中央大学高等学校 入試対策
2021年度「中央大学高等学校の国語」
攻略のための学習方法
解法
特有の「説明文問題」だけではなく、「選択肢」「抜き出し」「空所補充」、その他の問題も含め、「中附の国語」で勝利を手中に収めるための基本は、何度も指摘している通り、いかに「解法」をうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。
それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
大学入試にも匹敵、否、それ以上の問題文を読まなくてはならない。全体で15000字程度。解答時間は60分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。中附に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速750字以上(できれば800字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「文法」なども含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「中附の国語」(直接出題だけではなく、「説明文問題」等でも不可欠)。いかなる「攻略法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ、かも知れない。が、そこで諦めてしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。
先ずは、「己が実力」を悟ることだ(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「問題文理解」にも不可欠だ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
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2021年度「中央大学高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「漢字問題」、小問なし(「書きとり」と「読み」の各5問)。2分以内で丁寧に終えたい。
大問二は「論説文」、出典は大庭健「いま、働くということ」(文字数約3200字)。小問は全8問(解答数13)。「選択肢」(「空所補充」、「組み合わせ」、「正誤判別」、「本文内容合致」あり)、「抜き出し」(2問)、「説明記述」(「40字以内指定」1問)、問題文は4分程度で読み切り、設問を14~15分で解きたい。
大問三は「小説」、出典は鷺沢萌「カミン・サイト」(文字数約2600字)。小問は全9問(解答数9)。「選択肢」、「抜き出し」(2問。「場面分け」あり)、「漢字記述」(2問。総合的知識問題)、「説明記述」(「20字以内指定」1問)、問題文は3分半ほどで読み切り、設問を12~13分で解きたい。
大問四は「古文」、出典は作者不詳「当世はなしの本」(文字数約300字)、小問は全4問(解答数6)。「選択肢」(「空所補充」、「文法」)、「仮名遣い」、「説明記述」(2問。ともに「字数指定」なしで、「30字ほど」の解答欄)。8~9分で解きたい。
大問五は「漢文」、出典は「Ⅰ」が「荘子」(文字数9字)、「Ⅱ」が「孟子」(文字数11字)。小問は全3問(解答数3)。「記述」(書き下し文)、「返り点記入」、「総合的知識問題」(四字熟語)。3分弱で解きたい。
大問六は「総合的知識問題」、小問全3問(解答数3)。「文学史」「口語文法」「表現技法」。2分ほどで解きたい。
【大問一】
- 時間配分:2分以内
「漢字の読み書き」(全10問)。例年よりやや難易度が低い。当然ながら、「全問正解」が必須。注意すべきものだけを挙げておく。(2)「電車のチエンが原因で間に合わなかった」=「遅延」⇒意外と抜け落ちているかも、注意したい。(3)「ヨソオいを新たにして」=「装(い)」⇒「文脈」をしっかりと読み取りたい⇒「装いを新たにする」(=今までの印象を変えるため、外観などを新しくする)という慣用表現で覚えておきたい。(5)「シイタげられてきた民族」=「虐(げられ)」⇒これはやや難解か? 「虐待」「暴虐」などの熟語も確認しておきたい。(9)「資金の工面」=「くめん」⇒「いろいろ手段・方法を考えて手はずを整えること」という意味も押さえたい。本校が求める「語彙力」に対応せよ。
<時間配分目安:2分以内>
【大問二】
- 時間配分:14~15分
