中央大学杉並高等学校 入試対策
2018年度「中央大学杉並高等学校の国語」
攻略のための学習方法
要約
中杉の「要約問題」や「基本的記述力」の対策は「問題解説」及び上記のとおりだが、その前提としてやるべきことは、「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。
最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 当然、「練習問題」や「過去問」の問題文の「要約」だ。80~100字程度で書いてみる(中杉の典型的な「要約」の練習になる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。
「要約力」は文章の「文章理解力」にもつながるので一挙両得。その際に必要なのは「字数の感覚」を身につけることだ。
書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。
20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「要約問題」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
解法
様々な「読解問題」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。
「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。
「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
大学入試にも匹敵する文字数の問題文を読まなくてはならない。
「現代文」全体で5500字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。
しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。
その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。中杉に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。
練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「中杉の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。いかなる「攻略法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。
先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。
過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。
「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。
日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。
また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」は必須のカリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶことはない。
しかしながら、私立の「高校入試」では「本格的な古文」が出題される。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」するしかない。
最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は理解しておかなくてはならない。
そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
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2018年度「中央大学杉並高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「総合的知識問題」。小問は全2問(解答数10)。「漢字の読み書き」(6つ「文章」や「詩」からの出題。文字数約780字)、「現代仮名遣いの正誤判別」。3分程度で終えたい。
大問二は「古文」、出典は八島定岡(岳亭春信)「猿著聞集」(文字数約590字)。小問は全5問(解答数6)。「選択肢」(「内容合致」あり)、「抜き出し」。10数分で解きたい。
大問三は「論説文」、出典は本校作成(文字数約840字)。「要約記述」のみ(「80~100字以内」指定)。問題文は1分半ほどで読み切り、設問を10数分でまとめたい。
大問四も「論説文」、出典は雑誌「エコノミスト」(2017年3月14日号)掲載の佐藤真行「外部不経済の解消で環境問題解決を」(文字数約2700字)。小問は全8問(解答数13)。「選択肢」(「複数完全解答」、「具体例判別」あり)、「抜き出し」(「空所補充」あり)。問題文は3分半ほどで読み切り、設問を20分弱で解きたい。
【大問1】総合的知識問題
- 時間配分:
小問(1)は、「日本国憲法第97条」(3年連続での「日本国憲法」からの出題。チェックせよ!)/夏目漱石「夢十夜」/中原中也「山羊の歌」/丸山圭三郎「言葉と無意識」/宮崎駿「折り返し点 1997~2008」/平成29年の「新聞記事」、各出典からの「漢字の読み書き」。
