳句と同じ言葉「月日」が使われている句を最後に挙げた。
攻略ポイント
現代文・特に説明的文章の読解には十分な対策をしておくこと。テストの形式はクセのない一般的なものなので、過去問を含めて他の学校の問題も良い練習になるはずである。長文読解の場数を踏んでおこう。
記述問題がないのは時間的に助かるが、選択肢を考え分けるのに時間がかかる問題もあるので、それほどの余裕はない。手に負えないと感じた問題は諦めて、とにかく最後まで手を付けることである。
その上で残った余裕を古文に回す。
全体として、読解のスピードが必要となるので、意識して訓練しておこう。