中央大学高等学校 入試対策
2023年度「中央大学高等学校の国語」
攻略のための学習方法
解法
特有の「説明文問題」だけではなく、「選択肢」「抜き出し」「空所補充」、その他の問題も含め、「中附の国語」で勝利を手中に収めるための基本は、何度も指摘している通り、いかに「解法」をうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。
それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
大学入試にも匹敵、否、それ以上の問題文を読まなくてはならない。全体で15000字程度。解答時間は60分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。中附に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速750字以上(できれば800字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「文法」なども含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「中附の国語」(直接出題だけではなく、「説明文問題」等でも不可欠)。いかなる「攻略法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ、かも知れない。が、そこで諦めてしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。
先ずは、「己が実力」を悟ることだ(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「問題文理解」にも不可欠だ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
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2023年度「中央大学高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「漢字問題」、小問なし(「書きとり」と「読み」の各5問)。2分以内で丁寧に終えたい。
大問二は「論説文」、出典は鈴木宏昭「私たちはどう学んでいるのか――創発から見る認知の変化」(文字数約5200字)。小問は全9問(解答数11)。「選択肢」(「空所補充」、「本文内容非合致」、「総合的知識問題」あり)、「抜き出し」(1問)、「説明記述」(2問。「40字以内」と「20字以内」指定各1問)、問題文は6分程度で読み切り、設問を11~12分で解きたい。
大問三は「小説」、出典は保坂和志「生きる歓び」(文字数約3700字)。小問は全11問(解答数14)。「選択肢」(「空所補充」、「本文内容合致」、「総合的知識問題」あり)、「抜き出し」(3問)、「漢字記述」(1問。総合的知識問題)、「説明記述」(2問。「20~35字以内」と「25字以内」指定各1問)、問題文は4分強で読み切り、設問を14分ほどで解きたい。
大問四は「古文」、出典は十返舎一九「臍(へそ)くり金」(文字数約360字)、小問は全4問(解答数6)。「選択肢」(「空所補充」、「文法」)、「仮名遣い」、「説明記述」(1問。「字数指定」なしで、「30字ほど」の解答欄)。7分程度で解きたい。
大問五は「漢文」、出典は「Ⅰ」が「荀子」(文字数8字)、「Ⅱ」が「孟子」(文字数8字)。小問は全3問(解答数3)。「選択肢」(内容解釈)、「記述」(書き下し文)、「返り点記入」。3分弱で解きたい。
大問六は「総合的知識問題」、小問全5問(解答数7)。「文学史」「口語文法」「慣用句」。2分強で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:2分以内
「漢字の読み書き」(全10問)。例年並みの難易度で本校としての標準レベル。「全問正解」といきたい。注意すべきものだけを挙げておく。
