市川高等学校 入試対策
2018年度「市川高等学校の国語」
攻略のための学習方法
記述
「市川の記述対策」は「問題解説」及び上記のとおりだが、その前提としてやるべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。
最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~60字程度で書いてみる(市川の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。
「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
解法
「記述」「選択肢」、その他の問題も含め、「市川の国語」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解説」が定まっていない証だからだ。そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
大学入試にも匹敵、あるいはそれ以上の問題文を読まなくてはならない。「現代文」全体で7000字以上。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。
やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながら素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。市川に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「市川の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。いかなる「攻略法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。
確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。
要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」は必須のカリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶことはない。
が、「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」するしかない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は理解しておかなくてはならない。
そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
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2018年度「市川高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「漢字の書きとり」(全5問)と「同音異字の判別選択肢」(全5問)。
3分ほどで丁寧に終えたい。
大問二は「論説文」、出典は尾本恵市「ヒトと文明――狩猟採集民から現代を見る」所収の「現代文明とヒト」(文字数約3400字)。
小問は全5問(解答数5)。「選択肢」(「語句の空所補充」あり)、「説明記述」(「80字以内」指定1問)。問題文は4分半ほどで読み切り、設問を13~14分程度で解きたい。
大問三は「小説」、出典は岡本かの子「鮨」(文字数約4400字)。
小問は全6問(解答数7)。「選択肢」(「不適切」「複数完全解答」あり)、「説明記述」(「70字以内」指定1問)、「総合的知識問題」(「語句」の意味)。問題文は6分弱で読み切り、設問を15分程度で解きたい。
大問四は「古文」、出典は作者不詳「御伽物語」(文字数約1200字)。
小問は全5問(解答数10)。「選択肢」(「正誤判別」「内容合致」、「複数解答」あり)。10分弱で解きたい。
【大問1】漢字の書きとり
- 時間配分:
一昨年度に「漢字問題」が独立し、昨年度は「書きとり」と「同音異字判別」だったが、本年度もその出題形式を踏襲している。難易度は昨年度に輪をかけ上昇しており、「大学入試」でも稀なほどの「超難問」だ。
[問1] 「漢字の書きとり」(全5問)。
