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東京学芸大学附属高等学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2024年度「東京学芸大学附属高等学校の国語」
攻略のための学習方法

解法

「学附の国語」で勝利するための「攻略ポイント」は、前述のように「現代文」の「解法」をいかにうまく用いるかということ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。

そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。

そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。

そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。

速読

「現代文」全体で7000字ほどを読解しなくてはならない。解答時間は50分。
当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。

「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。

「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。学附に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。

知識

「高度な語彙力」だけではなく、「口語文法」や「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「学附の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。

「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか?

「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることはある。

先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。

さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。また、「文法」の基礎である「品詞分類」なども当然確認しておくこと。

なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。

古典

「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必修カリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶこともない。が、学附などの「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。

明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」をする他ない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は「敬語」も含めて理解しておかなくてはならない。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。

また、「漢文」でも同様に「基本的事項」は定着させておくこと。

なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。

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2024年度「東京学芸大学附属高等学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問は「説明文」、出典は市橋伯一「増えるものたちの進化生物学」(文字数約3700字)。小問は全9問(解答数16)。「選択肢」(「空所補充」、「不適切」、「総合的知識問題」あり/マーク式)、「漢字の読み書き」(全5問/記述式)。問題文は4分ほどで読み切り、設問を17分程度で解きたい。

大問は「小説」、出典は川上弘美「真面目な二人」(文字数約3500字)。小問は全8問(解答数8)。「選択肢」のみ(「空所補充」、「組み合わせ」、「内容合致」あり/マーク式)。問題文は4分程度で読み切り、設問を14~15分で解きたい。

大問は「古文」、出典は作者不詳「十訓抄」(文字数約300字)/橘成季「古今著聞集」(文字数約100字)。小問は全8問(解答数10)。「選択肢」(「内容合致」、「単語の意味」あり/マーク式)、 「抜き出し」(1問/記述式)。 10分程度で解きたい。 

【大問一】

  • 時間配分:17分程度

生命と非生命を分けるものは「増える」ことであり、増えて遺伝する能力は生物を進化させ、繁栄をもたらし、やがて私たち人間に自由と生きる喜びを与えるとともに尽きることのない不安や迷いを植えつけることになったと指摘している。本文では、生物は自然選択と遺伝子の突然変異を繰り返していくことによって、現在の複雑で多様なあり方を手に入れたことについて説明している。
いくつか難解な専門用語があるが、「*注」も活用して内容を理解したい。「漢字」を含めた「総合的知識問題」や、「内容説明」「換言説明」「理由説明」といった多様な小問が続いている。以下、いくつか検証してみたい。尚、本文には形式段落ごとに122の番号が付されている。

[問1] 「漢字の読み書き」(全5問、「書きとり」4問・「読み」1問/記述式)。
例年と同程度の難易度。本校志望者は「全問正解」といきたい。確認する。
二重傍線部(a)「化学ヒリョウ」=「肥料」⇒何の問題もない。(b)「栄養のしかった当時」=「とぼ(しかった)」⇒「読み」の定番だ。(c)「上昇してしまったとスイテイされています」=「推定」⇒「文脈」を正しく読み取ること。(d)ウチュウからの放射線」=「宇宙」⇒書けないはずがない。(e)テンテキから逃げやすい」=「天敵」⇒「ある生物を攻撃して殺すか繁殖能力を低下させる他種の生物」という意味も押さえておきたい。
尚、わざわざ問題文に「一点一画を正確に書くこと」と記されている。「失点」せぬよう丁寧に書くべし。
<時間配分目安:全問で1分半>

[問2] 「語句の意味の選択肢」(全2問/各5択/マーク式)。
「総合的知識問題」。波線部(ア)「危惧される」・(イ)「いとわない」の「本文中における意味」を答える。ともに知っていなくてはいけない語句だ。それぞれの「原意」(本来の意味)で特定していく。
「危惧」=「あやぶみおそれること。 気がかり」という意味なので、(ア)の「答え」は選択肢の「心配される」だ。そして、「いとう」=「厭う」=「嫌って避ける。嫌がる」なので、(イ)の「答え」=「いやがらない」になる。
出題された「語句」の「原意」を仮に知らなくても、本問のような「本文中における意味」の場合、前後の「文脈」からも類推できると心得よ。ただし、「文脈」にこだわり過ぎると,「原意」からかけ離れてしまって誤答となる場合があるので、要注意。
<時間配分目安:全問で1分>

