｢漢字の読み書き｣(全８問/｢書きとり｣６問･｢読み｣２問)｡
｢日本国憲法第11条｣(７年連続で｢日本国憲法｣)/｢新聞記事｣①②③/内田百閒｢件(くだん)｣/太宰治｢トカトントン｣/和辻哲郎｢古寺巡礼｣、各出典からの出題｡本年度の難易度は本校の標準レベル。是非とも｢全問正解｣したい。確認しよう｡

｢日本国憲法第11条｣から(ａ)｢基本的人権の享有を妨げられない｣＝｢さまた(げ)｣/(ｂ)｢オカすことのできない永久の権利｣＝｢侵(す)｣⇒定番なので覚えていて当然。｢新聞記事①｣から(ｃ)｢自然からシュウダツ｣＝｢収奪｣⇒｢文脈｣を正しく読み取ること。また、｢奪｣の一画一画を丁寧に。｢件｣から(ｄ)｢そのトタンに｣＝｢途端｣⇒これは基本レベル。｢トカトントン｣から(ｅ)｢ヒソウも厳粛も一瞬のうちに消え｣＝｢悲壮｣⇒これは厄介か？ ｢古寺巡礼｣から(ｆ)｢リンカクの線｣＝｢輪郭｣⇒これは分かるはずだが、｢郭｣を正確に記すこと。｢新聞記事②｣から(ｇ)｢若手のトウヨウ｣＝｢登用｣⇒これは基礎。｢新聞記事③｣から(ｈ)｢拙速だとの批判｣＝｢せっそく｣⇒やや難解か？ ｢できはよくないが、仕事が早いこと｣という意味も押さえておくこと。

本校の求めている｢語彙力｣はハイパーなので､確実に｢語彙力｣を磨いておきたい。
尚、｢日本国憲法条文｣は本校志望者にとって｢必修アイテム｣だと心得よ(特に｢前文｣は覚えておけば得点できる)。

｢情報の整理｣。2021年度から導入された｢大学入学共通テスト｣で出題されるようになった｢実用的な文章｣の読解を意識した設問内容だ。

[問１]は｢説明文･表｣を読み取った上での｢不適切選択肢設問｣、[問２]は｢新聞記事｣の｢要点｣についての｢選択肢設問｣だ。ともにいかに正確に内容を読み取り、｢選択肢説明｣を判別するかが問われている。さほど難しくはないので、丁寧に照合していきたい。

江戸時代後期の随筆集。公家･武家の有職故実、漢字の日本語読みの正誤など、制度文物一般に関して考証している。本文では、武士の｢不忠不義｣について論評している。３年連続して｢近世｣の文章であり、典型的な｢古文｣である｢中世｣のものよりは読みやすい。しかし、難易度は決して低くはなく本校の｢標準レベル｣。確実に解いていきたい。以下、２つの｢設問｣を検討してみよう。

[問１]　｢質問部分特定の選択肢｣(４択)。
傍線部(１)に｢ある問ひて曰く｣とあるが､｢ある人が質問した内容はどこまでか｣を、(Ａ)｣～(Ｄ)｣の中から答える。｢質問｣である以上、｢問い｣としての｢疑問詞｣が必ずあるはずであり、｢質問｣の直後からは｢答え｣が始まっていることになる。そうした点を勘案して各箇所を丁寧に確認していく。
(Ａ)｣～(Ｃ)｣までには｢疑問詞｣がないことが分かるはず。それに対して、(Ｄ)｣の直前には｢いかが｣という｢疑問詞｣がある(｢いかが＝如何｣は｢副詞｣で、ここでは｢どうであるか｣といった意味)。
さらに、直後には｢答へて曰く｣(＝答えて言うことには)とあり、以降で｢答え｣が述べられている。
したがって、(Ｄ)｣が｢答え｣だと判別できる。尚、本問のような｢会話部分の特定判別｣は頻出だ。｢古文｣ではそもそも｢カギカッコ｣はない(問題作成上、付されている場合もある)。さらに｢主語｣が省略されていることも多々あるので、｢会話の区切り｣が判然としない場合が多い。よって、｢引用｣の格助詞｢と｣や｢敬語｣などに着目して判別することになる。

