法政大学第二高等学校 入試対策
2021年度「法政大学第二高等学校の国語」
攻略のための学習方法
記述
「法二の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。100字程度で書いてみる(法二の「長文記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
解法
「空所補充」「脱文挿入」「選択肢」「記述」、その他の問題も含め「法二の国語」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
本年度こそ減少したが(来年度以降の「共学化」で再び増加することも予想される)、これまでは大学入試にも匹敵する(否、それ以上の)ボリュームの問題文を読まなくてはならなかった。全体で9000字程度。解答時間は50分。
当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。法二に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
前述のとおり「直接出題」も多いが、「本文読解」等でも必然的に問われることになる法二の「総合的知識問題」。
いかなる「攻略法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。
先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されているし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
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2021年度「法政大学第二高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問?は「総合的知識問題」、小問は全3問(解答数10)。「『対義語』記述」、「『単語の意味・用法』判別」(文法)、「空所補充の『漢字一字』記述」(慣用句)。4分ほどで終わらせたい。大問?は「論説文」、出典は平田オリザ「わかりあえないことから――コミュニケーション能力とは何か」所収の「『対話』の言葉を作る」(文字数約2800字)。小問は全10問(解答数11)。「選択肢」(「不適切」、「総合的知識問題」、「空所補充」あり)、「抜き出し」(3問)、「説明記述」(「60~80字以内」指定1問)。問題文は4分弱で読み切り、設問を20数分で解きたい。大問?は「小説」、出典は本多孝好「エースナンバー」(文字数約2400字)。小問は全9問(解答数10)。「選択肢」(「不適切」、「空所補充」、「総合的知識問題」あり)、「抜き出し」(2問)。問題文は3分程度で読み切り、設問を16~17分で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:
「対義語の記述」・「単語の意味・用法判別」(口語文法)・「空所補充の漢字一字記述」(慣用句)という、ここ3年同じ小問構成だ。難易度は昨年度より難化している。だが、本校志望者であれば「全問正解」といきたい。確認してみる
[問一] 「対義語の記述」(全4問/「漢字2字」指定)。①「生産」・②「過激」・③「単純」・④「厳格」の「対義語」をそれぞれ答える。①と③は平易で、それぞれの「答え」は=「消費」と「複雑」。しかし、②と④は意外に曲者かも。「過激」=「度を越して激しいこと」なので、「対義」は「穏やかで、行き過ぎがない」=「穏健」が「答え」、また、「厳格」=「失敗、不成功、不正、例外などを許さない厳しい態度」で、「対義」は「心が広くて、よく人の言動を受け入れ、他の罪や欠点などを厳しく責めないこと」=「寛容」が「答え」だ。ひとつでも曖昧(あいまい)なものがあった諸君は確認しておくこと。
<時間配分目安:1分半>
[問二] 「単語の意味・用法判別の選択肢」(全3問/各3択)。
「口語文法」だ。示されている「①~③の組の傍線部の語の中から、一つだけ意味・用法が異なるもの」を答える。それぞれチェックしていく。①の(ア)「幼い頃の光景が思い起こされる」・(イ)「市長も参列される」・(ウ)「故郷の祖母のことがしのばれる」⇒助動詞の定番「れる・られる」だ。「受身・可能・尊敬・自発」の「意味・用法」があることは常識。(ア)と(ウ)は「自発」で、(イ)が「尊敬」だということは即判別できなくてはいけない。よって、「答え」は(イ)。②の(ア)「聞くところによるとあの男が犯人のようだ」・(イ)「波一つ立たない海は、さながら鏡のようだ」・(ウ)「彼の笑顔は輝く太陽のようだ」⇒助動詞の「ようだ」、「意味・用法」は「比喩・例示・不確か断定」の3つだ。無論、(イ)と(ウ)は「比喩」で、(ア)が「不確か断定」なので、「答え」は(ア)。③の(ア)「朝早く出発すれば、夜には着くだろう」・(イ)「考えれば、答えは出る」・(ウ)「ひどい風も吹けば、大雨も降る」⇒助詞の「ば」の「意味・用法」。(ア)と(イ)は「仮定条件」、(ウ)は「並列」だと判別できるはず、「答え」は(ウ)だ。本校では「口語文法」の習得が必須だ。
