市川高等学校 入試対策
2024年度「市川高等学校の国語」
攻略のための学習方法
記述
「市川の記述対策」は「問題解説」及び上記のとおりだが、その前提としてやるべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。
最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~60字程度で書いてみる(市川の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。
「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
解法
「記述」「選択肢」、その他の問題も含め、「市川の国語」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解説」が定まっていない証だからだ。そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
大学入試にも匹敵、あるいはそれ以上の問題文を読まなくてはならない。「現代文」全体で7000字以上。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。
やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながら素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。市川に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「市川の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。いかなる「攻略法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。
確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。
要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」は必須のカリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶことはない。
が、「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」するしかない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は理解しておかなくてはならない。
そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
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2024年度「市川高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は【文章Ⅰ】が荻野蔵平/トビアス・バウアー編著「生と死をめぐるディスクール」所収の石原明子「生と死の現場に立ち現れる和解と赦し」(文字数約4200字)、【文章Ⅱ】が石牟礼道子「花びら供養」(文字数約600字)。小問は全4問(解答数6)。「選択肢」、「抜き出し」(3問)、「説明記述」(1問。「80字以内」指定)。問題文を合わせて5分半程度で読み切り、設問を12~13分で解きたい。
大問二は「小説」、出典は曽野綾子「無名碑」(文字数約4400字)。小問は全6問(解答数8)。「選択肢」(「表現内容合致」、「不適切」、「複数解答」、「総合的知識問題」あり)、「説明記述」(1問。「80字以内」指定)。問題文は5分ほどで読み切り、設問を15分程度で解きたい。
大問三は「古文」、出典は松平定信「花月草紙」(文字数約500字)。小問は全5問(解答数5)。「選択肢」のみ(「本文内容合致」あり)。10分ほどで解きたい。
大問四は「漢字の書きとり」(全5問)。2分程度で丁寧に終えたい。
【大問一】
- 時間配分:13分
