市川高等学校 入試対策
2022年度「市川高等学校の国語」
攻略のための学習方法
記述
「市川の記述対策」は「問題解説」及び上記のとおりだが、その前提としてやるべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。
最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。
では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~60字程度で書いてみる(市川の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。
次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。
「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
解法
「記述」「選択肢」、その他の問題も含め、「市川の国語」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解説」が定まっていない証だからだ。そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
大学入試にも匹敵、あるいはそれ以上の問題文を読まなくてはならない。「現代文」全体で7000字以上。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。
やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながら素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。市川に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「市川の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。いかなる「攻略法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。
確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。
要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
古典
「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」は必須のカリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶことはない。
が、「中高一貫校」ではそれらを中学時点で学び始めている。従って、「高校入試」で出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」するしかない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は理解しておかなくてはならない。
そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。
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2022年度「市川高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は【文章Ⅰ】が中村桃子「<性>と日本語――ことばがつくる女と男」(文字数約3700字)、【文章Ⅱ】が真田信治「方言は気持ちを伝える」(文字数約900字)。小問は全5問(解答数6)。「選択肢」(「発言内容正誤判別」あり)、「説明記述」(1問。「50字以内」指定)。問題文を合わせて6分弱で読み切り、設問を13分弱で解きたい。
大問二は「小説」、出典は有吉佐和子「地唄」(文字数約3600字)。小問は全6問(解答数8)。「選択肢」(「総合的知識問題」あり)、「説明記述」(1問。「80字以内」指定)。問題文は4分半程度で読み切り、設問を15~16分で解きたい。
大問三は「古文」、出典は本居宣長「菅笠日記(すががさのにっき)」(文字数約1200字)。小問は全5問(解答数9)。「選択肢」(「正誤判別」、「複数解答」あり)、「説明記述」(1問。「30字以内」指定)。10分程度で解きたい。
大問四は「漢字の書きとり」(全5問)。2分以内で丁寧に終えたい。
【大問一】
- 時間配分:13分弱
【文章Ⅰ】では、「おれ/あたし/ぼく」や「~ぜ/よ/だ」など、日本語には「性」が刻まれている――自然な言葉づかいに思える「女/男ことば」が、「性」についての規範と結びついてきたことを歴史的に論じている。本文では、「日本の翻訳は、『言語資源』に与えられた差別関係がグローバルに補強される場」になっていると指摘している。また、【文章Ⅱ】では、いま各地の若者たちが、「話し言葉の方言」を「書き言葉」としても使い始めている――古いと思われていた「方言」を新鮮でカッコいいと受けとめるのはなぜなのか、「標準語」との関係はどうなっているのかについて論じている。本文では、「サブカルチャー」として「方言」を活用しようという動きが世界や日本で広がり、それが誠実な自己主張につながると指摘している。2つの文章ともに、やや難解な語句や未知の概念があろうが、「※注」を活用すれば内容は理解できる。本校の「標準レベル」の小問が並んだ後に、初出の「2つの文章の趣旨についての発言内容正誤判別設問」が控えている。心して解き進めたい大問だ。以下、いくつか確認してみよう。