(1)「小売店に品物をオロす」=「卸(す)」⇒「文脈」を捉え「同訓異字」に要注意。(4)「セイジャクに包まれた」=「静寂」⇒高校入試の定番⇒一画一画に注意せよ。(5)「目がハれるくらい泣いた」=「腫(れる)」⇒これは難解か? しっかりと定着させておくこと。(6)「彼はいつも勝ち負けに拘泥する」=「こうでい」⇒難易度がやや高い⇒「こだわること。必要以上に気にすること」という意味も押さえたい。(9)「指摘を真摯に受け止め」=「しんし」⇒「読み」の十八番⇒「まじめで熱心なこと」だ。(10)「私の拙い文章」=「つたな(い)」⇒「読み」では定着必須⇒「書きとり」にも対応したい。本校が求める「語彙力」を磨き上げよ。
【大問二】
- 時間配分:11~12分
「知識はそのまま身につくことはない」「ひらめきは突然生まれない」「思考力は安定しないものである」「練習しても簡単には上達しない」――教育現場ではこれまでのイメージから、間違った学習観が広まっている。その弊害をなくすために、認知科学の視点から「学び」の実態を科学的に明らかにしている。本文では、「環境」は知性の重要なパートナーであり、環境の剥奪を前提としている学校教育でのテストでの評価は一面的であると論じている。平易な文章で内容は理解できるはずだ。いかにも本校らしい多種多様な小問が並んでいる。以下、いくつか検討してみる。
[問一] 「換言説明記述」(「40字以内」指定)。
傍線部(1)の「素朴理論」とは「どのような理論のことか」を「四十字以内」で説明する。先ずは、「傍線部一文一部の法則」に「手がかり」を求める(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という読解の基本となる解法)。直前・直後が「そうした意味で(素朴理論)と呼ばれている」となっている。ここでのポイントは「そうした」という「指示語」だ。「指示語」の内容が「素朴理論」ということになる。「指示語」を開く(「指示語」が出たら即開くこと)。
直前から、「そうした意味」=「教わることなしに経験によって獲得した私たちの知識は相互に繋(つな)がり合って、ゆるい体系のようなものを作り出しているという意味」だと読み取れるはず。あとは、「指定字数」に応じて「過不足なく」まとめていけばいい。たとえば、「教わることなく経験によって得た知識は相互に繋がってゆるい体系となったという理論。」(40字)といった「答え」になる。
尚、「説明記述」では必ず「最重要要素」(「理由説明」では「直接的理由」)を「文末」にすること。
[問三] 「対義語選択肢」(5択)。
「総合的知識問題」。傍線部(3)の「普遍」の「対義語」を答える。定番の「対義語」なので、選択肢でなくても分からなくてはいけない。「答え」は(イ)の「特殊」だ。ちなみに、(ア)「一般」の「対義語」も「特殊」になる。他は、(ウ)「異質」⇔「同質」、(エ)「妥協」⇔「決裂」、(オ)「非凡」⇔「平凡」。ひとつでも未定着のものがあった諸君は確実に復習しておく必要がある。無論、「類義語」も習得しておくこと。
<時間配分目安:30秒>
[問四] 「空所補充の語句選択肢」(全3問/5択)。
本文中の空所 Ⅰ ~ Ⅲ に「あてはまる適切な語」を答える。選択肢は「接続詞」と「副詞」、本校に限らず定番の問題だ。「接続詞」では「逆接」以外には十分に注意しなくてはいけない。「逆接」以外だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「文脈」を確認する必要がある。また、段落冒頭の「接続詞」は前段落全ての内容を受けているので注意すること。各空所の「答え」を確認していきたい。
Ⅰ には「論じる必要のないほどはっきりしているさま」を表す「副詞」の(ウ)「むろん」、 Ⅱ には「並立」の「接続詞」である(エ)「また」、 Ⅲ には「逆接」の「接続詞」である(ア)「しかし」がそれぞれあてはまる。
「接続詞」「副詞」などの「空所補充」は必出だ。失点は致命傷になると心得よ。
<時間配分目安:2分>