「高校入試」の通常のレベルからすれば、何ひとつ書けなくても不思議ない。確認してみる。
(1)「水槽の金魚をギョウシする」(=凝視)⇒「じっと見つめる」こと。
(2)「チクイチ上司に知らせる」(=逐一)⇒「いちいち詳しく」という意味。「つくり」に注意。
(3)「汚職をキュウダンする」(=糾弾)⇒「罪状を問いただし、非難する」ことだ。
(4)「ユウキュウの時」(=悠久)⇒「果てしなく長く続く」こと。
(5)「マイボツした人材を発掘」(=埋没)⇒これは何とか書けるか? 無論、「捨て問」があっても構わないが、本校の「漢字レベル」の高さは覚悟せよ。
<時間配分目安:1分以内>
[問2] 「同音異字判別の選択肢」(全5問/各5択)。
示されている(1)~(5)の各文の傍線部と「同じ漢字を使うもの」を答える。
「大学入試センター試験」と同形式の「漢字問題」だ。5問だが結局、計30の「漢字」が判別できなくてはいけない。特に「判別」が難しいものを確認したい。
(1)「強いシゲキを受けた」=「刺(激)」⇒選択肢(ア)「シガイセンから目を保護する」=「紫(外線)」/(イ)「この鳥はシユウで仲良く子育てをする」=「雌(雄)」/(ウ)「三人のシカクが追ってきた」=「刺(客)」/(エ)「もう少しシボウを減らしたい」=「脂(肪)」/(オ)「フクシに関する法律」=「福(祉)」⇒「答え」は(ウ)。
(3)「突然の告白にコンワクした」=「困(惑)」⇒(ア)「コンチュウ採集」=「昆(虫)」/(イ)「キコン者対象の集まり」=「(既)婚」/(ウ)「何のコンセキも残さず」=「痕(跡)」/(エ)「コンナンが伴う」=「困(難)」/(オ)「土地がきれいにカイコンされた」=「(開)墾」⇒「答え」は(エ)。
(5)「子どもたちをフヨウする」=「(扶)養」⇒(ア)「ヨウカイの存在を信じる」=「妖(怪)」/(イ)「素材はヨウモウだ」=「羊(毛)」/(ウ)「彼をヨウシに迎えよう」=「養(子)」/(エ)「腸にカイヨウができた」=「潰瘍」/(オ)「日本ブヨウを習いたい」=「(舞)踊」⇒「答え」は(ウ)。本校志望者は、「大学入試センター試験」の「漢字対策問題集」などを活用するといい。
<時間配分目安:2分>
【大問2】論説文
- 時間配分:
20世紀後半から、「生物学としての人類学」=「ヒト学」は大きく変貌し、「ヒト」の特異性と多様性および起源の総合的な解明をめざしているが、本書で筆者は「DNAから人権まで」をモットーに、「文明とは何か」「先住民族の人権」「人類学者の社会的責任」などの問題を解き明かしている。
本文では、文明下の「ヒト」の人口増加は自然界では例外的な現象であると指摘し、地球は偶然、「ヒト」という生物を生んだために「文明が支配する星」になったが、今後どうなるのだろうかと警鐘を鳴らしている。
筆者ならではの、「生物」、「自然」、「文明」、「進化」などといった分野を縦横無尽、学際的に解き明かした論考なので、内容を的確に理解することは難しい。が、そこは動揺することなく、「論説文の解法」に則して冷静に解き進めていきたい。以下、いくつか確認してみよう。
[問2] 「語句の空所補充選択肢」(5択)。本文中の空所 2 に入る「適当な語」を答える。
「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)で、空所前後を確認する。
「自然と人為(人口ないし技術)の 2 は比較的明白である」となっている。
ここで、各選択肢をチェック。
(ア)「循環」、(イ)「対立」、(ウ)「共存」、(エ)「結末」、(オ)「融合」だ。さあ、どうか?
「自然と人為」の○○=「明白」という「文脈」であれば、誰もが即、(ア)(エ)(オ)は「消去」できるはずだ。よって、「対立」か「共存」かの「2択」になる。
次に、「同一意味段落」に「手がかり」を求める(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。すると、空所部の段落の最後に「人間と自然を決定的に分けるという『思い上がり』を招き、今日の自然破壊の遠因となった」とある。
であれば無論、「共存」は「消去」して、「答え」は(イ)の「対立」となる。こうした「語句の空所補充選択肢」では、先ずは前後の「文脈」や「文法的要素」などから如何に選択肢を「消去」できるかがポイントになる。
<時間配分目安:1分半>
[問4] 「理由説明記述」(「80字以内」指定)。傍線部(4)に「皮肉にも」とあるが、「筆者がここで『皮肉』と言っているのはなぜか」を、「80字以内」で説明する。