[問3] 「空所補充の語句組み合わせ選択肢」(5択/マーク式)。
空所 ⅰ  ⅲ  に「当てはまる語句」の「組み合わせ」を答える。
選択肢にある候補は「接続詞」と「副詞」、本校に限らず定番の問題だ。「接続詞」では「逆接」以外には十分に注意しなくてはいけない。「逆接」以外だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。
単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「文脈」を確認する必要がある。また、段落冒頭の「接続詞」は前段落全ての内容を受けているので注意すること。各空所にあてはまる「語句」を特定していきたい。
 ⅰ には「はじめに。最初に」を表す「副詞」の「まず」、 ⅱ  には「換言」の「接続詞」である「つまり」、 ⅲ  には「例示」を表す「副詞」の「たとえば」がそれぞれあてはまると分かる。したがって、その「組み合わせ」になっている選択肢が「答え」だ。
「接続詞」「副詞」などの「空所補充」は必出だ。失点は致命傷になると心得よ。
<時間配分目安:2分>

[問4] 「換言説明選択肢」(5択/マーク式)。
傍線部(A)「それは人間も例外ではありません」について、「『それ』とはどのようなことか」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここは「指示語換言説明」なので、最優先で「指示語」を開く(「指示語」が出たら即開くこと)。形式段落の冒頭にある「指示語」なので、前段落全ての内容を指し示していることを意識してまとめると、「それ」=「多くの生物は本能的に、増殖する環境が整えば限界まで増えてしまうということ」だと分かる。したがって、この「原意」と結びつかない「換言説明」を「消去」することになる。各選択肢の「文末」と照合する(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。「環境が許す限界まで増えてしまうものだということ」、「とめどなく増えて最終的に自滅するものだということ」、「増殖と減衰の波をくり返すものだということ」、「餌などの条件に生息数を限定されるものだということ」、「際限なく増殖して地球環境まで変えてしまうものだということ」。悩む必要は一切ない。「環境が整えば限界まで増えてしまう」のだから、そのままの「換言説明」である以外は「消去」可能に決まっている。念のために「同一意味段落」で他の部分の説明を確認しても特に誤りはない(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。
したがって、「答え」はだ。なんと見事な「一発消去」ではないか。畏るべし「原意消去」! 必ずマスターして応用できるようにすべし。
<時間配分目安:1分強>

[問7] 「空所補充の文選択肢」(5択/マーク式)。
本文中の空所 X に「入る文」を答える。空所部は15段落の最後なので、この段落の「まとめ」(結論)だと分かる。本段落は「ミジンコの進化」について説明しており、「泳ぐのが速いミジンコは餌をより多く手に入れることができ天敵からも逃げやすいので、長く生き残ってたくさんの子孫を残すでしょう」と述べた後で、「そして所

 X  」とまとめられている。であれば、「答え」は選択肢の「次の世代のミジンコ集団では泳ぐのが速いミジンコの割合が増えていることでしょう。」だと特定できるはずだ。あまり類例のない設問内容だったが、冷静に対処すれば解けるわけだ。
<時間配分目安:2分半>