[問七] 「内容説明の抜き出し」(「25字以内の部分」の「始めの3字」指定)。
傍線部(5)に「学校の話から外れるが」とあるが、「認知症の話を取り上げているのは何を説明するためか」が分かる「部分」を「~こと。」に続く形で「二十五字以内」で抜き出し、「始めの三字」を答える。
「抜き出し」では、「抜き出すべき内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞っていくことが鉄則。「内容」を捉えるために、「認知症の話」のポイントを「同一意味段落」から読み取りたい。直後から、「認知症の兆候があって特別な施設に送られると、一挙に症状が加速する」ことについて、「右で述べたように、患者の知性がうまく働く、慣れ親しんだ環境から切り離されるからだ」といった内容が読み取れる。ここから、「知性と環境」がポイントであり、しかも、「右で述べたように」とあることから「学校の話」について説明しようとしていることも分かる。
要するに、「抜き出し内容」は、「学校の話」での「知性と環境」ということになる。「範囲」は「同一意味段落」だが、さらに、「学校の話」に限定できる。ここでは傍線部の前3つの形式段落だと判断できる。丁寧に探していくと、2つ前の形式段落冒頭に「人の知性は環境を前提として組み立てられている」(22字)という部分がある。「知性と環境」の説明そのものだ。「字数」もOKで、「~こと。」にもつながる。同じ「範囲」に他に候補はない。よって、「答え」は「人の知」(3字)になる。「抜き出し」では「内容」と「範囲」の絞り込みがポイントだ。
尚、「抜き出し候補」はひとつとは限らないので、必ず「範囲」の全て隈なく、そして漏れなく探すこと。
<時間配分目安:2分強>
【大問三】
- 時間配分:14分ほど
作家に拾われた瀕死の子猫は、一所懸命に生き延びた……。死のぎりぎりの瀬戸際で「生」に目覚めた捨て猫の命の輝きを、抑えた筆致でやさしく描いている。
本文では、片目が潰れ、そのままであれば死んでしまうだろう子猫を見つけてから、次第に「生」の側へ動き始める過程で「私」にふっと灯る直観――「生」はそのまま「善」であり「歓び」だ――を綴(つづ)っている。内容は難なく理解できるはずだ。「説明記述」と「抜き出し」、そして、「総合的知識問題」がメインとなっている大問だ。以下、いくつか確認しよう。
[問一] 「指示語内容の抜き出し」(「20字以内の部分」の「始めの3字」指定)。
傍線部(1)「そういうこと」の「内容にあたる具体的な部分」を「二十字以内」で抜き出し、「始めの三字」を答える。「抜き出すべき内容」は「指示語が指し示している部分」。「抜き出し範囲」は「同一場面」(「小説」では「同一場面の直前直後に手がかり・ヒントあり」が「解法」の大原則)。だが、ここは「指示語」なので傍線部の前になる。直前を確認すると「そういうつまらないことでわずらわされることも多いのかと思いつつ」となっている。つまり、「そういうこと」=「わずらわされるつまらないこと」だと分かる。さらに戻っていくと、4行前に「そういうことでわずらわされている自分」という部分がある。「二重指示語」だ。こちらの「そういうこと」を改めて開いていく(「二重・三重指示語」は必ず全て開くこと)。
前の行に「四月には雨が多くて、洗濯をしたり布団を干したりするタイミングに心をわずらわされて」とある。まさに、「わずらわされている具体的内容」だ。「字数」も合致している。また、同じ「範囲」に他に候補はない。よって、「洗濯をしたり布団を干したりするタイミング」(20字)を抜き出すので、「答え」は「洗濯を」(3字)になる。
尚、「指示語問題」は「抜き出し」に限らずどこの学校でも頻出だ。徹底的に練習しておくことが肝要。
<時間配分目安:2分弱>
[問三] 「語句の意味の選択肢」(全2問。各4択)。
「総合的知識問題」。波線部①「便乗する」・②「無下に」の「意味」を答える。「原意」(=「本来の意味」)での特定を優先させ、それが困難な場合は前後の「文脈」から判断していく。「答え」を確認する。
