中央大学高等学校 入試対策
2016年度「中央大学高等学校の国語」
攻略のための学習方法
[記述]
「中大高校の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「段落」ごとの「要点をまとめる練習」をするのがとてもいい方法だ。20~30字程度で書いてみる(中大高校の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。徹底して「20~30字程度」の「字数感覚」が身につくようにトレーニングを重ねたい。
[解法]
「記述」「選択肢」「抜き出し」「空所補充」、その他の問題も含め「中大高校の国語」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
[速読]
大学入試にも匹敵、あるいはそれ以上の問題文を読まなくてはならない。「現代文」全体で6500字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。中大高校に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
[知識]
「直接出題」は勿論、「本文読解」等でも必然的に問われることになる「総合的知識」。いかなる「攻略法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「品詞分類」「文節の相互関係」といった「基礎的事項」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
[古典]
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必須のカリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶことはない。が、私立の「高校入試」ではそれらも含めて出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」するしかない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は理解しておかなくてはならない。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。「漢文」についても、「攻略ポイント」で触れたとおり押さえておかなくてはいけない。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
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2016年度「中央大学高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「漢字問題」、「読み」「書き」各5問。2分以内で丁寧に終えたい。
大問二は「論説文」、出典は白井恭弘「ことばの力学――応用言語学への招待」(文字数約4100字)。小問は全9問(解答数16)。「選択肢」「抜き出し」「空所補充」、「説明記述」(「20~30字指定」2問)、「総合的知識問題」。問題文は5分ほどで読み切り、設問を13~14分で解きたい。
大問三は「小説」、出典は谷村志穂「余命」(文字数約3400字)。小問は全9問(解答数9)。「選択肢」「抜き出し」「空所補充」、「説明記述」(「30字以内指定」「字数指定なし」各1問)。問題文は4分強で読み切り、設問を10分ほどで解きたい。
大問四は「古文」、出典は作者不詳「当世軽口にがわらひ」(文字数約330字)、小問は全5問(解答数8)。「選択肢」「空所補充」、「語句記述」、「説明記述」(「字数指定なし」1問)、「総合的知識問題」。7~8分で解きたい。
大問五は「漢文」、出典は「Ⅰ」が桓寛「鹽鐵論」(文字数13字)、「Ⅱ」が曾先之「十八史略」(文字数7字)、「Ⅲ」が王充「論衡」(文字数12字)。小問は全3問(解答数3)。「記述」(書き下し文)、「返り点記入」、「総合的知識問題」。5分ほどで解きたい。
大問六は「総合的知識問題」、小問は全4問(解答数9)。「敬語」(1問)、中谷宇吉郎の随筆「線香花火」(文字数約200字)から出題の「文法」(2問)、「熟語の構成」(2問)、「文学史」(2問)。3分ほどで解きたい。
【大問一】漢字問題
- 時間配分:2分
「漢字の読み書き」(全10問)。例年以上に難易度が高い。如何に失点を最小限に食い止めるかが勝負だ。「文脈」も確認しながら熟語を特定していくこと。
