青山学院高等部 入試対策
2019年度「青山学院高等部の国語」
攻略のための学習方法
長文読解
文章量の多さが、やはり本校の特徴といえるだろう
例年、現代文2題で合わせて9000字ほど、これに古文を加えておよそ10000字の文章に目を通す必要があったが、2018年度では計7000字とやや文量が少なくなり、2019年度では計10000字ほどにもどっている。
設問は書き抜き・穴埋め・選択肢と一般的な国語の試験で見慣れた形式であるが、これだけの長文だと正解や手がかりを探すのに手間がかかる。読むスピードとともに要点を整理する手際の良さが求められる。
まずは長文読解の基本に忠実に。
説明的文章であれば、形式段落→意味段落の整理。段落の最初と最後に注意しながら要点のチェック。それらをまとめて要約し、要旨・結論を把握。本文を読み進めながら印や下線を用いて上記のようなポイントを目立つようにしておく。
文学的文章であれば場面・段落の変わり目をマーク。登場人物・筆者の気持ちや意見とその変化に最大の注意を払いながら、重要な発言や行動をチェック。そこからテーマとそれに対する人物や筆者の考えを読み取る。印・下線を使ってすぐ探せるようにしておくことはもちろん有効である。
長文の問題では、部分的に戻って確認する程度はできても、全体を読み返す時間はおそらく無い。1回の読みで上記のプロセスを終えなければならないので集中力と慣れが必要である。同程度の文量の問題でしつこく練習しておくこと。
と、理想を言えばそうなのだが、現実にはなかなかそうはいかない。本校のような長文の試験で全ての設問に時間をかけるのはやはり無理がある。全問に正解しようと気張らないことである。設問を見てピンと来ないものは後回し。できる問題をまずは拾って最後まで目を通すこと。
合格最低点は6割5分ほどである。
古文
他の中高一貫の高校にも言えることだが、試験を受けるのはまだ中学生なのに、出された問題はすでに高校レベルであるという点がなんとも厄介である。しかも本校の問題はなかなかに難しく、低レベルの大学ならこれくらいの問題は出してもおかしくない難易度である。
当然、中学で軽くなぞった程度の古文学習では足りないので、本校の古文に本格的に対策する場合は、いっそ高校古文の基本レベルの教材を使ってしまおう。
難しいとは言っても、難解な助詞・助動詞の区別や複雑な文法まで問われるわけではない。
おおよそは文章の内容理解が主で、あらすじが理解できれば答えられる問題が多い。最重要単語100~200や、基本的な文法だけ覚えて、なるべく多く文章にあたって古文に慣れておくことである。
また、問題構成を見ると現代文の長文読解24問・漢字10問・古文読解10問という割合(2019年度)で、現代文読解に比重がある点を考え、前半で点を稼げる自信があるなら古文は3~5割の正解でよしとするのもひとつの考えではある。
漢字・その他
漢字の読み・書きは毎年出題されている。手を抜かなければ得点できる分野なので、全問正解を望みたい。言葉の意味など、言語事項も数問出される。
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2019年度「青山学院高等部の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問は3つ。論説文4600字・論説的随筆文4500字・古文1000字で約11000字と、文量は例年通りである。
やはり比重の大きい現代文2問をなるべく急いで、答えられる問題をしっかりこなし、残りを古文に当てるのが順当だろう。
漢字は10問出題され、できれば失点無しですませたいが、中学で習う漢字の中でもやや難しいものが見られるのでしっかり覚えておきたい。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:20分
近代社会では、人は経済や時代の固着観念により自ら自由を捨て、あるいは作られた自由に迎合し、利得や精神の「奴隷」となっていると述べている。
問一 次段落に「人間と自然が共存していく知恵」とあるのが、同じ内容を指している。
問二 直前の二つの段落で注意点を挙げている。たとえば「自然の征服=人間の自由」という考えは今となってみれば誤りだったのだが、以前は誰もが持っていた確信だった。
問三 労働者は生きるために賃金を得なければならず、働くことは自発的に自由を売る・失うことになるのである。