＜時間配分目安：１分半＞

[問２]　｢評価内容の語句抜き出し｣(全２問。ともに｢動詞｣指定)。
傍線部(２)｢両説｣について、｢それぞれどのように浪人を評価しているか｣を、｢動詞｣を抜き出して答える。｢両説｣はどこに述べられているのか？ 傍線部直前直後の｢文脈｣をチェックする。直前に｢この(両説)｣という｢指示語｣がある。
つまり、傍線部の前で｢両説｣が述べられていることになる。確認していく。
１行前に｢(浪人が)金子を持ちながら餓死したるは愚人にあらずして何ぞやと嘲る人もあり｣(＝お金を持っていながら餓死したというのは愚か者でなくて何であろうかとあざ笑う人もいる)という箇所がある｡ひとつの｢評価｣だ。
さらに、４行前には｢(浪人が)軍用金をさへ使はずしておきしは、真の武士なりと賞賛する人もあり｣(＝軍用金まで使わずにおいたのは真の武士であると賞賛する人がいる)という部分がある｡これまた｢評価｣で間違いない。｢動詞｣を抜き出すので、｢答え｣は｢賞賛する｣･｢嘲る｣になる。
尚、｢内容読解｣に関しては｢古文｣であっても｢現代文｣と同じだ。｢文脈｣を正確に読み取ることが基本になる。その上で｢現代語訳｣をすればよい。

＜時間配分目安：全問で２分半＞

本校の伝統であり最大の特色である｢要約問題｣。本文では、｢絶滅危惧を訴えるポスターに登場している『種』｣について論じている。どのように｢要約｣していくのかを考えながら、しっかりと読み解いていきたい。

[問]　｢条件付き要約記述｣(｢80～100字以内｣指定)。
示されている文章を､｢八十字以上百字以内｣で｢要約｣する。｢条件｣は、①｢三文で要約すること｣･②｢第二文の書き出しを『しかし』、第三文の書き出しを『つまり』で始めること｣･③｢解答欄の一マス目から書き始め、句読点も一字に数えること｣｡｢条件｣に基づいて構成していくことになる。先ずは、本文を概観する。

４つの形式段落で構成されているが、｢論説文｣の基本である意味段落で捉えると、｢１･２段落｣が｢序論部｣、｢３段落｣が｢本論部｣、｢４段落｣が｢結論部｣だと判断できるはずだ。
それぞれの要点を確認する。｢序論部｣では｢絶滅危惧を訴えるポスターに登場しているのは『象徴種』ばかりであり、集まった資金は『主に象徴種の保護のために』使われる｣と問題提起し、｢本論部｣では具体例を挙げながら、｢一方で、『象徴種に該当しない多くの種が人知れず苦しんで』おり、多くの動植物が『絶滅の危機に直面』している｣と指摘した後、｢結論部｣で｢つまり、私たちには『近しい存在の危機を知り、そこから象徴種以外の種にも目を向ける』ことが必要だ｣と｢論旨｣をまとめていると読み取れる。
以上を｢要約｣することになる。無論、｢序論部｣＋｢本論部｣＋｢結論部｣という｢三文｣にする。｢過不足なく｣まとめていきたい。
たとえば、｢絶滅危惧種のポスターは象徴種ばかりで、集まった資金はその保護に使われる｡しかし、象徴種以外の多くの種も絶滅の危機に直面している。
つまり、私たちは近い存在の象徴種以外の種の危機にも注目することが必要だ｡｣(100字)といった｢答え｣になる。

｢条件｣を的確に踏まえることが、｢失点｣｢減点｣を防ぐ最大のポイント。無論、｢条件｣は｢ヒント｣でもある。

尚、｢論説文｣の｢要約｣は通常、｢論旨｣中心にまとめていくので、｢序論部｣＋｢結論部｣＋｢本論部からの補足説明｣といった構成が基本になるということは心得ておくこと。｢要約(論述)問題｣は本校の定番だ。しっかりと確実に練習しておくことが不可欠だ。

パンデミックで窮状が白日の下に晒(さら)された日本の大学。襲いかかるオンライン化の奔流、不可避の人口減、疲弊する教員、逼迫する資金、低下する国際評価――存続の危機の根本原因は何か？ 本来の大学を追究し続けてきた筆者が｢時間｣をキー概念に再生のための戦略を論じている。

本文では、日本人は｢ネット上に自己承認を求め、ネット上の正義に同調し、ネットの『世間』の常識から外れる『他人』を攻撃｣しており、コロナ禍で浮かび上がった｢世間｣の｢同調圧力｣は、日本社会の風通しの悪さを示していると指摘している。｢大学論｣ではあるが、平易に説明されているので内容は理解できるはずだ。｢複数解答｣も含めた｢選択肢設問｣、｢空所補充の語句抜き出し｣などの小問が連なっている。いくつか検証する。

