青山学院高等部 入試対策
2020年度「青山学院高等部の国語」
攻略のための学習方法
長文読解
文章量の多さが、やはり本校の特徴といえるだろう
例年、現代文2題で合わせて9000字ほど、これに古文を加えておよそ10000字の文章に目を通す必要があったが、2018年度では計7000字とやや文量が少なくなり、2019年度では計10000字ほどにもどっている。
設問は書き抜き・穴埋め・選択肢と一般的な国語の試験で見慣れた形式であるが、これだけの長文だと正解や手がかりを探すのに手間がかかる。読むスピードとともに要点を整理する手際の良さが求められる。
まずは長文読解の基本に忠実に。
説明的文章であれば、形式段落→意味段落の整理。段落の最初と最後に注意しながら要点のチェック。それらをまとめて要約し、要旨・結論を把握。本文を読み進めながら印や下線を用いて上記のようなポイントを目立つようにしておく。
文学的文章であれば場面・段落の変わり目をマーク。登場人物・筆者の気持ちや意見とその変化に最大の注意を払いながら、重要な発言や行動をチェック。そこからテーマとそれに対する人物や筆者の考えを読み取る。印・下線を使ってすぐ探せるようにしておくことはもちろん有効である。
長文の問題では、部分的に戻って確認する程度はできても、全体を読み返す時間はおそらく無い。1回の読みで上記のプロセスを終えなければならないので集中力と慣れが必要である。同程度の文量の問題でしつこく練習しておくこと。
と、理想を言えばそうなのだが、現実にはなかなかそうはいかない。本校のような長文の試験で全ての設問に時間をかけるのはやはり無理がある。全問に正解しようと気張らないことである。設問を見てピンと来ないものは後回し。できる問題をまずは拾って最後まで目を通すこと。
合格最低点は6割5分ほどである。
古文
他の中高一貫の高校にも言えることだが、試験を受けるのはまだ中学生なのに、出された問題はすでに高校レベルであるという点がなんとも厄介である。しかも本校の問題はなかなかに難しく、低レベルの大学ならこれくらいの問題は出してもおかしくない難易度である。
当然、中学で軽くなぞった程度の古文学習では足りないので、本校の古文に本格的に対策する場合は、いっそ高校古文の基本レベルの教材を使ってしまおう。
難しいとは言っても、難解な助詞・助動詞の区別や複雑な文法まで問われるわけではない。
おおよそは文章の内容理解が主で、あらすじが理解できれば答えられる問題が多い。最重要単語100~200や、基本的な文法だけ覚えて、なるべく多く文章にあたって古文に慣れておくことである。
また、問題構成を見ると現代文の長文読解28問・漢字7問・古文読解12問という割合(2020年度)で、現代文読解に比重がある点を考え、前半で点を稼げる自信があるなら古文は3~5割の正解でよしとするのもひとつの考えではある。
漢字・その他
漢字の読み・書きは毎年出題されている。手を抜かなければ得点できる分野なので、全問正解を望みたい。言葉の意味など、言語事項も数問出される。
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2020年度「青山学院高等部の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問は3つ。今年度は論説文2題で計8800字・古文1000字で約9800字と、文量は例年通りである。
やはり比重の大きい現代文2問をなるべく急いで、答えられる問題をしっかりこなし、残りを古文に当てるのが順当だろう。漢字は7問出題され、できれば失点無しですませたいが、中学で習う漢字の中でもやや難しいものが見られるのでしっかり覚えておきたい。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:20分
他国の例も挙げながら、物にも命があると考える日本のアニミズム的世界観が日本のロボットの普及と結びついていると説明している。
問一 「国境を越えた」とあるBで考えるとわかりやすい。Aはロボットが機械の一種である点から正解を選べる。
問二 次段落に「日本ではそのような心理的抵抗(機械への嫌悪感や反発心)はまったくなかった」と書かれている。
問三・問四 「有情の存在」として、ロボットも心を持った仲間だと日本人は感じるのである。
問五 しかるべき――当然な・ふさわしい。
問六 それぞれの物の性格があらわれているような描かれ方で、見る人は人間味や個性を感じてしまうのであろう。