(1)「他人に責任をテンカする」=「転嫁」(「部首」に注意)、
(2)「コウトウ試問が課せられている」=「口頭」(「文脈」を的確に把握せよ)、
(3)「数ヶ月のユウヨ期間」=「猶予(与)」(エアポケットかも)、
(4)「友達の車にビンジョウさせてもらった」=「便乗」(「慣用読み」に要注意)、
(5)「人に事情をタズねて」=「尋(訊)」(「同訓異字」を確認)、
(6)「老朽化が進んできた」=「ろうきゅう」(これはできて当然)、
(7)「事業資金を捻出する」=「ねんしゅつ」(これも何とかしたい)、
(8)「噂を吹聴」=「ふいちょう」(意外と難読か)、
(9)「賄賂の悪習」=「わいろ」(定番の「難読熟語」)、
(10)「試合を固唾をのんで見守っていた」=「かたず」(知らなくてはいけない「慣用表現」)。
本校が求める「ハイレベルな語彙力」は「でる順」だけでは対応できないと心得よ。
<時間配分目安:2分以内>
【大問二】論説文
- 時間配分:18~19分
「ことば」は知らない間に人間の行動を左右する――問題を科学的に解決するための応用言語学」の研究から、「外国語教育」「異文化との接し方」「法言語学」「手話」「言語障害」など幅広い視点から、複数の言語が関わる状況では優劣を生み出す無意識の力学が働くと論じている。
本文では、「察しの文化」を持つ日本人のコミュニケーションスタイルは、少数意見を抑圧していると論じている。昨年度に引き続き「言語論」からの出題。ただ、「横組み」の「英文」が3ヵ所挿入されているという珍しい構成で、若干戸惑うかも知れぬ。設問自体は、「総合的知識問題」も含め、本校らしい多種多様な設問が並ぶ。以下、いくつか検討してみたい。
[問一] 「語句の空所補充選択肢」(4問/4択)。
本文中の空所 Ⅰ ~ Ⅳ にあてはまる「適切な語」を答える。
選択肢は全て「接続詞」、「逆接」はともかく「順接」には十分に注意すること(本問は「順接」のみ)。同じ「順接」だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「文脈」を確認する必要がある。また、段落冒頭の「接続詞」は前段落全ての内容を受けているので注意すること。
各空所を確認していきたい。
Ⅰ は直後が「具体例」なので、選択肢(ウ)「例示」の「たとえば」、 Ⅱ は直前が「理由」なので、(エ)「結果」の「ですから」、 Ⅲ は段落冒頭で前段落に続く「新たな視点」が提示されているので、(ア)「添加」の「そして」、 Ⅳ は段落冒頭で前段落までを直後でまとめているので、(イ)「換言」の「つまり」がそれぞれ「答え」になる。「接続詞」「副詞」などの「空所補充」は本校に限らず定番中の定番、くれぐれも失点することのないようにすること。
<時間配分目安:1分半>
[問三] 「理由説明選択肢」(4択)。
傍線部(1)「『キッタ』が表す現象に対して、韓国語話者は敏感に反応しますが、英語話者は反応しません」について、「その理由」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。
ここでは「理由説明」なので、「直接的理由」での「消去」となる。各選択肢を確認すると、(ア)(イ)が「韓国語」、(ウ)(エ)は「英語」の説明だとすぐに分かる(⇒ここで「2択」になるわけだ)。
設問は「英語話者は反応しません」の「理由」なのだから、当然、(ア)(イ)は「消去」だ。次に、(ウ)(エ)の「文末」で(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)、「直接的理由」として結びつかないものを「消去」する。
(ウ)「言葉がないから」→「反応しません」、(エ)「語を使わなくなるから」→「反応しません」。無論、「反応しない」のだから(エ)は「消去」だと判別できるはず。(ウ)は他の部分の説明も特に誤っていないので「答え」となる。「選択肢設問」では、「解法」を駆使し「消去」していくことが肝要。
<時間配分目安:1分半>
[問六] 「語の空所補充選択肢」(4問/2択)。
本文中の空所【a】~【d】にあてはまる「適切な語」を答える。
選択肢は(ア)「他動詞」、(イ)「自動詞」。
空所前後の「文脈」からどちらかを特定していく。確認する。「日本語が【a】を好む」となっており、前後から、「日本語」は「主語を言わない」⇒「動作主を言わない」と分かるので、「答え」は(イ)の「自動詞」だ。