「便乗する」⇒知っていて当然=「自分にとって都合のよい機会を利用する」⇒①の「答え」は選択肢(イ)「機会を利用する」。「無下に」⇒高校入試の定番=副詞で「冷淡なさま」を表すと知っていなくてはいけない⇒②の「答え」は(イ)「そっけなく」となる。本校ではこの程度の「語彙力」は必須だと心得よ。
尚、「文脈」にこだわり過ぎると,「原意」からかけ離れてしまって誤答となる場合があるので、要注意。また、「多義語」にも十分配慮すること。
<時間配分目安:全問で1分>
[問五] 「内容説明記述」(「25字以内」指定)。
傍線部(3)「まわりで人だかりを作っている人間たちの気がかり」について、「どのようなことが『気がかり』か」を「二十五字以内」で説明する。「傍線部一文一部の法則」で確認すると、直前に「子猫が」とあり、直後に「(人間たちの気がかり)とはあまりに落差のあるのどかさで眠っていて」とある。ここから、「子猫」のことが「気がかり」だと分かる。さらに、「状況」を「同一場面」から読み取っていきたい。
「子猫」の「上ではカラスが桜の枝に一羽止まっていて、枝の上をせわしなく右へ左へと動いていて、自分の『餌(えさ)』と位置づけたらしい子猫を食べるために、人間がいなくなるのを待っていた」ということが読み取れる。これで、「気がかり」の内容は理解できたはずだ。あとは、簡潔にまとめていきたい。たとえば、「子猫がカラスに食べられてしまわないかということ。」(24字)といった「答え」だ。
尚、「小説」では「状況」の読み取りが重要だと心得よ。
<時間配分目安:2分強>
[問六] 「空所補充の漢字記述」(「漢字1字」指定)。
「総合的知識問題」。「慣用句」。本文中の空所 A に「あてはまる漢字一字」を答える。空所部は2か所ある。チェックする。
「自分が A を下さないで何らかの解決が得られるのを文字通り A をこまねいて待っている」。ともにすぐに「答え」が出なくてはいけない基礎的な「慣用句」だ。「手をくだす」=「自分が実際に行う」、「手をこまねく」=「何もしないで見ている」。よって、「答え」は「手」になる。
本問は平易だったが、本校では「慣用句」は当然のこと、「四字熟語」「故事成語」「ことわざ」等も完全定着させておくことが不可欠だ。
<時間配分目安:30秒強>
[問八] 「空所補充の語句判別選択肢」(全2問/5択)。
本文中の空所 B ・ C に「あてはまる適切な語」を答える。各空所前後を確認する。「人間の思考はもともと『世界』というような B ではなく目の前にある事態に対処するよう発達した」。「人間の思考力を推し進めるのは、自分が立ち合っている現実の全体から受け止めた C の力なのだ」。選択肢の各語句は、(ア)「感情」・(イ)「予想」・(ウ)「抽象」・(エ)「理想」・(オ)「理性」。空所それぞれにあてはまる「語句」を「文脈」から判別する。
「『世界』というような B ではなく目の前にある事態」⇒「抽象」ではなく「具体」だと特定できるはず。「自分が立ち合っている現実の全体から受け止めた C の力」⇒「現実から受け止めた力」であれば、「『感情』の力」以外は不適切だと判別可能だ。したがって、「答え」は B =(ウ)、 C =(ア)だ。「語句の空所補充」では「文脈」を正確に把握することと、「代入確認」を忘れないことが肝要。
尚、「選択肢設問」では「消去法」を活用することも求められると心得よ。
<時間配分目安:全問で2分半>
【大問四】
- 時間配分:7分程度
江戸時代後期の戯作者で「東海道中膝栗毛」で知られる十返舎一九の落語短編集の一話。日本のお笑いの原点ともいえる作品。ちなみに、「臍くり金」とは「ひそかにためたお金」のこと。本校の定番ジャンルだ(9年連続で「お笑いネタ」の出題)。
本文は、「明日の七つ時に死ぬ」と「人相見」に告げられたある人の話だ。例年どおり、「古文の基礎的知識」が問われている。本年度は昨年度同様に難易度が低い。「全問正解」が必須。2問だけ検討する。
[問二] 「仮名遣いの変換記述」。
傍線部(1)「けふ」を「現代仮名遣い」に改める。誰もが知っていなくてはいけない「歴史的仮名遣い」の基本。「語頭」以外の「は・ひ・ふ・へ・ほ」は「わ・い・う・え・お」になるので、「けふ」=「けう」だ。
