中央大学附属高等学校 入試対策
2014年度「中央大学附属高等学校の国語」
攻略のための学習方法
[解法]
特有の「説明文問題」だけではなく、「選択肢」「抜き出し」「空所補充」、その他の問題も含め、「中附の国語」で勝利を手中に収めるための基本は、何度も指摘している通り、いかに「解法」をうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
[速読]
大学入試にも匹敵、否、それ以上の問題文を読まなくてはならない。全体で15000字程度。解答時間は60分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。中附に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速750字以上(できれば800字近く)で「速読」できるようにしたい。
[知識]
「高度な語彙力」だけではなく、「文法」なども含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「中附の国語」(直接出題だけではなく、「説明文問題」等でも不可欠)。いかなる「攻略法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ、かも知れない。が、そこで諦めてしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ることだ(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「問題文理解」にも不可欠だ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
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2014年度「中央大学附属高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は中野剛志「国力とは何か--経済ナショナリズムの理論と政策」(文字数約4500字)。筆者は、経済産業省産業構造課課長補佐を経て、京都大学大学院工学研究科准教授。専門は「経済ナショナリズム」。小問は全11問(解答数は27)で、出題形式は「選択肢」「空所補充」「抜き出し」「乱文整序」、「漢字書きとり」(6問)、「総合的知識問題」(7問)。問題文は6分強で読み切り、設問を17~18分程度で解きたい。
大問二は「小説」、出典は車谷長吉「金輪際」(文字数約11000字)。筆者は小説家、初の作品集「塩壷の匙」で芸術選奨文部大臣新人賞・三島由紀夫賞、「赤目四十八滝心中未遂」で直木賞を受賞(1998年)している。小問は全14問(解答数は33)で、出題形式は「選択肢」「空所補充」「抜き出し」、「総合的知識問題」(8問)。問題文は15分程度で読み切り、設問を20分強で解きたい。
【大問一】論説文
- 時間配分:24分
本書は、東日本大震災のような本当の意味での「危機」には、国家が強いリーダーシップを発揮する「国力」が求められていると指摘し、豊かな経済社会を取り戻すための「経済ナショナリズム」の有効性を説いている。
本文では、「間接民主制」は、国家と個人との間に「市民社会」をはさむことにより「高度な民主国家」を実現するための制度であり、「国家」と「市民社会」は対立ではなく相互依存関係にあると述べている。
「問1」の「漢字の書きとり」は平易なので、全問正解が当然。他は、「知識」「抜き出し」「接続詞」「乱文整序」、そして、中附独特の「長い説明文中の空所補充」などと多彩な小問が並んでいる。以下、いくつか考えてみたい。
【問5】説明文中の空所補充抜き出し
傍線部③の「最も強力な国家とは、実は、民主国家なのである」について、このことに関する「説明文」の空所[a][b]に「当てはまる語句」を抜き出す(各5字指定)。
中附おなじみの「小問」における「説明文問題」だ。ここでは、先ず「傍線部」の「内容」を捉える必要がある。「傍線部一文一部の法則」(「傍線部が一文の一部の場合、傍線部以外が重要」という重要な「解法」)で考える。直前は「しかし」という「逆接」の「接続詞」(「接続詞」には常に着目すること)で、「傍線部」は「段落」の最後。ということは、この「段落」とそれ以前では説明されていないことは当然だ。次は「段落相互関係」の出番(「論説文」の「重要解法」のひとつ)。以降の2段落は「具体例」で、その後が「一般論」としてのまとめであることは一目瞭然のはず。その段落に注目して、空所[a][b]に「当てはまる語句」を探せば、[a]が「政策や制度」、[b]は「信頼と理解」が「答え」だと分かる。「解法」を用いて、無駄なく「抜き出し範囲」を絞り込むことが重要。