また、「『誰が』何をしたか」「言う必要がないときに、【b】文や受け身の文を使う」ということは、【b】も(イ)の「自動詞」になる。そして、【c】【d】は挿入されている「英文」についての説明だ。「【c】文が一番動作主に注目した文」、「一方、【d】文は、動作主にまったく注目していません」となっている。ということは、【c】=(ア)「他動詞」、【d】=(イ)「自動詞」だと判別できるはずだ。
複数の空所に「2択」をあてはめる設問では、ひとつ間違うと連鎖的に失点する恐れがあるので、慎重を期すこと。
<時間配分目安:2分>
[問七] 「四字熟語の空所補充選択肢」(5択)。
本文中の空所 B にあてはまる「適切な四字熟語」を答える。「総合的知識問題」。
各選択肢の「四字熟語」、確実に定着しているだろうか? 確認しておく。
(ア)「一意専心(いちいせんしん)」=「他に心を動かされず、ひたすら一つのことに心を集中すること」、
(イ)「異体同心(いたいどうしん)」=「肉体は違っても、心は一つに固く結ばれていること」、
(ウ)「以心伝心(いしんでんしん)」=「文字や言葉を使わなくても、お互いの心と心で通じ合うこと」、
(エ)「一言一句(いちごんいっく)」=「一つ一つの言葉のこと」、
(オ)「言行一致(げんこういっち)」=「言葉に出したことと、その行動が同じであること」。
空所部は「『 B 』の世界」であり、直前に「はっきりとものを言わないで、聞き手に推測させることを好む」とある。従って、「答え」は(ウ)の「以心伝心」だとすぐに判別できる。
本校では「四字熟語」が頻出だ。本年度はさほど難解ではないが、年度によっては相当な曲者もあるので、的確に習得しておく必要がある。
<時間配分目安:1分以内>
[問九] 「本文内容合致の選択肢」(5択)。
「本文の内容と合致するもの」を答える。「本文内容合致」の設問では、闇雲に「本文全部」と「照合」していっても成算がないので注意すること。
「本文」は「論説文」なので、「内容合致」=「論旨合致」と捉えることが重要だ。では、「論旨」が端的にまとめられているのはどこか?
「論説文」は基本的に「頭括」「尾括」「双括」のいずれかだ。そして、「本文」は「頭括型」だと判別できるはずだ。つまり、「序論部分」に「論旨」がまとめられている。「序論」は「本文冒頭」の2つの「形式段落」だと判断可能なので、「本文全部」ではなく、その部分の「内容」だけと各選択肢を「照合」していきたい。
各選択肢を概括すると、(イ)(ウ)(エ)(オ)は「日本語」や「日本人」に特定しての説明であるのに対して、(ア)だけが「言語一般」についてだと分かる。つまり、「2択」になる。
「序論」を確認すると、要は「思考における言語の重要性を表す『言語相対性仮説』」について述べており、「日本語」や「日本人」に限定せず、「言語一般」についての説明だと判断できる。
(ア)の「内容」は「言語相対性仮説」とも合致している。よって、「答え」となる。「一発消去」だ。
「論説文」の「内容合致」=「論旨合致」、徹底的に活用せよ。
尚、「小説」での「内容合致」(本年度も大問三の[問九]にある)は「本文全体」との「照合」が不可欠となってしまうので、「戦術」としては「後回し」若しくは「捨て問」とすること。
<時間配分目安:2分半>
【大問三】小説
- 時間配分:14分
ひとりの女性の愛と覚悟を描き、生きることの意味を問いかける傑作長篇。
以前にがんを患い、手術によって快復した「滴(しずく)」は外科医の仕事に復帰した。結婚10年目にして妊娠したことを知り、夫の「良介」と共に日々の仕事に追われていた。本文は、執刀を終えた「滴」が患者の妻と話す場面。内容は特に難解ではないが、「心情」などの読み取りでやや苦心するかも知れない。以下、いくつか確認する。
[問一] 「心情説明選択肢」(4択)。
傍線部(1)「わたしも今、モモが欲しい」について、「この部分に込められた『わたし』の気持ち」を答える。
先ずは「原意消去」をしたいが、ここだけでは「モモ」の「原意」が不明だ。直前直後から捉えたい(「小説」では「同一場面の直前直後に根拠あり」が「解法」の大原則)。
8行前から、「モモ」は「時間を返してくれる女の子」だと分かる。そして、傍線部の直前には「誰か彼らに、時間を返してやれないものか」とある。つまり、「彼らに時間を返して」あげたいが、「わたし」自身はそれができないので「モモが欲しい」と「わたし」は「今」思っているわけだ。
各選択肢の「文末」を確認する。
(ア)「無力感にとらわれている」、
(イ)「絶望的な心理状態を思い出している」、
(ウ)「決意を新たにしている」、
(エ)「癒やされたいと願っている」。
どうか?