当然、「皮肉」とは何かを正確に捉えることが最優先となる(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここでの「皮肉」=「期待していたのとは違った結果になること」。誰もが知っていなくてはいけない語句だ。
では、何が「期待していたのとは違った結果」なのか? 「同一意味段落」から読み解いていく。直前直後から、「筆者」は「木村が『ダーウィン・メダル』を授与された」ことを「皮肉」だと言っていることが分かる。
なぜか? 同段落に、「メダル」を授与された「木村の中立説」は「幸運者生存」の説であり、「ダーウィニズム」の「適者生存」の説に反していることが説明されている。また、「ダーウィニズム」は「ダーウィン」が唱えた「自然淘汰万能の進化論」だと前段落にある。
ということは、もう分かったはずだ。あとは、「過不足なく」まとめていきたい。たとえば、「木村の進化論の『幸運者生存説』は、自然淘汰万能の進化論であるダーウィニズムの『適者生存説』に反していたにも関わらず、ダーウィンの名前を冠した賞を授与されたから。」といった「答え」になる。
問われている「内容(言葉)」の「原意」を無視してしまうと的を射ない解答となってしまうので注意せよ。
<時間配分目安:3分>
[問5] 「換言説明選択肢」(5択)。傍線部(5)「文明は、自然が行う宇宙的『実験』の一つと想像することもできる」について、「文明」が「自然が行う宇宙的『実験』」であるとは「どういうことか」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい。
ここは「換言説明」なので、「宇宙的『実験』」の「原意」と、各選択肢の「文末」(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)とが結びつかないものを「消去」する。
選択肢(ア)「文明の行く末も偶然に左右される」、(イ)「ヒトは自然との共生を模索しなければならない」、(ウ)「(文明は宇宙の中で)栄華に輝いたものである」、(エ)「文明の存続も地球環境に影響される」、(オ)「文明の影響も自然の中では取るに足りないものである」。
どうか? 「消去」できるか? どのような「結果」となるかは分からないのが「実験」であり、しかも、「宇宙的」なのだから、当然、(ア)以外は「消去」できるはずだ。そして、他の部分の説明も特に誤っていないので、(ア)を「答え」としていい。結果として、「文末」だけで「一発消去」となった。「原意消去」は活用すべし。
<時間配分目安:1分>
【大問3】小説
- 時間配分:
東京の坂の多い街にある「福ずし」、店の娘で客あしらいには慣れている「ともよ」にとって、十人十色の常連客のひとりである「湊(みなと)」の「すし」を食べるときの様子が妙に気にかかっていた――「母」と「子」の「鮨」にまつわる回想が、細やかな情愛に満ちあふれている作品。
本文では、「ともよ」との会話から、「湊」が幼い頃の家庭不和をきっかけに偏食となってしまった経緯を語っている。昭和初期が舞台となっており、馴染みがない言葉やことがらが出てくるが、「※注」を活用して何とか内容を理解したい。
「各選択肢の説明」がやたらに長い「紛らわしい選択肢設問」が最後に待ち構えている。相当に厄介な大問だ。以下、いくつかの設問を検証する。
[問1] 「語句の意味の選択肢」(全2問/各5択)。「総合的知識問題」。二重傍線部(a)(b)の「本文中の意味」を答える。
(a)は「後生だから」、(b)は「威丈高になって」。いかにも本校らしい「総合的知識問題」、「大学入試レベル」の難問だ。それぞれの「原意」から「答え」を確認する。
「後生だから」となっているので、ここでの「後生」は「こうせい」ではなく、「ごしょう」と読み「人に哀願するときに使う言葉」で、(a)=選択肢(ウ)の「一生のお願いだから」が「答え」だ。「威丈高」は「人を威圧するような態度をとる様子」(通常は「居丈高」と表記する)で、(b)=選択肢(エ)「圧倒する態度になって」が「答え」となる。
尚、「本文中の意味」とあるが、「本文内容」だけに引きずられてしまうと見誤ってしまうので、先ずは「原意」で「消去」することが肝要だ。
<時間配分目安:2問で1分>
[問3] 「理由説明記述」(「70字以内」指定)。傍線部(2)「よし、何でも喰べてみよう」について、「子供がこのように考えるようになったのはなぜか」を説明する。
