法政大学第二高等学校 入試対策
2014年度「法政大学第二高等学校の国語」
攻略のための学習方法
[記述]
「法二の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。では、何を「書く」か？ 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。100字程度で書いてみる(法二の「長文記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか？ 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20～30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
[解法]
「空所補充」「脱文挿入」「選択肢」「記述」、その他の問題も含め「法二の国語」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか？ その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
[速読]
大学入試にも匹敵する(否、それ以上の)ボリュームの問題文を読まなくてはならない。全体で9000字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。「論説文」(説明文)であれば「Ｎの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。法二に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
[知識]
前述のとおり「直接出題」も多いが、「本文読解」等でも必然的に問われることになる法二の「総合的知識問題」。いかなる「攻略法」があるのか？ 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」＝「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも５年分以上)、「５割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「５割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されているし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(ＨＰから購入可能)等がオススメ。
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2014年度「法政大学第二高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「総合的知識問題」、小問は全３問(解答数は10)で、出題形式は「選択肢」「漢字記述」、４分程度で丁寧に終えたい。大問二は「論説文」、出典は松永和紀「メディア・バイアス－－あやしい健康情報とニセ科学」(文字数約3000字)。筆者は、サイエンス・ライター。毎日新聞社記者を経て、「農業」「食品」「環境」などの分野で精力的な執筆活動を続けている。本著作で「科学ジャーナリスト賞」を受賞。小問は全９問(解答数は11)で、出題形式は「選択肢」「抜き出し」「空所補充」「脱文挿入」「記述」(１問。80～100字以内指定)、「総合的知識問題」(１問)。問題文は４分強で読み切り、設問を20分弱で解きたい。大問三は「小説」、出典は伊集院静「古備前」(「少年譜」所収。文字数約5800字)。作者は小説家。「乳房」で「吉川英治文学新人賞」、「受け月」で「直木賞」を受賞している。「短編の名手」として定評がある。小問は全９問(解答数は15)で、出題形式は「選択肢」「空所補充」「記述」(１問。15字以内指定)、「総合的知識問題」(４問)問題文は８分強で読み切り、設問を15分弱で解きたい。
[大問一]総合的知識問題
- 時間配分：4分
「問一」の「対義語」(６問)は基本的には平易だが、(ウ)「高尚」⇔「低俗」、(カ)「特殊」⇔「一般(普遍)」には要注意。「問二」の「慣用句」、 「問三」の「語句の空所補充」(副詞)は易しいので全問正解しなくてはいけない。法二では「知識」の完璧な「準備」が求められる。
[大問二]論説文
- 時間配分：24分
本書は、世界に氾濫(はんらん)するとんでもない科学報道について、様々な具体例をもとに「メディア・バイアス」の構造を解き明かし、「科学情報の見極め方」「リスク評価の視点」などを論じている。本文では、「有機農業」が環境に配慮した農法であることは間違いないが、「食品としての安全性」については分からないということを述べている。「抜き出し」「脱文挿入」「空所補充」「長文記述」など、法二らしい多彩な小問が並んでいる。以下、いくつか考えてみたい。
