法政大学高等学校 入試対策
2015年度「法政大学高等学校の国語」
攻略のための学習方法
[知識]
「直接出題」だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われることになる法政の「総合的知識問題」。
いかなる「攻略法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。
今からでもできることは、ある。
先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されているし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
[記述]
「法政の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。
最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~60字程度で書いてみる(法政の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく(その際はマス目のない用紙を使いたい)。
[速読]
大学入試にも匹敵するボリュームの問題文を読まなくてはならない。
全体で6000~7000字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。
しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
法政に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
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2015年度「法政大学高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「小説」、出典は宮下奈都「楽団兄弟」(文字数約3700字)。小問は全11問(解答数16)。「選択肢」(「組み合わせ」「複数完全解答」あり)「抜き出し」「空所補充」、「説明記述」(「50字以内指定」1問と、「字数指定なし」2問)、「総合的知識問題」「漢字の読み」(4問)。問題文は5分強で読み切り、設問を20分数分で解きたい。
大問二は「論説文」、出典は青木保「異文化理解」(文字数約3600字)。小問は全10問(解答数16)。「選択肢」(「組み合わせ」「複数完全解答」あり)「抜き出し」「空所補充」「乱文整序」、「説明記述」(「60字以内指定」1問と、「字数指定なし」1問)、「総合的知識問題」「漢字の書きとり」(4問)。問題文は5分ほどで読み切り、設問を20分弱で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:
有名な交響楽団の楽団員になった「僕」にとって気になる2人、第1バイオリンでコンサートマスターの「ヅカさん」と、トロンボーンでの「キーチさん」。見た目も年齢も違う2人だが、楽団員からは「兄弟みたい」だと言われていた――。
本文は、「僕」がそんな2人から演奏の極意ともいえる「神の声」を学び、新たな目標を見出していく姿を描いている。音楽に関する専門用語があり、やや分かりづらい部分もある。
法政らしく「高度な語彙力」が求められる設問が多い。
以下、いくつか考えてみよう。
[問一] 「心情説明記述」(字数指定なし、50字程度の解答欄)。
傍線部①「陰にある慢心」について、「どのような気持ちか」を説明する。
「慢心」=「おごり高ぶること。自慢する心情」という「原意(本来の意味)」は知っていなければならない。
では、どのような「慢心」なのか? 先ずは、「傍線部(空所部)一文一部の法則」で判断する(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)。
直後に「まで見抜かれていた」とある。であれば、前で説明されているはず。
直前を確認する(「小説は同一場面の直前直後に根拠あり」が「小説の解法」の大原則)。
「ヅカさん」の「ムラがあるんだよ。ミスしてもいいってどこかで思ってないか? 見せ場でちゃんとカバーしてみせるって思ってるところ、ないか?」という言葉を受けていることが分かる。「慢心」と合致している。あとは傍線部の「陰にある」も加味して「過不足なく」まとめればいい。
たとえば、「心のどこかで思っている、ミスをしても見せ場でちゃんとカバーしてみせるというおごり高ぶる気持ち。」といった「答え」になる。
「説明記述」では、傍線部の「原意」を踏襲しつつ、正否の分岐となる「最重要要素」を「文末」としてまとめること。
<時間配分目安:2分半>
[問五] 「漢字の空所補充抜き出し記述」(「1字」指定)。
「総合的知識問題」。
本文中の空所「⑤」に当てはまる「漢字1字」を抜き出す。
先ずは「傍線部(空所部)一文一部の法則」で内容確認。前後は「思いが⑤裏をかすめ」となっている。もう分かったはずだ。基礎的な「慣用表現」、「脳裏をかすめる」(=「ふと頭に浮かぶ」)だ。「脳裏」という単語は、傍線部②の前行にある。従って、「答え」は「脳」。
当然、法政志望者にはこの程度の「語彙力」は求められる。
<時間配分目安:30秒>
[問八] 「語句の空所補充組み合わせ選択肢」(4択)。
本文中の空所「 a 」~「 d 」に当てはまる「語句」の「組み合わせ」を答える。
ここも「総合的知識問題」。「平然と」と「やすやすと」は何の問題もないだろうが、「愕然と」と「飄々と」はどうか?
