国際基督教大学高等学校 入試対策
2018年度「国際基督教大学高等学校の国語」
攻略のための学習方法
国際基督教大学の入試問題に対応する力をつけるために必要なスキルは、一言で言うならば『論理的思考を支える考察力と洞察力』ということになろう。
論述問題は少なく、ほとんどが選択肢問題であることも大分負担を軽減している。それではどうすれば『考察力と洞察力』は養成されるのであろうか。一朝一夕にはそのような力が身に着くものでないことは受験生の皆さんもよく承知しているだろう。
これから何点かにわたって、そのような力と学力、そして物の考え方について述べたいと思う。
第一には、論理的文章を読みこなすためには、自分の思考が論理的でなければならない。では、どうすれば『論理的』思考を手に入れることができるのだろうか。より実戦的なことを指摘するならば、論理的文章を扱った記述式問題集を徹底的にやることである。さえに、余裕があれば『問題文の要約』を行ってみることである。
要約といっても、文章で150字程度にまとめるというのではなく、箇条書きで構わないので筆者の主張の流れを書き出すことである。その際に、忘れてならないのが『接続詞』である。接続詞には『順接』と『逆接』の2種類あることは受験生の誰もが知っているであろう。箇条書きで文章のキーワードや重要表現を書き出すことにより、文章の流れが『目に見える』ようになるのである。これが文章の『可視化』である。この可視化が手際よく上手にできるようになると、解答時間が飛躍的に短縮化される。
当然、試験本番中に要旨を箇条書きにするなどという時間的余裕はないので、このような作業を行なうのは普段の受験勉強においてである。
大事なことは、そのような作業を普段から地道に繰り返し行い、積み上げてゆくと知らない間に、文章の流れを見抜く力が付くのである。自分は、文章読解力が足りない、あるいは殆どない、と感じている受験生はぜひこの手法をもって論理的文章の攻略法としてもらいたい。必ず、面白いように難解そうに見える文章がすらすらと読めるようになるはずである。
第二には、身の回りで起こる全ての事象に対して、『どうしてなのだろう』、『なんでこうなるのだろう』と自分の頭で考える習慣をつけることである。そして、人の意見や主張にじっくり耳を傾け理解しようとすることである。仮に、その人の主張が自分と矛盾するような主張であっても、どのような点で自分と違っているのか、また、自分と同じような主張である部分はないのか、ということを考え抜くのである。
そのような作業の積み重ねが、論理的文章を楽々と読み進めるには不可欠なプロセスであることを理解して欲しい。そのような手順を経て行けば、本問のような文章を手こずらずに読み込むことができるであろう。
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2018年度「国際基督教大学高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、自然科学分野に関する論説文読解問題である<28分>。
漢字の書き取り、内容把握選択問題、記述問題(25文字)。
大問2は、社会学的分野に関する読解問題である<42分>。
内容把握問題、80字の記述問題、選択肢問題など、出題形式にも偏りもない。
両問とも選択肢問題(全体の約7割)であっても、一つに絞り込むには相当な読解力が求められるので要注意である。
【大問1】自然科学的分野(技術)に関する論説の読解問題
- 時間配分:28分
出典は、『ビックデータと人工知能』「人工知能が人間を超える!?」(西垣通著)である。
生物と機械との境界線はどこにあるのか、人工知能を題材に「自律システム」と「他律システム」との対比の中で論理を展開する。
問一は漢字の読み書き問題である<2分>。
どれも基本的な漢字の問題。完答を目指して欲しい。
問二は文章内容把握選択問題である<3分>。
コンピュータがうまく機能するのは、「過去のプログラム作成時におこなった状況予測が当たった時だけ」である。したがって、「状況が大きく変化」するとどうなるかを考える。
問三は文章内容把握選択問題である<3分>。
「コンピュータの融通にきかなさは欠点ではなく、本質的な性質である」とはどういうことなのか。コンピュータが高速処理を行える条件は?