[問8] 「理由説明選択肢」(5択/マーク式)。
傍線部(C)「増えなかったら進化することはあり得ません」について、「筆者がそのように考えるのはなぜか」を答える。もちろん、「原意消去」が最優先。本問は「理由説明」なので、「進化することはあり得ない」ことの「直接的理由」として、各選択肢の「文末」が結びついているかで「消去」していく。「文末」⇒「だから」⇒「進化することはあり得ない」と結びつくかどうかだ。チェックする。
「多様性が生まれないから」、「自然選択が生じないから」、「消滅してしまうから」、「多様性が回復しないから」、「次の世代へ受け継がれていかないから」。「進化」が「あり得ない」のだから、「次の世代へ受け継がれていかない」以外は「消去」からできると判断しなくてはいけない。「同一意味段落」を確認して、他の部分の説明も特に誤りはないと分かる。よって、「答え」はだ。「理由説明」でも「一発消去」だった。流石(さすが)の「原意消去」。完全習得して「合格へのツール」として使いこなすことが肝要だ。
<時間配分目安:2分弱>

※尚、[問9]は「理由説明選択肢設問」(6択/複数解答)なのだが、「本文全体から読み取ること」と「条件」が課されている。しかも、各選択肢の説明は特定の形式段落についての説明であり、それら全てとそれぞれ照合する必要がある。よって、とても手間ひまがかかるのだが、配点は他の設問と変わらない。であれば、戦術的には「あとまわし」にすべきだ。無論、「捨て問」でも構わない。

【大問二】

  • 時間配分:14~15分

不思議な設定、不思議な感覚の短編小説の全文だ。同じ大学に通うふたりの女子学生、「島島英世(しまじまひでよ)」(あたし)と「上原菜野(なの)」。「上原菜野」は気持ちが動いたときにカウンター機を「かちっ」と押している。それを知った「あたし」は白黒2つのカウンター機を用意して、楽しい方に気持ちが動いたら白を「かち」、いやな感じ方向に動いたら黒を「かち」と押してみることにした……、といったお話だ。文章は分かりやすく、内容もすぐに理解できる。「心情説明」、「理由説明」、「表現内容合致」などと、「小説」のオーソドックスな小問ばかりだ。手際よく解き進めていきたい。以下、何問かを検討する。

[問3] 「心情説明選択肢」(5択/マーク式)。
傍線部(B)「新緑が目に痛いようだった」について、「この情景描写から読み取れる『あたし』の気持ち」を答える。当然「原意消去」が最優先。ここは「心情説明」なので、「新緑が目に痛いようだった」という「比喩表現」の「原意」と結びつかない「心情説明」を「消去」したい。各選択肢の「文末」をチェックする。
「寂しさを感じている」、「拍子抜けしている」、「距離を置こうとしている」、「不快に感じている」、「強烈な印象を抱いている」。
「新緑が目に痛いようだ」⇒「木々の緑の鮮やかさが強烈だ」という「比喩表現」なのだから、「強烈な印象を抱いている」以外は「消去」に決まっている。念のために「同一場面」を確認する(「小説」では「同一場面の直前直後」に「手がかり・ヒント」がある)。
他の部分の説明も特には誤っていない。したがって、「答え」はになる。「小説」でも「原意消去」は必須ツールだと心得よ。尚、「小説」での定番である「心情把握」は、「セリフ」⇔「ト書き」⇔「動作」⇔「情景」の連関で捉えるのが定石だ。
<時間配分目安:1分強>

[問4] 「理由説明選択肢」(5択/マーク式)。
傍線部(C)「しんとした感慨深い気持ちになった」について、その「理由」を答える。「原意消去」から。ここは「理由説明」なので、「しんとした感慨深い気持ちになった」の「直接的理由」として、各選択肢の「文末」が結びついているかで「消去」していきたい。
「文末」⇒「だから」⇒「しんとした感慨深い気持ち」とつながるかどうかだ。照合する。
「自分に気づかされたから」、「(ハルオが嫌いだということに)ハルオはまるで気づいていなかったのだとわかったから」、「ほっとしたから」、「嫌になってしまったから」、「彼(ハルオ)を出し抜くことができると思ったから」。さあ、どうだろうか?
「しんとした」=「静まりかえった」だと知っているはずで、その上での「感慨深い気持ち」なのだから、「自分に気づかされたから」以外は「直接的理由」として結びつかないと判別できるはず。「同一場面」から、他の部分の説明も特には誤っていないと分かる。よって、「答え」はだ。
いま再びの「一発消去」。実に「原意消去」は素晴らしい。
<時間配分目安:1分半>

