法政大学高等学校 入試対策
2016年度「法政大学高等学校の国語」
攻略のための学習方法
知識
「直接出題」だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われることになる法政の「総合的知識問題」。
いかなる「攻略法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。
先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。
要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されているし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
記述
「法政の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。
最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~60字程度で書いてみる(法政の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく(その際はマス目のない用紙を使いたい)。
速読
大学入試にも匹敵するボリュームの問題文を読まなくてはならない。
全体で6000~7000字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。
しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
法政に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
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2016年度「法政大学高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「小説」、出典は多和田葉子「雪の練習生」(文字数約4100字)。
小問は全11問(解答数14)。「選択肢」(「複数完全解答」あり)、「抜き出し」「空所補充」、「説明記述」(「50字以内指定」1問と「字数指定なし」1問)、「総合的知識問題」、「漢字の読み」(4問)。
問題文は6分強で読み切り、設問を20分弱で解きたい。
大問二 は「論説文」、出典は内田樹「日本辺境論」所収の「水戸黄門のドラマツルギー」(文字数約3400字)。
小問は全11問(解答数15)。「選択肢」(「組み合わせ」あり)、「抜き出し」「空所補充」、「説明記述」(「50字以内指定」1問と「字数指定なし」1問)、「総合的知識問題」、「漢字の書きとり」(4問)。
問題文は5分弱で読み切り、設問を20分ほどで解きたい。
【大問一】
- 時間配分:
人と動物との境を自在に行き来しつつ語られる、美しくたくましいホッキョクグマ3代の物語。
本文では、ベルリン動物園で飼育係の愛情に育まれ、世界的アイドルとなっていく孫世代の「クヌート」が「自我」に目覚めていく様子が描かれている。
決して難解な文章ではないのだが、登場する「クマの名前」や「人称表現」が複雑で混乱する恐れがある。本校らしく総合的で高度な「国語力」が求められる設問が多い。以下、いくつか考えてみよう。
[問一] 「内容説明選択肢」(4択)
傍線部①「いいセーターを着ている」について、「どのような様子を表しているか」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたいが(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)、傍線部だけでは難しい。
そこで、直前直後を確認する(「小説」では「同一場面の直前直後に根拠あり」が鉄則)。「今日も暑いな」と声をかけたホッキョクグマの「クヌート」に「寒いよ」と応えた「マレーグマ」に対して、「クヌート」が自分は「いいセーターを着ている」と言い返している場面だと分かる。つまりは「比喩表現」としての「いいセーター」だ。その「原意」と、各選択肢の「説明」が結びつかないものを「消去」する。
(ア)「上質のセーターを着ている」、
(イ)「暖かい服を何枚も重ね着している」、
(ウ)「ふかふかの毛が生えている」、
(エ)「体毛がからまってセーターのようになっている」。
「ホッキョクグマ」の「比喩表現」としての「セーター」なのだから、(ウ)以外は「消去」できるはずだ。
従って、「答え」は「(ウ)」となる。「一発消去」だ。「解法」を用いての「原意消去」、必ず自らの「ツール」にすること。
<時間配分目安:1分以内>
[問二] 「語句の空所補充記述」(「漢数字」指定)
「総合的知識問題」。本文中の空所「②」にあてはまる「一」~「三」の中の「漢数字」を答える。
空所前後を確認する。[問一]と同じ会話のやりとりで、「マレーグマ」が「クヌート」に対して「お前は自分を自分でクヌートと呼んでいるのか。②人称の熊か」となっている。
