中央大学附属高等学校 入試対策
2015年度「中央大学附属高等学校の国語」
攻略のための学習方法
[解法]
特有の「説明文問題」だけではなく、「選択肢」「抜き出し」「空所補充」、その他の問題も含め、「中附の国語」で勝利を手中に収めるための基本は、何度も指摘している通り、いかに「解法」をうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
[速読]
大学入試にも匹敵、否、それ以上の問題文を読まなくてはならない。全体で15000字程度。解答時間は60分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。中附に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速750字以上(できれば800字近く)で「速読」できるようにしたい。
[知識]
「高度な語彙力」だけではなく、「文法」なども含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「中附の国語」(直接出題だけではなく、「説明文問題」等でも不可欠)。いかなる「攻略法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ、かも知れない。が、そこで諦めてしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ることだ(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「問題文理解」にも不可欠だ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
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2015年度「中央大学附属高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は西谷修「理性の探究」所収の「いのちのかたち」(文字数約5000字)。小問は全9問(解答数24。「説明文」ありが2問)。「選択肢」(「組み合わせ」あり)「空所補充」、「漢字の書きとり」(5問)。問題文は6分強で読み切り、設問を20分弱で解きたい。
大問二は「小説」、出典は芥川龍之介「鼻」(文字数約6000字)。小問は全11問(解答数35。「説明文」ありが6問)。「選択肢」(「複数解答」あり)「空所補充」、「総合的知識問題」。問題文は7分強で読み切り、設問を30分弱で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:
私たちを取り巻いている、不可解にして理不尽な出来事。そこに露呈している「狂気」と「非合理」の諸相は、いかにして形成されたのか? 何を起源とし、どのような系譜をたどって「今日」はあるのか? 「人として在ること」の根拠を、混沌とした思想の風景から論じている。
本文では、西洋語の「ライフ」の訳語である「生命」と、日本語の実感的表現である「いのち」は微妙に異なっており、「生命科学」が進展した現在、両者はせめぎ合っているが、今こそふたつをつなぐ理論や思想は真に問うに値すると述べている。
「哲学論」ではあるが、さほど難解な語句もなく理解しやすいはずだ。
本校らしい「長文選択肢」や小問での「説明文」が待ち構えている。
以下、いくつか検討してみたい。
[問1] 「漢字の書きとり」(全5問)。
前後の「文脈」から内容を特定した上で、適切な漢字を当てはめる必要がある。
難解なものとしては、二重線部
(a)「とかくセイコウに響きがちな『生命』という語」=「生硬」(この単語自体を知らない諸君も多いだろう)、
(c)「ドンジュウで不細工」=「鈍重」(「不細工」と結びつけたい)、
(e)「キイに響く」=「奇異」(紛らわしいので要注意)。本校では「高度な語彙力」が求められていると認識せよ。
<時間配分目安:1分以内>
[問2] 「換言説明選択肢」(2問/6択)。
傍線部①「こうして較べてみると日本語はなんとも面倒な言語ではある」と、傍線部②「『ライフ』を一律に『生命』と訳しても、どうやらあまり不都合はないようだ」について、それぞれ「どういうことか」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。
先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。
ここは「換言説明」なので、傍線部①の「面倒な」と傍線部②の「不都合はない」、それぞれの「原意」と結びつかない選択肢を、「文末」(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)で「消去」したい。
選択肢
