中央大学杉並高等学校 入試対策
2023年度「中央大学杉並高等学校の国語」
攻略のための学習方法
要約
中杉の「要約問題」や「基本的記述力」の対策は「問題解説」及び上記のとおりだが、その前提としてやるべきことは、「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。
最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 当然、「練習問題」や「過去問」の問題文の「要約」だ。80~100字程度で書いてみる(中杉の典型的な「要約」の練習になる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。
「要約力」は文章の「文章理解力」にもつながるので一挙両得。その際に必要なのは「字数の感覚」を身につけることだ。
書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。
20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「要約問題」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
解法
様々な「読解問題」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。
「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。
「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
大学入試にも匹敵する文字数の問題文を読まなくてはならない。
「現代文」全体で5500字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。
しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。
その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。中杉に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。
練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「中杉の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。いかなる「攻略法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。
先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。
過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。
「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。
日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」は必須のカリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶことはない。
しかしながら、私立の「高校入試」では「本格的な古文」が出題される。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」するしかない。
最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は理解しておかなくてはならない。
そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
2023年度「中央大学杉並高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「漢字の読み書き」(「書きとり」7問、「読み」1問)。
6つの「文章」からの出題。文字数約600字)。小問なし(解答数8)。2分程度で終えたい。
大問二は「情報の整理」。
出典は「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(文字数約140字)と「資料」の「令和3年度 食育白書」(文字数約420字)。小問は全2問(解答数2)。「選択肢」のみ(「語句のつながり」と「資料読み取り」)。3分強で解きたい。
大問三は「古文」、出典は大田南畝「半日閑話」(文字数約500字)。
小問は全5問(解答数5)。「選択肢」のみ(「現代語訳」、「内容解釈」あり)。7~8分で解きたい。
大問四は「論説文」、出典は加太宏邦「そして観光のまなざしだけが残った」を元にした本校作成の文章(文字数約1200字)。「要約記述」のみ(「80~100字以内」指定)。
問題文は1分強で読み切り、設問を10分強でまとめたい。
大問五も「論説文」、出典は筒井清輝「人権と国家――理念の力と国際政治の現実」(文字数約2900字)。