ただし、ここでもうひとつの原則を思い出さなくてはいけない。「母音」と「母音」が直接つながった場合のルールだ。「a・u」→「ou」、「i・u」→「yû」、「e・u」→「yô」については知っているはず。ここでは、「けう」=「Ke・u」⇒「e・u」→「yô」=「Kyô」となる。したがって「答え」は「きょう」だ。「歴史的仮名遣い」は本校では必出、他の学校でも頻出なので確実に定着させておくこと。
<時間配分目安:30秒>
[問四] 「理由説明記述」(「字数指定」なし。「30字ほど」の解答欄)。
傍線部(2)「すぐにかけおち」について、「どうしてそうしたのか」を説明する。「かけおち」=「逃げること」だと「*注」にある。つまり、「どうしてすぐに逃げることにしたのか」を説明するわけだ。「現代文」同様に前後の「文脈」から、「理由」を読み解いていく。
先ずは、どのような「状況」なのかを「同一場面」で確認する。「ある人」が「人相」を見てもらったところ「明日の七つ時(午前四時)に亡くなる相が見える」と告げられ、すぐに家族に伝えて遺言をし、次の日(明日)には友達を集めて酒盛りをしてもてなしていると、時計がチンチンと時を刻んでいき、ついに「七つ時」の「チンチン」の音を打ち始めると、「亭主」(ある人)は「もう七つか。これはたまらぬ(=これはたまらない)」と言って、「すぐにかけおち」したことが分かる。ということは、「『七つ時』の音を聞かないようにすれば死なずに済む」と考えたから「すぐに逃げた」のだと判断できるはずだ。
よって、たとえば、「七つ時を打つ音を聞かないようにすれば死なずに済むと考えたから。」(31字)といった「答え」になる。
「古文」であっても、「現代語訳」をした上で「文脈」を読み解いていくことが基本になる。
<時間配分目安:1分半>
【大問五】
- 時間配分:3分弱
「Ⅰ」は中国・戦国時代の思想書。孟子の「性善説」に対して、荀子の「性悪説」の立場から、礼法による道徳の維持を説いたもの。「Ⅱ」も中国・戦国時代の思想書。仁義王道による政治を説き、「性善説」を唱えた孟子の言行録。「書き下し文」「返り点」といった本校お馴染みの「漢文の基本問題」。一気呵成に得点すべき大問。以下、2問だけ確認する。
[Ⅰ-問一] 「書き下し文記述」(「漢字・仮名交じり文」指定)。
「Ⅰ」の傍線部「不(ず)下 為(ニ)二 水 旱(かんノ)一 不(ざルヲセ)上レ 耕(サ)」(*「下」「二」「一」「上レ」は「返り点」。「平仮名」は「読み」、「カタカナ」は「送り仮名」)を、「書き下し文」(漢字・仮名交じり文)に改める。
本年度は例年より難易度がやや高い。
「不」は「助動詞」なので「平仮名」にすること。「返り点」のない「水」が最初で、次に「旱」、そして、「一」→「二」と戻るので「為」、次が「耕」で、そこから「上レ」→「下」と戻り「不」「不」となる。したがって、「水旱の為に耕さざるをせず」が「答え」となる。「返り点」「書き下し文」は「基本のキ」なので、しっかりと習得しておくことが肝要。尚、「書き下し文」では「付属語(助動詞・助詞)」を「平仮名」とし、当然、「歴史的仮名遣い」で表記すること(「書き下し文」は「文語」だ)。
<時間配分目安:1分>
[Ⅱ-問一] 「返り点記入」。
「Ⅱ」の傍線部「無(シ)物(トシテ)不(ル)長(ゼ)」に、「書き下し文」の「物として長ぜざる無し」を参考にして、「返り点」を記入する(「読み仮名」「送り仮名」は不要)。「物(トシテ)」→「長(ゼ)」→「不(ル)」→無(シ)」の順だ。よって、「答え」は「無二 物 不レ一 長」(*「二」「レ一」が「返り点」)となる。
本問はとても平易だったが、「返り点」は十分に練習しておくこと。
<時間配分目安:1分>
【大問六】
- 時間配分:2分強
「総合的知識問題」。
問一は「文学史」(「人間失格」の作者名⇒「答え」は(ウ)「太宰治」)。
問二は「慣用句」(「金額を不足なくそろえる」という意味の「( )をそろえる」の空所補充記述⇒「答え」は「耳(をそろえる)」。