そもそも後者は読めるか? 「ひょうひょう」だ。「世間離れし、超然としてつかみどころのないさま」だ。
「愕然」は「ひどく驚くさま」。で、空所前後の「文脈」から「内容」を捉え、「語句」を特定していく。
「慢心まで見抜かれていたことに」⇒「 a した」=「驚く」、
「工夫し技巧を凝らしても」⇒「 b 裏切る」=「たやすく」、
「勝ちに拘る」⇒「 c した人だとばかり思っていた」=「気にしない」、
「びくともしてないんですね」⇒「 d うなずく」=「落ち着いて」、
こうした様子だと判断できるはずだ。従って、「答え」は、
(a)「愕然と」
(b)「やすやすと」
(c)「飄々と」
(d)「平然と」
の選択肢(エ)となる。
「組み合わせ」なので「消去」も活用すること。
ただ、ここまでの「高度な語彙力」も必要になると心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[問十] 「文法的用法の選択肢」(4択)。
ここは「文法」の「総合的知識問題」。
本文中の波線部の「と」について、「同じ意味・用法のもの」を答える。
波線部は「つぶやくと」、これは「順接の接続助詞」。
選択肢
(ア)「トンネルを抜けると雪国」=「順接の接続助詞」、
(イ)「雨が降ろうと僕は行く」=「逆接の接続助詞」、
(ウ)「『こんにちは』と挨拶」=「引用の格助詞」、
(エ)「きっぱりとした態度」=「きっぱりと」という「副詞」の一部。
よって、「答え」は「(ア)」となる。
「助詞」の種類や細部の「意味・用法」まで押さえていないと、太刀打ちできない。法政志望者は、正確な徹底した「文法習得」が必須となる。
<時間配分目安:1分以内>
[問十一] 「漢字の読み」(全4問)。
難易度は高い。単に「でる順」などでの中途半端な「習得」では、「法政の漢字」には対処できない。
ここで特に注意を要するのは、
(B)「据えて」=「す(えて)」、
(C)「辛辣」=「しんらつ」。
読めなかった諸君は、確実に定着させておくこと。
<時間配分目安:1分以内>
【大問二】
- 時間配分:
「異文化」への「憧れや誘惑」は、文化集団だけでなく個人に対しても「生きがい」や「自己表現の動機」を与えてくれるが、「憧れ」は容易に「軽蔑」へ転じて、「異文化との断絶」に傾く場合もあるので、冷静に判断し、不当に貶めていないかを改めて検討いなければならない、と論じている。
「文化論」だが難解な語句は少なく、内容も理解しやすいはずだ。
法政定番の「乱文整序」、「本文合致」「抜き出し」「説明記述」、またして「文法」など、多彩な設問が並ぶ。
以下、いくつか検討してみたい。
[問二] 「換言説明記述」(字数指定なし、50字程度の解答欄)。
傍線部②「その種の力」について、「何か」を説明する。
典型的な「指示語換言記述」だ。
無論、「その種」とは何か? 「どのような力」なのかを捉えていくことになる。
「指示語」なので直近からたどるが、直前は「具体例」なので、その前を確認する。
すると、「一種の異文化として、異文化であるが故に得られる好奇心や憧れをてこに、人々に活力を与えるもの」という説明がある。これだ。「力」が「文末」になるように「語順」を整えて「過不足なく」まとめればいい。
たとえば、「一種の異文化として、異文化であるが故に得られる好奇心や憧れをてこに、人々に活力を与える力。」といった「答え」になる。
この設問のように直接的に問われていなくても、「指示語」はすぐに開くことが肝要だ。
<時間配分目安:1分半>
[問三] 「空所補充の乱文整序」。
示されている(ア)~(エ)の4つの文を、本文中の空所「 ③ 」に当てはまるように、「適切な順番」にする。
「乱文整序」では先ず、それぞれの「乱文」どうしで「順序」が確定できるものを特定し、次に、「乱文全体」と「本文」とのつながりから「最初」と「最後」を決定していく。
その際に「手がかり」として重要なのは当然、「指示語」「接続詞」などになる。ということで、「(ア)~(エ)」で「順序」が特定できるものを確認する。
(ア)の冒頭には「たとえば」とあり「テレビのクイズ番組」が紹介されているので、最後が「マス・メディアの現状を見れば明らか」となっている(イ)の直後だと分かる(イ→アが確定)。
また、(エ)は「クイズ番組」の説明の続きなので、(ア)の後しかない(イ→ア→エが確定)。
残りの(ウ)は「また生活文化の中にあふれる外国製品」で始まっている。
ここで、「本文とのつながり」を確認する。空所の直前は「異文化を抜きにして生活が成り立っていないように思います」となっている。であれば、(ウ)と同内容なので、「また」という「並立」で直結するのは不自然だと分かる。
一方で(イ)の冒頭は「そのことは日本人の生活が……」、「指示語」内容を考えれば、本文の直後でつながる。従って、(イ)が乱文の最初になる。
整理すると、「答え」は結局「(イ)→(ア)→(エ)→(ウ)」。
とても複雑だ。が、筋道に則して判別していけば何とかたどり着く。決して諦めてはいけない。
<時間配分目安:3分>
[問五] 「換言説明選択肢」(4択)。
傍線部⑤「憧れと軽蔑といった二元的、あるいは好か悪かといった両極端の捉え方」について、「どういうことか」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。
