東京学芸大学附属高等学校 入試対策
2019年度「東京学芸大学附属高等学校の国語」
攻略のための学習方法
解法
「学附の国語」で勝利するための「攻略ポイント」は、前述のように「現代文」の「解法」をいかにうまく用いるかということ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
「現代文」全体で7000字ほどを読解しなくてはならない。解答時間は50分。
当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。学附に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「口語文法」や「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「学附の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。
「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることはある。
先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。また、「文法」の基礎である「品詞分類」なども当然確認しておくこと。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必修カリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶこともない。が、学附などの「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。
明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」をする他ない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は「敬語」も含めて理解しておかなくてはならない。そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。
また、「漢文」でも同様に「基本的事項」は定着させておくこと。
なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
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2019年度「東京学芸大学附属高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は外山滋比古「比喩について」(文字数約2700字)。小問は全8問(解答数12)。「選択肢」(「空所補充」、「組み合わせ」あり/マーク式)、「抜き出し」(1問/記述式)、 「総合的知識問題」(1問/記述式)、「漢字の読み書き」(全5問/記述式)。問題文は3分半ほどで読み切り、設問を16~17分程度で解きたい。大問二は「小説」、出典は梅崎春生「突堤にて」(文字数約3200字)。小問は全8問(解答数9)。「選択肢」(「空所補充」、「不適切」、「総合的知識問題」あり/マーク式)。問題文は4分ほどで読み切り、設問を15分程度で解きたい。大問三は「古文」、出典は編者未詳「十訓抄」(文字数約330字)。小問は全7問(解答数8)。「選択肢」(「組み合わせ」、「内容合致」あり/マーク式)、「漢字記述」(「総合的知識問題」/記述式)。 10分強で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:
言語表現は「表現の個性化」という公式的理屈どおりに行くものではなく、事実をありのままに描き出そうとする写実主義に偏重している現状に警鐘を鳴らし、「写実」と「比喩」は車の両輪のように、相互に補償し合う関係のものであり、真の比喩的表現が衰微していては、写実も機能を十分に発揮できないと論じている。「言語論」で難解な語句も多く内容の本質を理解することは難しいが、「*注」を活用してなんとか読み取ってほしい。「漢字の読み書き」や「総合的知識問題」も含めて、多種多彩な小問が並んでいる。以下、いくつか確認してみたい。
[問1] 「漢字の読み書き」(全5問。「書きとり」4問、「読み」1問/記述式)。本年度は本校としては「標準レベル」(ただし、一般的には相当に難易度が高い)。確認する。二重傍線部(a)「消化することがフエテである」=「不得手」⇒「文脈」から特定すること。(b)「ことばにノゾんだとすれば」=「臨(んだ)」と(c)「このことは、タダちに」=「直(ちに)」⇒これらは問題ないはず。(d)「二者がコウジの結合をとげる」=「高次」⇒「同音異義語」に要注意。(e)「形式が容易に踏襲される」=「とうしゅう」⇒「前人のやり方などをそのまま受け継ぐこと」という意味も押さえておきたい。本校では「ハイレベルな語彙力」が必要だと心得よ。尚、わざわざ問題文に「一点一画を正確に書くこと」と記されている。「失点」せぬよう丁寧に書くべし。
<時間配分目安:全問で1分半>