小問は全8問(解答数12)。「選択肢」(「本文非合致」あり)、「抜き出し」(「空所補充」のみ6問)。問題文は3分半ほどで読み切り、設問を21~22分で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:2分
「漢字の読み書き」(全8問/「書きとり」7問・「読み」1問)。
「日本国憲法第89条」(8年連続で「日本国憲法」) /森鷗外「青年」/藤田政博「バイアスとは何か」/夏目漱石「行人」/「新聞記事」①②、各出典からの出題。本年度は例年よりやや難易度が高いが、できるだけ失点は避けたい。確認しよう。
「日本国憲法第89条」から(a)「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、ベンエキ若しくは維持のため」=「便益」⇒なかなか厄介⇒「都合がよく利益のあること」のことだ/(b)「公の支配に属しないジゼン、教育若しくは博愛の事業」=「慈善」⇒これはいけるはず。「青年」から(c)「セマい町の両側=「狭(い)」⇒問題なし。「バイアスとは何か」から(d)「客観的な測定でクツガエされることがなく」=「覆(される)」⇒高校入試の定番/(e)「ソナわっている」=「備(わって)」⇒これは平易。「行人」から(f)「父の薫陶から来た一種の鑑賞力」=「くんとう」⇒難解か?⇒「すぐれた人格で教え育て上げること」という意味も必須定着だ。「新聞記事①」から(g)「あらゆる手段をコウじて」=「講(じて)」⇒これは基礎。「新聞記事②」から(h)「患者のハンソウ先」=「搬送」⇒これまたできて当然。
本校の求めている「語彙力」はハイパーなので、確実に「語彙力」を磨いておきたい。
尚、「日本国憲法条文」は本校志望者にとって「必修アイテム」だと心得よ(特に「前文」は覚えておけば得点できる)。
【大問二】
- 時間配分:3分強
「情報の整理」。
「大学入学共通テスト」で出題されている「実用的な文章」の読解を意識した設問内容だ。[問1]は「法律」の文章の「文脈読み取り」(語句と語句のつながり)を正確に行う「選択肢設問」、[問2]は「統計資料が付記された行政文書」の「読み取り内容」についての「選択肢設問」だ。ともにいかに正確に内容を読み取り、「選択肢説明」を判別するかが問われている。さほど難しくはないので、丁寧に照合していきたい。
【大問三】
- 時間配分:7~8分
江戸時代後期の随筆。狂歌師で洒落本や滑稽本の作者でもあった大田南畝が、20歳から死の前年の74歳に至るまでに見聞した市井の雑事を記したもの。本文では、「正直者の家来」について記している。4年連続して「近世」の文章であり、典型的な「古文」である「中世」のものよりは読みやすい。しかし、難易度は決して低くはなく本校の「標準レベル」。確実に解いていきたい。以下、2つの「設問」を検討してみよう。
[問3] 「現代語訳の選択肢」(5択)。
傍線部(3)「これにて申し訳あるべし」の「意味」を答える。現代文の「選択肢設問」と同じように、先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。
ここは「現代語訳」なので、「申し訳あるべし」の「原意」と結びつかない「現代語訳」を「消去」していくことになる。各現代語訳の相当部分である「文末」と照合する。
(ア)「許しを乞おう」、(イ)「見つかるにちがいない」、(ウ)「うれしく思うだろう」、(エ)「信じてもらえるだろうか」、(オ)「切腹しなくてはならないだろう」。
さて、ポイントは助動詞「べし」をどう訳すかだ。「当然」・「推量」・「意志」・「可能」・「適当・勧誘」・「命令」の用法がある。「疑問」はないので、「信じてもらえるだろうか」は自動的に「消去」だ。他の訳は「意志」、「当然」、「推量」になっている。「推量」は基本的には「三人称」での用法で、傍線部は前後の「文脈」から「一人称」だと分かる。であれば、「意志」での訳出である「乞おう」がふさわしいと判別できるはずだ。
「申し訳」は口語でも使う語句で「弁解」や「言い訳」のことなので、「許し」に合致している。よって、「答え」は選択肢(ア)だ。
本校の「古文対策」としてはやはり、「助動詞」の「意味・用法」「接続」などの習得定着が不可欠だと心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[問4] 「行動判別の選択肢」(5択)。
二重傍線部(A)「正直なる者」ついて、「この人物の『正直さ』を示す行動」を波線部(ア)~(オ)の中から答える。二重傍線部直前から、「この人物」=「門奈助左衛門の家来」だとすぐに分かる。その「家来」のそれぞれの「行動」をチェックしていく。
(ア)「財布を首にかけ」⇒別に「正直」とは判断できない。(イ)「すべり倒れやうやう宿へ帰り」=「(近くで)滑って倒れてやっとのことで宿へ帰り」⇒ただそれだけのこと。(ウ)「旦那の前へ出で、蔵宿の口上を相述べ」=「旦那の前へ出て、蔵宿でのことを口頭であいさつし」⇒「あいさつ」をしただけだ。(エ)「主人へ委細申しければ、すぐさま右の次第公儀へうかがひければ……」=「主人へ委細を申し出て、すぐに事の次第を役所に問い合わせ申し上げて」⇒なくしたと思っていた「五十両」についての顛末(てんまつ)を全て「主人」に話し、「役所」にも申し出ている。(オ)「(同心の株)当子年までに三代相続す」=「(下級役人になるための権利)をこの子(ね)年までに三代相続する」⇒「三代にわたって相続している」というのは「行動」ではない。したがって、「答え」は(エ)だ。こうした「判別選択肢」では「前後の文脈」を的確に読み取ることが肝要だ。