「直前直後」から「状況」を把握したい(「小説」では「同一場面」の「直前直後」に「手がかり・ヒント」がある)。
直前に、「自分(=子供)は、こんな不孝をして悪人になってしまった。こんな奴なら自分は滅んでしまっても自分で惜しいとも思うまい」、直後には「喰べ慣れないものを喰べて……、死んでしまってもいいとしよう」とある。
ということは、「こんな不孝をして悪人になってしまった自分は、喰べ慣れないものを喰べて死んでしまっても惜しいとも思うまいから」が、「よし、何でも喰べてみよう」と「考えるようになった理由」になるはずだ。
では、「こんな不孝」とは何か? 確認する(「指示語」が出たらすぐに開くことが鉄則)。「こんな不孝」=「自分の畸形な性格(=「変わった性質」と「※注」にある)から、母に手をつかせ、お叩頭(じぎ)をさせてしまったという不孝」だと分かる。
したがって、これらの内容を的確にまとめていけばいいわけだ。たとえば、「自分の変わった性質から、母にお叩頭をさせるという不孝をして悪人となってしまったので、喰べ慣れないものを喰べて死んでも惜しいとは思うまいから。」といった「答え」だ。
「小説」では「状況」を読み解いて、説明すべき「要素」を捉えることが重要だが、その際、「指示語」や「比喩」は換言しなくてはならないということを肝銘せよ。
<時間配分目安:3分>
[問6] 「理由説明選択肢」(5択)。傍線部(5)「内密に心を外の母に移していたのが悪かった気がした」について、「このように子供が考えたのはなぜか」を答える。
各選択肢の「説明」が「100字以上」もあるという、本校の真骨頂である「選択肢設問」だ。が、冷静に先ずは「原意消去」。ここでは「理由説明」なので、各選択肢の「文末」⇒「だから」⇒「悪かった気がした」と、「直接的理由」として結びつかないものを「消去」したい。
確認する。(ア)「身勝手であった」、(イ)「自分の罪であった」、(ウ)「理解していなかった」、(エ)「当然だ」、(オ)「失礼だ」。「悪かった」ことの「理由」なので、(イ)(オ)以外は「消去」できなくてはいけない。2択で次なる「消去」だ。「心を外の母に移していた」と傍線部にある。(イ)は「今まで生みの母の食事を食べなかったのは(自分の罪であった)」、(オ)は「幻想の母にすがる自分の行為は生みの母に対して(失礼だ)」となっている。「心を外の母に移していた」のだから当然、(イ)は「消去」可能なはずだ。
他の部分の説明も特に誤ってはいないので、「答え」は(オ)でいい。「原意消去」からの2段階。こうした「段階的消去」も求められると心得よ。
<時間配分目安:2分>
【大問4】古文
- 時間配分:
鎌倉時代末から江戸時代にかけて成立した、それまでにない新規な主題を取り上げた短編の絵入り物語である「御伽草紙」のジャンルに連なる作品。
本文では、建仁寺(けんにんじ)の門前にある餅屋の娘が病を患っており、ある日そこを訪れた旅の僧が、娘の苦しみやその事情を聞いたときの様子が描かれている。
本校のこれまでの「古文」の設問とは異なり、「理由説明選択肢」と「内容合致判別選択肢」に特化した大問となっている。紛らわしい選択肢もあり、なかなか厄介だ。
以下、2問だけ確認したい。
[問1] 「理由説明選択肢」(5択)。傍線部(1)「心えがたくありながら」について、「旅の僧がこのように思ったのはなぜか」を答える。
先ずは、傍線部を現代語訳したい。品詞分解すると、「心え/がたく/あり/ながら」⇒「ア行下二段活用」の動詞「心得(こころう)」=「理解する。納得する」+「ク活用」の形容詞「かたし(難し)」=「難しい」+「ラ行変格活用」の動詞「あり」+接続助詞「ながら」=「~けれども」となる。ここまで明確に判断できずとも、「心得る」ことが「難し(難しい)」といったことくらいは類推できなくてはいけない。
したがって、要は「納得しづらいけれども」ということだ。では何が「納得しづらい」のか? 「直前直後」を確認する(「現代語訳」した後は、現代文の「小説」の「解法」の出番だ)。直前に、「俄(にはか)に日暮れたり」とある。このことが「きっかけ」で、「心えがたくありながら」と思ったわけだ。
したがって、「答え」は選択肢(エ)の「急に日が暮れたから」になる。「古文」の「内容解釈」では、「現代語訳」さえできれば、後は「現代文」の解き方と同じだ。そして、「現代語訳」するためには、基本的な「文語文法」を習得しておくことが欠かせない。