【問7】理由説明の選択肢
傍線部④の「権威は、『象徴』という目に見えるような形で表現される」について、「国家」がそうしたことを行う「理由」を答える(「5択」)。
「選択肢設問」は「消去法」が大原則。ここは「理由説明」なので、先ずは、「直接的理由」で「消去」することを考える。また、「選択肢消去」は「下のブロック(部分)」から行うのが「鉄則」。で、傍線部(C)の「必要とする」が最初の対象となる。各選択肢の「下のブロック」⇒「だから」⇒傍線部④と、直接結びつくかを確認する。が、残念ながら全て結びついてしまうので、これでは「消去」できないということだ。次に、「国家」との関連なので、傍線部とのつながりを考える。直後に「国家は象徴の力を利用して、人々を統合する」とある。「統合」の「原意」で「消去」したい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。選択肢(イ)「国民としての一体感」以外は「消去」できると分かるはずだ。 (イ)の全体を確認して、特に誤っている「説明」はないので、「答え」でよいことになる。
「解法」を用いた「段階的消去」、スピードが求められる中附では、絶対に習得すること。
【問10】乱文整序の選択肢
本文中の空所[H]に、示されている(イ)~(ホ)の各文を並べ替えて当てはめた場合、「2番目」と「4番目」に「該当するもの」を答える(「5択」)。
「乱文整序」では、「乱文どうしの順序を確定」→「空所の前後から乱文の最初と最後を確定」と考えていく。先ずは、(イ)~(ホ)の「冒頭」に着目する。「接続詞」「指示語」等に要注意。(ロ)「その証拠」、(ハ)「むしろ」、(ニ)「他方」、これらで順序が確定できないかを確認。(ロ)「その証拠」⇒何の証拠? と考えると、(ハ)→(ロ)と確定できるはずだ。同様に、(ハ)「むしろ」⇒何との比較? で、(イ)→(ハ)。(ニ)「他方」⇒何との対比? で、(ホ)→(ニ)。このようになる。整理すると、(イ)→(ハ)→(ロ)と(ホ)→(ニ)という2ブロックが確定したことになる。あとは、「空所の前後」からこれらブロックの順序を決めればいい。「前後」どちらで考えてもいいが、「直後」が「この点に関し」という「指示語」なので、分かりやすいかも知れない。最終的には、(ホ)→(ニ)→(イ)→(ハ)→(ロ)になる。従って、「答え」は、「2番目」が「(ニ)」、「4番目」が「(ハ)」。
あまりなじみのない「乱文整序」、「解法」を知らないと時間ばかりかかってしまう。「解法」の重要性を肝に銘じること。
【問11】説明文中の空所補充選択肢
傍線部⑥の「国家と市民社会は対立関係にはない。むしろ、相互依存関係にあるのである」について、このことに関する「説明文」の空所[a]~[f]に「当てはまる語」を答える(「10択」)。
またしても中附おなじみの「小問」における「説明文問題」。しかも、ここでの「説明文」は600字以上のボリューム、かてて加えて「10択」。なんとも厄介だ。時間の制約を考えると、何らかの「工夫」が必要になる。なんとか「選択肢」を絞り込めないか?空所に着目する。何か気付かないか?「内容」とは無関係に「文法的要素」で「当てはまる語」が限定できるのだ。空所の[a]は「体言」だが、[b][d][e][f]はサ変動詞「する」との「複合動詞」、[c]には「接尾語」の「的」がある。一方、「選択肢」は全て「体言」。当然、絞り込みが可能なはずだ。選択肢の(イ)「倫理」・(リ)「自由」は、「複合動詞」にはならない。また、(ロ)「反映」・(ホ)「崩壊」・(リ)「自由」には「的」はつかない。このように絞り込んだ上で、「文脈」や「内容」で特定していく。「答え」は順に、「(リ)」「(ヘ)」「(イ)」「(ロ)」「(ホ)」「(チ)」となる。中附では、視点を変えて様々な「方法」での「工夫」をするということも求められる。
【大問二】小説
- 時間配分:35分
本作品は、世を厭いながら生きてきた「私」の人生にトゲのように突き刺さっている記憶の数々を通じて「黒い情念の世界」を描いた短篇集。「金輪際」とは「世界を支える金輪がある地の無限の底」のこと。
