国際基督教大学高等学校 入試対策
2024年度「国際基督教大学高等学校の数学」
攻略のための学習方法
特に、何かのジャンルを集中して演習するということだけで本問の得点に結びつくかどうか。『数学的発想法』、つまり物事を論理的に考えて、結論へ向け矛盾のない整合性の取れた論理の道筋をつけられるかどうかである。数学におけるスキル演習(問題演習)だけでは、不十分な設問設定になっている。
ICUの入試問題は、単純なスキル演習力を見る問題ではない。初見の問題で、『数学的論理』をいかなる思考的プロセスを経て確立された論理へと昇華させてゆくのかということを自身で見つけ、理論として確立できる『力』がどれ程完成されているかを見る設問である。
出題形式も、初めて見る受験生も多いと考えられるが、決して慌てることなく落ち着いて設問内容をよく読んで、問題の解法の手掛かりが会話本文のどの部分に該当するのかを、よく考えて問題の本質を見抜くことである。
したがって、資料文の中で、各々の『考え方』や『概念』について言及している部分をよく読み込んで、正確に落ちついて問題を考えるようにすること、これが本問のような問題に不可欠な解法へのアプローチである。
このような設問に対して、如何なる事前準備が有効であるかを一緒に考えてみよう。
通常、数学の試験に関しては、大量に問題(計算問題や求積〈面積・体積〉問題)を解くことが最優先として捉えられている。しかし、その様な事前準備においては『正解』を出すことが最大にして唯一の目標となり、公式を暗記している受験生は該当する公式に数値を当てはめて答えを出すという、ある意味では非常に『効率的』なアプローチに終始してしまうだろう。
そのような手法だけでは本問において合格点を取るのは難しいのであろう。なぜならば、公式などの原理・原則を根本から理解せず結果だけを『機械的』に導き出すことになれ切ってしまっているからである。
大切なことは、自分の『頭』で考え抜く、ということである。
例えば、ある公式があったとしたら、公式の初めから自分で計算し最終的には公式の形まで自力で導き出せるかどうかである。暗記したものはいずれ忘れてしまう。忘れてしまうことをネガティブに捉えてはいけない。人間はある意味では『物事を忘れる存在』なのである。覚えたばかりの知識を忘れてしまったら、再度繰り返して演習を繰り返せばいのである。
ここで述べたいことは、知識(特に数学)を暗記するのではなく理解することに重点を置くべきである、ということである。したがって、国際基督教大学高校の数学の入試問題に対応する学力は、数学的思考をしっかり身に付ける姿勢で普段の学習を行うべきである。
そのためにも、問題を解く上で使用した公式を自分で導き出す学習を励行して欲しい。
さらに、数学で使用する言葉や数字にはすべて『意味』があるということである。その意味をしっかり理解して、自由自在に操れる術をマスターしなければならない。
例えば、1次関数における切片とはどういう意味があるのかを考えるのである。単に、直線のグラフとy軸との交点のy座標である、としか覚えていないとしたら、その先の解法への広がりは限られたものになってしまう。切片であるb(y=ax+bのb)はx=0のときの(xに0を代入する)yの値である、という理解ができているかどうか。
このように考えていくことが、やがて自身の理論的思考力を鍛えることになり、結果的に解法の幅を広げることができるのである。大事なことは、単に問題を解き正解を導くことだけで満足せずに、どうしてそのような式を考えて解放するのかということを根本的な原理から考えるようなクセを付けることである。
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2024年度「国際基督教大学高等学校の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
ICUの入試問題は一般の高校入試のような演習形式ではない。初めて見た受験生はどのように対策を立てればよいのか見当もつかないのではないだろうか。「資料文」を読ませ、その原理的理解を深めさせ高度な数学的思考力を確認する出題形式になっている。
このような入試問題に対する対策としては、結論的には「数学的思考力」を高める訓練をしっかり行うことである。
そのためには単純なスキル演習での解答の正誤だけを意識するのではなく、設問の原理的構成にまで踏み込んで(問題の徹底した掘り下げ)解法の糸口を探る手法を磨く必要がある。また、「資料文」の特徴は、「資料文」の中のどの部分が原理の説明で、どの部分が求められている演習の答えを導くヒントなのかを見極め、前者は深く読み込んで理解し尽くすということのないようにすることである。なぜならば、そのような「深い読み込み」は時間がかかり、結果後者にかける時間を失ってしまうからである。
ICU対策は、とにかく過去問演習である。少なくとも8~10年分を2~3回は反復演習して欲しい。
【大問】資料文を読みながら各設問に答える
- 時間配分:70分
問1は、集合の要素に関する問題である<1分>。
資料文にある「全体の集合の要素」に関する解説を読んで、概念的理解を深めることが重要である。
(1)7は1桁の素数である。
(2)4は8の倍数ではない。
問2は、要素の個数を求める問題である<2分>。
(1)5×2=10から5×40=200までの5の倍数の個数を求める。
(2)9で割り切れる数は全て3でも割り切れるので、Bの要素は全てA要素になることに注意すること。
(3)Aの要素は全てBの要素になる。設問を読んで題意を理解しづらい場合は、1~30までの整数でAとBの要素の個数を調べてみることも一つのアプローチの方法である。
問3は、関数の値を求める問題である<1分>。
関数f(x)=-3x+2に、(1)x=3を(2)x=-をそれぞれ代入する。
問4は、関数に関する問題である<2分>。