つまり、空所は「人称表現」だ。「二人の会話」で通常、「一人称」は「私」「僕」……、「二人称」は「あなた」「君」……。なのに、「自分」のことを「固有名詞」で呼ぶということは「三人称」のようになるわけだ。
従って、「答え」は「三」だ。「文脈」を読み解いた上で、正確な知識が求められるという本校らしい問題だ。
<時間配分目安:1分以内>
[問三] 「条件付き換言説明記述」(「50字以内」指定)
傍線部③「みんなが自分自身のことを『わたし』と呼んでいて、それでよく混乱しないものだ」について、「どういうことか」を説明する。
「条件」は「内容が分かるように説明する」こと。「説明すべき内容」は「条件」から自ずと判明する。「みんなが自分自身のことを『わたし』と呼んでいて」「どのような混乱」が生じるのかということだ。
先ずは、直前直後を確認する。直前から、「マティアス」本人が自分のことを「マティアス」と呼ばずに「わたし」と言っていることを「何と不思議な現象だろう」と捉え、続けて、「驚いたことに」「クリスティアン」も「自分自身」を「わたし」と呼んでいることに対して、「よく混乱しないものだ」と思っていることが分かる。
ということは、「みんなが自分のことを同じ『わたし』と呼んでいたら、個々人の判別ができなくなる」という「混乱」が生じるわけだ。あとは、的確にまとめていきたい。
たとえば、「誰もが自分のことを『わたし』と呼んでいて、個々人の判別ができないという混乱が生じないのかということ。」といった「答え」になる。
「説明記述」では、傍線部の「原意」を踏襲しつつ、正否の分岐となる「最重要要素」を「文末」としてまとめること。
<時間配分目安:2分半>
[問八] 「表現技法の空所補充記述」(「漢字1字」指定)
「総合的知識問題」。傍線部⑧「グローバリゼーション、イノヴェーション、コミュニケーション」のように、「言葉の語尾を同じ音でそろえる表現技法」を示す、「□を踏む」の空所にあてはまる「漢字一文字」を答える。
さあ、どうだろうか? 「現代文」の「表現技法」としてはあまりお目にかからない。が、「漢文」を思い出してほしい。「特定の句」の最後は「同じ音」となるというルールがあったはずだ。そう、「韻を踏む」というあれだ。なので、「答え」は「韻」となる。
「現代文」だけの出題であるはずの本校でも、「隠れ漢文」があるということだ。であれば、「隠れ古文」もあり得る。要注意。
<時間配分目安:1分以内>
[問十一] 「漢字の読み」(全4問)
例年に比べ、本年度はさほど難しくはない。
(a)「金輪際」(=「こんりんざい」)⇒ややなじみが薄いか、
(b)「早速」(=「さっそく」)⇒できて当然、
(c)「重荷」(=「おもに」)⇒平易、
(d)「野次」(=「やじ」)⇒定番だ。(a)以外は全問正解でいきたい。無論、本校では高度な「語彙力」が求められていることには変わりない。
<時間配分目安:1分>
【大問二】
- 時間配分:
「日本人とは辺境人である」――常にどこかに「世界の中心」を必要とする辺境の民、それが日本人なのだと指摘し、多様なテーマを自在に扱いつつ日本人を論じている。
本文では、私たちには「虎の威を借る狐」の心性があるということを、ドラマ「水戸黄門」を具体例として述べている。なじみのある題材とはいえ、「文化人類学」を論じており難解な語句も多い。何とか内容を理解していきたい。
本校ならではの「説明記述」「抜き出し」「総合的知識問題」など、多彩な設問が並んでいる。以下、いくつか検討してみたい。
[問二] 「換言説明抜き出し」(「38字」指定)
傍線部②「何だかよくわからないもの」について、「その例として該当するもの」を「三十八字(句読点・記号を含む)」で抜き出し、「最初と最後の各五字」を答える。
「抜き出し」では、「抜き出すべき内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞っていくことが鉄則。
「内容」の「手がかり」を、「傍線部(空所部)一文一部の法則」で確認する(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)。
直後から、「出食わしたら、とりあえず」「宥和的態度を示す」ことになる「よくわからないもの」だと分かり、さらにその後から、「そのままぼんやり放置しておく」「もの」であると判明する。
次に、「抜き出し範囲」だ。「論説文」なので「同一意味段落」が基本、傍線部の前段落からの3段落だと分かるはずだ。
確認する。すると、前段落に、「『最新の学説』とか『○○はもう古い。これからは××の時代だ』といった『呪符』(と申し上げてよいでしょう)を突きつけられると。私たちは例外なしにふらふらと脱力してしまう」とある。「ふらふらと脱力してしまう」≒「宥和的態度を示す」「そのままぼんやり放置しておく」と読み解くことができる。
であれば、「答え」は「『最新の学」~「た『呪符』」となる。
本校合格の鍵となる「抜き出し設問」、「内容」→「範囲」→「確認」と順序立てて解いていくことが肝要だ。
<時間配分目安:1分半>
[問六] 「換言説明選択肢」(4択)
傍線部⑥「日本人と権力の関係」について、「その説明」を答える。
先ずは「原意消去」をしたいが、ここは「内容説明」なので「同一意味段落」を確認する。