[問一]
「接続詞の空所補充組み合わせ選択肢」。文中の空所(Ａ)～(Ｄ)に入る「接続詞」の「組み合わせ」を答える(「４択」)。どこの学校でも定番の問題。特に難しくはないが、「組み合わせ」の判別が複雑だ。「逆接」はともかく「順接」には注意が必要。どれでも当てはまってしまう可能性があるので、全ての候補を確実に「代入確認」しなくてはいけない。特に、「また」と「いっぽう」は前後の「文脈」との関連を的確に確認すること。なお、(Ａ)(Ｃ)(Ｄ)のように「段落冒頭」にある「接続詞」は、「前段落」の「全ての内容」を受けているので留意すること。「答え」は「エ」(順に「しかし」「すると」「いっぽう」「また」)。
[問四]
「条件付き換言説明の抜き出し」。傍線部②の「特別な物質を作り出すメカニズム」について、「どのようなものか」を抜き出す(20～25字以内指定で、「はじめ」と「終わり」の５字を答える)。「条件」は「メカニズム」に続く形にすること。「抜き出し」では、先ず「抜き出すべき内容」をつかみ、次に「抜き出し範囲」を確定することになる。「内容」は「傍線部」の字義どおりなのだが、これだけでは不十分なので「傍線部一文一部の法則」(「傍線部が一文の一部の場合、傍線部以外が重要」という重要な「解法」)を使う。直前に「ストレスを受けたときに」とある。次に、「抜き出し範囲」の確定。「段落相互関係」で考える(「論説文」の「本論部分」における「最重要解法」)。傍線部の段落はここまでの「意味段落」の「まとめ」になっており、戻っていくと前の８段落は「具体例」で、その前の段落と対応していることが分かるはずだ。従って、その段落が「範囲」になる。確認する。「ストレスに対して体内で自ら防御物質をつくり、身を守る」とある。「条件」にも「字数」にも合致する。よって、「答え」は「ストレスに」～「、身を守る」となる。法二の「抜き出し」では当てもなく彷徨ってはダメ。「解法」を用いて、的確に「範囲」を絞り込むことが重要だ。
[問五]
「脱文挿入の選択肢」。示されている「脱文」を、本文の空所[Ⅰ]～[Ⅴ]のどこに戻せばいいかを答える(「５択」)。「脱文挿入」は「接続詞⇒指示語⇒内容」で考える(基本的「解法」のひとつ)。ここでは「接続詞」「指示語」はないので、「内容」で考える他ない。「セロリ」が「天然農薬を体内で作り続いていたことを確認した実験も」あるという「内容」。「も」となっているので、この「脱文」の前に「セロリ」以外での同様の「実験」が示されているはずだと考える(「助詞」は「文脈」に大きく関係するので、必ず着目すること)。各空所を確認する。[Ⅰ][Ⅳ][Ⅴ]はすぐに「消去」できなくてはいけない。残りは[Ⅱ][Ⅲ]の「２択」。改めて「細部」を検討すると、[Ⅲ]の直後が「リンゴやセロリ」となっている。ということは、その前に「セロリの実験」が入るはずだ。従って、「答え」は「[Ⅲ]」。「脱文挿入」では、「解法」に則して「消去」して絞り込み、最後に必ず「代入確認」すること。
[問九]
「条件付き理由の説明記述」。多くの人々はなぜ「有機農業を安全と考えてしまうのか」、その「理由」を説明する(80～100字以内の字数指定)。「条件」は「有機肥料の問題点を踏まえる」こと。「傍線部設問」ではない。「論説文」で「傍線部」の指示がない場合、基本的に「論旨」を問われていると考えること。ここでも、「有機農業の安全性」は「論旨」そのものだということは分かるはずだ。「論旨」なので当然、「序論」部分と「結論」部分に着目する(「Ｎの法則」。「論説文」の「最重要解法」)。「有機農業」について、「結論」の最後に「英国でも環境によいことと安全であることを混同している人が少なくない」とある。そして、「序論」でも「食品の安全性については分かりません」と述べられている。まさに、これが「理由」そのものだ。つまり、「有機農業が環境によいということと安全性とを混同している人が少なくないから」ということが、最も重要な「直接的理由」になる。次に「条件」の「有機肥料の問題点」だが、「本論」後半で説明されており、それをまとめている最後は「有機肥料や堆肥の多用により微生物汚染のリスクが高まるのは厳然たる事実」となっている。以上のことを、整理してまとめればいい。「直接的理由」を「文末」として他の「必要な要素」を字数に応じて加えていくこと(「記述」では「最重要要素」を必ず「文末」にする)。なんら具体的「指示」のない法二の「長文記述」、戸惑うことなく「解法」に則して考えていくことが必要だ。
【大問三】小説
- 時間配分：21分
本作品は、困難に直面した一途な少年と時に厳しく時に優しく見守る一徹な大人、成長した少年はほろ苦い思い出とともに「人生の全てをそこで学んだ」と気づく——現在の日本が見失った遠く懐かしい記憶を瑞々しい筆致で描いた掌編小説集の一作。本文は、鮨屋として独立したイサムの店に見習いで入った少年「悠(ユウ)」が、店の開店時に人間国宝の陶芸家から送られた「古備前の器」を誤って壊してしまう場面。「総合的知識問題」や「心情説明」など、法二らしい多様な小問が多い。以下、２問だけ検討してみよう。