[問1] 「内容説明選択肢」(5択)。傍線部(1)「外国文学の邦訳」について、「そこにはどのような特徴があるか」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」を最優先に考えること)。しかし、ここは傍線部そのものが問われているのではないので、流石(さすが)に無理だ。「傍線部一文一部の法則」で「手がかり」を求める(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という読解の基本となる解法)。直後が「(外国文学の邦訳)を読んでいると、びっくりするような言葉づかいに出あうことがある」となっている。つまり、「外国文学の邦訳」の「特徴」は、「びっくりするような言葉づかい」だと分かる。さらに、どのような「言葉づかい」なのかを「同一意味段落」から読み取っていく(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。2行目以降の部分から、「白人男性」は「標準語」、「白人女性」は「おんな言葉」を使っているのに対して、「黒人」など「非白人」は「擬似方言」を使っていると読み取れるはずだ。ここで、各選択肢の「文末」と照合する(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。(ア)「登場人物の性別に応じて言葉づかいが明確に訳し分けられている」、(イ)「『標準語』で訳されている」、(ウ)「登場人物それぞれの属性に応じて言葉づかいが明確に訳し分けられている」、(エ)「擬似方言で訳されている」、(オ)「登場人物の人種や階級に応じて言葉づかいが明確に訳し分けられている」。さあ、どうだろうか? 「言葉づかい」なのだから、(イ)と(エ)は即「消去」、そして、「白人」と「非白人」が対比されているので、(ア)(ウ)も「消去」できると判別したい。「同一意味段落」で他の部分を確認しても特に誤っていない。したがって、「答え」は(オ)だ。本問では使えなかったが、先ずは「原意消去」だと心得よ。
<時間配分目安:2分強>
[問2(2)] 「内容説明記述」(「50字以内」指定)。傍線部(2)の「国語=標準語」という「概念の成立にともなって、『方言』はどのようなものであると考えられるようになったか」を、「50字以内」で説明する。先ずは「傍線部一文一部の法則」で確認すると、直前から、「方言」は「国語=標準語」という概念の成立にともなってつくり出されたものだということが分かる。さらに、「同一意味段落」を読み解いていくと、4つ目以降の形式段落から、「方言」とは「正しく優れた言葉づかい」である「国語=標準語」の成立を妨げる言葉づかいとして、初めから否定的価値をともなって誕生したのであり、話すことは間違っている「劣った言葉づかい」とされてきたことが分かる。こうした内容を整理して「字数」に合わせてまとめていくことになる。たとえば、「正しく優れた言葉づかいである『国語=標準語』の成立を妨げる、話すことは間違っている劣った言葉づかい。」(50字)といった「答え」になる。適切な「解法」を用いて、段階的に解き進めることが肝要だ。
<時間配分目安:3分>
[問5] 「2つの文章の趣旨についての発言内容正誤判別選択肢」(5択)。二重傍線部(X)「『方言』の復権」について関心を持った生徒(A)~(E)が読んだとして示されている【文章Ⅱ】と、本文である【文章Ⅰ】に関して生徒たちが話し合った発言内容の中から、「【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】の趣旨と異なる発言」を答える。唐突に【文章Ⅱ】が登場して驚くこと必至だが、とにかく読んで「趣旨」を把握したい。そして、【文章Ⅰ】の「趣旨」も改めて押さえた上で、各選択肢の「説明」の「要点」で正誤判別していく。(ア)「生徒(A)」:「【文章Ⅰ】で一九六〇年代に転校生が言葉づかいを笑われた」⇒二重傍線部(X)の段落で述べられている=適切/「【文章Ⅱ】で一九九〇年代以降東北弁をしゃべることは恥ずかしくなくなった」⇒【文章Ⅱ】の最終段落で述べられている=適切。(イ)「生徒(B)」:「【文章Ⅱ】に一九八〇年代に日本語の均質化が完成したとある」⇒【文章Ⅱ】の最初の段落だ=適切。(ウ)「生徒(C)」:「【文章Ⅱ】では、教育によって標準語の普及が完成したことを強調」⇒【文章Ⅱ】の最初の段落に「標準語奨励運動は教育によってではなく、マスメディアによって完成した」とある=不適切(【文章Ⅰ】についての発言もあるが、もはやチェックは不要だ)。(エ)「生徒(D)」:「【文章Ⅰ】では、翻訳の中では方言を話す登場人物が差別的に描かれていると述べている」⇒【文章Ⅰ】の最初の段落から分かる=適切/「【文章Ⅱ】では、出身地の言葉で話す方が誠実さにつながると説明されている」⇒【文章Ⅱ】の最終段落で述べられている=適切。(オ)「生徒(E)」:「【文章Ⅱ】ではイギリスの例が紹介されているが、日本語でも方言の方がカッコいい」⇒【文章Ⅱ】の4段落に「イギリスの例」があり、「地方なまりがカッコいいと映っている」と紹介されている=適切。したがって、「答え」は(ウ)になる。何やら複雑そうに思えるだろうが、「要点」を絞り込んで判別すればさほどでもない。「要点」を的確につかめるよう、しっかりと練習しておきたい。