問七 挙げられている例は物が何かの行動を取っているように見える場面であるが、それはあくまで道具であり、日本人のように物に心があると考えているわけではない、と筆者は説明している。
問八 心を砕く――いろいろと気を遣う。
問九 「テクノロジーの遺産」と「アニミズム的世界観」が合わさって日本のロボットの世界は築かれている。そのおかげで日本はロボットを抵抗なく受け入れられるのであるから、「幸福な」ことである。
問十 A. 精巧な時計が生まれた。「しかも」類のない和時計まで生み出した。
問十一 1.「世界でも知られるようになった」とは書かれていない。
3. このような論は文中に全く述べられていない。
4. 「罪の意識の表れ」などとは書かれていない。
問十二 ア. 端的――はっきりしているさま。
ウ. 平素――ふだん。つね日ごろ。
エ. ばんしょう――形あるものすべて。
【大問二】論説文の読解
- 時間配分:17分
「幸福とは何か」について論じている。
問一 人口に膾炙する――「膾炙」は人々の評判になって知れ渡ること。
問二 「他のもののために追求されることのない」「それ自体として望ましく」「他のものゆえに望ましくはない」などから、「自己充足」「自己完結」などが合う。
問三 切に――心に強く思うさま。
問四 塞翁が馬――中国の故事。馬が逃げてしまったが、良い馬を連れて戻ってきた。孫がその馬から落ちて骨折したが、おかげで兵役を免れた。幸不幸は予測がつかないものである。
問五 「幸福になれるかどうかはみずからの裁量の内にはなく」「幸福の原理と道徳の原理を混同してはならない」のであるから、選択肢4が合う。
問六 二十世紀の多くの非人道的な行為の具現化で、人間にはもともと道徳心が備わっているという前提が崩れてしまったのである。
問七 「一見幸福論と見えるもの」とあるので、真の幸福論ではないことになる。
問八 「安楽」をもとめて「不快の殲滅」に向かい「神経質に合流」して「自己喪失・焦燥にかられた」「無感動・無関心」に至るという、かえって「安楽」からかけ離れてしまう事態になっているのである。
問九 A. 話題から少し逸れた補足的な内容なので「ちなみに」。
問十 オ. 「一人の満足が別の人の不満の上に成り立っている」のだから、「幸福を個人の満足度に求めるのは虚構」なのである。
問十一 3. 最終段落の内容と合っている。
5. 第4段落の冒頭に書かれている。
問十二 ア. たか――多いことと少ないこと。
イ. 渦中――ごたごたした事件のなか。
ウ. 枯渇――ものが尽きて無くなること。
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:13分
帝釈天の慈悲の計らいで、貪欲だった長者が改心することができた。
問二 傍線の直後で意味が説明されている。「安楽なること、毘沙門、帝釈にもまさりたり」と言っているので、「勝」が入る。
問三 自分と同じ姿をした者(帝釈)が宝物を勝手に人々に与えているので、「あれは化けたものだ、私が本物だ」と言った。
問四 母親は、息子が慳貪の神にささげ物をして「物惜しむ心」を失ったと思っているので、宝物を人々に与えている偽長者(帝釈)のほうを本物だと思っている。
問五 「やは」は反語。「(ほくろのことを)真似なさらないことがあろうか、いや真似した」。
問六 最初は「物惜しむ心」を失くそうという振りをしていただけだが、仏や帝釈のおかげで実際に「物惜しむ心」がなくなった。
問八 長者に化けた帝釈が家に行って「私は山で物惜しむ神を祭って、その神が離れて物が惜しくなくなったので、このようにする」と言って、宝物を人々に自由に取らせた。
問九 (1) 妻は長者の嘘を信じ、山で慳貪の神に離れてもらうために食べ物や酒を供えるのだと思った。
(2) 人のいないところでもっと存分に飲み食いしたかった。
問十 4.嘘ではあるが「慳貪の神に離れてもらう」と周囲に言っているので、自覚はしている。
5. 帝釈は長者が慳貪の業で地獄に落ちないように、取り計らって救ってやった。
攻略のポイント
現代文・特に説明的文章の読解には十分な対策をしておくこと。テストの形式はクセのない一般的なものなので、過去問を含めて他の学校の問題も良い練習になるはずである。長文読解の場数を踏んでおこう。
記述問題がないのは時間的に助かるが、選択肢を考え分けるのに時間がかかる問題もあるので、それほどの余裕はない。手に負えないと感じた問題は諦めて、とにかく最後まで手を付けることである。
その上で残った余裕を古文に回す。
全体として、読解のスピードが必要となるので、意識して訓練しておきたい。