(2)は「現代仮名遣いの正誤判別選択肢設問」。(1)は昨年度と比較して平易となり、例年並みの難易度。(2)は普段はほとんど意識していないはずの「現代仮名遣い」、「中学入試」ならともかく「高校入試」では、「意表を突く問題」だ。本校では時折、こうしたトリッキーな出題がある。以下、いくつか確認する。
[(1)] 「漢字の読み書き」(全8問/「書きとり」6問・「読み」2問)。本年度はできれば「全問正解」したい。
分かりづらいものだけ確認しておく。
(a)「侵すことのできない永久の権利としてシンタクされたもの」(日本国憲法第97条)=「信託」⇒昨年度も出題されている(「日本国憲法前文」の文言として)、
(d)「暁の星」(夢十夜)=「あかつき」⇒難易度は高くないが、抜け落ちている可能性あり、(f)「そのツド」(言葉と無意識)=「都度」⇒これは当然、押さえているはず、
(g)「希望の塊」(折り返し点 1997~2008)=「かたまり」⇒「送り仮名」がないので読みづらい、
(h)「日のナゴり」(平成29年の「新聞記事」)=「名残(り)」⇒「仮名」で表記されると判別が難しい。
本年度だけの難易度で判断してはいけない。実は、本校の求めている「語彙力」はハイパーだ。確実に「語彙力」を磨いておきたい。尚、「日本国憲法条文」は「本校対策」の必須となったと心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[(2)] 「現代仮名遣いの正誤判別選択肢」(複数解答/5択)。
示されている(ア)~(オ)の組み合わせ(それぞれ3つの文)の中で、傍線部の「現代仮名遣い」が「すべて正しいもの」を「二つ」答える。「現代仮名遣い」の「正誤判別」などはできて当然のはずだが、いつもは確認することもないので、意外と落とし穴になっているかも知れない。
チェックしてみる。
(ア)の「やむおえず」=不適切⇒正しくは「やむをえず」、
(ウ)の「作業がとどこうる」=不適切⇒正しくは「とどこおる」、
(オ)の「舌つずみ」=不適切⇒正しくは「したつづみ」。
よって、「答え」は(イ)と(エ)だ。昨年度は、「みゃくみゃく」「じゃんじゅん」「ふつふつ」「ばくばく」といった「畳語」が出題された。
例年、【大問一】の[(2)]はこうしたトリッキーな出題が多い。本校の「総合的知識問題」での鬼門となる恐れがあるので、幅広い「語彙力」を磨いておく必要がある。
<時間配分目安:1分半>
【大問2】古文
- 時間配分:
江戸時代後期の随筆。浮世絵師にして戯作者でもあった作者による「珍談・奇談」。本文は巻之一で、長門の国の「水井折兼」という人物が、山で「天狗」に会った不思議なエピソードが綴(つづ)られている。「現代語訳」、「会話部分特定」、「内容解釈」、「本文内容合致」などの「古文」の多用な「基本問題」が並ぶ。以下、いくつか検討してみよう。
[問1] 「現代語訳の選択肢」(5択)。
傍線部(1)「山雀、目白の小鳥を得ることおもしろければ」について、「現代語訳」を答える。「現代文」と同様に、「古文」でも「選択肢設問」は「消去法」が原則。そして、先ずは「原意消去」を試みることも同じだ(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。
ここでは、傍線部文末の「ば」に着目したい。「接続助詞」だ。「原意」は、「未然形接続」なら「順接仮定条件」(~ならば)、「已然形接続」であれば「順接確定条件」(~ので・~と)となる。
直前を確認すると、「けれ」となっている(「伝聞過去」あるいは「詠嘆」の助動詞「けり」の「已然形」)。よって、この段階で、選択肢は「~ので」となっている(ア)と(ウ)に絞られる。
次に、「山雀、目白の」に注目したい。「格助詞」の「の」で、ここでは直後に「小鳥を得る」という「述部」があるので、「主格」だと判別できるはずだ。ということは、「山雀が目白などの小鳥を捕まえる」としている(ウ)ではなく、(ア)の「山雀や目白などの小鳥を捕まえる」が「答え」だと判断できる。
「古文」での「現代語訳」や「内容解釈」では、基礎的な「文法」で正誤判別できるものが多いので、「文語文法」は確実に習得しておくことが肝要だ(特に「助動詞」や「助詞」。中でも「ば」は本校に限らず頻出)。
<時間配分目安:1分以内>
[問2] 「会話部分特定の抜き出し」(全2問/各「3文字」指定)。
文中の「1】」と「2】」はそれぞれ「会話の終わり」を示しているが、各会話の「始めの三文字」を抜き出して答える。それぞれの直後には「とて」という「引用」の格助詞があるので、「会話の終わり」であることは明白だ。
では、「始まり」はどこからか? 直前からたどって現代語訳していく。「……持たりし袋を見るに(=持っていた袋を見ると)、中にはものなし(=中には何もない)。こはいづちにか落としけん(=これはどこに落としたのだろうか)、尋ね見よ(=探してみろ) 1】とて」となっている。
したがって、「1】」の「答え」(会話の始まり)は「こはい」だ。もうひとつは、「……かしこ、ここうち見れどもあるべくも覚えず(=あちらこちらを見るけれど、ありそうに思えない)。道の程にて落としたれば、今は獣にぞ食(は)まれたらまし(=道の途中で落としたならば、今は獣に食べられただろうに)。尋ね得べきことかは(=探し出すことができるだろうか、いやできない)2】とて」だ。
よって、「2】」の「答え」(会話の始まり)は「道の程」になる。「古文」では「会話主」が省略されることがほとんどだ。丁寧に現代語訳をして、「文脈」から特定することが求められる。尚、当然ながら「会話主の特定」も頻出問題となってくるので、要注意だ。
<時間配分目安:2問で2分>