<時間配分目安:1分>
[問三] 「漢字の空所補充記述」(全3問/「漢字1字」指定)。
示されている①~③の「慣用句」の「空所」に入る「適切な語」を「漢字一字」で答える。さまざまな「慣用句」だ。やや戸惑うものがあるかも。確認したい。①「【 】にする……冷たくして相手にしない」⇒「答え」は「袖」⇒「漢字」が定着しているかがポイント、②「【 】をのむ……くやしさをこらえる」⇒「答え」は「涙」⇒あまり馴染みがないか、③「【 】を巻く……非常に驚き感心する」⇒「答え」は「舌」⇒これは頻出。尚、本校志望者は、「慣用句」だけではなく「故事成語」「ことわざ」「四字熟語」なども確実に習得しておくこと。
<時間配分目安:1分半>
【大問二】
- 時間配分:
「わかりあう」「察しあう」社会が中途半端に崩れていきつつある今、「わかりあえない」ところから出発するコミュニケーションについて考え、その上で「コミュニケーション能力」とは何なのかについて論じている。本文では、「現在の話し言葉の多くは先人によってつくられた言葉だが、現代社会はジェンダーや年齢といった区別なく『対話』を行うための言葉を生成していく過渡期」だと指摘している。「言語論」ではあるが難解な語句はなく、内容は理解できるはず。本校としては「標準レベル」の「選択肢設問」や「抜き出し設問」が並び、最後に厄介な「長文説明記述」が待ち構えている。以下、いくつかの「設問」を検討してみたい。
[問一] 「語句の意味の選択肢」(4択)。
「総合的知識問題」。傍線部①の「ノホホンとしている」は「ここではどういう意味で用いられているか」を答える。自らは使わないだろうが、知っていなくてはいけない語句だ。「のほほん(と)」は副詞で「原意」は「何もしないで、または気を使わないでのんきにしているさま」だ。したがって、「答え」は選択肢(ア)「何も知らずにのんきにしている」になる。尚、出題された「語句」の「原意」を仮に知らなくても、本問のような「本文中における意味」の場合、前後の「文脈」からも類推できると心得よ。ただし、「文脈」にこだわり過ぎると,「原意」からかけ離れてしまって誤答となる場合があるので要注意。
<時間配分目安:30秒>
[問三] 「理由説明選択肢」(4択)。
傍線部②「こういった環境では、なかなか民主主義は育たない」について、「その理由」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここは「理由説明」なので、「民主主義は育たない」ことの「直接的理由」として結びつかないものを「消去」したい。各選択肢の「文末」と照合する(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。(ア)「議論し合えないという欠点をもたらすから」、(イ)「民主主義は育ちにくいから」、(ウ)「固定化されて対立するから」、(エ)「ふさわしくない言語と見なされているから」。さあ、どうだろうか? 当然ながら「民主主義は育ちにくいから」⇒「民主主義は育たない」以外は「消去」できると判別できるはずだ。「同一意味段落」で他の部分を確認しても特に誤っていない(「論説文」「説明文」「随筆」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある。尚、本文の「同一意味段落」は前後が1段落分空白になっているので、とても分かりやすい)。したがって、「答え」は(イ)だ。見事、「一発消去」だ。畏るべし「原意消去」、しっかりと使えるようにして大いに活用すべし。
<時間配分目安:1分強>
[問七] 「空所補充の語句選択肢」(全2問/5択)。
本文中の空所 X ・ Y に「入る語」を答える。各選択肢は、(ア)「環境」・(イ)「言葉」・(ウ)「歴史」・(エ)「法律」・(オ)「関係」だ。空所部分は「 X がなければ Y は生まれない。」という一文だ。「同一意味段落」から「文脈」を読み解いていきたい。「若い女性の看護師が、中高年の男性患者から子ども扱いされた」という「『対話』の言葉」に関するエピソードを踏まえて、直前で「日本語の二〇〇〇年あまりの歴史の中で、女性が男性に命令をしたり指示したりする関係は、母親が子どもに指示する関係以外にはなかった」と述べられている。であれば、空所部は「関係がなければ言葉は生まれない。」だと特定できるはずだ。よって、「答え」は、 X =(オ)で、 Y =(イ)だ。「同一意味段落」の「文脈」での「対応関係」を読み取ることが肝要だと心得よ。
<時間配分目安:全問で1分強>
[問八] 「内容説明抜き出し」(「15~20字以内」指定)。傍線部⑥「タイムラグ」について、「ここではどのような意味で示されているかがわかる箇所」を、「十五字以上二十字以内」で抜き出して答える。「抜き出し問題」では、「抜き出すべき内容」を捉えた上で「抜き出し範囲」を特定し探していく。「内容」は、「タイムラグ」の「原意」を知ってさえすればすぐに把握できる。「時間のずれ」だ。もし、知らなければ「文脈」から読み解いていくことになる。直前で、明治維新直後に「近代的な社会」が実現したが、「近代日本語」が確立したのは明治の終わりの頃で、「五〇年近いタイムラグが生じている」と述べられていることから類推できるはずだ。「範囲」は無論、「同一意味段落」。丁寧に探していくと、前段落の後半に「言葉は、社会の変化に追いつかないという宿命を常に背負っている。そこには必ず、タイムラグが生じる」という部分がある。まさに、「時間のずれ」ではないか。「抜き出し範囲」の他の部分に別の該当箇所はない。よって、「指定字数」から「答え」は「言葉は、社会の変化に追いつかない」(16字)となる。尚、「抜き出し問題」では「候補」はひとつとは限らない。「範囲」を網羅的に確認し、全ての「候補」を確認してみることが肝要だ。