「関数」とは「集合Aのすべての要素に対して、集合Bの要素を必ず1つ対応」させるものである。資料文の具体例も参考にしながら正誤を決める。
問5は、場合の数に関する問題である<2分>。
資料文にある「要素が2個の集合から要素が3個の集合への関数」に関する考え方を参考に考えること。要素が3個の一つ一つに要素が4個ずつ対応するので求める場合の数は、4×4×4で求めることができる。
問6は、単射に関する問題である<3分>。
「単射」とは「異なる要素に必ず異なる要素を対させる関数」のことである。この定義にしたがって資料文の具体例を参考に考える。
問7は、場合の数を求める問題である<4分>。
前問での「単射」の定義を再度確認すること。
(1)要素が2個の場合、その1つが4個の要素に対応するのは4通り、それ以外の1つが対応する要素は3個であるので、求める場合の数は4×3=12通りとなる。
(2)要素が3個の場合、その1つが5個の要素に対応するのは5通り、次の1つが5-1=4個の要素に対応するのは4通り、最後の1つが4-1=3個の要素に対応するのは3通りであるので、求める場合の数は5×4×3=60通りとなる。
問8は、全射に関する問題である<3分>。
「全射」とは「集合Bのすべての要素に必ず集合Aの要素が少なくとも1つ対応する関数」のことである。
資料文にある「要素が3個の集合から要素が2個の集合への関数の中で全射」であるものを考える具体的事例を参考に考える。
(1)bに対応する集合Aの要素が存在しない。
(2)集合Bの要素は全て集合Aの要素に対応しているので全射である。
(3)4に対してaとbが対応しているため、そもそも本問の関係は関数ではない。
問9は、場合の数を求める問題である<3分>。
「全射」の定義を正確に理解すること。
(1)要素の個数が4個の集合から、要素の個数が3個の集合への全射である関数は、4個の要素のうち2個の要素は対応する要素が同じになる。
(2)設問の条件より、①4個の要素のうち3個が同じ要素に対応している場合、②4個の要素のうち2個の要素と2個の要素がそれぞれ同じ要素に対応している場合に分けて考える。
問10は、場合の数を求める問題である<5分>。
「全単射」とは「単射であり、かつ全射である関数」のことである。
「集合Aから集合Bへの関数」において集合Aのことを「定義域」、集合Bのことを「終域」と定義する。終域と定義域と全単射との関係性について理解を深めること。
問11は、単射・全射・全単射に関する問題である<5分>。
再度、単射・全射・全単射の定義を理解したうえで、(1)~(4)において定義域と終域の要素の対応の仕方を考える。
問12は、有理数を求める問題である<5分>。
a=とb=の中点を考えると、であり既約分数であるので題意に合致する。該当する既約分数は他にもある。
<5分>
問13は、有理数の順番に関する問題である<5分>。
有理数の順番に関する問題であるが、1=、2= 、3= 、4= という具合に考え、分母と分子の和が等しい分数でグループ化して規則性を考える。
問14は、単射に関する問題である<5分>。
空欄あの直前の資料文に「自然数全体の集合から有理数全体の集合への関数」と見做した場合という前提があり、この前提に基づくと「自然数全体の異なる要素が、どちらも有理数全体の1つに要素に対応している」ので、この関数は単射ではない。
問15は、除法の余りに関する問題である<5分>。
有理数が循環小数になる条件は、筆算を行った場合に「同じ余りの数が出る」ことである。
問16は、循環小数に関する問題である<5分>。
資料文に例示されている循環小数を分数に置換する方法に基づいて、を既約分数にする。
問17は、bの値を求める問題である<4分>。
対角線論法についてその原理的理解を、資料文を読み込み理解しよう。
本問に関しては資料文に以下のように記載されていることを参考に考える。
bの整数部分は0とする。
bの小数第n位を次のように定める。
anの小数第n位が1ならば、bの小数第n位を2とする。
anの小数第n位が1以外ならば、bの小数第n位を1とする。
というルールに従えばb=0.21121となる。
問18は、関数gに関する問題である<5分>。
g(n)=nのときfn(n)=nと仮定すると、g(n)=fn(n)となる。また、自然数全体の集合から自然数全体の集合への関数gを、すべての自然数nに対してg(n)とfn(n)が異なるように定義されていることを踏まえて考える。
問19は、可算濃度である集合に関する問題である<5分>。
資料文から「濃度」の定義を初めに押さえておくこと。
資料文には「有限集合に対しては『要素の個数』という単語を使いますが、無限集合に対しては代わりに『濃度』という単語を使います。2つの無限集合に対して、その濃度が等しいというのは、その2つの集合の間に1対1対応、すなわち全単射が存在すること」とある。
つまり、「濃度」とは「2つの集合A、Bの濃度が等しいとは、AからBへの全単射が存在する」ということである。さらに、「可算濃度」について資料文には「自然数全体の集合の濃度を可算濃度といいます」とある。
攻略のポイント
特殊な出題形式であるため、初めて過去問を目にして戸惑いを感じる受験生も多いのではないだろうか。
資料文で「用語」の「定義」を説明したうえで、問題を解いてゆくという出題形式。
未知なる原理に関して一定の説明を与えかつ演習例も示し、実際に受験生に問題演習や論証問題をさせるという出題形式である。
このような設問形式の目的は、受験生の持つ論理的思考力や推理力を試す問題であることは言うまでもない。単純なスキル演習(問題演習)だけでは、本問のような設問には太刀打ちできない。
事前に行う対策としては、公式の証明を自ら行うことが有効であろう。さらに、ハイレベル問題集(具体的には『日日の演習 高校への数学』など)において、高度な思考力を求められるような問題演習を数多くこなすことである。