問四 問題の不備により全員正解
問五 板挟み。どちらを選ぶか決められない状態。
問六 「近代社会によって作られた人間像」に自分を合わせていくという生き方、「時代の固着観念」に支配されていることなどを指している。本当は望んでいないのに常識や平均から外れないように行動してしまうといった例が考えられる。
問七 A. 三段落後の「自然の征服=人間の自由への道」という部分と同じ内容と考えられるので、「確立」が選べる。
問八 a. 甘んじて受ける。本当はそうではないが、しかたなく。
b. 自分の考えを変えてでも相手に調子を合わせる。
問十 「平穏な市民であろうとする人間にとっては、自由な精神を持ちつづけることは、社会常識の中で孤立し迫害されるかもしれない、恐ろしいことである」という内容が、選択肢3と一致する。
問十一 エ. 素描――要点を簡潔にまとめること。デッサン。
【大問二】論説的随筆文の読解
- 時間配分:17分
単純な少ない語彙で多くを言い表そうとする風潮の危険性を説いている。
問一 前段落の「おいしい~とろけるような」などの、「旨い」をさらに工夫して表現した言葉を指している。単純明快な「旨い」を使わずに遠回りな言い方にもなるので、「もってまわった」がよい。
問二 「さまざまに表現を工夫することが文化であり民族の豊かさである」とある。なんでも「ヤバイ」で済ませてしまっては、表現の豊かさが失われてしまうのである。
問三 「垂乳根の・母」「ぬばたまの・夜」「あをによし・奈良」など、代表的な枕詞を見ておこう。
問五 短歌では、「悲しい」という「出来合いの符牒」を使ってしまうと作者の「特殊な哀しみ」が伝わらないと述べている。できるだけ「出来合い」の言葉ではなく自分の言葉によって伝えるのが良い。
問七 自分で自分のことを考えると「主観的・絶対的」に見てしまうので、友人を通して「客観的・相対的」に見ることが大事なのである。
問八 「ヤバイ」一言で済ませるのではなく、細かいニュアンスの表現で深めたい。そうは言ったけれども「しかし」先にあげた言葉(おいしい~とろけるようだ)も「それでも」まだ一般的な言葉で、「ヤバイ」とそんなに違わないとも言える、という流れになっている。
問九 「その違うということを~」で始まる段落で、「その」が指している部分が見当たらないので、《ア》に入れる。
問十 「自分の言葉によって、自分の思いを、人に伝える」ことの大切さを訴えているので、選択肢2が合っている。
問十一 ウ. 「一向に~ない」いう組み合わせで強い否定になる。
エ. 巨匠――その分野で特に優れた人物。
オ. 排他的――自分と仲間以外の者を寄せ付けない。
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:13分
山寺に預けていた名刀を黄金500枚で取り戻そうとしたが、本当は黄金が欲しい寺の住職がもったいぶって返さないので、黄金を池にいくらか投げ捨てて見せて住職が慌てたすきをついて刀を奪い帰った。
問一 「よし(由)」は「理由・いわれ」の意。
問二 「武士としての修業を積んで、すぐれた強者と人からも称えられる男であるので」
問三 たとえ家が貧しくなっても「凶兆が起こっても、なんということはない」。
問四 うべなり(宜なり)――なるほどと納得できる・もっともである。「うべならぬこと」だから「納得できない・おかしなこと」と言っている。
問五 たぐふ(類ふ)――なぞらえる・くらべる。「伝説のくさなぎの剣にも匹敵する」
問六 「か+連体形」で係り結びを作り、反語の意味になっている。「どうして持ち帰るだろうか、いや、持ち帰ることはできない」。
問八・問九 結果として黄金が手に入ったので機嫌よく「うまいこと太刀を盗んでいった」と追いかけることもせず、「ほほゑみて」いたのである。
問十 イとエが太刀のことである。
攻略のポイント
現代文・特に説明的文章の読解には十分な対策をしておくこと。テストの形式はクセのない一般的なものなので、過去問を含めて他の学校の問題も良い練習になるはずである。長文読解の場数を踏んでおこう。
記述問題がないのは時間的に助かるが、選択肢を考え分けるのに時間がかかる問題もあるので、それほどの余裕はない。手に負えないと感じた問題は諦めて、とにかく最後まで手を付けることである。その上で残った余裕を古文に回す。
全体として、読解のスピードが必要となるので、意識して訓練しておきたい。