<時間配分目安:1分半>
[問十] 「条件付き理由説明記述」(「60~80字以内」指定)。
波線部「ボキャブラリーがないのは、そう言っている私も含めたオヤジたちの方なのだ」について、「筆者はなぜそう言えると考えているか」を、「六十字以上八十字以内」で説明する。「条件」は、「『かわいい』という語がどのような役割を果たしているかを含めて説明する」こと。「ボキャブラリー」「オヤジ」、そして「条件」である「かわいい」、これらはどのように結びついているのか? 「同一意味段落」から読み取っていきたい。「日本語には対等な関係での褒(ほ)め言葉が極端に少ない」が、「現代日本語の中で一つだけ非常に汎用性の高い褒め言葉」である「かわいい」について、「中高年の男性」が「今どきの子は、なんでも『かわいい』『かわいい』で、ボキャブラリーがないなぁ」と言っていることに関して、「ボキャブラリーがないのは、そう言っている私も含めたオヤジたちの方なのだ」と指摘していると読み取れるはずだ。こうした内容を「理由説明」として的確に「過不足なく」まとめていきたい。たとえば、「『かわいい』には、現代日本語の中で一つだけ非常に汎用性の高い褒め言葉としての役割があるが、オヤジたちはそれを馬鹿にするだけで、他の言葉を生み出せていないから。」(79字)といった「答え」だ。「条件」=「手がかり・ヒント」と捉え、「文脈」を丁寧にたどって「問われていること」に的確に応じてまとめることが肝要だ。
<時間配分目安:3分半>
【大問三】
- 時間配分:
高校2年の「私」は、あるときソフトボール部の先輩「アネゴ」から呼び出された。「私」が「アネゴ」が持つ「エースナンバー」を引き継ぐことになるのか?……。本文では、2人の「ピッチング」に対する思いが綴(つづ)られ、「私」にとってソフトボールの主役はピッチャーでもバッターでも野手でもなく、「ボール」そのものだと気づく姿が描かれている。内容は難なく理解できるが、「セリフ」のやりとりからの「心情」や「状況」などの読み取りには厄介さがある。以下、いくつかを検証する。
[問二の Y ] 「空所補充の語句選択肢」(5択)。
「総合的知識問題」。「文脈」からの「語句の意味」判別。本文中の空所 Y に入る「言葉」を答える。空所前後は「『放課後、ちょっと付き合え』、終業式を間近に控えたその日の昼休み、私のクラスに足を運んだアネゴは、教室のドアのところから、 Y そう言った」となっている。各選択肢は、(ア)「誰の耳もはばかる風もなく」・(イ)「人目を避けるように」・(ウ)「思わせぶった様子で」・(エ)「わざと教室中に聞かせるように」・(オ)「にっこりとほほ笑んで」。無論、全ての語句の「原意」は知っているはず。空所部では、「教室のドアのところから」、教室内にいる「私」に向かって話しかけている「状況」だと判断できる。であれば、他の生徒にも当然聞こえるはずなので、「答え」は(ア)だと判別できなくてはいけない。もし、「はばかる」の意味が曖昧(あいまい)な諸君がいたら、しっかりと確認しておくこと。「はばかる(憚る)」=「気がねする。遠慮する」ということだ。尚、「語句の空所補充選択肢」では、「内容」は当然だが、「文法」「文脈」でも判別可能な場合があると心得よ。
<時間配分目安:1分弱>
[問三] 「理由説明選択肢」(5択)。
傍線部②「引継ぎじゃない」について、「なぜ『アネゴ』は『私』を呼び出したのか」を答える。無論、先ずは「原意消去」からといきたいが、流石(さすが)にこの段階では無理だ。そこで、「同一場面」から「状況」を読み取っていく(「小説」「随筆」では「同一場面」に「手がかり・ヒント」がある)。直前から、「引継ぎ」は「アネゴ」が持つ「エースナンバー」を受け継がせることだと分かる。では、なぜ「引継ぎ」ではないのに「私」を呼び出したのか? さらに、「同一場面」の直後を確認していくと、「アネゴ」は、「私」に「エースナンバー」を受け継がせることができない理由を色々と述べた後、「そこでアネゴは一つ大きく伸びをした。『ソフトボール、続けなよ』」と最後に言っている。当然、この最後の言葉が言いたかったからこそ、「私」を呼び出したと判断できるはずだ。各選択肢の「文末」と照合する。(ア)「私に十分に納得して欲しいと考えたから」、(イ)「選手としてもっと精進して欲しいと考えたから」、(ウ)「私にソフトボールをやめて欲しくないと考えたから」、(エ)「私にエースとしての資質がないことを指摘したいと考えたから」、(オ)「一部員としての自覚を持って欲しいと考えたから」。もはや一目瞭然、(ウ)以外は即「消去」だ。他の部分の説明も特に誤ってはいないと、「同一場面」から判断できる。よって、「答え」は(ウ)になる。尚、「理由説明選択肢」では、傍線部の「原意」の「直接的理由」として各選択肢の「文末」が結びつくかどうかがポイントだと心得よ。