直前の段落の最後に「そのようにして、私たちの社会では権力者の交替を制度的に担保してきた」とある。「指示語」を開く(「指示語」が出たらすぐに開くこと)。「その」=「次に彼(=『狐』)と同じタイプの『時流に迎合して威張っているだけのバカ』が出現したときに、『狐』はそれに対抗できずに、むざむざとその座(=『権力の座』)を明け渡す」ことだと分かる。
各選択肢の「文末」と照合して、「消去」する。
(ア)「権力争いが~低俗なものになる」、
(イ)「権力の頂点に上り詰めることになる」、
(ウ)「権力を明け渡さざるを得ない」、
(エ)「無辜の民衆を虐げることになる」。
無論、「むざむざとその座(=『権力の座』)を明け渡す」のだから、(ア)(イ)(エ)は即座に「消去」、(ウ)は「文末」以外の説明も誤ってはいないので、「答え」となる。
「文脈」に即して「原意消去」、必ず自らの「ツール」にすること。
<時間配分目安:1分半>
[問八] 「語句の空所補充組み合わせ選択肢」(4択)
本文中の空所 a ~ b に入るべき「語句の組み合わせ」を答える。
各選択肢は「接続詞」、本校に限らず定番の問題だ。
「接続詞」では「逆接」はともかく、「順接」には十分に注意すること。同じ「順接」だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。
単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「内容」を確認する必要がある。
では、空所を確認していく。 a には「結果」を示す選択肢中の「だから」、 b には「添加」の「そして」、 c には「順接」の「すると」、 d には「逆接」の「でも」が入ると分かるはずだ。
従って、「答え」は組み合わせ選択肢の「(イ)」になる。「候補」はひとつとは限らないので、必ず全てを「代入確認」すること。
<時間配分目安:1分>
[問十] 「文法的用法の選択肢」(4択)
「総合的知識問題」。波線部(ア)~(オ)の「語句」の中で、(ア)と「文法的に同じはたらきのもの」を答える。
(ア)は「ささやかな利益」=形容動詞「ささやかだ」の「連体形」だ。
他は、
(イ)「やおら『印籠』を取り出して」=「副詞」、
(ウ)「すたすた立ち去る」=「副詞」、
(エ)「きわだった才知」=動詞「きわだつ」の「連用形」(促音便)+助動詞「た」の「連体形」、(オ)「たちまちその名乗りを信じてしまう」=「副詞」。
「品詞」はバラバラだが、「はたらき」から(ア)は「連体修飾」、よって、「答え」は「(エ)」だと判別したい。
あらゆる「品詞」の「意味・用法・はたらき」までをも押さえていないと、太刀打ちできない。本校志望者は、徹底した「文法習得」が必須となる。
<時間配分目安:1分以内>
[問十一] 「漢字書きとり」(全4問)
難易度は高い。単に「でる順」などでの中途半端な「習得」では対処できない。
(A)「そうスイロンして」=「推論」(「文脈」から特定すること)、
(B)「チュウケンのように服従する」=「忠犬」(「比喩表現」に着目)、
(C)「公正なシンモンの場」=「審問」(超難問)、
(D)「思考停止にオチイる」=「陥(る)」(「細部」に注意)。
「漢字マスター」になることが求められる。
<時間配分目安:1分>
攻略ポイント
●先ずは「総合的知識問題」だ。
中でも「口語文法」は最重要課題。「付属語」(「助動詞」「助詞」)も含めて、徹底した理解と定着が不可欠だ。無論、「漢字」も決して侮れない。
いずれにしても、「高度な語彙力」を含め「あらゆる知識」が求められる。
本校を志したその時点から、独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが重要だ。
学校や塾での学習だけでは、全く不十分なので、「独習」は欠かせない。
「合格ライン」は7割ほどと高い(5年間平均の「合格者平均得点率」は67.5%、本年度は69.1%)。「配点比率」が大きい「知識」(本年度は約3割)での「失点」は合否に直結すると心得よ。
●本校定番の「乱文整序」(本年度は出題なし)や「選択肢設問」等にはどう対処するか? いかに「解法」を的確に用いるかがポイント。
「設問内容」に応じた「解法」に則して解いていくことが必要だ。そのためにも、基本的「解法」を完全習得して、適切に応用できるようにしておく。それによって、「得点力」を安定させたい。
●必出の「説明記述」。
正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。
「内容」から必要度を特定し、優先度の高いものから積み上げていく。各「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習することが必要だ。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は6000~7000字程度。平均的ではあるが、やはり、速く正確に読み取ることが求められる。
分速700字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。