【文章Ⅰ】では、「水俣病」に苦しめられた杉本栄子さんは「この病気は人間への神の怒りであり、患者は人間の罪を背負って苦しんでいるのだから、チッソも行政も許さなければならない」という結論に達したが、このように向き合った末に「『赦(ゆる)す』と言った人たちの周辺から敵味方の壁がとけ、ともに新しい社会づくりをすることに向かった変化が起こってきた」と論じている。
【文章Ⅱ】では、杉本栄子さんの口から飛び出した「水俣病は守護神」という言葉には、背後を断たれた者のどんでん返しの大逆説があり、彼女は水俣病とそこに生じる諸現象の一切を全部引き受けると同時に、皆が放棄した「人間の罪」を自分の病身に背負い直すと宣言したのではないかと指摘している。
2つの文章ともに、「※注」を参考にすれば内容は理解できる。「各選択肢の説明」がやたらに長い問題や、「2つの文章の関連」を問うなど、いかにも本校らしい小問構成の大問だ。以下、いくつかの設問を検証する。
[問1] 「条件付き内容説明記述」(「80字以内」指定)。
傍線部(1)「闘う一部の患者やその支援運動家たちと、それ以外の一般市民の間で大きな軋轢(あつれき)があり続けた」について、「『闘う一部の患者やその支援運動家』を、『それ以外の一般市民』は、どのように見ていたか」を、「80字以内」で説明する。
「条件」は「『それ以外の一般市民』を『A』、『闘う一部の患者やその支援運動家』を『B』という記号に置き換えて説明する」こと。
「軋轢」とは「人間関係が悪くなること」と「※注」にある。
先ずは、「傍線部一文一部の法則」に「手がかり」を求める(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という読解の基本となる解法)。直前に「そのような中で」という「指示語」がある。「指示語」を開いていく(「指示語」が出たら即開くこと)。直前から、「そのような中」=「『患者は金欲しさに水俣病のふりをするニセ患者だ』とか『チッソをつぶす水俣の敵』というような地域内での患者への差別が根強くあるような中」だと読み取れる。「患者」に対する「地域内の人々」(=「それ以外の一般市民」)の見方になっているではないか。こうした内容をまとめていくわけだが、「チッソ」についての補足説明が必要だと分かる。「同一意味段落」から読み取りたい(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。ここでの「同一意味段落」は本文の最初から傍線部のある形式段落までだと判断できる。確認すると、「チッソ」は「水俣を経済的に支えている大企業」であるとともに、「水俣病の加害企業」でもあると分かる。
以上の内容を整理して、「字数」に合わせてまとめていけばいい。たとえば、「AはBを、金欲しさのために水俣病のふりをするニセ患者であり、水俣という地域を経済的に支えている企業であるチッソをつぶそうとする水俣の敵であると差別的に見ていた。」(80字)といった「答え」になる。
適切な「解法」を用いて、説明に「必要な要素」を外さないようにしたい。
<時間配分目安:3分>
[問2] 「内容説明選択肢」(5択)。
傍線部(2)「突き付けにも似た、最後の覚悟の祈りの行為であったろう」について、「肇(はじめ)さんは、母である栄子さんの言葉をどのように受け取ったと考えられるか」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」を最優先に考えること)。
本問は「内容説明」なので、「突き付け」の「原意」と直接結びつかない「内容説明」を「消去」することになる。
各選択肢の「文末」と照合する(「選択肢」の「説明」では「文末」が「最重要要素」)。
(ア)「協調を要請しているのだ」、(イ)「決意を表明しているのだ」、(ウ)「尊さを主張しているのだ」、(エ)「(理解を)要求しているのだ」、(オ)「歩み出すことを強くうながしているのだ」。
さあ、どうか?「突き付ける」=「無理に押しつける。強いてすすめる」だと知っているはずで、であれば、「強くうながしている」以外は「消去」できなくてはいけない。念のために、他の部分の説明を「同一意味段落」で確認したい。特に誤ってはいないと分かる。したがって、「答え」は(オ)になる。素晴らしい「一発消去」。
本問の「選択肢説明」はそれぞれ「150字ほど」もある。だからこそ、「原意消去」を完全にマスターして、大いに活用すべきなのだ。