お金のため、自己実現のためという、「仕事」を手段とする感覚が広がる中、「働く意味」を多くの人が実感できなくなっている――実際には私たちは、見知らぬ人々や自然といった「いのち」の連鎖の中で生きているという視点から、「いま、働くことの意味」を問い直している。本文では、人間は「現在」を結節点として「過去」から「未来」への歴史を生きているという点で、外界からの刺激に反応して常に「現在」を生きている動物とは根本的に異なっていると論じている。分かりやすい論述で、内容は難なく理解できる。いかにも本校らしく、多種多様な小問が並んでいる。迅速に解き進めていきたい。以下、いくつか検討してみる。
[問一] 「内容説明選択肢」(4択)。傍線部(1)「動物は、うそがつけない」の「説明」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここは「内容説明」なので、「うそがつけない」の「原意」と結びつかない「内容」を「消去」したい。各選択肢の「文末」と照合していく(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。(ア)「仲間を欺く行動を取ることができないということ」、(イ)「相手の意図をくむことができないということ」、(ウ)「特定の行動しかできないということ」、(エ)「事実と異なる行動を取る必要がないということ」。さあ、どうだろうか? 「うそがつけない」=「不可能」なのだから、「必要がない」は即「消去」できなくてはいけない。また、「うそ」なので、「相手の意図をくむ」も「消去」だと判別できるはず。これで2択だ。次に、「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)でさらなる「手がかり」を確認する。直前に「つまり」という接続詞がある。前の部分の「換言」だ。確認すると、「(動物の行動は)プログラムにしたがって自動的に生じる」といった「内容」が読み取れる。ここから考えると、「周囲の仲間を欺く行動」とある(ア)は「消去」で、「(反応が決められている)特定の行動」となっている(ウ)が残ると判別できる。他の部分の説明を「同一意味段落」で確認する(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。特に誤ってはいないので、「答え」は(ウ)でOK。本問は「2段階消去」だったが、「原意消去」が最優先だと心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[問三] 「空所補充の語の組み合わせ選択肢」(5択)。本文中の空所 A ~ C には「『真』または「『偽』という語が入る」が、その「組み合わせ」を答える。空所前後の「文脈」を確認したい。「いま一頭の小ぶりの天敵が近づいている、としよう。このとき、『テキ、いない』、『テキ、多い』、『テキ、大きい』といった多くの文は、すべて A となる。これらの文は、目下の状況では B となる。しかし、……それらの文が C となるような状況を考えることができる……」となっている。「一頭の小ぶりの天敵が近づいている」のだから当然、「いない」「多い」「大きい」は全て「誤り」で、 A と B はともに「偽」が入ると判断できるはずだ。この段階でそうした「組み合わせ」になっているのは選択肢(ウ)だけなので、「答え」だと判別できる。念のために確認すると、(ウ)の C は「真」。「 C となるような」=現状は「 C ではない」のでOKだ。「組み合わせ選択肢」では、「文脈」から分かりやすい「内容」をつかみ、一気に「消去」してしまうことが肝要だ。
<時間配分目安:全問で1分弱>
[問五] 「条件付き理由説明記述」(「30~40字以内」指定)。傍線部(3)に「動物は、その時点ごとに外界からの刺激に反応して生きている。かれらは、つねに現在を生きているにとどまる」とあるが、それは「なぜか」を「三十字以上四十字以内」で説明する。「条件」は「人間との違いを踏まえて説明する」こと。「条件」を意識して「同一意味段落」から「理由」を読み解いていく。前段落で「人間の言語は実際には存在しないものについての思考を可能にする」と述べられている。その上で、「目の前で実際に起きてはいないこと、すなわち過去・未来のことについて、動物は考えることはない」と説明されている。「過去・未来を考えない」⇒「だから」⇒「つねに現在を生きているにとどまる」と結びつくと判断できるはずだ。あとは、「指定字数」に応じて「過不足なく」まとめていけばいい。たとえば、「言語を持たないので、目の前で起きていない過去・未来について考えることはないから。」(40字)といった「答え」になる。「条件」は「手がかり・ヒント」でもあると心得よ。
<時間配分目安:2分強>