【大問四】
- 時間配分:10分強
本校の伝統であり最大の特色である「要約問題」。本文では、アニメやテレビドラマなどの「舞台となった地」を実際に訪れる旅は「観光の一つのスタイル」として定着していると論じている。どのように「要約」していくのかを考えながら、しっかりと読み解いていきたい。
[問] 「条件付き要約記述」(「80~100字以内」指定)。
示されている文章を、「八十字以上百字以内」で「要約」する。
「条件」は、①「三文で要約すること」・②「第二文の書き出しを『しかし』、第三文の書き出しを『つまり』で始めること」・③「解答欄の一マス目から書き始め、句読点も一字に数えること」。「条件」に基づいて構成していくことになる。先ずは、本文を概観する。
5つの形式段落で構成されているが、「論説文」の基本である意味段落で捉えると、「1段落」が「序論部」、「2・3・4段落」が「本論部」、「5段落」が「結論部」だと判断できるはずだ。それぞれの要点を確認する。
「序論部」では「アニメやテレビドラマの舞台となった地を訪れることは、観光の一つのスタイルとして定着している」と問題提起し、「本論部」では具体例を挙げながら、「しかし、実際の場所は作品の舞台とは異なり、訪れるこちらが勝手に作った世界像を求めている行為に過ぎない」と指摘した後、「結論部」で「私達は、その地の実態から遠ざかることで観光を成立させているのだ」と「論旨」をまとめていると読み取ることができる。
以上を「要約」することになる。無論、「序論部」+「本論部」+「結論部」という「三文」にする。「過不足なく」まとめていきたい。たとえば、「作品の舞台の地を訪れるのは観光の一つのスタイルとして定着している。しかし、実際には訪れる側が勝手に作った世界像を求めているに過ぎない。つまり、私達はその地の実態から遠ざかることで観光を成立させている。」(100字)といった「答え」になる。
「条件」を的確に踏まえることが、「失点」「減点」を防ぐ最大のポイント。無論、「条件」は「ヒント」でもある。
尚、「論説文」の「要約」は通常、「論旨」中心にまとめていくので、「序論部」+「結論部」+「本論部からの補足説明」といった構成が基本になるということは心得ておくこと。「要約(論述)問題」は本校の定番だ。しっかりと確実に練習しておくことが不可欠だ。
【大問五】
- 時間配分:21~22分
今や政府・企業・組織・個人のどのレベルでも必要とされるSDGsの要である「普遍的人権」の理念や制度の誕生と発展をたどり、内政干渉を嫌う国家が自らの権力を制約する人権システムの発展を許した国際政治のパラドックスについて論じている。本文では、国家の代表者で構成される国際機関で「普遍的人権」が確立され、「人権侵害」で「内政干渉」できるシステムがつくり上げられたのは「歴史の不思議」だと指摘している。「国際政治論」ではあるが、さほど難解な語句もなく内容は理解できるはずだ。「不適切」も含めた「選択肢設問」、「空所補充の語句抜き出し」などの小問がならんでいる。いくつかを検証する。
[問1] 「内容説明選択肢」(5択)。
傍線部(1)の「人道主義的な価値観」についての「説明」を答える。無論、「原意消去」から。
ここは「内容説明」なので、「人道主義的な価値観」の「原意」と結びつかない「内容」を「消去」していくことになる。各選択肢の「文末」と照合する(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。
(ア)「現代の人権理念にも通じる考え方」、(イ)「人権の定義となる考え方」、(ウ)「現代の人権理念においては刷新された考え方」、(エ)「人権を重視する現代になって見出された考え方」、(オ)「現代の人権理念においても重要度が増している考え方」。さて、困った。「価値観」については全て「考え方」と説明され、「人道主義」は「人権」に関する内容で共通している。これでは判別して「消去」することができない。
他の「手がかり」を「傍線部一文一部の法則」で求める(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という読解の基本となる解法)。直前に「弱者救済や平等、正義、自由、尊厳などの人権とも通底する」とある。「人権とも通底する」「人道主義的な価値観」なのだから、「人権理念にも通じる」以外は「消去」だと判別できるはずだ。
念のために、「同一意味段落」を確認する(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。他の部分の説明も特に誤っていないことが分かる。したがって、「答え」は(ア)になる。変則的ではあったが、結果として「一発消去」だ。
「原意消去」は完全にマスターして応用できるようにせよ。
<時間配分目安:2分>
[問6] 「内容説明の空所補充語句抜き出し」(全3問/各「16字」・「3字」・「4字」指定)。
傍線部(6)「この二つの原理は、それぞれに不都合な要素を含んでいる」について、「不都合な要素」を説明した文中の空所(A)・(B)・(C)にあてはまる「適切な語句」をそれぞれ抜き出して答える。示されている「説明文」は、「普遍的人権思想の下では、外集団で人権侵害が起きた場合であっても、(A) 16字 集団は、リスクとコストの高い(B) 3字 な行動を取らなければならなくなる。また、為政者は、外集団で起きた人権侵害に干渉すれば、自らの(C) 4字 を外集団、すなわち外国から妨げられることになってしまう」。