問四は文章内容把握選択問題である<3分>。
一般的に「機械」は、「再現性にもとづく静的な存在」なのである。
問五は文章内容把握選択問題である<3分>。
「シンギュラリティ仮説」とは何かを本文の流れに即して考えること。
問六は文章内容把握選択問題である<3分>。
人間には太古の昔より「論理的思考」がある。筆者は人工知能をどのように捉えているのか。
問七は文章内容把握記述問題である<5分>。
25字以内で記述する問題である。「シンギュラリティ仮説」とは何かを考え、さらにこの仮説を唱える人たちはどのような発想をするのかが手掛かりになる。
問八は文章内容把握選択問題である<2分>。
本文に即して考えると「絶対主義的な思い込み」とは何か。「脳だけに着目」する思考であり、その思考に基づき「思い込み」とは、客観的・絶対的に分析把握するものだと「思い込む」のである。
問九は文章内容把握選択問題である<2分>。
機械は基本的に人間が作ったものであるので「他律的」である。また、コンピュータはプログラミングされたものであるので、その結果は当然ながら予測可能である。
問十は文章内容把握選択問題である<2分>。生物は「自らをつくる存在」であるので、過去とのつながりを保ちながら自らをつくっているのである。
【大問2】社会科学的分野(コミュニケーション)に関する論説文読解問題
- 時間配分:42分
出典は、『わかりあえないことから』(小川洋子著)である。
問一は文章内容把握選択問題である<3分>。
モロッコでは自国語ではないフランス語を習得している人たちが社会的に上層を占めており、格差が生じ民主主義が育たない結果を生む。
問二は文章内容把握選択問題である<3分>。
論理的な事柄を自国語で話せるようにするためには、何が必要であるのかを本文に従って理解する。
問三は文章内容把握選択問題である<3分>。
日本語は、筆者によれば「対等な関係で褒める語彙」が少ないため、「褒める」場面で使いたい言葉は必然的に「外来語」に依存せざるを得ないのである。
問四は文章内容把握選択問題である<4分>。
日本語は、「対話」の言葉が十分ではないのである。本文中で言及されている歴史的背景をしっかり押さえること。
問五は文章内容把握選択問題である<5分>。
「これ、コピーとっとけよ」といういい方は、男性上司が男性の部下にいう場合と、女性上司が男性の部下にいう場合の受け止め方を考える。
問六は文章内容把握選択問題である<4分>。
日本語は数多くの言語の中で、どのような特性を持っているのか。そのような特性を持つ日本語環境の中で、女性が社会進出するといかなる状況が生まれてくるかをしっかり把握すること。
問七は文章内容把握選択問題である<4分>。
今の時代は言語学的に考えた場合、男女における「対等な関係」を求められるのである。
問八は文章内容把握選択問題である<3分>。
敬語をわざと使って、皮肉的に表現しているのである。
問九は文章内容把握選択問題である<3分>。
英語やフランス語が行ってきた言語の近代化に比較すると、日本語の近代化は時間が短かった結果、日本語近代化の過程で積み残されたものがある。
問十は文章内容把握記述問題である<10分>。
「心が痛む」感覚は、男性「優位」の日本の中で、言葉遣いにおける男女の差別意識に気づいた自分も言語的な「権力」を無自覚に独占していることに反省をしているのである。
攻略ポイント
試験時間と問題のボリューム及び設問のレベルを考えると、時間的余裕はなく見直しの時間は取れないと考えた方がよい。時間配分を間違えてしまうと「時間切れ」になってしまい全問答えることなく試験終了になってしまう。
出題形式は、8割近くが選択肢問題である。したがって、本文をしっかり読み込み、迅速に適切な選択肢を選ぶ能力を身に付けなければならない。
そのためには、試験前に論理的文章などを数多く読み、内容把握力を高めておかなくてはならない。入試本番でこの適正選択肢選択能力が十分発揮できないと、解答に手間取り試験時間がなくなってしまう。
結果、精神的にも追い詰められ、気が焦り正解を導くことも困難になってしまう可能性もある。記述式問題対策も手を抜くことなく十分に行って欲しい。