[問六] 「空所補充の語句選択肢」(全3問/5択)。本文中の空所[ Ⅰ ]~[ Ⅲ ]にあてはまる「適切な語」を答える。選択肢は「接続詞」と「副詞」、本校に限らず定番の問題だ。「接続詞」では「逆接」以外には十分に注意しなくてはいけない。「逆接」以外だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「文脈」を確認する必要がある。また、段落冒頭の「接続詞」は前段落全ての内容を受けているので注意すること。各空所の「答え」を確認してく。[ Ⅰ ]には「論じる必要のないほど、はっきりしているさま」を表す「副詞」の(オ)「もちろん」、[ Ⅱ ]には「逆接」の「接続詞」である(イ)「しかし」、[ Ⅲ ]には「換言」の「接続詞」である(ア)「すなわち」がそれぞれあてはまる。「接続詞」「副詞」などの「空所補充」は必出だ。失点は致命傷になると心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[問七] 「具体的説明の抜き出し」(「15字以内」指定)。傍線部(4)の「特定の行動プログラムがオンになる」を「具体的に述べている箇所」を「十五字以内」で抜き出して答える。「抜き出し」では、「抜き出すべき内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞っていくことが鉄則。「内容」はもちろん、「オンになる具体的な行動」だ。「範囲」は当然、「同一意味段落」になる。ここでは傍線部の2段落前から次段落までだと判断できる。広い「範囲」なので、さらに絞り込みたい。「傍線部(空所部)一文一部の法則」で確認すると、直前に「日照時間や気温などをつうじて秋が深まる気配に接したら」とある。ということは、「秋が深まる」と「オンになる行動」になる。近くから探していく。すると、3行前に「秋の深まりいく気配に接したら冬眠の準備行動がはじまる」という部分がある。「内容」は全く問題ない。「字数」を考慮すると、「答え」は「冬眠の準備行動がはじまる」(12字)だと分かるはずだ。「抜き出し」では「内容」と「範囲」の絞り込みがポイントだ。尚、「抜き出し候補」はひとつとは限らないので、必ず「範囲」の全て隈なく、そして漏れなくさがすこと。
<時間配分目安:1分強>
【大問三】
- 時間配分:12~13分
どんな人にも光を放つ一瞬がある。その一瞬のためだけに、その後の長い時間をただただ過ごしていくこともできる――間違った場所に戸惑い、溜息(ためいき)しつつ、何かをつかんだ輝きの一瞬、喜びの涙がこぼれ、海中に放たれた鳥のように生きてゆく……。「大好きな仲間たち」の作品集の1篇。会話のやりとりが中心で、内容は分かりやすい。ただ、「心情」の読み取りに若干苦心する問題があるかも知れぬ。以下、いくつか確認しよう。
[問二] 「理由説明選択肢」(4択)。「洋子」が、傍線部(2)「言い訳のように答えた」、その「理由」を答える。先ずは「原意消去」から。ここは「理由説明」なので、各選択肢の「文末」が「言い訳のように答えた」ことの「直接的理由」として結びつかないものを「消去」したい。照合する。(ア)「きまりが悪かったため」、(イ)「知られたくないと思ったため」、(ウ)「恥ずかしく思ったため」、(エ)「後悔しているため」。どうだろうか? 「言い訳」のように「答えた」のだから、「きまりが悪かったため」以外は「消去」できなくてはいけない。「同一場面」を確認する(「小説」では「同一場面の直前直後に手がかり・ヒントあり」が「解法」の大原則)。他の部分の説明も特に誤ってはいない。したがって、「答え」は(ア)だ。結果として「一発消去」ではないか。畏るべし! 「原意消去」。必ず使いこなせるようにしておきたい。尚、上記の「解法」では用いなかったが、「時制による消去」も使える。「答えた」と「過去形」で問われているので、「後悔している」と「現在形」で説明しているものは不適切で、それだけで「消去」できるのだ。覚えておきたい。
<時間配分目安:1分強>
[問六] 「換言説明選択肢」(4択)。傍線部(6)「こんなふうにして大学に入ってきた」とは「どういうことか」を答える。ここは典型的な「指示語換言」なので、先ずは「指示語」を開いてから「原意消去」する。直前の「洋子」と「浩行」との会話のやりとりから、「こんな」=「推薦入学で大学に入った洋子の面接試験のときのやりとり」だと読み取れる。各選択肢の「文末」を確認する(ただ、「文末」の最後は全て「入学してきたということ」なので、その前の部分)。(ア)「面接試験を経験して」、(イ)「不真面目な態度で臨み」、(ウ)「面接試験を経て」、(エ)「臨機応変な対応で合格し」。「面接試験」がポイントなのでから当然、(ア)(ウ)以外は「消去」でいいはずだ。残りは「2択」。そして、そもそも「面接試験のときのやりとり」が「会話」での「話題」になっているのだから、「志望動機も準備しないまま」と説明されている(ウ)は「消去」で、「あとで笑い話の種になるような」となっている(ア)が「答え」だと判別できる。他の部分の説明も特に誤ってはいないのでOKだ。尚、本問のように直接的に「指示語」が問われている場合でなくても、「指示語」が出たら即開くこと肝要だ。