<時間配分目安:1分半>
[問3] 「内容合致判別」(全5問)。傍線部(3)「女はあとにのこり、わが方へ歩みきていふやう」について、示されている(ア)~(オ)の「説明」で「女が僧に伝えた内容」と「合致するもの」には「○」、「合致しないもの」には「×」を記して答える。
傍線部については「現代語訳」するまでもないであろう。「女が僧に伝えた内容」については、直後の『さてさて~かたり給ふれ』の部分で述べられているとすぐに分かる。なので、その部分の内容と照合して、それぞれの「説明」の「正誤判別」をしていきたい。
(ア)「……、自分の境遇をすべて打ち明けるように鬼から命令された」⇒「……見(まみ)え申すもことつて申したきためなり」(=お会いし申し上げるのも、伝言を申したいためである)となっている=「☓」。
(イ)「私が死後に成仏できず、五年間も苦しい思いをしている……」⇒「妾(しやう=※婦人の自称)死してこの苦をうくるにてはなし」(=私は死んでこの苦しみを受けているのではない)とある=「☓」。
(ウ)「餅屋を営む両親は、建仁寺の少年たちが持ってくる油と引き換えに餅を売っている」⇒「建仁寺のちご(=※寺で召し使われる少年)、喝食(かつしき=※寺で食事の世話などをする少年)、わが家にて油をもつて餅を買ふに……」(=建仁寺のちごや喝食が、わが家で油と交換して餅を買うときに……)=「○」。
(エ)「私は現世でとても辛い目にあっているので、来世では幸せをつかみたい……」⇒「生きてさへせめらるれば、死しての後思ひやられ侍る」(=生きていてさえ責められるので、死後が思いやられます)とある=「☓」。
(オ)「私をひどい苦しみから救うために、私欲を捨てるよう両親に伝えてほしい」⇒「私欲のほだす所あさましうして、二十銭が油には、十銭十五銭の餅をやり、……。その代たらざればとて鬼きたりて我が血をとる」(=[両親は]あさましくも私欲にかられて、二十銭の油には、十銭か十五銭の餅をやり、……。その油の代わりの餅が足りないとして鬼が来て、私の血を取る)、「油にあたるほど、かちん(=※餅)を送り給へとこまやかにかたり給ふれ」(=油に相当するだけの餅を渡しなされと、[両親に]詳しく語りなされ)となっている=「○」。
「古文」の内容の細部まで理解できなくとも、「キーワード」に着目することで「正誤判別」は可能だと心得よ。
<時間配分目安:3分弱>
攻略ポイント
●「長い説明文で紛らわしい選択肢設問」はどう対処するか? 無論、できるだけ単純な方法で、「選択肢」を少しでも「消去」しておきたい。その為にこそ「原意消去」だ。絞り込めば、誤答の可能性が減少するのは自明の理。その上で、様々な「解法」を用いて、さらに判別すればいい。従って、基本的「解法」を完全に習得し的確に応用できるようにしておくことが重要だ。それによって「得点力」を安定させたい。
●「説明記述」は「問題文」と「条件」がとても複雑だ。「攻略」できるか? それぞれを正確に理解することは当然として、後は実直に「練習」するだけだ。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げるという手法を完璧にマスターすること。
「内容」から重要度を特定し、優先順位の高いものから積み上げる。各「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習する。本校では「60~80字程度」の「字数指定」が多いので、2~3つ程度の「要素」でまとめることに慣れること。
「合格ライン」は6割強(過去5年間平均の「3科目合計合格者得点率」は60.2%、本年度は60.0%。「国語」の過去5年間の「男女合計受験者平均得点率」は58.8%。本年度は59.3%)。配点が大きい「説明記述」(各10点程度)での失点や減点は致命的になると肝銘せよ。
●「総合的知識問題」も決して侮れない。「あらゆる知識」が問われる。独自に「幅広い知識」を常に習得していくこと。学校や塾での学習だけでは、全く不十分だ。
●「古文」の「攻略法」は? 重要な「古文単語」の定着はもちろんだが、「内容解釈」も求められるので「基礎的文語文法」は押さえておきたい。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は7000字ほどにもなる(本年度は一気に増加して約9000字)。したがって、速く正確に読み取ることが不可欠。分速750字以上を目標に「読む練習」をしたい。