<時間配分目安:1分半>
[問4(一)] 「空所補充の抜き出し」(「10字以内」指定)。
示されている【文章Ⅰ】を読んだ後に【文章Ⅱ】を読んだ生徒A~Eの会話文中の生徒Bの発言「そうね。【文章Ⅰ】に出ていた ア と似たような意味の逆説だと思うよ」の空所に「入る言葉」を【文章Ⅰ】から「10字以内」で抜き出して答える。何と「似たような意味の逆説」なのかを捉(とら)えたい。
直前の生徒Aの発言にある「(【文章Ⅱ】にある)杉本栄子さんが言った『水俣病は守護神』」という言葉だと分かる。つまり、「病」を「神」とする「逆説」だということだ。同様な「逆説的表現」を【文章Ⅰ】から抜き出すことになる。「杉本栄子さん」について述べられている「同一意味段落」の3つ目の形式段落に「(栄子さんの父が)『……、水俣病をのさりと思え』といった。のさりとは、水俣では『(天からの)授かりもの』『恵み』というような意味がある」という部分がある。「水俣病」=「のさり」=「(天からの)授かりもの」「恵み」⇒「守護神」と結びつく。【文章Ⅰ】には他に候補となる部分はない。よって、「指定字数」から「答え」は「水俣病をのさりと思え」(10字)になると確定できるはずだ。
尚、「抜き出し候補」はひとつとは限らないので、「範囲」の全てを隈なく探すことが肝要だ。
<時間配分目安:2分強>
【大問二】
- 時間配分:15分
大自然を相手に人類の「碑」を打ち立てるという気概を胸にダム建設に従事する土木技術者「三雲竜起(みくもりゅうき)」はつましくも幸せな家庭を築くが、苦難が忍び寄っていた――運命に翻弄(ほんろう)されながらひたむきに生きる市井の人々のありさまを、丹念な筆致で描いた傑作長編小説だ。
本文では、「竜起」の妻「容子」と娘の「梨花(りか)」、家族3人の様子が丹念に描かれている。難読熟語には細かな「ルビ」が付されており、内容は理解できるはずだ。
「総合的知識問題」も含めて、オーソドックスな小問が並んでいる。いくつかを確認してみる。
[問1] 「語句の意味の選択肢」(全2問/各5択)。
「総合的知識問題」。波線部(A)「凡庸な」・(B)「無為に」の「本文中の意味」を答える。ともに知っていなくてはいけない語句だ。それぞれの「原意」で特定していく。
「凡庸」=「際立った特徴がなく、平凡でとりえのないこと」だと知っているはず⇒(A)の「答え」は選択肢(エ)の「ありがちな」だ。そして、「無為」=「何もしないでぶらぶらしていること」⇒「高校入試」の定番⇒(B)の「答え」=(ウ)「何もせずに」になる。
出題された「語句」の「原意」を仮に知らなくても、本問のような「本文中における意味」の場合、前後の「文脈」からも類推できると心得よ。ただし、「文脈」にこだわり過ぎると,「原意」からかけ離れてしまって誤答となる場合があるので、要注意。
<時間配分目安:全問で1分>
[問2] 「理由説明選択肢」(5択)。
傍線部(1)「容子の疲れたような顔」について、「容子がそのような顔になったのはなぜか」を答える。無論、最初に「原意消去」を試みる。
本問は「理由説明」なので、「容子が疲れたような顔になった」ことの「直接的理由」として結びつかないものを「消去」したい。各選択肢の「文末」⇒「だから」⇒「容子が疲れたような顔になった」とつながるかどうかだ。確認する。
(ア)「病気かもしれないという診断を受けてしまったから」、(イ)「竜起に会うことができなかったから」、(ウ)「(不安を)容子一人で抱え込んでいたから」、(エ)「問題を容子一人で受け止めなければならなかったから」、(オ)「(竜起が)仕事を優先している様子だったから」。「容子」が「疲れた」のだから、「容子一人で抱え込んでいた」と「容子一人で受け止めなければならなかった」以外は「消去」できるに決まっている。
これで「2択」になった……、ちょっと待った、本当にそれだけか? さらにもうひとつ、「消去」できなくてはいけない。「抱え込んだ」と「受け止めた」、「抱え込んでいる」から「疲れる」わけで、「受け止める」のならば「疲れる」わけがないと判別できなくてはいけない。よって、「受け止めなければならなかった」は「消去」可能だ。
「同一場面」で他の部分の説明を確認して、特に誤っていないと分かる(「小説」では「同一場面」に「ヒント・手がかり」がある)。したがって、「答え」は(ウ)だ。「原意消去」の「ネタ」を漏らさなかったおかげで「一発消去」できた。