[問三]
「心情説明の選択肢」。傍線部②「ユウにやらせろ」と言ったのは「イサムのどのような気持ちからか」を答える(「５択」)。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意」を考えて(「原意絶対優位の原則」＝「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)「消去」したいが、「傍線部」だけではどうにもならない。そこで、直前直後を確認する(「小説は同一場面の直前直後に根拠あり」。これは「小説」の「最重要解法」)。直後で「ユウ、少し熱くな」と「条件」を課している。そこから、選択肢の(ア)(イ)(オ)は「消去」できるはずだ。残りは(ウ)(エ)の２択。さらにその後で、「イサム」は「ユウ」に対する「桃治」の「少し大人になったね」という言葉を思い出している。であれば、(ウ)は「消去」して「答え」は「(エ)」だと確定できる。法二の「選択肢設問」、確かな「根拠」に基づいて段階的に「消去」していくことが重要。
[問八]
「補足説明の記述」。傍線部④の「ひょっとしてあの古備前は……」について、「……」に「ふさわしい言葉」を答える(15字以内の字数指定)。「手がかり」は無論、直前直後。傍線部の「セリフ」のきっかけは直前の「小僧さんがこわしたのでは大変でしたからね」という「夫人」の言葉。その直後に「春の風が一瞬、イサムの顔を叩いた気がした」とある。そして、「セリフ」の直後で「イサム」は「目を大きく開いた」。さらに、こうした「やりとり」の前にこの「古備前」は「贋作」(「にせもの」)ではないかという描写がある。これらから分かることは何か？ 「贋作」であれば「大変」なことではないし、「目を大きく開いた」という衝撃もないはずだ。ということは？ そう、「古備前」は「本物だったのかも知れない」のだ。要は、これが「答え」だ。確実な「根拠」から論理的に「類推」することも必要だと心得よ。
攻略ポイント
●「法二の国語」では多種多様な「総合的知識問題」が出題され、配点比率も高い(14年度は33/100)。どのように「攻略」すべきか。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「敬語」「分かりづらい言葉の意味」等を確実に定着させること。、さらには、多彩な「副詞」の「意味」までも押さえておきたい(「空所補充」が頻出)。「高度な語彙力」が問われるので、法二を志したその時点から、独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが重要だ。学校や塾での学習だけでは、全く不十分なので、「独習」は欠かせない。「法二の国語」の「合格ライン」は７割程度(14年度は３コース平均の「合格者最低」は65%、「受験者平均」が59%。学校発表)。「配点」が大きい「知識」での「失点」は合否に直結すると心得よ。
●「法二の記述」。出題数は少ないが、「長文」のものもあり配点も高い(14年度は２問で14/100)。当然、「対策」が不可欠だ。先ずは「設問」と「条件」を正確に理解することが最優先になる(「記述」に限らないが)。その上で、実直に「記述」の「練習」を続ける他はない。当否の分かれ目となる「最重要な要素」を「文末」として他の「必要な要素」を積み上げていく(積上げ方式)という手法を完璧にマスターすること。「内容」から必要度の優先順位を特定し、優先度の高いものから積み上げていく。それぞれの「要素」を「20～30字程度」でまとめられるように徹底的に練習することが必要。それによって、法二のどのような「字数指定」にも対応できるようにしておきたい。
●「空所補充」や様々な「選択肢設問」等はどう「攻略」するか？ それは、「問題解説」でも指摘したが、いかに「解法」を的確に用いるかがポイントになる。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが必要だ。そのためにも、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておく。それによって、「記述」以外の「設問」でも「失点」を防ぎ、「得点力」が安定することになる。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文のボリュームは9000字程度。他の上位校と比較しても多い方で、当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速700字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。