[問３]　｢内容説明の空所補充語句抜き出し｣(全２問/｢２字｣と｢８字｣指定)。
傍線部(３)｢『世間』と『社会』はその構成の根本原理がまるで異なる｣について、｢『世間』と『社会』の差異｣を説明した文中の空所(Ⅰ)･(Ⅱ)に入る｢適切な語句｣をそれぞれ抜き出して答える。示されている｢説明文｣は次のようになっている。
｢『社会』は(Ⅰ)  の存在を前提としているが、同質性や互酬関係、長幼の序を構成原理とする『世間』は(Ⅱ)  といった集団を基盤としている｣。｢抜き出し｣では、｢抜き出すべき内容｣を特定した上で｢抜き出し範囲｣を絞っていくことが鉄則。先ずは｢内容｣。

(Ⅰ)は｢『社会』が前提としている○○の存在｣であり、(Ⅱ)は｢『世間』が基盤としている集団｣だと読み取れるはずだ。｢範囲｣は｢同一意味段落｣(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠･手がかり｣がある)。ここでは、傍線部からの３つの形式段落だと判断できる。ただし、傍線部直後から｢社会｣について述べられているので、丁寧に探していく。すると、次文に｢『社会(society)』という概念は、『それぞれの個人の尊厳が少なくとも原則として認められているところでしか本来の意味を持たない』｣という説明があることにすぐに気づくはずだ。｢社会｣が前提としているのは｢個人の存在｣だと読み取れる。
続いて、８行後には｢世間｣の説明がある。｢『世間』は、家族や地域、職場での日常的な営みやコミュニケーションのなかに実効的な観念として常に作動しており……｣となっている。まさに、｢『世間』が基盤としている集団｣だと判断できる。それぞれ、同じ｢範囲｣に他の｢候補｣はない。
よって、これらを｢指定字数｣と説明文の｢文脈｣に即して整理すると、｢答え｣は(Ⅰ)＝｢個人｣(２字)、(Ⅱ)＝｢家族や地域、職場｣(８字)ということになる。尚、｢抜き出し候補｣はひとつとは限らないので、必ず｢範囲｣の全てを探すことが重要。

＜時間配分目安：全問で３分弱＞

[問４]　｢換言説明選択肢｣(５択)。
傍線部(４)の｢共同幻想としての『世間』が社会的事実として構築されていく｣とは｢どういうことか｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡ここは｢換言説明｣なので、｢構築されていく｣の｢原意｣と結びつかない｢換言｣を｢消去｣していくことになる。各選択肢の｢文末｣と照合する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)。
(ア)｢創造するということ｣、(イ)｢区別をするということ｣、(ウ)｢錯覚するということ｣、(エ)｢確立するということ｣、(オ)｢据えるということ｣｡｢構築｣＝｢組み立て築くこと｣、誰もが知っているはずの言葉だ。であれば、｢確立する｣以外は｢消去｣だと即判断できなくてはいけない。念のために、｢同一意味段落｣を確認する。
他の部分の説明も特に誤っていないことが分かる。したがって、｢答え｣は(エ)でいい。瞬時の｢一発消去｣だ。
｢原意消去｣は完全にマスターして応用できるようにせよ。

＜時間配分目安：１分＞

[問５]　｢条件付き内容説明記述｣(｢15字以内｣指定)。
傍線部(５)｢極度に強い同調圧力の根底にある感情｣について、｢この『感情』とはどのような『感情』か｣を｢十五字以内｣で説明する。｢条件｣は｢本文中の語句を用いて説明する｣こと。先ずは、｢手がかり｣を｢傍線部(空所部)一文一部の法則｣(｢傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要｣という｢重要解法｣)に求めたい。
傍線部は一文の｢述語｣であり、｢主語｣は｢こうした恐怖の感情が｣だと読み取れる。
要は、｢極度に強い同調圧力の根底にある感情｣＝｢こうした恐怖の感情｣だ。｢指示語｣があるので開く(｢指示語｣が出たら即開くこと)。
直前から、｢こうした｣＝｢『世間』から排除されることを極度に怖れること｣だと判断できるはずだ。
あとは、｢感情｣を｢文末｣として｢字数｣に合わせて的確にまとめていけばいい。たとえば、｢『世間』からの排除を怖れる(感情)｣(13字)といった｢答え｣になる。

本校では稀有な｢説明記述設問｣、忘れた頃にやってくるのだ。新たな｢大学入試制度｣で重視されている｢思考力･判断力･表現力｣、本校でも意識しているわけで、来年度以降も要注意だ。

＜時間配分目安：２分半＞