「彼らに時間を返してあげたいが、『わたし』自身はできない」と「今」思っているのだから無論、(イ)(ウ)(エ)は「消去」だと判別できるはずだ。(ア)は他の部分の説明も特に誤ってはいないので、「答え」になる。「心情説明」でも、やはり「原意」にこだわっての「消去」が肝要だ。
<時間配分目安:1分半>
[問二] 「理由説明選択肢」(4択)。
傍線部(2)「こう耳打ちされている」について、「『耳打ち』という表現を用いた理由」を答える。
当然、「原意消去」だ。「原意」から「直接的理由」として結びつかないものを「消去」する。
「耳打ち」=「相手の耳に口を寄せて、こっそりと話すこと」。
各選択肢の「文末」は、
(ア)「強調している」、
(イ)「念押ししている」、
(ウ)「内密にしている」、
(エ)「周囲に気を遣っている」。
即座に(ウ)(エ)以外は「消去」だと判断できなくてはいけない。
次に「耳打ち」された内容だが、直後から「収入源でもある」「患者をこの病院で捕まえておくようにという上司からの指示」だと分かる。
従って、「この患者だけを特別扱いすることになる話」とある(ウ)ではなく、「患者ではなく病院の都合を優先させる話」となっている(エ)が「答え」だと判別できるはずだ。「原意」⇒「内容」という「2段階消去」もオプションとせよ。
<時間配分目安:1分半>
[問六] 「語句の空所補充選択肢」(4択)。
本文中の空所 Ⅰ にあてはまる「語句」を答える。
空所部は「そう Ⅰ 声に振り返ってみると、金属のヘッドギアが目に入った」となっている。「そう」という「指示語」があるので開く(「指示語」が出たらすぐ開くこと)。直前の「死んだの、また誰か?」という「セリフ」だ。つまり、空所部はこの「セリフ」に対しての「ト書き」であり、どのような「声の調子」だったのかということになる。
各選択肢の「文末」を確認する。
(ア)「不安でたまらないという」、
(イ)「突っかかるような」、
(ウ)「陽気さを装った」、
(エ)「泣き出しそうな」。
「金属のヘッドギアが目に入った」に着目したい。「セリフ」に対する「ト書き」なのだから、「金属のヘッドギア」という表現に「声の調子」が反映されているはずだ。とすれば、「答え」は(イ)の「突っかかるような」だと判別できる。「小説」では、「セリフ」⇔「ト書き」の相関関係を捉えることが肝要だ。
<時間配分目安:1分>
[問八] 「内容説明記述」(字数指定なし、「20字ほど」の解答欄))。
傍線部(7)「なんだってわかるんだから」について、「何が『わかる』のか」を説明する。
無論、傍線部だけでは考えようがない。「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)で「手がかり」を探す。
傍線部は、がん患者の「モモ少年」を相手に騒ぎを起こした同室の患者「三千男」が、医師の「保井」に言った言葉だと分かる。では、何が「わかる」のか?
