広尾学園高等学校 入試対策
2021年度「広尾学園高等学校の国語」
攻略のための学習方法
現代文の読解
例年、論説文が2つ出されている。文学的文章の出題はない。字数は総計7000~9000字前後。高校生レベルの文章で受験生にとってはやや難しい。
設問形式は計29問中、言語事項などを除いて、選択式10問・書き抜き4問・記述4問(2021年度)。記述はいずれも60~100字ほどの長文記述になっていて難しい。
記述問題
字数が多いので、かなり練習を積んでおかないと試験本番で混乱し、うまくまとめられない事態が懸念される。本校の長文読解は論説文だけなので、論理的文章を指定された字数で要約する訓練が必要ということになる。
おおよそは20~30字でひとつの事柄がまとまり、50~60で大きなまとまりを形成すると考えれば、使う部分を整理しやすいだろう。20~30字ほどで重要点を抜き出しておき、設問の指定にそって組み合わせて答えとするのである。
まずは長文読解の基本どおりに問題をこなしていこう。形式段落→意味段落の整理(その際、意味段落の内容をタイトルとしてつけてしまうとわかりやすい)・段落ごとのつながり・各段落の最初と最後に特に注意しながら要点と細部の区別・それらをまとめて要旨・要約へといたる。
記述問題はまとめる内容が整理できていないと何回も書き直して時間切れになる恐れがある。素材文を読みながら印・傍線で重要点を目立つようにしておき、関連する事柄は線で結んでおくなどすれば解答の際に役立つだろう。同程度の文量の問題を多くこなし、60字や120字くらいで要約する練習を繰り返して十分に慣れておきたい。
選択肢問題
素材文が難しめなので選択肢の文も難しくなってしまうが、内容自体は迷わせるような微妙なものは少なく、選びやすくはなっている。本文をしっかり理解できていれば得点源にできるだろう。
古文
600~800字ほどの素材文で例年4~5問の出題となっている。配点は2割ほどあるので無視はできない。
現代語訳はつかないが、難しい単語の注はついている。内容も古文の中では比較的やさしい、現代人にもわかりやすい文が使われている場合も多く、難易度は配慮されている。
とはいえ、学校でさっとなぞっただけの古文の学習では足りない。最重要単語や基本文法を頭にいれ、高校生初級レベルの古文の教材で勉強しておこう。古文に頭を慣らしておくだけでも、得点につながるはずである。
漢字
言語事項などの知識問題はあまり出題されない。漢字の読み4問・書き6問という形でほぼ定着している。読み書きともに難しい漢字も出されているので、中級程度の漢字をマスターし、できれば上級レベルまで手を伸ばしておきたい。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
2021年度「広尾学園高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
2問の論説文読解で約7100字・古文750字ほどで計7800字ほどの文量で、総解答数は29問。
4問の長文記述は難易度も高く計17~19分ほどは取られそうである。どうしても時間が足りなければ1問は諦めるのも作戦であろう。
漢字10問は3分程度でさっさと済ませ、選択肢の問題を全てこなしてから、記述問題に時間いっぱい取り組む。
【大問一】漢字の読み書き
- 時間配分:3分
問一 ① とろ ② こうじょう(か) ③ こうたく ④ さび(れて)
問二 ① 添加 ② 振幅 ③ 迫真 ④ 輩出 ⑤ 貯蓄 ⑥ 狭(まって)
【大問二】論説文の読解
- 時間配分:14分
これまで男性視点で考えられてきた政治学について、ジェンダーの視点を取り入れることでそれまで見えていなかった問題点が浮かび上がり、学問として豊かになると筆者は主張している。
問一 男性が捕らわれた女性を助けに行くという、ゲームにおける極めて伝統的な「男女の役割分業感」ではなく、女性が能動的に行動して苦境を脱するという「別のゲームのあり方」があってもいいのではないか、と筆者は述べている。
問二 ゲームにおいて姫君はさらわれたきり何もせず、男性勇者にただ助けられるのを待っているものだという、多くのゲームプレイヤー・製作者の性差による決めつけ・偏見・先入観を指していると思われる。「バイアス」は「思い込み・認識の歪み」という意味である。
問三 筆者はゲーム業界・ゲーム愛好家たちにおける主流派とは違う視点から、彼らが当たり前だと思っている「男性優位の慣行」を批判している。