[問2] 「語句の空所補充選択肢」(「3字」指定/記述式)。「総合的知識問題」。「ことわざ」だ。本文中の波線部「君子は比喩には近よらない」は、「君子 に近寄らず」という「ことわざ」を踏まえた表現だが、空所に「当てはまる語」を「三字」で答える。馴染みは薄いかも知れないが、本校志望者であれば定着していて欲しい。「教養があり徳がある者は、自分の行動を慎むものだから、危険なところには近づかない」という意味である「君子危うきに近寄らず」だ。よって、「答え」は「危うき」だ。知らなかった諸君は、本校レベルの「知識分野」に欠如があると自覚する必要がある。
<時間配分目安:30秒>
[問4] 「理由説明の抜き出し」(「一文」の「冒頭の5字」指定/記述式)。傍線部(A)「表現の個性化ということを、ここまでおしすすめて考えると、表現自体が不可能になることも見逃すことができない」について、では「筆者自身は言語表現はなぜ可能であると考えているか」、その「理由」に当たる「一文」の「冒頭の五字」を抜き出して答える。「抜き出し設問」では、「抜き出し内容」を的確に特定し、「抜き出し範囲」を絞り込むことが鍵となる。「内容」は、「筆者が、言語表現は可能であると考えている理由」だとすぐに分かる。「範囲」は「同一意味段落」 (「論説文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)で、傍線部の前段落から4段落だ。「言語表現は可能だ」という「内容」を意識して丹念に探していく。すると、4段落目の中頃に「ひとつのことばがややあいまいにいくつかのことを表現することができるからこそ、言語表現ということ自体が可能なのである。」という「一文」がある。「内容」も「条件」も合致している。他に候補はないので、「答え」は「ひとつのこ」となる。尚、「抜き出し」の「候補」はひとつとは限らないので、「範囲」を隈なく探すことが鉄則だ。
<時間配分目安:1分半>
[問5] 「換言説明選択肢」(5択/マーク式)。傍線部(B)「対象の一つ一つの違いが強調されるから、表現もまた遠心的に分散する」について、「どういうことか」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここは「比喩換言説明」なので、「遠心的に分散する」という「比喩」の「原意」と各選択肢の「文末」(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)を照合し、結びつかないものを「消去」したい。確認する。①「想像しにくいものになっていくということ」、②「理解しやすい表現にする必要が生じてくるということ」、③「区別しにくいものになってしまうということ」、④「納得し得る事実にはできなくなってしまうということ」、⑤「難解な表現になってしまいがちになるということ」。「遠心的に分散する」⇒「遠く離れて、バラバラになる」ということなのだから、①③以外は「消去」できるはずだ。次に、傍線部前半の「一つ一つの違いが強調される」の「原意」で判別する。すると、「共通点を強調せざるを得ないため」と説明されている③は「消去」で、「共通点以上に相違点を強調するあまり」とある①が残ると判断できる。他の部分の説明も特に誤ってはいないので「答え」は①でいい。「原意消去」による「2段階消去」で正解にたどり着いた。先ずは「原意消去」ということを記銘せよ。
<時間配分目安:1分強>
【大問二】
- 時間配分:
太平洋戦争末期、肺結核で病気静養中の「僕」は、気晴らしにコンクリートの防波堤の突堤で釣りをするようになった。その突堤には、何人かの釣り人が集まっており、最初はよそ者扱いされていた「僕」もやがて「仲間」に認定される――戦時中であるのに、日中に魚を釣っている人たちの時間はゆるゆると流れていて、世相のぴりぴりとした感じと良い対比をなし物語はゆるゆると進んでいく……。本文では、そうした日々の中でのいくつかのエピソードが綴(つづ)られている。60年以上も前に発表された作品なので馴染みのない言葉もあるが、内容は理解できるはずだ。本大問は全てマーク式(選択肢設問)だが、本校らしくなかなか興味深い特徴がある。設問のいくつか検討してみる。
[問1] 「語句の空所補充選択肢」(全2問/各5択/マーク式)。「総合的知識問題」。「語句の意味」だ。本文中の空所 X ・ Y に「当てはまる語」を答える。「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という「重要解法」)で「空所前後」を確認して、「答え」を特定していく。 X は3か所あるが、最初の部分が分かりやすい。「(突堤で釣りをしている)連中には……、一種の X とでも言ったような気分があった。……彼等は僕にはほとんど口をきいて呉(く)れなかった。……僕だって初めは彼等に変な反撥を感じて……」となっている。各選択肢は①「受動的」、②「間接的」、③「消極的」、④「排他的」、⑤「攻撃的」⇒「彼等は僕にはほとんど口をきいて呉れなかった」のだから無論、④の「排他的」がふさわしい。そして、 Y は2か所で、「……喧嘩(けんか)になることはまれで、四辺(まわり)からなだめられたり、またなだめられないまでも、 Y の中(うち)に収まってしまう」「 Y のままで収まって、また元の形に背を円くして並んでいる……」となっている。各選択肢は①「なげやり」、②「かりそめ」、③「きまぐれ」、④「うやむや」、⑤「でたらめ」⇒当然、「物事がはっきりせず、あいまいな様子」を表す④の「うやむや」が「答え」だ。尚、「空所補充設問」で空所が何か所かある場合は、分かりやすい部分で特定し、他の空所にも代入して確かめることが肝要だ。