(イ)「認められるようになってきた」、
(ロ)「使いこなすのは難しい」、
(ハ)「どのように訳してもかまわない」、
(ニ)「わずらわしい」、
(ホ)「やっかいだ」、
(ヘ)「すべて『生命』と訳してもよい」。
傍線部①は(ニ)(ホ)の「2択」、傍線部②が(ハ)(ヘ)の「2択」になることが分かるはずだ。
次に、それぞれを確認し判別していく。
①には「こうして較べてみると」とある。「指示語」なので開く(「指示語」が出たらすぐ開くこと)。「段落冒頭」の「指示語」は「前段落全ての内容を指し示す」(「重要解法」のひとつ)。
要は「『ライフ』のひとことで済んでしまう英語と、コンテクスト(文脈)に従ってその都度適切な言葉を当てなければならない日本語を較べる」ということだ。よって、「新しい訳語を作らなければならない」とある(ホ)ではなく、「文脈ごとに異なる言葉を使用する」としている(ニ)が「答え」になる。
②は「一律に『生命』と訳しても」とあるのだから、(ハ)の「言葉の意味は使う人や受け取る人よって違う」は不適切で、(ヘ)の「『ライフ』をすべて『生命』と訳しても」が「答え」だと分かるはずだ。
「換言選択肢」では、「解法」に基づき段階的に「消去」すること。当然、「原意消去」が最優先だ。
<時間配分目安:2分>
[問3] 「換言説明選択肢」(5択)。
傍線部③「『生命』と『いのち』にもそれに似た違いがある」について、「どういうことか」を答える。
出た! 本校の真骨頂、「超長文選択肢説明」、最長で何と「206字」だ(各選択肢合計で「924字」)。
無論、全ての「説明」を読み解き検討していたのでは、日が暮れてしまう。当然、「文末」での「原意消去」だ。
「それに似た違い」、「段落冒頭」の「それ」を前段落全体から捉える。
「『身体』は機械や道具などの作り物になぞらえても違和感はないが、『からだ』は『わたし』に身近で親しいものという違い」ということだ。
各選択肢の「文末」を確認する。
選択肢
(イ)「文章では『生命』、会話では『いのち』」、
(ロ)「『生命』はだれのものでもなく、『いのち』は常に『わたしのもの』」、
(ハ)「『生命』は手を加えていくもので、『いのち』は手を加えないもの」、
(ニ)「『生命』は『わたし』と無関係で、『いのち』は『わたし』と不可分」、
(ホ)「『生命』は現象で、『いのち』は神秘的なもの」。
どうか? 判別できるか? 「身体」=「作り物」で、「からだ」=「身近で親しいもの」なのだから、(ニ)以外は「消去」できなくてはいけない。(ニ)は他の部分の説明も誤っていない。従って、「答え」ということだ。
長い長い「選択肢説明」、要領よく「原意消去」いていく他はないと心得よ。
<時間配分目安:2分以内>
[問7] 「本文中の空所補充選択肢」(5択)。
本文中の空所「 A 。」に「該当する文」を答える。
各選択肢を見て、瞬時に気づかなくてはいけない。
全てが「『いのち』はつねに[A]であると同時に[B]でもある」という構成になっている。
[A]は、
(イ)「宗教的」
(ロ)「本質的」
(ハ)「具体的」
(ニ)「絶対的」
(ホ)「身体的」
で、
[B]が、
(イ)「科学」
(ロ)「部分」
(ハ)「有限」
(ニ)「抑圧」
(ホ)「神秘」
だ。
無論、どちらか分かりやすい方から「消去」していけばいい。
「傍線部一文一部の法則」で考える(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という「重要解法」)。
「だから、 A 。」となっているので、直前の「『生』の実質は『いのち』である」が、 A の「理由」だと分かる。
また、直後は「それは長さを限られている」だ。「指示語」なので、 A =「長さを限られている」ことになる。
まあ、後者の方が単純だろう。「長さを限られている」のだから、[B]は(ハ)「有限」以外はあり得ない。(ハ)の[A]は「具体的」で、「実質」とも結びつく。よって、「答え」となる。
選択肢の特徴を見抜くことは、正解へのショートカットだと心得よ。
<時間配分目安:1分以内>
【大問二】
- 時間配分:
僧侶の「禅智内供」が、あごの下までぶら下がる、見苦しいほど立派な鼻を何とか短くしようと悪戦苦闘する姿を描いている。ブラック・ユーモア溢れる作品なのだが、「今昔物語」と宇治拾遺物語]を題材としていることもあり、「古語」や「仏教用語」のオンパレードで何とも読みづらい(「*注」が33箇所もある)。
設問では、6つの小問で「説明文」があり、総字数が約2700字という凄まじさだ。
まさに「中附の国語」の面目躍如といった大問。
以下、いくつか考えてみよう。
[問2] 「説明文中の空所補充選択肢」(4問/8択)。
傍線部②「内供の自尊心は、妻帯というような結果的な事実に左右されるためには、余りにデリケイトにできていたのである」について、「どういうことか」を説明した文中の空所 1 ~ 4 に「該当する語」を答える。