[問4] 「語句の空所補充抜き出し」。
文中の空所 A に「当てはまる語句」を抜き出して答える。
空所前後を確認する。「先に失せつる A なりければ(=前に失くなった A であったので)」となっている。
[問2]で確認したように、「持っていた袋の中身をどこかに落としたらしい」のだ。では、何を落としたのか? 「落とした」ことに気づいた直前に、「腹いみじくすきたり(=おなかがとても空いた)」ので、「持たりし袋を見るに(=持っていた袋を見ると)」とあるので、何か「食べ物」だと分かるはずだ。
さらにたどっていくと、その2行前に「乾飯携へてこの山に登り行くに(=乾飯を持ってこの山に登ると)」とある。
なので、「答え」は「乾飯」だ。「文脈」を読み解いて解き進めるということは無論、「現代文」と同じだ。
<時間配分目安:1分半>
【大問3】論説文
- 時間配分:10分
私たちは、「歴史」は事実そのものだと思い込むが、そこには「何が重要か」ということを「選択」する作業が介在している――そもそも「学問」というものは、ある観点から見た世界の叙述に他ならず、世界まるごとを客観的に捉えることなどできないと論じている。どのように「要約」していくのかを考えながら、しっかりと読み解いていきたい。
[問] 「条件付き要約記述」(「80~100字以内」指定)。
示されている文章を、「八十字以上百字以内」で「要約」する。
「条件」は、
①「三文で要約すること」、
②「第二文の書き出しを『しかし』、第三文の書き出しを『つまり』で始めること」、
③「解答欄の一マス目から書き始め、句読点も一字に数えること」。
「条件」に基づいて構成していくことになる。
先ずは、本文を概観する。4つの形式段落で構成されている。
第1段落では「私たちは、歴史が事実そのままを記録した客観的なものだと思い込んでしまう」と述べている。
第2段落は「しかし」で始まり、「歴史というものには、過去に起こった事実の中から何が重要かを選択する作業が介在している」と論じている。
そして、第3段落では「そもそも学問というものは、ある観点から見た世界の叙述に他ならず、世界まるごとを客観的に捉えることなどできない」と展開している。
その上で、最後の第4段落では「歴史は、数多くの記録の中から重要なものをピックアップする歴史家の価値観の中から生まれる」とまとめている。以上を「要約」することになる。
ただし、「歴史」で始まって「歴史」で終わっているいるので、本文の「テーマ」は「歴史」であり、「指定字数」や「条件」を考慮すると、第3段落の内容は割愛すべきだと判断できなくてはいけない。
したがって、「第1段落」+「第2段落」+「第4段落」という「三文」で構成することになる。「過不足なく」まとめていきたい。
たとえば、「私たちは歴史が事実を記録した客観的なものだと思い込んでいる。しかし、歴史には事実の中で何が重要かを選択する作業が介在する。つまり、歴史は多くの記録で重要なものを選択する歴史家の価値観の中から生まれる。」といった「答え」になる。
「条件」を的確に踏まえることが、「失点」「減点」を防ぐ最大のポイント。
無論、「条件」は「ヒント」でもある。
尚、「論説文」の「要約」は通常、「論旨」中心にまとめていくので、「序論部」+「結論部」+「本論部からの補足説明」といった構成が基本になるということは心得ておくこと。「要約(論述)問題」は本校の定番だ。しっかりと確実に練習しておくことが不可欠だ。
<時間配分目安:10分>
【大問4】論説文
- 時間配分:
「環境問題」を経済学的に考える際、市場における各人の個人的な意思決定とは無関係に発生する影響のことである「外部性」は最重要概念のひとつである――そして、「悪影響」である「外部不経済」の典型的な例が「環境問題」だと論じている。
本文では、解決法として課税などの「外部性の内部化」が注目されているが、そのためには、各国が強調して環境保全に取り組んでいかなければならないと指摘している。
「経済学」の論文でありとても難解だが、丁寧な「※注」が施されているのでなんとか理解したい。「複数選択肢設問」や「内容説明空所補充抜き出し」など、本校らしい小問が並ぶ。いくつか検証する。
[問1] 「内容説明の具体例選択肢」(複数解答/5択)。
傍線部(1)の「外部不経済」に該当する「例」を「二つ」答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。
ただし、ここでは「傍線部そのもの」ではなく、その「具体例」が問われているので、「外部不経済」とは何かが分からなければ「消去」不可能だ。そこで、「同一意味段落」を確認する(「論説文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。
直前の2つの段落から、「市場における各人の個人的に意思決定とは無関係に発生する影響(=市場を通じない直接的な相互依存性)」が「外部性」であり、「悪影響」の場合を「外部不経済」と呼ぶことが分かる(「市場」については「※注」で確認すること)。
そうしたことの「例」だということを基準として、各選択肢を確認し「消去」する。
(ア)「天候不順で野菜が値上がり」、
(イ)「米の消費量が減り、米農家が減反を迫られる」、
(ウ)「大型スーパーが開店し、周辺の道路に交通渋滞が発生」、
(エ)「長期にわたる列車の運休により、鉄道会社の経営が悪化」、
(オ)「河川敷で行われるバーベキューで生じるゴミ処理費用を、公費で賄う」。
さあ、どうだろうか? (ア)(イ)(エ)は、「市場」の「原理」そのものだとすぐに分かるはずだ。それに対して、「スーパーの開店」と「交通渋滞の発生」、「バーベキューで生じるゴミ処理費用」と「公費」は、「市場での意思決定とは無関係に発生する悪影響」だと考えられる。よって、「答え」は(ウ)と(オ)。「具体例問題」では、「一般論」を的確に「具体論」に置換することが肝要だ。