<時間配分目安:全問で1分半>
[問2] 「内容説明選択肢」(5択/マーク式)。傍線部(A)「自然にひとつのグループをつくっていた」について、「どのようなグループか」を答える。「原意消去」から行きたいが、流石(さすが)に傍線部だけでは「消去」のしようがない。そこで、「傍線部(空所部)一文一部の法則」で確認すると、この「グループ」は「(突堤で)毎日顔を合わせる連中」だと分かる。次に、「どのようなグループか」を「同一場面」の「直前直後」から読み取る(「小説」では「同一場面」の「直前直後」に「手がかり・ヒント」がある)。すると、「直後」に「この連中と長いこと顔を合わせていて、僕は特に彼等の職業や身分というものを一度も感じたことはなかった」とある。各選択肢の「文末」を確認する。①「身分や職業を持ち込んだりしない人たちでつくられたグループ」、②「上手な人間の意向に合わせた態度をとる人たちでつくられたグループ」、③「同じ価値観を持つことになった人たちでつくられたグループ」、④「日常から逃避している人たちでつくられたグループ」、⑤「身分や職業で判断する世間を批判する人たちでつくられたグループ」。明らかに①以外は「消去」できると判別できなくてはいけない。他の部分の説明も特に誤ってはいないので「答え」は①になる。本問は「原意消去」による「一発消去」だった。やはり、「原意消去」は使える。
<時間配分目安:1分強>
[問3] 「理由説明選択肢」(5択/マーク式)。傍線部(B)「それを突堤の常連は『素人衆』と呼んで毛嫌いをした」について、「それはなぜだと『僕』は考えているか」を答える。本問の各選択肢の説明を一見して、何かに気付かなくてはいけない。それぞれ80字程度と長い一文で、読点をはさんで3つに分かれているが、最後が全て同じで、最初は①④と②③⑤がそれぞれ同じなのだ。ということは、最後の部分では「消去」できず、最初で「2択」になるわけだ。本問は「理由説明」で「直接的理由」は「文末」、真ん中が「間接的理由」、そして、最初が「状況説明」。よって、先ずは「状況説明」で判別する。「同一場面」の「直後」に「(連中と『素人衆』)に違う点があるとすれば、魚釣りにうちこむ熱情の差」「(それにもうひとつ)常連(=連中)とちがって、(『素人衆』は)ここ(=突堤)に来ても世間の貌(かお)で押し通そうとする……、そうした無神経さが常連の気にくわなかった」とある。したがって、「『素人衆』と常連の技量は同じくらい」となっている①④は「消去」で、②③⑤の「『素人衆』は対して熱情を持っていない」が残ると判別できるはず。次に、「間接的理由」での絞り込みだ。②「常連たちの了解に合わない振る舞いが目につき」、③「我が物顔の常連に対してさりげなく邪魔をしてくる」、⑤「常連の中の知り合いに対しなれなれしく接することで場の関係を乱し」となっている。「常連とちがって、ここに来ても世間の貌で押し通そうとする」と説明されていたのだから、③⑤が「消去」で、「答え」は②だと判別できる。尚、こうした形式の選択肢説明が本大問の[問5][問7]にもある。瞬時に選択肢を括(くく)って、「ショートカット」するべし。
<時間配分目安:1分強>
[問8] 「品詞判別の不適切選択肢」(5択/マーク式)。「総合的知識問題」。本校定番の「文法」だ。波線部「常連と口をきくようになってから、僕は彼等からいろんなことを教えられた」についての「文法的な説明」として「適切でないもの」を答える。「文法的な説明」は全て波線部各単語の「品詞」に関するものなので当然、「品詞分解」する必要がある。「常連(名詞)/と(助詞)/口(名詞)/を(助詞)/きく(動詞)/ように(助動詞)/なっ(動詞)/て(助詞)/から(助詞)、/僕(名詞)/は(助詞)/彼等(名詞)/から(助詞)/いろんな(連体詞)/こと(名詞)/を(助詞)/教え(動詞)/られ(助動詞)/た(助動詞)/」となる。各選択肢を確認し判別する。①「5段活用の動詞『なる』が使われている」⇒「なっ(動詞)」=動詞「なる」の連用形=適切。②「たとえの助動詞『ようだ』が使われている」⇒確かに「ように(助動詞)」は助動詞「ようだ」の連用形だが、ここでは「たとえ」ではなく、続く「なる」の「内容」を示す用法=不適切。③「起点を表す助詞『から』が使われている」⇒2か所ある「から(助詞)」はともに「起点」=適切。④「連体詞『いろんな』が使われている」⇒「いろんな(連体詞)」=適切。⑤「受け身の助動詞『られる』が使われている」⇒「られ(助動詞)」=助動詞「られる」の連用形で、用法も「受け身」=適切。したがって、「答え」は「不適切」な②となる。本校では「口語文法」がほぼ必出。基本となる「品詞分解」は必ず習得しておくこと。
<時間配分目安:1分強>
【大問三】