問三が「口語文法」(「他動詞」の判別⇒「答え」は(エ)「助ける」)残りの「口語文法」2問をチェックする。
[問四] 「助詞の用法判別選択肢」(全2問。各4択)。
示されている(1)・(2)の各文のうち、傍線部の「用法が違うもの」をそれぞれ答える。判別していく。
(1) では「が」の用法。(ア)「話すのが得意」⇒「主格」の格助詞、(イ)「いい人ではあるが頼りない」⇒「逆接」の接続助詞、(ウ)「一生懸命探したが見つからない」⇒「逆接」の接続助詞、(エ)「久しぶりですがお元気でしたか」⇒「単純接続」の接続助詞。
よって、(1)の「答え」=(ア)。
(2)では「の」の用法。(ア)「心の赴くにまかせて」⇒「主格」の格助詞、(イ)「月の明るい夜」⇒「主格」の格助詞、(ウ)「あなたの選んだ答え」⇒「主格」の格助詞、(エ)「問題を考えるのは面倒」⇒「体言代用」の格助詞。したがって、(2)の「答え」=(エ)。「助詞」や「助動詞」などの「意味・用法判別」は必出なので、確実に習得しておくこと。
<時間配分目安:全問で1分弱>
[問五] 「単語の品詞判別選択肢」(全2問。16択)。
示されている文中の傍線部(1)・(2)の「文法的説明」をそれぞれ答える。文は「このまま膠(こう)着状態が続いたとしても、きっと彼は本当のことを言わないだろう。」だ。各選択肢は、「動詞の活用形」(3択)・「形容詞の活用形」(3択)・「形容動詞の活用形」(3択)・「助動詞の活用形」(3択)・「名詞」・「助詞」・「副詞」・「連体詞」。「答え」を確認する。
(1)「続い(た)」=(ア)の「動詞の連用形」、(2)「きっと」=(ソ)の「副詞」。どうだろうか? 「口語文法」をしっかりと理解習得して定着させていれば難なく解けるはずだ。一瞬でも悩んでしまった諸君は、未熟だと自覚して精進せよ。
<時間配分目安:全問で1分弱>
攻略のポイント
-
●「ハイパーな時間勝負」となる。どう「攻略」するか? 「解答順」が最重要。「得点できる問題」を「時間切れ」で逃すのは最悪だ。「現代文」「古文」「漢文」「漢字」「総合的知識問題」、どの大問から解くか? 「漢字」「知識」を最初にこなすのは当然だが、他は自分自身の特性に応じて事前に決めておくこと。要は「取れる問題を確実に押さえる」ことだ。逆にいえば「捨て問」という覚悟も求められる。
「国語」の「合格者平均得点率」(本年度までの6年間平均で71.2%。本年度はやや下がって68.8%)は、3科合計の「合格者最低得点率」(同6年間平均で63.7%)を上回っている。
したがって、「国語」での「失点」は致命的になると肝銘せよ。●「説明記述」の対策は? 実直に「記述」の「練習」を続ける他はない。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。「内容」から優先度を特定し、高いものから積み上げていく。徹底的に練習することが必要だ。
●「多様な設問内容」にはどう対処するか? いかに「解法」を的確に用いるかがポイントだ。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが肝要。そのためにも、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておく。
●配点比率が高い「総合的知識問題」も無論、侮れない。「高度な語彙力」はもちろん、「文法」「文学史」等まで網羅した「あらゆる知識」が必要なので、独自に習得していくことが重要だ。特に「口語文法」は用意周到にしておくこと。
●「古典」の「攻略法」は? 重要な「古文単語」の定着はもちろんだが、「内容理解」も求められるので「基礎的文語文法」は押さえておきたい。また、「漢文」でも「返り点」「書き下し文」などの基礎は必ず定着させておくこと。
●試験時間は50分。問題文は「現代文」だけでも7000字程度(本年度は一気に増えて約8900字)。無論、速く正確に読み取ることが求められる。分速800字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。