国際基督教大学高等学校 入試対策
2020年度「国際基督教大学高等学校の国語」
攻略のための学習方法
国際基督教大学の入試問題に対応する力をつけるために必要なスキルは、一言で言うならば『論理的思考を支える考察力と洞察力』ということになろう。
論述問題は少なく、ほとんどが選択肢問題であることも大分負担を軽減している。それではどうすれば『考察力と洞察力』は養成されるのであろうか。一朝一夕にはそのような力が身に着くものでないことは受験生の皆さんもよく承知しているだろう。
これから何点かにわたって、そのような力と学力、そして物の考え方について述べたいと思う。
第一には、論理的文章を読みこなすためには、自分の思考が論理的でなければならない。では、どうすれば『論理的』思考を手に入れることができるのだろうか。より実戦的なことを指摘するならば、論理的文章を扱った記述式問題集を徹底的にやることである。さえに、余裕があれば『問題文の要約』を行ってみることである。
要約といっても、文章で150字程度にまとめるというのではなく、箇条書きで構わないので筆者の主張の流れを書き出すことである。その際に、忘れてならないのが『接続詞』である。接続詞には『順接』と『逆接』の2種類あることは受験生の誰もが知っているであろう。箇条書きで文章のキーワードや重要表現を書き出すことにより、文章の流れが『目に見える』ようになるのである。これが文章の『可視化』である。この可視化が手際よく上手にできるようになると、解答時間が飛躍的に短縮化される。
当然、試験本番中に要旨を箇条書きにするなどという時間的余裕はないので、このような作業を行なうのは普段の受験勉強においてである。
大事なことは、そのような作業を普段から地道に繰り返し行い、積み上げてゆくと知らない間に、文章の流れを見抜く力が付くのである。自分は、文章読解力が足りない、あるいは殆どない、と感じている受験生はぜひこの手法をもって論理的文章の攻略法としてもらいたい。必ず、面白いように難解そうに見える文章がすらすらと読めるようになるはずである。
第二には、身の回りで起こる全ての事象に対して、『どうしてなのだろう』、『なんでこうなるのだろう』と自分の頭で考える習慣をつけることである。そして、人の意見や主張にじっくり耳を傾け理解しようとすることである。仮に、その人の主張が自分と矛盾するような主張であっても、どのような点で自分と違っているのか、また、自分と同じような主張である部分はないのか、ということを考え抜くのである。
そのような作業の積み重ねが、論理的文章を楽々と読み進めるには不可欠なプロセスであることを理解して欲しい。そのような手順を経て行けば、本問のような文章を手こずらずに読み込むことができるであろう。
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2020年度「国際基督教大学高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、科学に関する論説文読解問題<30分>。
漢字読み書き問題、内容把握選択問題である。
大問2は、文学に関する論説文読解問題<40分>。
内容把握選択問題、60字の記述問題である。
両問とも出題問題数に占める選択肢問題の割合は約9割であっても、安易に考えてはいけない。正解一つに絞り込むには相当な読解力と時間を要するので要注意である。
【大問1】自然科学的分野(科学)に関する論説文の読解問題
- 時間配分:30分
出典は、『科学と非科学―その正体を探る』(中屋敷均著)である。
「科学」の中に、絶対的真理として存在していると人々がこれまで絶大なる信頼を置いてきた考え方に対して、実は科学の中には「不動の真理」など何もないのである、という揺らぎについての論説文である
問一は漢字の読み書き問題<2分>。
「美辞」は、「美しい言葉」のことである。読み取り問題も1題出題されている。
問二は慣用表現問題<1分>。
「とてもたくさんあって数えきれない」ことを表わす慣用表現である。
問三は文章内容把握選択問題<2分>。
「玉石混合」の「玉」とは「価値のあるもの、宝物」であり、「石」とは「価値のないもの、石ころ」の事である。つまり、「優れたもの」と「つまらないもの」が混ざり合っている、ということである。
問四は文章内容把握選択問題<3分>。
傍線部の「それ」は、直前にある「科学的知見と~後世に残っていく」ことである。「適者生存」とは、「仮説の適応度をさらに上げる修正仮説が提出されるサイクルが繰り返される」態様が、生物学でいう「環境変化に的確に適応したものだけが生き残る」という摂理に類似しているということである。