[問7] 「役割説明選択肢」(5択/マーク式)。
二重傍線部(X)「だけど、結局あたしは、上原菜野に助けられることになる。」について、「この一文が本文中で果たしている役割」を答える。何とも不可思議な設問だ。二重傍線部は「本文全体」の中ごろにある。そして、「助けられることになる」と表現されているので、二重傍線部より後の部分での「役割」になるはずだ。よって、「現在の視点から振り返っている」と説明されている選択肢はそのまま「消去」して構わない。また、「上原菜野に助けられることになる」という内容から、「(上原菜野と)友人になるための仲立ちとなる」とあると、「(恋愛が失敗することを)皮肉をこめて表現している」と説明しているもふさわしくないと判別できる。この段階で「2択」になった。
次に、(X)の直前から、「恋愛」についてのことだと分かる。したがって、「孤独な状況から解放されるきっかけが上原菜野にある」となっているも「消去」でき、「恋愛の複雑さを受け止められるようになる」と説明されているが残ると判断できるはずだ。「同一場面」から、他の部分の説明も特には誤っていないと分かる。よって、「答え」はになる。
未知の設問内容に遭遇したときは、落ち着いて段階を踏んで解き進めていきたい。
<時間配分目安:3分ほど>

※尚、[問8]は「本文内容合致(表現の説明)の選択肢設問」(5択)だ。「論説文」であれば「本文内容合致」=「論旨合致」と捉え、「序論部」及び「結論部」と照合すればいいが、本問のような「小説」では「本文全ての内容」と照合する必要があり、とても手間がかかる。特に本問の「選択肢説明」はそれぞれ「80字程度」もある。したがって、戦術的には「あとまわし」にすべきだ。無論、「捨て問」でも構わない。

【大問三】

  • 時間配分:10分程度

「十訓抄」は鎌倉時代中期の教訓説話集。
全3巻で約280話を収録。「十訓」こと「十ケ条の教戒」を掲げ、その後の「教訓書」の先駆となった。本文は、第十「することかたきにあらず、よくすることのかたきなり」。「古今著聞集」は鎌倉中期の世俗説話集。事実に基づいた古今の説話を集成することで、懐古的な思想を今に伝えようとしている。全20巻で726話を収録。
本文は、第十一「侍從大納言成通の鞠は凡夫の業に非ざること」。「古文単語の意味」、「現代語訳」や「内容解釈」、そして、「2つの文章の関連づけ」、「抜き出し」など、多種多様な小問が並んでいる。以下、いくつか検討してみよう。

[問1] 「単語の意味の選択肢」(全2問。各5択/マーク式)。
波線部(ア)「年ごろ」・(イ)「ありがたし」の「本文中の意味」を答える。(ア)の「年ごろ」は名詞で「長年の間。長年。数年間。数年来」という意味なので、「答え」は選択肢の「長年」になる。(イ)はク活用の形容詞で「有り難し」=「めったにない。めずらしい」ということなので、「答え」は「めったにない」。ともに基礎的な「重要古文単語」なので、必ず定着させよ。
<時間配分目安:全問で1分弱>

[問2] 「内容解釈の選択肢」(5択/マーク式)。
傍線部(A)「その徳やいたりにけむ」の「解釈」を答える。
先ずは、「にけむ」と各選択肢の「文末」とを照合してみる。
「にけむ」⇒「完了」の助動詞「ぬ」の連用形「に」+「過去推量」の助動詞「けむ」の連体形「けむ」⇒前に「や」という「疑問」の「係助詞」があって「係り結び」になっている。各選択肢の「文末」は全て「~たからだろうか」で「現代語訳」も適切だ。
次に「いたり」で判別したい。ラ行四段活用の動詞「いたる」の連用形だ。意味としては「到達する。達する。極まる。行きわたる」だ。各選択肢の「文末」の直前と照合したい。「たいそう優れて(いた)」・「試そうと(した)」・「聞き入れ(られた)」・「評判になって(いた)」・「このうえなく素晴らしかっ(た)」。もちろん、以外は「消去」でいい。全体の「解釈」も「成通卿の蹴鞠への思いやりや取り組みがこのうえなく素晴らしかったからだろうか」で、傍線部直前の「成通卿、年ごろの鞠を好み給ひけり」からも問題なし。よって、「答え」はだ。尚、「内容」に関する「選択肢設問」では、「現代文」同様に「文末」での「原意消去」が有効だと心得よ。
<時間配分目安:2分半>