本文では、39年前、小学校3年の時に転校してきた、「私」が初めて出逢った「東京言葉」を話す「澤田君」とのできごとが描かれている。
とにかく本文が長い。1万字以上にもなっている。さらに、例の「説明文問題」が4問で文字数は約1800字。唖然としてしまう。とにかく、要領よく解き進めていくしかない。「説明文問題」は前述のような「工夫」が必要なことは無論だが、実は「語彙力」(要は「知識」)で解ける問題があるということも見極めたい。「内容」ではなく「文脈」だけで特定できるのだ。たとえば、「問4」「問12」などはその典型だ。一気に「答え」を出すことが可能になっている。
中附では、「設問」をどのように解いていくかを瞬時に判別して、テンポよく進めていかなくてはいけない。他のの1問だけ検討してみる。
【問10】換言説明の選択肢
傍線部⑪の「私たちは見捨てられたのだった」について、「どういうことか」を答える(「5択」)。
「換言説明」なので、無論、「原意」で「消去」することを考える。「見捨てられた」の「原意」で考える。ただ、ここで注意しなくてはいけないのは、「受け身表現」だということだ。「澤田君」が「私たち」を「見捨てた」という「文意」を的確に捉えていないと判別を誤ってしまう。選択肢の「下のブロック」が対応しているので確認する。(ロ)(ハ)(ニ)は全て「主語」が「私たち」なので、「消去」できなくてはいけない。そして、「見捨てる」の「原意」から、(ホ)の「澤田君は教室から消えてしまった」も不適切だと判断できるはず。残りの(イ)は特に誤った「説明」ではないので、「答え」でよい。「表現形態」や「主語」「述語」「目的語」といった「文節相互関係」等の「文法」も「消去」の「根拠」になるということだ。
中附では、様々な「多角的視点」から判断して迅速に「解法」をつかむことが必要だ。
攻略ポイント
●「圧倒的な物量のと闘い」となる「中附の国語」、どう「攻略」すればいいのか? 要は「戦術」だ。中でも「解答順」が最重要になる。「得点できる問題」を「時間切れ」で逃すのは最悪だからだ。先ずは、「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)のどちらの「大問」を先に解くか? これは、自分自身の特性に応じて事前に決めておくこと。次に、「小問」は「知識問題」からこなすことが原則だ。合計で2万字近い「文章」を「読解」することになる。しかも「解答数」は60前後。全てを丹念に答えることは物理的に不可能だ。従って、、「取れる問題を確実に押さえる」ことが最重要になる。逆にいえば、「取れそうにない問題は潔く捨てる」という覚悟が求められる。「捨て問」かどうかの判別を瞬時に行うことが必要。もちろん、「単純ミス」は絶対にしてはいけない。「中附の国語」の「合格者平均」は59%(4年間の男女合計平均。14年度は58%)、3科合計の「合格者最低点」も59%(4年間の男女合計平均。14年度は57%)。同じということは、無論、「国語」が難しいということ。ここで「失点」をいかに効率的に防ぐかが、勝負の分かれ目になる。
●中附おなじみの「説明文問題」や、「選択肢」「抜き出し」「空所補充」などその他の設問にはどう対処するか? それは、「問題解説」でも指摘したが、いかに「解法」を的確に用いるかがポイントになる。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが必要だ。そのためにも、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておく。それによって、「失点」を防ぎ、「得点力」が安定することになる。
●「総合的知識問題」では、「あらゆる国語的知識」が求められてくる。しかも、「語彙力」「文法的知識」などは、前述のように「説明文問題」に際しても不可欠だ。中附を志したその瞬間から、独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが必要だ。学校や塾での学習だけでは、全く不十分なので、「独習」は欠かせない。
●試験時間は60分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文のボリュームは全体で15000字程度にもなる。当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。