「抜き出し」では、「抜き出すべき内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞っていくことが鉄則だが、傍線部に「指示語」があるので最優先で開いておく(「指示語」が出たら即開くこと)。
直前から、「この二つの原理」=「普遍性原理」と「内政不干渉肯定の原理」だと分かる。そして、「範囲」は「同一意味段落」。「内容」については、傍線部直後で説明されていることがすぐに判断できる。確認する。
「(自分の属する集団に限らず全ての人間に人権が保障されるという)普遍性原理は、内集団の利益を優先するはずの人間にとっては必ずしも好ましいものではなく、特に政治的・経済的に優位な立場にある集団が利他的にこれを受け入れるのは、合理的な判断には思えない……」となっている。この段階で、空所(A)・(B)に「あてはまる語句」が特定できるはずだ。(A)=「政治的・経済的に優位な立場にある(集団)」(16字)、(B)=「利他的(な行動)」(3字)がそれぞれの「答え」だ。次に空所(C)。前記本文の5行後に「(内政干渉肯定の原理は)為政者の権力行使を外から抑制するものであり」とあるので、(C)=「権力行使(を外国から妨げられる)」(4字)が「答え」だと判断できる。
尚、「抜き出し候補」はひとつとは限らないので、必ず「範囲」の全てを探すことが重要。
<時間配分目安:全問で3分強>
[問7] 「内容説明選択肢」(5択)。
傍線部(7)「歴史の不思議」について、その「不思議さ」の「説明」を答える。
「不思議さ」の内容を問われているので、流石(さすが)にここでの「原意消去」は無理だ。何が「不思議」なのかを「同一意味段落」から読み解いていきたい。
直前から、「国家の代表者で構成される国際機関を中心に、国家や権力者にとっては不都合極まりない普遍的人権が確立され、人権に関する問題で内政干渉が可能なシステムが作り上げられてきたこと」だと読み解ける。ここで各選択肢の「文末」を確認する。
(ア)「(普遍的人権が)国際社会に十分に行き渡らないこと」、(イ)「(普遍的人権が)世界中に普及してしまったこと」、(ウ)「(普遍的人権が)普及すると支障のある立場の人たちによって進められてきたこと」、(エ)「(普遍的人権によって)解消されたはずの内集団と外集団の区別が、まだ社会の根底に残っていること」、(オ)「(普遍的人権が)依然として理論的な可能性に留まったままであること」。当然ながら、(ウ)以外は「消去」できなくてはいけない。「同一意味段落」を確認して、他の部分の説明も特に誤っていないことが分かる。よって、「答え」は(ウ)でOKだ。
本問のように単純な「原意消去」ができないものもあるが、最初に「原意消去」を試みることが大原則だ。
<時間配分目安:2分半>
攻略のポイント
-
●「要約(論述)問題」。本校では避けては通れない関門だ。いかに「攻略」するか?
「要約」の前提として当然、「記述力」を培う必要がある。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。「内容」から優先度を把握し、高いものから積み上げていく。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるようにしたい。
「要約」では「80~100字程度」の「字数指定」なので、4~5つ程度の「要素」でまとめることに慣れること。
「国語」の「合格ライン」は7割台半ばで(近年の「合格者平均得点率」より推定)、「英語」、「数学」と比べてやや高い傾向にある。配点の大きい「要約(論述)問題」(本年度は12点)での「失点」や「減点」は合格を左右すると心得よ。●4年連続で出題された「情報の整理」は、「大学入学共通テスト」で出題されている「実用的な文章」の読み取りだ。当然、来年度以降へ向けても準備は不可欠。
●「総合的知識問題」も無論、侮れない。「高度な語彙力」だけではなく、「あらゆる知識」が問われる。独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが重要だ。学校や塾での学習だけでは不十分なので、「独習」は欠かせない。
●その他の問題にはどう対処するか? いかに、「解法」を的確に用いるかがポイント。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが重要だ。そのためにも、基本的「解法」を完全に習得し、的確に応用できるようにすること。それによって、「得点力」が安定する。
●「古文」の「攻略法」は? 重要な「古文単語」の定着はもちろんだが、「内容解釈」も求められるので「助動詞の用法・接続」などの「基礎的文語文法」は押さえておきたい。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は「現代文」だけで4000字以上(本年度は昨年度とほぼ同じで約5800字)。無論、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。