[問6] 「部分分けの抜き出し」(「3字」指定/記述式)。
「この本文は『出来事』と『筆者の感想』の大きく2つの部分から構成されている」が、「筆者の感想」が始まる「最初の三字」を抜き出して答える。[問2]で確認したように、「出来事」は「成通卿の蹴鞠への思いやりや取り組み」といったエピソードだとすぐに分かる。それは本文冒頭からの3行であり、4行目の「なにごとをも始むとならば……」からが「筆者の感想」だと判断できるはずだ。よって、「答え」は「なにご」となる。
尚、頻出の「説話集」の基本的構成は、「出来事」(エピソード)+「筆者の感想」だと理解しておきたい。
<時間配分目安:1分半>

[問8] 「他の文章との関連選択肢」(5択/マーク式)。
示されている「資料」(「古今著聞集」の一節)にも本文と同様の「エピソード」が記されているが、この「資料」から読み取れることを答える。ポイントとなる「資料」の最後の部分をチェックして「現代語訳」してみたい。「自然に後世の縁となり、功徳(くどく)すすみ候(さぶら)へば、必ず好ませ給ふべきなり。」=「自然と後世の縁となり、善行を積むことになりますので、必ず好みなさるのがよい。」。
各選択肢の「文末」は、「成通のように蹴鞠を好むことが功徳となるのである」、「成通のように徳が積もり積もって才能として現れるのである」、「(成通のような思いがあれば)来世でも諸芸に秀でた人物として生まれ変わるのである」、「成通のような不思議な縁につながるのである」、「成通のような霊験あらたかな出来事も生じるのである」。「好みなさる」と「功徳(善行)を積むこと」になるのだから、「好むことが功徳となる」以外は「消去」できるはずだ。よって、「答え」はになる。
尚、2つ以上の「文章」や「資料」などの関連を問う設問は「大学入学共通テスト」の定番なので、本校でもこうした設問がこれからも予想されるのでしっかりと練習しておきたい。
<時間配分目安:3分半>

攻略のポイント

判別が紛らわしくて複雑な「選択肢設問」(「選択肢説明」がとんでもなく長いものもある)、どう「攻略」するか?
「解法」に則しての「段階的消去」が最大のポイント(中でも特に「原意消去」)。したがって、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておくことが必要になる。それによって「失点」を防ぎ、「得点力」を安定させたい。
「合格最低得点率」は7割超とハイレベル(過去5年間の男女合計平均で72.8%。本年度はやや上がって75.5%)。ほんの少しの「失点」でも致命的になると心得よ。

「総合的知識問題」も決して侮れない。
「口語文法」も含めた直接的な出題だけでなく、内容理解でも「高度な語彙力」が求められる。本校を志望したその瞬間から、独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが必須(学校や塾での学習だけでは全く不十分)。

「古典」の「攻略法」は?
「重要古文単語」(最低200語ほど)の定着は当然だが、「内容理解」も求められるので「基礎的文語文法」は押さえておきたい。その上で、数多くの「古文」に慣れておくことが重要。また、「漢文」の出題もあるので(本年度は未出)、「返り点」「訓点」「書き下し文」「基礎的句法」などの基本的知識は押さえておく

●尚、本年度の「古文」は2つの問題文の連関も問われていた(4年前にも同様の出題があった)。明らかに「大学入学共通テスト」を意識した設問だ。来年度以降、「現代文」も含めて出題される可能性があるので、留意せよ。

試験時間は50分。問題文のボリュームは「現代文」だけでも7000字ほど(本年度は約7200字)。当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。

 

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