直後で、がんが治った「滴」に対して「三千男」が「そんなふうに治るなら、俺だって何だってするけど、もう治らないでしょ?」「後は好きに生きたいんだよ」と語っている。
とすれば、「三千男」は「自分の余命があまりない」ということが「わかる」と読み取れるはずだ。従って、たとえば「自分のがんは治らずもうすぐ死ぬということ。」といった「答え」になる。的確に「解法」を活用して、「記すべき内容」を確定していくこと。
<時間配分目安:2分半>
【大問四】古文
- 時間配分:7~8分
昨年度に引き続き、江戸時代の笑話集の一節。
本文では、「徒然草」の有名な一文をネタにした「言葉遊び」(ダジャレ)になっている。「古文の基礎問題」がほとんどだが、中には「文脈」からの読み取りが必要なものもある。以下、2問だけ検討しよう。
[問一] 「語の空所補充選択肢」(4問/4択)。「文語文法」。
本文中の空所A~Dにあてはまる「語」を答える。「助詞」の「基本問題」だ。
各空所を確認する。
「いまA最中じゃ」、無論、「主格」で「答え」は選択肢(ア)「が」、
「花見Bするさうな」なので、「答え」は「目的語」となる(エ)「を」、
「それはいつの時代B、蚤が月見花見をしたぞ」とあるので、「答え」は「補語」となる(ウ)「に」、
「吉田の兼好B時代にてあった」なので、「答え」は「修飾語」となる(イ)「の」ということになる。
「文語文法」、特に「助動詞」「助詞」「敬語」は確実に定着させておきたい。
<時間配分目安:1分>
[問二] 「仮名遣いの変換記述」。
傍線部(1)「さうな」を「現代仮名遣い」に改める。誰もが知っていなくてはいけない「歴史的仮名遣い」の基本。「母音」と「母音」が直接つながった場合の変換だ。
「さ・う・な」=「Sa・u・na」⇒「a・u」→「ou」=「Sou・na」⇒「そうな」が「答え」となる。
同様に、「i・u」→「yÛ」、「e・u」→「yÔ」となる。
また、「語頭」以外の「は・ひ・ふ・へ・ほ」⇒「わ・い・う・え・お」も常識だ。
<時間配分目安:30秒>
【大問五】漢文
- 時間配分:5分
「Ⅰ」の「鹽鐵論」は、前漢の塩や鉄の専売制などを巡る討論会の記録。
「Ⅱ」の「十八史略」は、南宋時代にまとめられた中国の子供向けの歴史読本。
「Ⅲ」の「論衡」は、後漢時代の思想書。
例年同様、「漢文の基本問題」ばかりなので、一気呵成に仕上げたい。以下、2問だけ確認する。
[問一] 「返り点記入」。
「Ⅰ」の傍線部「若 蟬 之 不 知 雪」に、「書き下し文」の「蝉の雪を知らざるがごとし」を参考にして「返り点」を記入する(「読み仮名」「送り仮名」は不要)。
「蟬」→「之(の)」→「雪(ヲ)」→「知(ラ)」→「不(ざルガ)」→「若(ごとシ)」の順だ。
よって、「答え」は「若二 蟬 之 不一レ 知レ 雪」(*「二」「一レ」「レ」が「返り点」)になる。
「返り点」は十分に練習しておくこと。
<時間配分目安:1分以内>
[問二] 「書き下し文記述」。
「Ⅱ」の傍線部「如(ごとシ)二 白 駒(ノ) 過(グルガ)一レ 隙(ヲ)」(*「二」「一レ」は「返り点」)を「書き下し文」にする。「返り点」の付されていない文字から読み、「レ点」は下→上、「一二点」は「一」→「二」の順に読む。
従って、「白駒の隙を過ぐるがごとし」が「答え」となる。
「返り点」「書き下し文」は「基本のキ」なので、しっかりと習得しておくことが肝要。
尚、「書き下し文」では「付属語(助動詞・助詞)」を「平仮名」とすること。
<時間配分目安:1分以内>
【大問六】総合的知識問題
- 時間配分:3分
「総合的知識問題」。「敬語」「口語文法」「熟語の構成」「文学史」、例年のように本校らしい多彩な「知識問題」。ただ、平易なものがほとんどで短時間に「全問正解」としたい。一部検証する。
[問一] 「敬語用法の選択肢」(4択)。
示されている4つの文の傍線部の「敬語」の中で、「尊敬語」を答える。「敬語」の基本だ。
各文を確認する。