<時間配分目安:3分強>
【大問二】
- 時間配分:15~16分
「地唄」の名人で琴に命を賭ける盲目の父「寿久(としひさ)」と、父に背き日系二世の米国人と結婚した娘「邦枝(くにえ)」――父娘の愛憎の絆を妙なる調べに映す作品。本文では、親子の縁を切られた「邦枝」が渡米することになり、出国前に父と会う決意をして公演会に行き、父の弟子である「新関(にいぜき)」と話をした後の様子が描かれている。伝統芸能の世界が舞台でもあり、専門用語が多いが、「※注」を参考にして内容を理解したい。「総合的知識問題」を含めた「選択肢設問」が中心で、本校としてはオーソドックスな構成の大問だ。手際よく解き進めていきたい。以下、いくつかの設問を検証する。
[問1] 「語句の意味の選択肢」(全3問/各5択)。「総合的知識問題」。二重傍線部(a)「勿体(もったい)ぶって」・(b)「げんなりして」・(c)「徐(おもむ)ろに」の「本文中での意味」を答える。「原意」での特定を優先させ、それが困難な場合は前後の「文脈」から判断していく。「答え」を確認する。「勿体ぶる」=「必要以上に重々しく気取った態度をとる」ことだと知っているはず⇒(a)の「答え」は選択肢(ウ)「いかにも重々しそうに」。「げんなりする」=「疲れて気力のなくなったさま」を表す「副詞」、日常でも使うだろう⇒(b)の「答え」は(オ)「嫌気がさして」。「徐に」⇒「落ち着いて、ゆっくりと行動するさま」を表す「副詞」。「漢字の読み」の問題でも定番⇒(c)の「答え」は(イ)「ゆっくりと」。本校では「高度な語彙力」を磨く必要があると心得よ。
<時間配分目安:全問で1分半>
[問4] 「理由説明選択肢」(5択)。傍線部(3)「程なくアメリカという遠い異国へ自分は行ってしまうのだということを、邦枝は今、忘れそうであった」について、「邦枝がこのような状態になったのはなぜか」を答える。無論、先ずは「原意消去」をしたい。ここは「理由説明」なので、「忘れそうであった」ことの「直接的理由」として結びつかないものを「消去」したい。各選択肢の「文末」と照合する。(ア)「不安になったから」、(イ)「寂しくなったから」、(ウ)「悲しくなったから」、(エ)「思い出に浸っていたから」、(オ)「気が緩んでいたから」。さあ、どうだろうか? 「思い出に浸っていた」⇒「だから」⇒「忘れそうであった」、これ以外は「消去」できると判別できるはずだ。「同一場面」をチェックする(「小説」では「同一場面」の「直前直後」に「手がかり・ヒント」がある)。他の部分の説明も特に誤ってはいないと分かる。よって、「答え」は(エ)だ。見事、「一発消去」だ。畏るべし!! 「原意消去」、しっかりと使えるようにして大いに活用すべし。
<時間配分目安:1分強>
[問6] 「心情説明選択肢」(5択)。傍線部(5)「腹の底が何度も大きく波をうった」について、「この時の邦枝の心情はどのようなものか」を答える。当然ながら、先ずは「原意消去」。ここは「心情説明」、「(腹の底が)大きく波をうった」という「比喩表現」の「原意」と結びつかない「心情」を「消去」する。各選択肢の「文末」を確認する。(ア)「ひどく動揺している」、(イ)「後悔の念が押し寄せている」、(ウ)「興奮している」、(エ)「うんざりしている」、(オ)「混乱している」。「波」という言葉から(イ)の「押し寄せている」に引っ張られてはいけない。「大きく」「うった」という表現と結びつかない。となると、「ひどく動揺している」以外は「消去」できると判断できなくてはいけない。「同一場面」から、他の部分の説明も特に誤ってはいないと考えられる。したがって、「答え」は(ア)になる。再度の「一発消去」。くれぐれもひっかからないように、「原意消去」の練習を重ねたい。
<時間配分目安:1分強>
※尚、[問5]は「比喩換言説明記述」(「80字以内」指定)で、傍線部(4)「電流に打たれて、二人が二人とも、はっと息を呑(の)んだ」とは「どういうことか」を説明する。「比喩表現」を的確に換言して表現することがポイントとなる。たとえば、「電流に打たれて」⇒「一瞬にして直感し」、「息を呑んで」⇒「驚いて息を止めて」といった換言ができるはずだ。あとは、「同一場面」から「状況」を読み解き補足説明をすればいい。
【大問三】
- 時間配分:10分程度
江戸時代後期成立の国学者本居宣長による「旅日記」。「吉野」と「飛鳥」を旅した10日間を記している。本文では、「吉野の水分(みくまり)の神の社」に参詣した日のことが記されている。本年度は、昨年度同様に「古文単語の意味」といった単純な設問はなく、全て「現代語訳」や「内容解釈」に関連するものだ。なかなか厄介なので心して解き進めること。以下、2問だけ検討してみよう。