<時間配分目安:1分半>
[問3] 「内容説明記述」(「80字以内」指定)。
傍線部(2)「梨花の生かし方を心に決めた」について、「この時竜起が『心に決めた』ことはどのようなことか」を、「80字以内」で説明する。
「同一場面」から、どのような「(心臓に病気を抱える)梨花の生かし方」を「心に決めた」のかを読み解いていきたい。
「竜起」は、「梨花」の心臓も「手術かあるいは自然に体力がつくことによって機能を恢復(かいふく)するだろう」と考え、「たとえそれがうまくいかなかったにせよ、生きているうちから、梨花を失った瞬間のことを考える必要はない」といったことが読み解けるはずだ。
つまり、「梨花は生きているのだから、心臓が治ることを期待しつつ、仮に治らなかったとしても、過度に悲観することなく、梨花が今生きているということを大切にしよう」と「心に決めた」わけだ。
あとは、的確に「過不足なく」まとめていきたい。たとえば、「梨花は生きているのだから、治療によって心臓の病気が治ることを期待しつつ、仮に治らなかったとしても悲観することなく、生きている梨花の今を大切にしようということ。」(79字)といった「答え」だ。
尚、「説明記述」では必ず「最重要要素」を「文末」にすること。
<時間配分目安:3分>
※尚、[問6]は「本文内容合致(表現の用法説明)の不適切選択肢設問」(全2問/複数解答/5択)。「論説文」であれば「本文内容合致」=「論旨合致」と捉え、「序論部」及び「結論部」と照合すればいいが、本問のような「小説」では「本文全ての内容」と照合する必要があり、とても手間がかかる。戦術的には「あとまわし」にすべきだ。無論、「捨て問」でも構わない。
【大問三】
- 時間配分:10分
「江戸時代三大改革」のひとつ「寛政の改革」を老中として主導した松平定信による江戸時代後期の随筆集。全6巻、全156話。
政治・経済・道徳・学問・文芸などについて記述し,教訓的傾向が強いが,和漢の学に通じた定信の卓越した見識と学問の素養がうかがえる。本文は「くすしの先見」(「くすし」=「薬師・医師」)という一篇で、テーマは「人間は実際に苦しい目にあわないと、他人の助言や忠告のありがたみが分からないものである」ということ。
例年同様に「古文単語の意味」といった単純な設問はなく、全て「現代語訳」や「内容解釈」に関連するものだ。なかなか手強いので、心して臨むこと。以下、2問だけ検討してみよう。
[問1] 「理由説明選択肢」(5択)。
傍線部(1)「よそのくすしまねきてけり」について、「このようなことをしたのはなぜか」を答える。先ずは、「よそのくすしまねきてけり」で「原意消去」してみる。
「品詞分解」すると、名詞「よそ」+格助詞「の」+名詞「くすし」+カ行四段活用の動詞「まねく(招く)」の連用形「まねき」+「完了」の助動詞「つ」の連用形「て」+「間接過去」の助動詞「けり」の終止形「けり」。
よって、「別の医師を呼んでしまったそうだ」といった意味になる。その理由として直接的に結びつかないものを「消去」したい。各選択肢の「文末」と照合する。
(ア)「不安に思ったから」、(イ)「不信感を募らせてしまったから」、(ウ)「会いたくなかったから」、(エ)「診察を拒絶したから」、(オ)「腹立たしかったから」。
「別の医師を呼んでしまった」のだから、単純に「会いたくなかったから」以外は「消去」できるはずだ。念のために傍線部直前を確認する。
「おもてぶせなりとて」とある。「恥ずかしくて不名誉であると思って」ということで、「会いたくなかったから」の直前の説明「恥ずかしいと思い」とも合致する。よって、 (ウ)が「答え」になる。
高度な「古文知識」が求められていたが、先ずは「原意消去」を試みるということは「現代文」と同じだと心得よ。
<時間配分目安:2分強>
[問2] 「現代語訳の選択肢」(5択)。
傍線部(2)「しるしもみえず」の「本文中の意味」を答える。「品詞分解」して「現代語訳」する。名詞「しるし」+係助詞「も」+下二段活用の動詞「みゆ(見ゆ)」の未然形「みえ」+「打消し」の助動詞「ず」の終止形「ず」⇒「しるしが見えない」という「現代語訳」になるが、ここで問題なのは「しるし」だ。口語でもそうだが、多義語で実にいろいろな意味がある。「標・印・証」で「目印・合図・証拠」など、「徴・験」で「前兆・御利益・効果」などだ。各選択肢をチェックしたい。(ア)「効果が現れず」・(イ)「指示に従わず」・(ウ)「原因がわからず」・(エ)「理解ができず」・(オ)「方針が決まらず」。