- 時間配分:
鎌倉時代中期の教訓説話集。全三巻で約280話を収録。「十訓」こと「十ケ条の教戒」を掲げ、その後の「教訓書」の先駆となった。本文は、第一「人に恵を施すべき事」の五十七。「古文単語の意味」などの「基礎的知識」ではなく、「文脈把握」「主語特定」「内容解釈」といった応用力が問われている。その点では難問だが、「※注」を十分に活用すること。以下、いくつか検討してみよう。
[問1] 「語句の意味の選択肢」(全2問/各5択/マーク式)。波線部(ア)「能」、(イ)「用意」の「意味」をそれぞれ答える。ともに「口語」にもある言葉だが、「文語」なので留意しなくてはいけない。確認する。(ア)「能」には「才能。能力」だけではなく、「技芸。芸能」という意味がある⇒「答え」は④「技芸に関する実力」。(イ)「用意」=「気をくばること。心づかい」で、「口語」の「準備」とはやや異なるので要注意⇒「答え」は③「心遣いする」。本校では「大学入試レベル」の語彙力が求められる。高校用の「古文基礎単語」は押さえておきたい。
<時間配分目安:全問で1分>
[問2] 「主語特定の組み合わせ選択肢」(5択/マーク式)。二重傍線部(1)「申しほむる」、(2)「とがめ」という動作は「誰の行為か」の「組み合わせ」を答える。定番の「主語特定」だ。各選択肢の「候補」は、「知房」「伊家弁(これいへのべん)」「人々」「筆者」の4者だ。「申しほむる」(=ほめ申し上げる)という「動作」は、直前の「『知房』所詠(=~の詠んだ)の歌を『伊家弁』、感歎し」て述べている部分だと読み取れるはず。つまり、「主語」は「伊家弁」、よって「組み合わせ」から、選択肢は④か⑤になる。次に「申しほむるをだに、かくとがめけり」(=ほめ申し上げることにさえ、このように非難したそうだ)だが、ここは「知房」と「伊家弁」とのやりとりなので当然、「とがめ」たのは「ほめられ」た「知房」だ。したがって、「答え」は⑤になる。「古文」では「主語」が省略されることがとても多い。「わざわざ記さなくても分かる」ので「省略」しているのだ。したがって、前後の「文脈」や「敬語」などから特定していけばいいと心得よ。
<時間配分目安:1分>
[問3] 「空所補充の漢字記述」(「漢字1字」指定/記述式)。「総合的知識問題」。「慣用句」。傍線部(A)「所置か」について、示されている「所置く」と「同じ意味を表す慣用句」の空所に「当てはまる適切な漢字一字」を答える。慣用句は「一□置く」となっている。本校志望者であれば、この時点で「答え」が特定できなくてはいけない。「一目を置く」だ。「(囲碁で弱い者が先に一つ石を置いて勝負を始めるところから)自分より相手が優れていることを認め、一歩を譲る」ことだ。よって、「答え」は「目」。
[問5] 「心情説明選択肢」(5択/マーク式)。傍線部(C)「今よりのち、和歌をよむべからず」について、ここでの「知房の思いはどのようなものか」を答える。ポイントは「べからず」だ。「べから」=助動詞「べし」の未然形、「ず」=助動詞「ず」の終止形だということは判断したい。「ず」はもちろん「打消し」だが、「べし」には「当然・推量・意志・可能・命令」など多くの意味がある。ここではどれか? 傍線部は会話部分で「知房」の言葉だということは分かるはずだ。つまり、「知房」の「一人称」となる。であれば、「意志」だと判別したい。したがって、「今後和歌を詠むつもりはない」とある選択肢②が「答え」になる。「古文」では「文語文法」、特に「助動詞」「助詞」の「意味・用法」がとても重要になる。基本的な内容は高校用の参考書などで確認しておくことが肝要。
<時間配分目安:1分>
攻略のポイント
●判別が紛らわしくて複雑な「選択肢設問」、どう「攻略」するか? 「解法」に則しての「段階的消去」が最大のポイント。したがって、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておくことが必要になる。それによって「失点」を防ぎ、「得点力」を安定させたい。「合格最低得点率」は8割ほどとハイレベル(過去7年間の男女合計平均で77.0%。本年度は驚天動地の昨年度の87.5%より大幅に下がって74.6%)。ほんの少しの「失点」でも致命的になると心得よ。
●「総合的知識問題」も決して侮れない。「口語文法」も含めた直接的な出題だけでなく、内容理解でも「高度な語彙力」が求められる。本校を志望したその瞬間から、独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが必須(学校や塾での学習だけでは全く不十分)。
●「古典」の「攻略法」は? 「重要古文単語」(最低200語ほど)の定着は当然だが、「内容理解」も求められるので「基礎的文語文法」は押さえておきたい。その上で、数多くの「古文」に慣れておくことが重要。また、「漢文」の出題もあるので(本年度は未出)、「返り点」「訓点」「書き下し文」「基礎的句法」などの基本的知識は押さえておく。
●試験時間は50分。問題文のボリュームは「現代文」だけでも7000字ほど(本年度は約6200字)。当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。