[問2] 「換言説明記述」(「80字以内」指定)。傍線部(2)の「この神にしも、禱(ねぎ)ことし給ひける」とは「どういうことか」を「30字以内」で説明する。「現代語訳」しなければ何も始まらないが、如何(いかん)せん、「禱」の意味が分かるはずもないのでお手上げか? 否、「傍線部一文一部の法則」で「手がかり」を求めたい(「古文」であっても、「内容読解」の基本的解法は「現代文」と同じだ)。直前に「むかし我が父なりける人、子持たらぬ事を、深く歎(なげ)き給ひて」とある。おおよそ、「昔、私の父であった人が子どものいないことを嘆きなさって」と訳せるに違いない。よって、「この神」に「禱ことし給ひける」=「神に祈りなさった」と類推できる。そして、「この神」の「この」という「指示語」を開く(これまた「現代文」と同様)。2行前から、「この神」=「子守の神」だと読み取れる。あとは、こうした内容を「換言説明」としてまとめればいい。たとえば、「父が、子守の神に子どもができるように祈りなさったということ。」(30字)といった「答え」になる。「現代文」と同じで、「古文」の「内容説明・解釈」も「現代語訳」してから「文脈」をたどっていくのが原則だが、その際、ざっくりと「現代語訳」した後で何か「特徴的な部分」に着目して考えていくと手際よく解くことができると心得よ。
<時間配分目安:2分半>
[問4] 「語句の意味の選択肢」(5択)。傍線部(4)「花の便り」の「本文中の意味」を答える。無論、「便り」がポイントとなる。「現代文」でもそうだが、「古文単語」の「便り」も多義語だ。「文脈」から「意味」を特定したい。直後に「(花の便りは)すこし心浅きようなれど、異事(ことごと)のついでならんよりは……」とある。「異事」は「重要古文単語」で、「別のこと。ほかのこと」という意味だと知らなくてはいけない。つまり、「『花の便り』は、少し薄情のようだが、ほかのことのついでであるよりは……」ということになる。したがって、選択肢 (イ)の「花見のついでに訪れること」が「答え」だ。そう、「古文単語」の「便り」には「機会。ついで」という意味があるのだ。やはり、本校合格のためには、基本的な「古文単語」は確実に定着させておきたい。
<時間配分目安:1分強>
※尚、[問5]は「筆者の考察の正誤判別選択肢設問」(4択)だ。「約1200字」もある「古文」を正確に読み解いて照合する必要がある。とても手間暇がかかるので、効率を考えれば、「捨て問」で構わない。
【大問四】
- 時間配分:2分以内
本校の「漢字問題」は「書きとり」と「同音異字判別」のどちらか、あるいは、その組み合わせといったパターンが多い。本年度は昨年度に引き続き「書きとり」だけという出題形式。難易度は近年、「難」→「易」→「難」と「隔年現象」が見られたが、本年度は「標準レベル」。絶対に失点は避けたい。
[問] 「漢字の書きとり」(全5問)。示されている各文の傍線部の「カタカナ」を「漢字」に直す。確認する。(1)「ソショウを起こす」=「訴訟」⇒これは難なく書けなくてはいけない。(2)「大理石にチョウコクする」=「彫刻」⇒「中学入試レベル」の平易さ。(3)「シュウイツなデザイン」=「秀逸」⇒やや難解か? 「他のものに比べてぬきんでてすぐれていること」という意味も押さえておくこと。(4)「美しいケイコク」=「渓谷」⇒「渓」の細部に注意したい。(5)「目的と手段がトウサクする」=「倒錯」⇒「高校入試」の定番。本校ではやはり、高度な「語彙力」が求められていると心得よ。
<時間配分目安:全問で1分半>
攻略のポイント
●本年度、本校では初出の「2つの文章の趣旨についての発言内容正誤判別設問」があった。明らかに新たに導入された「大学入学共通テスト」を意識している。無論、来年度以降の出題も予想されるので、しっかりと練習しておくことが不可欠だ。
●「説明文が長くて紛らわしい選択肢設問」にはどう対処するか? 無論、できるだけ単純な方法で、「選択肢」を少しでも「消去」しておきたい。その為にこそ「原意消去」だ。絞り込めば、誤答の可能性が減少するのは自明の理。その上で、さまざまな「解法」を用いて、さらに判別すればいい。したがって、基本的「解法」を完全に習得し的確に応用できるようにしておくことが重要だ。それによって「得点力」を安定させたい。
●「説明記述」は「問題文」と「条件」がとても複雑だ(本年度は単純だったが、安心してはいけない)。「攻略」できるか? それぞれを正確に理解することは当然として、後は実直に「練習」するだけだ。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げるという手法を完璧にマスターすること。「内容」から重要度を特定し、優先順位の高いものから積み上げる。各「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習する。本校では「50~80字程度」の「字数指定」が多いので、2~3つ程度の「要素」でまとめることに慣れること。「合格ライン」は60%台半ば(過去9年間の「男女合計受験者平均得点率」は59.3%。本年度は57.9%)。配点が大きい「説明記述」での失点や減点は致命的になると肝銘せよ(本年度は各6~8点)。
●「総合的知識問題」も決して侮れない。「あらゆる知識」が問われる。独自に「幅広い知識」を常に習得していくこと。学校や塾での学習だけでは、全く不十分だ。
●「古文」の「攻略法」は? 重要な「古文単語」の定着はもちろんだが、「内容解釈」も求められるので「基礎的文語文法」は押さえておきたい。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は例年7000字ほどだったが、本年度は一気に増加して増加して約9400字。速く正確に読み取ることが不可欠。分速750字以上を目標に「読む練習」をしたい。