(ア)「泊まります」=「泊まる」の「丁寧語」、
(イ)「宿泊なさる」=「宿泊する」の「尊敬語」、
(ウ)「お運びいたします」=「運ぶ」の「謙譲語」+「丁寧語」、
(エ)「伺います」=「行く」の「謙譲語」+「丁寧語」だ。
よって、「答え」は(イ)となる。尚、「敬語」では「敬語動詞」についても必修だ。
<時間配分目安:30秒>
[問二] 「文法的説明の選択肢」(2問/15択)。
示されている文中傍線部の語の「文法的説明」を答える。「口語文法」の基礎、「用言」の「活用」に関する問題。「動詞」については「活用の種類」も判別する必要がある。傍線部を確認する。
(1)「金や設備が無くても出来る」=形容詞「無い」の「連用形」(尚、「ない」の場合は「助動詞」の可能性もあるので要注意)⇒「答え」は(サ)「形容詞の連用形」、
(2)「勧められていた」=「マ行下一段活用」の動詞「勧める」の「未然形」(「下一段活用」なので「連用形」も「勧め」だが、「られ」=「られる」は「未然形接続」)⇒「答え」は(キ)「下一段活用動詞の未然形」となる。
本校では、「付属語(助動詞・助詞)」も含め、「口語文法」の徹底した習得・定着が必須だと心得よ。
<時間配分目安:1分>
[問三] 「熟語の構成の選択肢」(2問/6択)。
(1)「採決」・(2)「出納」と「同じ構成のもの」を答える。
中学入試では定番の「熟語の構成」、が高校入試となると抜け落ちているかも知れぬ。
(1)は「『決』を『採(る)』」=後の漢字が前の漢字の目的語になっている⇒「答え」は(エ)「起工」、
(2)は「『出』⇔『納』」=前の漢字と後の漢字が対義語になっている⇒「答え」は(カ)「始末」だ。
尚、(ア)「周知」と(オ)「寛容」=前の漢字が後の漢字の修飾語、(イ)「収拾」=前の漢字と後の漢字が類義語、(ウ)「否決」=前の漢字が後の漢字を打ち消している。
多種多様な知識問題に対応できるようにしておくこと。
<時間配分目安:1分>
攻略ポイント
●「ハイパーな時間勝負」となる。どう「攻略」するか? 「解答順」が最重要。「得点できる問題」を「時間切れ」で逃すのは最悪だ。「現代文」「古文」「漢文」「漢字」「総合的知識問題」、どの大問から解くか?
「漢字」「知識」を最初にこなすのは当然だが、他は自分自身の特性に応じて事前に決めておくこと。要は「取れる問題を確実に押さえる」ことだ。逆にいえば「捨て問」という覚悟も求められる。「国語」の「合格者平均」(4年間平均で69%)は3科合計の「合格者最低」(4年間平均で56%)を大幅に上回る。従って、「国語」での「失点」は致命的になる。
●「説明記述」の対策は?
実直に「記述」の「練習」を続ける他はない。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。「内容」から優先度を特定し、高いものから積み上げていく。徹底的に練習することが必要だ。
●「多様な設問内容」にはどう対処するか?
いかに「解法」を的確に用いるかがポイントだ。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが肝要。そのためにも、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておく。
●配点比率が高い「総合的知識問題」も無論、侮れない。「高度な語彙力」は勿論、「文法」「文学史」等まで網羅した「あらゆる知識」が必要なので、独自に習得していくことが重要だ。
●「古文」の「攻略法」は? 重要な「古文単語」の定着はもちろんだが、「内容理解」も求められるので「基礎的文語文法」は押さえておきたい。また、「漢文」でも「訓点」「書き下し文」などの基礎は必ず定着させておくこと。
●試験時間は50分。問題文は「現代文」だけでも6500字程度。無論、速く正確に読み取ることが求められる。分速700字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。