中央大学附属高等学校 入試対策
2017年度「中央大学附属高等学校の国語」
攻略のための学習方法
[解法]
特有の「説明文問題」だけではなく、「選択肢」「抜き出し」「空所補充」、その他の問題も含め、「中附の国語」で勝利を手中に収めるための基本は、何度も指摘している通り、いかに「解法」をうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。
それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
[速読]
大学入試にも匹敵、否、それ以上の問題文を読まなくてはならない。全体で15000字程度。解答時間は60分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。中附に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速750字以上(できれば800字近く)で「速読」できるようにしたい。
[知識]
「高度な語彙力」だけではなく、「文法」なども含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「中附の国語」(直接出題だけではなく、「説明文問題」等でも不可欠)。いかなる「攻略法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ、かも知れない。が、そこで諦めてしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。
先ずは、「己が実力」を悟ることだ(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「問題文理解」にも不可欠だ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
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2017年度「中央大学附属高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は春木良且「情報って何だろう」(文字数約6300字)。
小問は全11問(解答数35。「説明文」ありが5問)。
「選択肢」(「空所補充」「本文内容合致」「複数完全解答」あり)、「漢字の書き」(5問)。
問題文は8分強で読み切り、設問を20数分で解きたい。
大問二は「小説」、出典は川上弘美「ざらざら」所収の「月火水木金土日」(文字数約4300字)。
小問は全13問(解答数35。「説明文」ありが6問)。
「選択肢」(「空所補充」「本文内容合致」「複数解答」あり)、「抜き出し」(空所補充)、「総合的知識問題」(「語句記述」と「選択肢」)。問題文は6分弱で読み切り、設問を25分弱で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:
「情報化社会」「情報リテラシー」とはどういうことか? 社会の一員として「情報」を受け取り、加工し、発信していくだけではなく、より社会と密接なかたちで情報を捉えるためには何が必要なのか?――「目にみえない力」である「情報」と正しく付き合うためにはどうすればいいのかについて論じている。
本文では、「ナチスのメディア戦略」の分析を通じて、「情報」だけでは大衆を動かす力はないと指摘している。「社会学」についての論考で、「情報学」の専門用語も多いが、「*注」も活用して内容を理解してほしい。
本校らしい「小問での説明文」や「長文選択肢説明」などが待ち構えている。以下、いくつか検討してみたい。
[問1] 「漢字の書きとり」(全5問)。
平易だった昨年度よりは難易度は上がっているが、本校としては標準。確認する。
(a)「ダイキボ」(=「大規模」)⇒何の問題もないはず、(b)「大新聞はナチスにカイジュウされ」(=「懐柔」)⇒難解、「文脈」を理解し「同音異義語」に注意、(c)「ヨウイにできる」=(「容易」)⇒平易、(d)「国威の発揚にも大きくキヨ」=(「寄与」)⇒これも「文脈」がポイント、(e)「ロウリョク」=「労力」⇒問題なし。本校では基礎から応用まで、あらゆる「語彙力」が求められている。
<時間配分目安:1分以内>
[問2] 「換言説明選択肢」(5択)。
傍線部①「当時の先端的なメディア技術」について、「どういう意味か」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」を最優先に考えること)。ここは「換言説明」なので、「メディア」の「原意」と結びつかない選択肢を、「文末」(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)で「消去」したい。(イ)「娯楽の数々」、(ロ)「余興や催し物」、(ハ)「テクノロジー」、(ニ)「情報伝達のための手段」、(ホ)「科学技術」。「メディア」=「媒体」で、「情報」について使われることが多いことは誰でも知っているはず。よって(ニ)以外は「消去」可能。他の部分の説明も特に誤っていないので、「答え」は「(ニ)」でOK。「一発消去」だ。畏るべし「原意消去」、大いに活用せよ。