問五は文章内容把握選択問題<4分>。
「原理的に不完全」とは、「科学の知見が常に不完全」であるという科学に本来的・宿命的に内在する「原理に立脚」して、という意味である。。
問六は文章内容把握選択問題<4分>。
「科学に『不動の真理』はないのである」、ということは「科学的原理は原理的に不完全」なのであり、科学的知見についても「どれくらい確からしいかという確度」についても専門家の意見も様々であり、実現するには困難である、ということである。
問七は文章内容把握選択問題<4分>。
科学的知見の確からしさについて、専門家でない人間が正しい認識を持つことは困難なのである。したがって、科学的知見の確からしさを判断するために、「権威主義」に照合して判断しようとする手法が簡便であるとして用いられるのである。
問八は文章内容把握選択問題<4分>。
「神託」とは「神のお告げ」の事であり、「神」は「無謬性の具現化された存在」である。したがって、傍線部の「神」とは、本文に即して考えると「絶対的」と人々が認識している「権威主義の体現者」であり、「専門家」ということになろう。
問九は文章内容把握選択問題<4分>。
「この失墜」とは、「権威が一度間違って信頼を失うこと」である。「恐怖感が“硬直したもの”を生む」とは、間違ってならないという強迫観念に対して「間違えられない」という極めて独善的・硬直的決めつけが行われ、それ以外は一切認めないという傾向に陥ってしまうのである。
【大問2】芸術・文学的分野(文学)に関する論説文読解問題
- 時間配分:40分
出典は、「講演 読む・書く・学ぶ」(小野正嗣著)である。
問一は文章内容把握選択問題<2分>。
本文によれば、子どもは遊んでいるとき「他人になっている」のである。
問二は文章表現把握選択問題<3分>。
傍線部は「僕は子どもが四人います」という箇所から、「自分の身近な経験」を表現しているのである。
問三は文章内容把握選択問題<3分>。
「遊んでいるとき」は「他人になっている」のであるので、本来の自分と遊んでいるときの自分のどちらが本当の自分であるかの「確信」が持てず、「あいまい」になってしまうのである。
問四は文章内容把握選択問題<4分>。
遊びの世界では、「自分は他人になっている」のであり、泥団子も「現実的には食べられない」ことは理解しつつ、「おいしそうな団子であると空想」するのである。
問五は文章内容把握選択問題<4分>。
「遊び」と「文学」における共通点は、どちらも「現実」と「空想」の世界に同時に身を置くことができるのである。
問六は文章内容把握選択問題<4分>。
筆者によれば、小説や詩は「それを読む人がいなければ、ただの文字列」なのであり、読み手が能動的に働きかける必要があるのである。
問七は文章内容把握選択問題<3分>。
単なる文字列にしか過ぎない小説や詩に対して、読み手が能動的に働きかけることにより、「文字列をたどり直しながら、書き直している」のである。
問八は文章内容把握選択問題<2分>。
「主観性」という語句が傍線部にあるので、「自己」または「自分」という語句がキーワードになるので、選択肢はイまたはエに絞り込まれる。
問九は文章内容把握選択問題<3分>。
文章を書いてみると、自分自身と書いている内容との間にどうしても「隙間」ができてしまい、この隙間を埋めるためには、読む労力を惜しんではいけないのである。
問十は文章内容把握選択・記述問題<12分>。
本文の内容を「先生」と「生徒」の対話を通じて深めさせようとしており、それぞれの主張を本文の内容を踏まえて理解させようとしている。また、(2)の設問では、本文で書かれている「死の世界」についての60字以内の記述問題である。「死」とは、「人間」ではなくなること、つまり「人間らしく生きていけなくなる」ということである。
攻略のポイント
試験時間と問題のボリューム及び設問のレベルを考えると、時間的余裕はなく見直しの時間は取れないと考えた方がよい。時間配分を間違えてしまうと「時間切れ」になってしまい全問答えることなく試験終了になってしまう。
出題形式は、9割が選択肢問題である。選択肢問題といっても、本文をしっかり読み込み、迅速に適切な選択肢を選ぶ能力を身に付けなければならない。選択問題だから何とかなる、と考えてはいけない。漢字の書き取り・読み取りも、知識問題としてしっかり事前に準備して完答を目指したい。記述問題は1問の出題であるが、文字数は60字であるので、的確に自分の考えをまとめ上げる練習をしておくこと。
さらには、試験前に論理的文章などを数多く読み、内容把握力を高めておかなくてはならない。入試本番でこの適正選択肢選択能力が十分発揮できないと、解答に手間取り試験時間がなくなってしまう。