これらの中では当然、「効果」以外ではあてはまらない。したがって、「答え」は(ア)になる。やはり、本校合格のためには、基本的な「古文単語」は確実に定着させておきたい。
<時間配分目安:1分半>
※尚、[問5]は「本文内容合致の選択肢設問」(全2問/5択)。
【大問二】の[問6]と同様に「本文全ての内容」と照合する必要があり、とても手間がかかる。戦術的には「あとまわし」にすること。もちろん、「捨て問」でも構わない。
【大問四】
- 時間配分:2分
本校の「漢字問題」は「書きとり」と「同音異字判別」のどちらか、あるいは、その組み合わせといったパターンが多い。
本年度は4年連続で「書きとり」だけという出題形式。難易度は近年、「難」→「易」→「難」と「隔年現象」が見られていたが、昨年度は2年続けての「標準レベル」だった。ところが、本年度は揺り戻しがあって「難」のレベル。ただ、できれば失点は避けたい。
[問] 「漢字の書きとり」(全5問)。
示されている各文の傍線部の「カタカナ」を「漢字」に直す。確認する。
(1)「ケイガイ化した制度」=「形骸(化)」⇒いきなりの難問⇒「骸」は「画数16」、丁寧に記すこと⇒「形骸化」とは「実質的な意味を失い、形式だけが残ること」だ。
(2)「くやしさのあまりコブシをにぎりしめた」=「拳」⇒「挙手」の「挙」と混同しないこと。(3)「さわやかなアイサツ」=「挨拶」⇒「高校入試」の定番だが、未定着の諸君が多いので要注意。
(4)「刻苦ベンレイの末に医者になった」=「(刻苦)勉励」⇒必須定着「四字熟語」⇒書けて当然。
(5)「カンゼン懲悪の物語」=「勧善(懲悪)」⇒「中学入試」の定番だ。
本校ではやはり、高度な「語彙力」が求められていると心得よ。
<時間配分目安:全問で2分>
攻略のポイント
●本年度も3年連続で「2つの文章内容の関連」を問う設問があった。明らかに「大学入学共通テスト」を意識している。当然、来年度以降の出題も予想されるので、しっかりと練習しておくことが不可欠だ。
●「説明文が長くて紛らわしい選択肢設問」にはどう対処するか? 無論、できるだけ単純な方法で、「選択肢」を少しでも「消去」しておきたい。そのためにこそ「原意消去」だ。絞り込めば、誤答の可能性が減少するのは自明の理。その上で、さまざまな「解法」を用いて、さらに判別すればいい。したがって、基本的「解法」を完全に習得し的確に応用できるようにしておくことが重要だ。それによって「得点力」を安定させたい。
●「説明記述」は「問題文」と「条件」がとても複雑だ(本年度は比較的単純だったが、安心してはいけない)。「攻略」できるか? それぞれを正確に理解することは当然として、後は実直に「練習」するだけだ。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げるという手法を完璧にマスターすること。
「内容」から重要度を特定し、優先順位の高いものから積み上げる。各「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習する。本校では「50~100字程度」の「字数指定」が多いので、2~4つ程度の「要素」でまとめることに慣れること。「合格ライン」は60%強(過去5年間の「男女合計受験者平均得点率」は58.8%。本年度は下がって53.9%)。配点が大きい「説明記述」での失点や減点は致命的になると肝銘せよ(本年度は「8点」が2問)。
●「総合的知識問題」も決して侮れない。「あらゆる知識」が問われる。独自に「幅広い知識」を常に習得していくこと。学校や塾での学習だけでは、全く不十分だ。
●「古文」の「攻略法」は? 重要な「古文単語」の定着はもちろんだが、「内容解釈」も求められるので「基礎的文語文法」は押さえておきたい。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は例年7000字ほどだったが、本年度は昨年度以上に増加しており約9700字。速く正確に読み取ることが不可欠。分速800字以上を目標に「読む練習」をしたい。