<時間配分目安:1分以内>
[問3] 「説明文中の空所補充選択肢」(全4問/10択)。
傍線部②の「ナチスの情報操作において新しかったこと」に関する「説明文」の中の、空所 1 ~ 4 に「当てはまる語」を答える。無論、傍線部の内容を「本文」から読み取り、空所を特定していってもいいのだが、それでは手間暇がかかり過ぎる。ここは合理的に「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)で解き進めたい。
各選択肢は、(イ)「意思」、(ロ)「欲望」、(ハ)「情報」、(ニ)「国威」、(ホ)「軍隊」、(ヘ)「原理」、(ト)「正義」、(チ)「価値」、(リ)「大衆」、(ヌ)「媒体」。各空所を確認する。「民者主義においては、国民の支持を得たものが、その時・その場における『 1 』となる」⇒「民者主義において」「国民の支持を得たもの」=「正しいもの」なので、「答え」は(ト)「正義」。「多数派になることができれば、それを国民全体の 2 とみなす」⇒「多数派の意見」=「国民全体の考え」で、「答え」は(イ)「意思」。「特定の思想や 3 観にもとづいた」⇒そもそも「○○観」が成立するのはひとつだけ、「答え」は(チ)「価値」。「メディアを通して操ることのできるような存在としての『 4 』」⇒「メディア」で「操られる存在」だとしたら、「答え」は(リ)「大衆」。
本校特有の「小問での説明文」に関する問題は、その「説明文」そのものを「ひとつの文章」と捉え、その中自体で的確な「解法」を適用して解くということを先ずは考えることが肝要。
<時間配分目安:4分半>
[問6] 「換言説明選択肢」(5択)。
傍線部⑤「いわば大衆が大衆を生み出していったのです」について、「どういうことか」を答える。
先ずは「原意消去」から。「換言説明」なので、「大衆が大衆を生み出し」の「原意」と結びつかないものを、選択肢の「文末」で「消去」する。(イ)「正しい答えとして受け入れるしかなかった」、(ロ)「大衆を操作する側に加担してしまった」、(ハ)「自身は愚かな大衆の一人と化してしまった」、(ニ)「自ら権力者の求めるような人間を作り出す役目も果たしてしまった」、(ホ)「反対する人間の存在を許さないような社会ができあがってしまった」。「自らが自らを生み出す」のだから、(ニ)以外は「消去」できるはず。他の部分の説明も特に誤っていないので、「答え」は「(ニ)」となる。ここも「一発消去」。
尚、「原意消去」に習熟すれば、「生み出す」≒「作り出す」だけで「消去」できるようにもなる。徹底的に練習せよ。
<時間配分目安:1分>
[問9] 「本文中の空所補充選択肢」(5択)。
本文中の、空所 ⑧ に「当てはまる表現」を答える。「傍線部(空所部)一文一部の法則」で空所前後を確認する。「ですから伝達する情報を減らせば、 ⑧ ということになります」となっている。「ですから」という「順接」の「接続詞」があるので、前文が「理由」で空所部が「結果」ということだ。前文には「多くの人間が共通に理解できる(「情報」の)部分は、人が増えれば増えるほど少なくなる」とある。
各選択肢を確認する。(イ)「多くの人々により理解される」、(ロ)「情報の伝わる範囲が狭くなる」、(ハ)「理解できる人間の数も減ってしまう」、(ニ)「誤解の生ずる可能性も増大する」、(ホ)「情報を受信できる人間の数も増加する」。「人が増えれば増えるほど理解できる部分が少なくなる」「情報」を「減らす」のだから、当然、「多くの人々が理解できる」⇒「答え」は(イ)だ。「接続詞」は「文脈把握」のキーワードだと心得よ。
<時間配分目安:2分半>
【大問二】
- 時間配分:
この瞬間も色々な人が色々な場所で色々な相手と恋をしている――「恋する女たち」の眺めの良さ、「恋する時間の豊かさ」をやわらかに綴る23の物語の中のひとつ。
本文は、「わたし」がたまたま買い求めた「あけびの蔓(つる)で編んだ籠(かご)」と不思議なことに「会話」を始め、「親類のおばさん」みたいに「駕籠おばさん」を慕い、自らの心を開き癒されていく姿を「曜日」を追って描いている。
ややファンタジックな作品だが、内容は分かりやすい。ただ、「心情」の機微を読み取るのはなかなか難しい。6つの小問で「説明文」があり、総字数は驚くべき約2800字強。まさに、本校の国語の真骨頂といった大問。以下、いくつか考えてみよう。
[問4] 「説明文中の空所補充選択肢」(全4問/10択)。
傍線部③の「けれど、一ヵ月もたつうちに、籠おばさんはすっかりわたしの気持ちの起伏をのみこんだようだった」に関する「説明文」の中の、空所 a ~ d に「該当する語」を答える。さて、この設問、各選択肢を概観して何かに気づかないか?