選択肢は全て二字熟語なので、空所前後の「文脈」や「文法」から「該当するもの」を絞り込んだ上で、傍線部の「原意」(「換言説明」なので)も踏まえて特定していけばいい。
各選択肢は、
(イ)「安定」
(ロ)「環境」
(ハ)「認識」
(ニ)「傲慢」
(ホ)「成仏」
(ヘ)「繊細」
(ト)「品位」
(チ)「結婚」
順に空所を確認する。
「 1 しているかそれともしていないか」とある。「する」との複合動詞になり得るのは「安定」「認識」「成仏」「結婚」だが、傍線部に「妻帯というような結果的な事実」とあるので、「答え」は(チ)の「結婚」。
「 2 に影響を受ける」となっている。「文脈」から該当するのは(ロ)の「環境」だけなので、「答え」となる。
「 3 で傷つきやすい心」、ここでの「で」は「並立の助詞」なので、「傷つきやすい」と類義語の(ヘ)「繊細」が「答え」になる。
「自分の 4 を保とうとする」、「文脈」から該当するのは「安定」「環境」「品位」だが、傍線部に「自尊心」とあるので、「答え」は(ト)の「品位」だ。
多角的な視点で「消去」して手際よく解き進めることが肝要だ。
<時間配分目安:1分半>
[問4] 「語句の読みと意味の選択肢」(2問/8択)。
「総合的知識問題」。
二重線部(a)「物色」・(b)「気色」について、それぞれの「読み方」と「意味」を答える。
(a)「物色」=「ぶっしょく」で、意味は選択肢(ロ)の「多くの人や物の中から適当なものを探し出すこと」、これは何の問題もないはずだ。
だが、(b)「気色」については注意が必要だ。「きしょく」と読むと「心に思っていることが顔に現れた様子」という意味だが、「けしき」と読むと「何かが起ころうとする様子」になる。意味が異なるので、「文脈」から判断する必要がある。
前後は「格別それより下へぶら下ってくる『気色』もない」となっている。従って、「けしき」であって、意味は選択肢(ト)の「何かが起ころうとする気配のこと」となる。
「多義語」ではしっかりと「文脈」を確認すること。
<時間配分目安:1分以内>
[問5] 「内容説明選択肢」(5択)。
傍線部④「内供が人と話しながら、思わずぶらりと下っている鼻の先をつまんでみて、年甲斐もなく顔を赤らめたのは、全くこの不快に動かされての所為である」について、「内供のどのような様子が示されているか」を答える。
「原意消去」が鉄則。
先ずは、「顔を赤らめた」の「原意」と結びつかない選択肢を「消去」したい。
(イ)「自意識過剰の状態になっている」、
(ロ)「単純で激しやすい」、
(ハ)「自らの行為に呆れている」、
(ニ)「飽くなき欲望を有している」、
(ホ)「自尊心と羞恥心がともにあらわになった」。
無論、(イ)(ホ)だけが残ると判別できるはずだ。
次に、傍線部には「思わず」とあるので、(ホ)の「人を見ないで鼻ばかり見ている」ではなく、(イ)の「意識せずにとった己の行為」が「答え」になる。
ここも、「原意消去」による「段階的消去」で解けるということだ。
<時間配分目安:1分>
攻略ポイント
●圧倒的な「物量」との闘いとなる。どう「攻略」するか?
要は「戦術」だ。中でも「解答順」が最重要。「得点できる問題」を「時間切れ」で逃すのは最悪だからだ。
先ずは、「論説文」と「小説」のどちらの「大問」を先に解くかを、自分自身の特性に応じて事前に決めておくこと。
次に、「小問」は「知識問題」からこなすことが原則。合計で2万字近い「文章」を「読解」することになり、「解答数」は60前後。全てを丹念に答えることは物理的に不可能だ。
従って、「取れる問題を確実に押さえる」ことが最重要で、「取れそうにない問題は潔く捨てる」という覚悟が求められる。
「合格者平均」は57%(5年間の男女合計平均。本年度は53.1%)、「失点」をいかに防ぐかが、勝負の分かれ目になる。
●中附おなじみの「説明文問題」や、「選択肢」「抜き出し」「空所補充」などその他の設問にはどう対処するか?
いかに「解法」を的確に用いるかがポイント。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが必要だ。そのためにも、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておくこと。
●「総合的知識問題」では、「あらゆる国語的知識」が求められてくる。しかも、「語彙」「文法」などは、「説明文問題」にも不可欠だ。
独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが必要。学校や塾での学習だけでは全く不十分なので、「独習」は欠かせない。
●試験時間は60分。時間配分にも細心の注意をすること。
問題文だけでも15000字程度にもなる。当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。