問四 サーキージアンはゲームが好きだからこそ主流派とは異なる視点から批判を展開している。ジェンダーの視点に基づいて見直すことで、もっと豊かなゲーム体験ができるのではないかと考えているのである。政治に対するフェミニズムの批判についても、「同じこと」が言えるのではないか、という話の流れである。
問五 なぜ「驚き」なのかというと、「想像もしない角度から自分の世界観を覆される」からである。「~こと」まで抜き出して二十三字になる。
問六 ゲームを取り巻く環境と同様に、政治学の世界でもこれまでは男性中心の視点から考えられてきた。そこにフェミニズム・ジェンダーの視点を取り入れることで、それまでとは世界の見え方が異なってくる。新たにとらえ直すことで、従来は問われてこなかった様々な問題が浮かび上がり、解決へ向けて動き出すのである。
【大問三】論説文の読解
- 時間配分:23分
人間の意識は、発話や文章生成において全体の方向性や含意を持たせる働きがある。それは、意識のない人工知能ではできないことなのである。
問一 コンファビュレーションは「意識のコントロール」を受けないので、全体としての
構成や含意を整えにくい。人工知能の自然言語処理も同様に「意識のコントロール」
がないので、局所的・文法的には正しくても全体的な整合性や含意の焦点が不確かに
なってしまうのである。
問二 人工知能の自然言語処理には統計的な学習則が用いられているので、「書き出し」に続いて生成される文章は意味は通っているし文法的にも正しい。しかし、全体として書き手の意図が見えない、焦点のぼやけた文章になってしまう。人間の作った文章に似てはいるが同じではないという点を「もっともらしい」と表現しているのである。
問三 人工知能は局所的な意味や文法は正しく記述できるが、全体としての方向性や含意は作れない。全体としての「非局所的な情報処理」は意識を持つ人間にしかできないのである。
問四 しゃべり出し・書き出しの部分には全体の構想や方向性が表れる。このような「一発目」の文章生成は意識を持つ人間にしかできないことである。それは、多くの情報を圧縮して意識にのぼらせることができるクオリアの働きである、という指摘があるので選択肢ウが合う。
問五 チューリング・テストとは、ある機械が人間らしいかどうかを判定するテストである。現状、人工知能には意識がないため、全体の方向性を決めたり含意を持たせたりといった意識の働きに基づく「人間らしい」文章は書けない、ということが理由となるであろう。
問六 ア. コンファビュレーションは作家の創作において創造的な過程の一部ではあり得るが、書き出しが書けない人工知能と作家の創作が似ているとは言えない。
エ. 人間の文章を基礎としている「ので」独創的な文章は書けない、という論調は見られない。
【大問四】古文の鑑賞
- 時間配分:10分
芸にもならないことを利口ぶって尋ねてきた俗人を、一休和尚が軽くあしらったエピソード。
問一 ① 「五百羅漢には一人一人名前がおありになるだろう。お坊さまはきっとご存じであろう。うかがいたいものです」と「世俗二三人」が僧に申し上げた。
② 僧が方丈に逃げ帰ると、寺に来ていた一休が「どうしたのですか」と僧にお尋ねになった。
③ 一休は「私も知らないけれども、行って言い聞かせましょう」と羅漢堂へ進み出て、「あなた方に申し上げましょう。羅漢像の名前をお知りになりたいのですか」とおっしゃった。
問二 俗人たちが知りたがった「羅漢像の一々の名」を、そんなこと覚えてもしかたがない(芸にもならないこと)と一休は断じているのである。
問三 「なにかは~んや」は反語を表し、「どうして○○だろうか、いや○○ではない」という意味。「給ふ」は一休に対する尊敬語であるから、敬語表現になっている選択肢を選ぶ。
問四 直前の内容について、羅漢像のことに限った話ではないだろう、とまとめている。直前には「訊いても覚えても役に立たないことを、言わないに勝るのはすばらしい。つまらないことを利口ぶって訊いて、軽くあしらわれた」と書かれている。
攻略のポイント
長文読解と記述対策が焦点であろう。
論説文の読解なので、論理の流れを把握して要約する力をつけることが目標となる。
記述は100字超の問題も出されるので、同程度の字数の問題を多くこなし、字数の感覚を得ておく。自然科学・人文科学などの論理的文章を読みながら要点に印をつけるなど、普段の読書も練習に組み込むことをお薦めする。
古文はやはり頭を慣らしておくことが大事なので、中学の教科書だけでなく、高校の教材を使って少しでも多くの古典に触れておくと良いだろう。