<時間配分目安:1分半>
[問七] 「空所補充の漢字記述」(全2問/各「漢字1字」指定/複数完全解答)。「総合的知識問題」。「四字熟語」。本文中の空所Ⅰ・Ⅱに「入る漢字」をそれぞれ答える。空所前後は「名前をひねり出すのにさえⅠ苦Ⅱ苦した様子」となっている。ここだけですぐに「答え」が出なくてはいけない基礎的な「四字熟語」だ。無論、「四苦八苦」、よって、Ⅰ=「四」・Ⅱ=「八」だ。本問は平易だったが、本校では「四字熟語」は当然のこと、「慣用句」「故事成語」「ことわざ」等も完全定着させておくことが不可欠だ。
<時間配分目安:30秒弱>
[問八] 「場面分けの抜き出し」(「始めの5字」指定)。「この話を時間の流れに沿って三つの場面に分けた」とき、「二つ目の場面の始めの五字」を抜き出して答える。「小説読解」の基本である「場面分け」だ。そして、「場面分け」の基準となるのは先ずは「とき」、その「時間」に沿って分けるという基本的な問題になっている。本文冒頭から確認していきたい。が、戸惑うことは必至だ。なぜなら、「時間の転換」が明示された段落冒頭が見当たらないからだ。慌てずに、改めて本文を概観してみる。すると、全体が「現在①」→「回想」→「現在②」という構成になっていることに気づくはずだ。したがって、「現在①」のあと、「回想」の冒頭からが「二つ目の場面」になるので、「答え」は「あんまり寒」となる。尚、「小説」では、設問を解く前に必ず「場面分け」をしながら「通読」しておくことが不可欠だと心得よ。
<時間配分目安:1分半>
【大問四】
- 時間配分:8~9分
江戸時代半ばにさかんに刊行された「笑話集」の中でも笑いの純度が高いことで知られている作品集。本校の定番ジャンルだ(7年連続で「お笑いネタ」の出題)。本文は、ある寺の飼い犬に隣の寺の宗派の開祖の名前をつけたことで騒動が巻き起こるという笑い話だ。例年と同じように、「古文の基礎的知識」が問われている。特に本年度は例年と比べて平易だ。2問だけ検討する。
[問二] 「条件付き理由説明記述」(「字数指定」なし。「30字ほど」の解答欄)。傍線部(1)「憎き事かな」について、「憎く思った理由」を説明する。「現代文」同様に前後の「文脈」から、「理由」を読み解いていく。直後に「大事の祖師を犬にする事こそ遺恨なり」とある。「現代語訳」してみる。「大事な開祖を犬にするとは恨めしい」ということだと分かるはず。では、どのような「状況」なのかを「同一場面」で確認する。隣り合っている「法花寺」と「浄土寺」、「法花寺」の飼い犬に「浄土宗の開祖」である「法然」という名をつけて呼んだので、「浄土寺」の僧たちが「憎きことかな」と思ったという「状況」だと読み取れる。よって、たとえば、「隣の寺が、自分たちの大事な開祖の名を犬につけて呼んだから。」(29字)といった「答え」になる。「古文」であっても、「現代語訳」をした上で「文脈」を読み解いていくことが基本になる。
<時間配分目安:1分半>
[問三] 「仮名遣いの変換記述」。傍線部(2)「あはせてくれ」を「現代仮名遣い」に改める。誰もが知っていなくてはいけない「歴史的仮名遣い」の基本。「語頭」以外の「は・ひ・ふ・へ・ほ」→「わ・い・う・え・お」は常識。「答え」は「あわせてくれ」だ。また、「母音」と「母音」が直接つながった場合の変換も知らなくてはいけない。「a・u」→「ou」、「i・u」→「yu(∧)」、「e・u」→「yo(∧)」がある。「仮名遣い」は本校に限らず頻出なので確実に定着させておくこと。
<時間配分目安:30秒>
【大問五】
- 時間配分:3分弱
「Ⅰ」は中国戦国時代の思想家で、「道教」の始祖の一人とされる「荘子」の著書。「Ⅱ」は中国戦国時代の儒学者・思想家で、「性善説」を唱えた「孟子」の言行をまとめた書だ。両書ともに3年連続の出題。「返り点」「書き下し文」といった本校お馴染みの「漢文の基本問題」。一気呵成に得点すべき大問。以下、2問だけ確認する。
[Ⅰ-問一] 「書き下し文記述」(「漢字・仮名交じり文」指定)。「Ⅰ」の傍線部(2)「学(バントスル)二 其(そノ) 所(ヲ)一レ 不(ざル)レ 能(あたハ)レ 学(ブ) 也(なり)」(*「レ」「二」「一レ」は「返り点」。「平仮名」は「読み」、「カタカナ」は「送り仮名」)を、「書き下し文」(漢字・仮名交じり文)に改める。本年度は例年並みの難易度。「不」「也」は「助動詞」なので「平仮名」にすること。「返り点」のない「其」が最初で、次に「学」、そして、「レ」→「レ」→「レ一」→「二」と戻っていく。したがって、「其の学ぶ能はざる所を学ばんとするなり」が「答え」となる。「返り点」「書き下し文」は「基本のキ」なので、しっかりと習得しておくことが肝要。尚、「書き下し文」では「付属語(助動詞・助詞)」を「平仮名」とし、当然、「歴史的仮名遣い」で表記すること(「書き下し文」は「文語」だ)。