<時間配分目安:2分強>
[問六] 「条件付き理由説明抜き出し」(「一文」の「最初の5字」指定)。
傍線部⑤「当然だと私自身がそう思っていた」について、「なぜ『私』はそう思ったのか」が分かる「一文」の「最初の五字」を抜き出して答える。「条件」は「そのように考える要因として『私』が思い当たる内容を含む一文」であること。先ずは「抜き出すべき内容」だが、「そう思っていた」という「指示語」があるので開かなくてはいけない。直前から、「そう」=「アネゴが持つエースナンバーは森野(『私』)には渡せない(と)」だと読み取れる。つまり、「アネゴが自分のエースナンバーを私には渡さないと、私自身が思った理由」が分かる「一文」を抜き出すことになるわけだ。「抜き出し範囲」は無論、「同一場面」になるが、「条件」に「『私』が思い当たる内容を含む」とあるので、「セリフ」ではなく「地の文」にあるはずだ。丁寧に探していくと、傍線部を含む「セリフ」のやりとりが終わった後、「地の文」の最後から2番目の段落の後半に「私の遥(はる)か頭上、飛んでいくボールを振り返り、行けえと声援を送るピッチャーは、たぶん、エースになんてなれない。」という「一文」がある。「エースにはなれない」という「私自身の思い」で間違いない。「抜き出し範囲」に他に候補はない。OKだ。したがって、「答え」は「私の遥か頭」(5字)だ。尚、本問のように直接問われてはいなくても、「指示語」が出たら即開くことが肝要だ。
<時間配分目安:1分半>
[問九] 「空所補充の語句選択肢」(5択)。
本文中の空所 Z に「共通して入る語」を答える。4つある空所部分を確認する。「ソフトボールの主役はピッチャーでもバッターでも野手でもなく、ボールそのものだ」という「私」の思いが綴られた直後にあり、「あるボールはアウトという Z を作り、あるボールはホームランという Z を作る。ときに喝采を浴びる Z が生まれ、ときに何事もなかったように忘れ去られる Z がある」となっている。各選択肢は、(ア)「物語」・(イ)「ソフトボール」・(ウ)「結果」・(エ)「ゲーム」・(オ)「勝負」だ。最初に、「内容」とは無関係に「文脈」や「文法」を考慮して、1カ所でもあてはまらない語句を「消去」したい。「アウトという ソフトボール を作り」、「アウトという ゲーム を作り」、そして、「ホームランという 勝負 を作る」、以上は明らかに不自然で「消去」可能だと判断できるはず。残るは、「物語」か「結果」かの2択。さあ、どっちだ? 「ボール」は「ソフトボール」の「主役」なのだから、「物語」を演じていると判別できなくてはいけない。したがって、「答え」は(ア)だ。本問では、「形式」と「内容」との二層で考えていったわけだ。こうした「ハイブリッド的解法」も不可欠だと心得よ。
<時間配分目安:1分半>
攻略のポイント
●「共学化」によって「国語」は問題が難化したにもかかわらず、「受験者平均得点率」がアップしている(2016年度61.8%→21年度70.1%)。「共学化」以降の3科目合計の「合格最低得点率」は、本年度までの5年間の平均で68.6%(本年度は70.7%)。多少の上下はあるとしても、来年度以降も合格ラインの高止まり傾向は続くと思われるので、とにかく「高得点」を目指し「得点力」を安定させるように万全の準備が不可欠だ。
●多彩で複雑な「選択肢設問」に代表される多様な「設問」はどう「攻略」するか? それは、いかに「解法」を的確に用いるかがポイントになる。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが必要だ。そのためにも、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておくこと(特に「原意消去」は必須アイテム)。
●「説明記述」の対策も不可欠だ。実直に「説明記述」の「練習」を続ける他はない。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。「内容」から優先順位を特定し、高いものから積み上げていく。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習すること。また、「100字前後の長文説明記述」にも慣れておきたい。何としても「減点」は最小限に抑えたい。
●「高度な語彙力」が問われる多種多様な「総合的知識問題」も侮れない。「漢字」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「語句の意味」、そして、「口語文法」までをも確実に定着させること。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意が必要。問題文は7000字程度(ただし、9000字以上の年度もあった)。本年度は一気に減少して約5200字だったが、それでも当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。