<時間配分目安:2分半>
[問2] 「換言説明選択肢」(5択)。
傍線部(2)の「自然環境に代表される公共財は個人的意思決定の対象ではない」とは、「どういうことか」を答える。無論、最初に「原意消去」をする。「個人的意思決定の対象ではない」の「原意」と、選択肢の「文末」とが結びつかないものを「消去」していく(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。確認する。
(ア)「個人の能力では難しい」、
(イ)「(環境問題と個人の思惑の間に)相互に依存性がある」、
(ウ)「市場の重要度が高まる」、
(エ)「個人の事情は後回しになる」、
(オ)「個人の意向が関与することはない」。
「個人」の「意思決定」の「対象ではない」のだから、(オ)以外は「消去」できると判別できるはずだ。他の部分の説明も特に誤ってはいないので、(オ)が「答え」だ。「一発消去」だ。「原意消去」、活用すべし。
<時間配分目安:1分>
[問4] 「理由説明選択肢」(5択)。
傍線部(4)「外部性の内部化というアプローチは非常に明快かつ魅力的である」について、「どうしてか」を答える。先ずは「原意消去」だが、ここは「理由説明」なので、各選択肢の「文末」→「だから」→「魅力的である」と、「直接的理由」として結びつかないものを「消去」したい。確認していく。
(ア)「明確にすることができるから」、
(イ)「解消することが可能になるから」、
(ウ)「確認することができるから」、
(エ)「非難することができるから」、
(オ)「負担させることができるようになるから」。
「魅力的」なのだから当然、(エ)(オ)は「消去」だ。この段階で3択だ。次に、「同一意味段落」で「手がかり」を探す。直前に「外部性が引き起こす問題が市場によって解決される」とあり、そのことが傍線部につながっていることが分かる。
残りの選択肢は、(ア)が「環境を改善しなくてはならない理由」、(イ)は「市場の働きによって外部不経済の放置を解消」、(ウ)は「市場原理が保有する能力」となっている。であれば無論、「答え」は(イ)になると判別できるはず。「選択肢設問」では、本問のように「解法」に則しての「段階的消去」が必要となる場合もあると心得よ。
<時間配分目安:2分半>
[問5] 「内容説明の空所補充語句記述」(全3問/各「2字」指定)。
傍線部(5)「森林の持つ外部経済が放置されていた」の説明として示されている文の空所 ① ~ ③ に「当てはまる語句」を、それぞれ「二字」で抜き出して答える。空所前後の「文脈」と傍線部の「同一意味段落」を照合し、各空所に「当てはまる語句」を特定していきたい。
「森林の持つ外部経済とは、森林の持つ ① が住民にもたらす ② のことである」⇒傍線部の段落冒頭に「森林は、……多面的な機能を持っており、流域住民に大きな便益をもたらしている」とある⇒「答え」は、 ① =「機能」、 ② =「便益」だ。
そして、「それ(=森林の持つ外部経済)に対する適切な ③ を支払おうとする動き」⇒次段落に「こうした環境(=森林の持つ外部経済)がもたらす便益に対して適切に対価を支払おうという動き」とある⇒ ③ の「答え」は「対価」となる。
「傍線部内容説明文」についての設問では、「説明文」と「傍線部の同一段落」との「文脈」を読み取って照合することが肝要だ。
<時間配分目安:3問で2分半>
攻略ポイント
●「要約(論述)問題」。本校では避けては通れない関門だ。いかに「攻略」するか? 「要約」の前提として当然、「記述力」を培う必要がある。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。
「内容」から優先度を把握し、高いものから積み上げていく。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるようにしたい。
「要約」では「80~100字程度」の「字数指定」なので、4~5つ程度の「要素」でまとめることに慣れること。
「国語」の「合格ライン」は7割台半ば(過去6年間の「合格者平均得点率」は76.9%)と、「英語」(同69.2%)、「数学」(同62.3%)と比べて圧倒的に高い。
配点の大きい「要約(論述)問題」(本年度は10点)での「失点」や「減点」は合格を左右すると心得よ。
●「総合的知識問題」も無論、侮れない。 「高度な語彙力」だけではなく、「あらゆる知識」が問われる。独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが重要だ。学校や塾での学習だけでは不十分なので、「独習」は欠かせない。
●その他の問題にはどう対処するか? いかに、「解法」を的確に用いるかがポイント。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが重要だ。そのためにも、基本的「解法」を完全に習得し、的確に応用できるようにすること。それによって、「得点力」が安定する。
●「古文」の「攻略法」は? 重要な「古文単語」の定着はもちろんだが、「内容解釈」も求められるので「基礎的文語文法」は押さえておきたい。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は「現代文」だけで4000字以上(本年度は約4300字)。無論、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。