<時間配分目安:1分>
[Ⅱ-問一] 「返り点記入」。「Ⅱ」の傍線部「不(ル)如(しカ)仁声之(の)入(ルコトノ)人(ニ)深(キニ)也」に、「書き下し文」の「仁声の人に入ることの深きに如かざるなり」を参考にして、「返り点」を記入する(「読み仮名」「送り仮名」は不要)。「仁声之」→「人(ニ)」→「入(ルコトノ)」→「深(キニ)」→「如(カ)」→「不(ル)」→「也」の順だ。よって、「答え」は「不レ 如二 仁 声 之 入レ 人 深一 也」(*「二」「レ」「一レ」が「返り点」)となる。「返り点」は十分に練習しておくこと。
<時間配分目安:1分>
【大問六】
- 時間配分:2分
「総合的知識問題」。「文学史」(小説「金閣寺」・「潮騒」の作者判別⇒「答え」は「三島由紀夫」)、「口語文法」(助詞「の」の用法判別⇒「答え」は「主格」の[ウ]「朝顔の持っているものは」。他は「連体修飾格」)、そして、「表現技法」だ。例年より難易度は低い。「表現技法」だけを検証する。
[問三] 「比喩表現の判別選択肢」(5択/複数完全解答)。示されている(ア)~(オ)の中で「直喩表現」を含む文を「すべて」答える。「比喩表現」には「直喩(明喩)」と「隠喩(暗喩)」があることは知っているはずだ。前者は「比喩であることを明示する表現」であり、後者は「比喩であることを明示せずに、そのものの特徴を直接他のもので表現する方法」だ。確認する。(ア)「長い間、彼女は僕の光だった」⇒「比喩」を明示する語句はないが、無論、「彼女」≠「光」⇒「隠喩(暗喩)」。(イ)「水を得た魚のように生き生きとしていた」⇒「比喩」を明示する「ように」という助動詞がある⇒「直喩(明喩)」。(ウ)「疾風(はやて)のごとく走り抜けていった」⇒「比喩」を明示する「ごとく」という助動詞がある⇒「直喩(明喩)」⇒「ごとし」は「文語表現」なので要注意。(エ)「ランドセルが真横を通り過ぎた」⇒そもそも「比喩表現」ではない。(オ)「ひまわりが太陽に向かって立っていた」⇒これまた「比喩表現」ではない。よって、「答え」は(イ)(ウ)になる。本校では、「表現技法」はもちろん、「付属語(助動詞・助詞)」も含め「口語文法」の徹底した「理解・習得・定着」も必須だ。
<時間配分目安:1分弱>
攻略のポイント
●「ハイパーな時間勝負」となる。どう「攻略」するか? 「解答順」が最重要。「得点できる問題」を「時間切れ」で逃すのは最悪だ。「現代文」「古文」「漢文」「漢字」「総合的知識問題」、どの大問から解くか? 「漢字」「知識」を最初にこなすのは当然だが、他は自分自身の特性に応じて事前に決めておくこと。要は「取れる問題を確実に押さえる」ことだ。逆にいえば「捨て問」という覚悟も求められる。「国語」の「合格者平均得点率」(2020年度までの6年間平均で72.7%。昨年度は74.5%)は、3科合計の「合格者最低得点率」(同6年間平均で59.6%)を大幅に上回る。したがって、「国語」での「失点」は致命的になると肝銘せよ。
●「説明記述」の対策は? 実直に「記述」の「練習」を続ける他はない。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。「内容」から優先度を特定し、高いものから積み上げていく。徹底的に練習することが必要だ。
●「多様な設問内容」にはどう対処するか? いかに「解法」を的確に用いるかがポイントだ。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが肝要。そのためにも、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておく。
●配点比率が高い「総合的知識問題」も無論、侮れない。「高度な語彙力」は勿論、「文法」「文学史」等まで網羅した「あらゆる知識」が必要なので、独自に習得していくことが重要だ。
●「古文」の「攻略法」は? 重要な「古文単語」の定着はもちろんだが、「内容理解」も求められるので「基礎的文語文法」は押さえておきたい。また、「漢文」でも「返り点」「書き下し文」などの基礎は必ず定着させておくこと。
●試験時間は50分。問題文は「現代文」だけでも7000字程度(本年度は減少して約5800字)。無論、速く正確に読み取ることが求められる。分速800字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。