先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。
ここは「換言説明」なので、最初に傍線部文末の「両極端の捉え方」と、各選択肢の「文末」(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)との「原意」が結びつかないものを「消去」する。
選択肢は、
(ア)「二つのどちらかに区別する」、
(イ)「判断をする」、
(ウ)「中間に位置する判断をする」、
(エ)「どちらかに分けて判断をする」。
どうか? 「両極端」の「捉え方」なのだから、「どちらか一方」としている(ア)(エ)は即座に「消去」、また、「両極端」と「中間」とは結びつかないので、(ウ)も「消去」できるはずだ。
結局、残るのは(イ)のみ。「文末」以外の説明も誤ってはいないので、「答え」となる。「一発消去」だ。
「原意消去」は使える! 必ず自らの「ツール」にすること。
<時間配分目安:1分以内>
[問七] 「語句の空所補充組み合わせ選択肢」(4択)。
本文中の空所 a ~ d に当てはまる「副詞」「接続詞」の正しい「組み合わせ」を答える。
特に、「接続詞」では「逆接」はともかく、「順接」には十分に注意すること。同じ「順接」だと、どれも当てはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「内容」を確認する必要がある。
また、段落冒頭の「接続詞」は前段落全ての内容を受けているので注意すること。
さて、この問題での語句は、「副詞」の「たとえ」「とりわけ」、「接続詞」の「ちなみに」「たとえば」。 a ~ d の中で分かりやすいものから特定していけばいい。
強いて挙げれば c だ。直前に「同じような」「事例がいくつかあります」とあり、直後は「十九世紀の終わりのパリバンパクで」と明らかに「具体例」だと分かる。ということは、 c =「たとえば」で確定。その「組み合わせ」は、 a から順に「たとえ」「ちなみに」「たとえば」「とりわけ」となっている選択肢(ウ)だけだ。よって、「答え」となる。
「接続詞」「副詞」などの「空所補充」は法政に限らず定番中の定番、くれぐれも失点することのないようにすること。
<時間配分目安:1分以内>
[問九] 「文法的用法の選択肢」(4択)。
またしても「文法」。本文中の波線部の「で」について、「同じ意味・用法のもの」を答える。
波線部は「社会の重要な要素であって」、これは「断定の助動詞」の「だ」の「連用形」。
選択肢
(ア)「彼は医者である」=「断定の助動詞」の「だ」の「連用形」、
(イ)「駅で待ち合わせる」=「場所の格助詞」、
(ウ)「表面は柔らかである」=「形容動詞」の「柔らかだ」の「連用形活用語尾」、
(エ)「バスで出かける」=「手段・方法の格助詞」。
よって、「答え」は「(ア)」となる。
ここでは「助動詞」だ。やはり、細部の「意味・用法」まで押さえておく必要がある。「文法習得」を疎かにしては、法政合格はあり得ないと心得よ。
<時間配分目安:1分以内>
[問十] 「漢字書きとり」(全4問)。
これまた悩ましく難しい。
(A)「モクゲキ談」=「目撃」(細部に要注意)、
(B)「パリバンパク」=「万博」(「万国博覧会」の略だということに気づくこと、
(C)「アイデアのシュウイツさ」=「秀逸」(難易度が高い)、
(D)「サッカクを覚えて」=「錯覚」(「文脈」から判断すること)。
「漢字」はあらゆることをマスターせよ。
<時間配分目安:1分>
攻略ポイント
●先ずは「総合的知識問題」だ。
中でも「口語文法」は最重要課題。
「付属語」(「助動詞」「助詞」)も含めて、徹底した理解と定着が不可欠だ。
無論、「漢字」も決して侮れない。
いずれにしても、「高度な語彙力」を含め「あらゆる知識」が求められる。法政を志したその時点から、独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが重要だ。学校や塾での学習だけでは、全く不十分なので、「独習」は欠かせない。
「合格ライン」は7割程度と高い(5年間平均の「合格者平均」は69.9%)。「配点比率」が大きい「知識」での「失点」は合否に直結すると心得よ。
●法政定番の「乱文整序」や「選択肢設問」等にはどう対処するか?
いかに「解法」を的確に用いるかがポイント。「設問内容」に応じた「解法」に則して解いていくことが必要だ。そのためにも、基本的「解法」を完全習得して、適切に応用できるようにしておく。それによって、「得点力」を安定させたい。
●出題数の多い「説明記述」。
正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。「内容」から必要度を特定し、優先度の高いものから積み上げていく。各「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習することが必要だ。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。
問題文は6000~7000字程度。平均的ではあるが、やはり、速く正確に読み取ることが求められる。分速700字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。