そう、それぞれ「対」になっている5組の語句だ。(イ)「理性的」⇔(リ)「感情的」、(ロ)「永続的」⇔(ハ)「一時的」、(ニ)「受動的」⇔(ト)「能動的」、(ホ)「一方向的」⇔(チ)「双方向的」、(ヘ)「一元的」⇔(ヌ)「多元的」。空所を確認してみる。「『籠おばさん』とのやりとりは、……『女の子はそんな小さなパンツはいてちゃだめよ……』・『もっと姿勢よく歩きなさい』など、初めは『籠おばさん』からの a なものであった。
やがて一ヵ月が経過すると…… b なものへと変わっていき、やがて『わたし』の方から c に言葉を発するようになっていく。つまり、最初の段階の『声』は、……誰かから浴びせられたことのある言葉であり、これまで『わたし』が d に耳にしたものであった」。 a と b 、 c と d が「対」になっているではないか。
ということは、4ヵ所の空所には、この中のどれか2組が該当するわけだ。特定していきたい。 a ⇒「『籠おばさん』とのやりとり」といっても、『籠おばさん』からの言葉ばかり=(ホ)の「一方向的」となり、当然、 b はその「対」である(チ)の「双方向的」になるはず。 d ⇒「誰かから浴びせられたことのある言葉」と「受け身」なので=(ニ)の「受動的」で決定し、 c はその「対」の(ト)の「能動的」が該当する。「代入確認」しても問題ないし、「本文」の内容とも合致する。したがって、それぞれが「答え」となる。「選択肢設問」では、各選択肢の「特徴」や「関係性」「組み合わせ」に着目することで、解き易くなるものもあると心得よ。
<時間配分目安:3分半>
[問5] 「本文中の空所補充記述」(「漢字4字」指定)。
本文中の、空所 D には「必要な注意を怠ることは、身を誤るもとで、何よりもこわいことだ」という意味の語が入るが、それを「漢字4字」で答える。結局、「総合的知識問題」の「四字熟語」というわけ。平易だ。即座に、「答え」=「油断大敵」と判断できなくてはいけない。無論、「四字熟語」に限らず様々な「語彙力」も磨いておく必要がある。
<時間配分目安:30秒>
[問6] 「故事成語の同義選択肢」(5択)。
前問同様の「総合的知識問題」。傍線部④の「禍福はあざなえる縄のごとし」と「同意の故事成語」を答える。もちろん、これは誰もが知っているはずだ。「幸福と不幸は、より合わせた縄のように交互にやってくる」という意味。各選択肢の「故事成語」も習得せねばならないものばかり。確認したい。
(イ)「人間万事塞翁(さいおう)が馬」=「人生における幸不幸は予測しがたい」、(ロ)「水清ければ魚棲まず」=「あまりに清廉過ぎる人は、かえって人に親しまれず孤立してしまう」、(ハ)「敗軍の将は兵を語らず」=「失敗した者が弁解がましく発言したりすべきではない」、(ニ)「虎穴に入らずんば虎児を得ず」=「危険を冒さなければ、大きな成功は得られない」、(ホ)「学びて思わざれば則ちくらし」=「いくら学んでも、自ら思索しなければ、真理に到達することはできない」。よって、「答え」は(イ)になる。ひとつでも曖昧なものがあったなら、まだまだ「知識習得」が不十分だと肝銘せよ。
<時間配分目安:1分以内>
[問8] 「比喩換言の空所補充選択肢」(5択)。
本文中の空所 E に入る、「自分にとって大切なものが、今ここに存在していないことを実感し、過去の自分の振るまいを悔やんでいる」という「趣旨の語句」を答える。「趣旨の語句」? はっ? まあ悩んでいても始まらないので、とりあえず各選択肢を概観してみる。全て「~ような気持ち」となっている。要は、「同意」の「比喩表現」を答えるということだ。「~」の部分を確認しよう。(イ)「けんか別れした」、(ロ)「わすれものをした」、(ハ)「むりに引き離された」、(ニ)「死んだ子の年を数える」、(ホ)「置き去りにされてしまう」。「大切なものが、今ここに存在していない」のだから、「答え」は当然、「わすれもの」なので(ロ)だ。「直喩(明喩)」、「隠喩(暗喩)」を問わず、「比喩」は「小説」では頻出、しっかりと慣れておく必要がある。
<時間配分目安:1分半>
※尚、【大問一】の[問11]および【大問二】の[問13]にいわゆる「本文合致選択肢設問」がある。「論説文」であれば「論旨合致」なので、「序論部分」および「結論部分」との照合で判別可能だ(ただ、手間はかかる)。そして、同じ「本文合致」でも、「説明文」や「小説」では「本文全体」と照合しなくてはいけないので、さらに時間がかかる。したがって、「戦術」としては「本文合致」は「あとまわし」にする方がいい。無論、「捨て問」でも構わない。
攻略ポイント
●圧倒的な「物量」との闘いとなる。どう「攻略」するか? 要は「戦術」だ。中でも「解答順」が最重要。「得点できる問題」を「時間切れ」で逃すのは最悪だからだ。先ずは、「論説文」と「小説」のどちらの「大問」を先に解くかを、自分自身の特性に応じて事前に決めておくこと。
次に、「小問」は「知識問題」からこなすことが原則。合計で1万字以上の「文章」を「読解」することになり、「解答数」は60前後(本年度は何と70)。全てを丹念に答えることは物理的に不可能だ。したがって、「取れる問題を確実に押さえる」ことが最重要で、「取れそうにない問題は潔く捨てる」という覚悟が求められる。
「合格者平均得点率」は60%強(過去5年間の男女合計平均。本年度は昨年度よりはやや下がったが、依然高く72.2%)、「失点」をいかに防ぐかが、勝負の分かれ目になる。
●本校おなじみの「『小問での説明文』設問」や、「選択肢」「抜き出し」「空所補充」などその他の設問にはどう対処するか? いかに「解法」を的確に用いるかがポイント。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが必要だ。そのためにも、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておくこと。
●「総合的知識問題」では、「あらゆる国語的知識」が求められてくる。しかも、「語彙」「文法」などは、「説明文問題」にも不可欠だ。独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが必要。学校や塾での学習だけでは全く不十分なので、「独習」は欠かせない。
●試験時間は60分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文だけでも15000字程度になることもある。当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。