出典は『技術と社会—考えるきっかけとしての新型コロナ危機』（白井聡著）。近代＝人間中心主義(ヒューマニズム)の時代が終わったという時代認識を示す「ポスト・ヒューマン」という概念・言葉が、ここ10年程の間、学問の世界でキーワードになってきた。これは換言すれば、世界の中心を占めるのは人間ではなく科学技術である、ということである。しかし、新型コロナの出現により、このような時代認識は破綻したのではないだろうか。今後は、私たちの社会が人類の福祉と幸福のために、どのような知識や技術を発展させるべきかということを改めて問うべきなのである。

問１は、内容把握選択問題＜2分＞。
Ｂに入れる選択肢は直後に「何ら解決されていない」とあるので「根本的」が適切である。

問２は、内容理解選択問題＜2分＞。
前近代的な時代状況の特徴は、「神を中心におく」、「神にすがる」ことであるので、これに該当する選択肢は排除する。

問３は、内容把握書き抜き問題＜3分＞。
「ポスト・ヒューマン」とは「もう人間は『世界の中心』ではない」という考え方であり、「世界の中心を占めるのは人間ではなく科学技術である」ということである。

問４は、内容把握記述問題＜5分＞。
本文によれば「近代の始まりと同時に……現代世界で起こった重要な変化は、……私たちの内なる自然、つまり『自然としての人間』に対する態度」が変わってきたのである。さらに、「自然物としての人間に対して手を入れる技術が飛躍的に発展してきたことと関係」があり、「『生命の神秘』にかかわる領域の操作可能性」が大幅に高まってきたのである。

問５は、指示語選択問題＜2分＞。
本文には「新型コロナウイルス」に対して「世界中の専門家が……研究に取り組んでいますが、一筋縄では」いかないのである。なぜなら「ウイルスは次々と変異」するため、「何が正解であるか」を一概には言えないのである。つまり、感染症に対する人類の知識や対処法は限られたものにすぎないのである。

問６は、内容把握選択問題＜2分＞。
傍線⑤の中の「この考え方」とは、前の個所にある「技術は進化し続けて、人間に成り代わって世界の中心になる」という考え方である。「この考え方」が「真実ではない」とは、「どの技術が用いられ、どの技術が用いられないか」は「社会の在り方」によって決定されるからである。つまり、「社会の在り方こそが技術の用いられ方を決定」するのである。

問７は、内容把握記述問題＜7分＞。
本文によれば、「資本主義社会では……生産力・生産性を際限なく上げ続けなければならないメカニズム」であり、「より高度な生産性の実現を求めて、技術革新もここでは際限のないもの」となるのである。その結果、「科学技術が人間に代わって世界の中心を占める『ポスト・ヒューマン』という概念」が生まれたのである。

問８は、内容把握選択問題＜3分＞。
科学技術によって自然を克服することができない、という真理に人類が直面した契機は「新型コロナウイルスの大流行」である。したがって、「私たちの社会が、人類の福祉と幸福のために、どのような知識や技術を発展させるべきなのか」を改めて考えなければならないのである。

問9は、内容把握選択問題＜3分＞。
技術と社会の関係性についての筆者の考えをしっかり理解すること。筆者は「環境に配慮した技術開発」は「社会の在り方」がどの技術が用いられるかを決定すると考えているのである。

出典は『きのうのオレンジ』（藤岡陽子著）。

問１は、慣用句意味選択問題＜２分＞。
Ａ「合点がいく」は、「納得できる」という意味である。
Ｂ「嗚咽が漏れる」は、「声をつまらせながら泣く」という意味である。
Ｃ「息をのんだ」は、「驚いて一瞬息を止める」という意味である。

問２は、心情把握記述問題＜4分＞。
遼賀と恭平とのおかれている境遇の違いを遼賀はどのように感じていたのか。「目を細めている」という描写を深く読み解くこと。

問３は、心情把握問題＜3分＞。
「つまらないこと」とは、遼賀が繁忙期に上司に休暇の申請をしたところあっさり認められたことが「自分(＝遼賀)はいてもいなくてもどうでもよい存在なのではないか」と考えたことである。しかし、遼賀はそんな「つまらないこと」に拘泥する自分に「気にしない、気にしない」と言い聞かせているのである。

問４は、内容把握選択問題＜3分＞。
遼賀が「胃がんになったとき」、「この年で病気になるような生活は送っていないはず」であると遼賀は考えていたのである。つまり、「大病を患った」原因も思い当たらないのであり、そこに不条理を感じていたのである。

問５は、心情把握選択問題＜２分＞。
恭平の内面は、つらくて不安を感じていたのであるが、そのことを遼賀には悟られたくなく、また見せたくないと思っていたのである。したがって、弱い自分を見せたくなかったのである。

問６は、内容把握記述問題＜3分＞。
遼賀は「あんな時」でも「兄貴」であったのである。「あんな時」とは「山で遭難した時」であり、その時、「自分が助かることしか考えてなかった」恭平に対し、遼賀がとった行動(振る舞い)はどうであったかを参考に判断する。

問７は、心情把握選択問題＜3分＞。
「お前は強いよ」「だから大丈夫だ」という恭平の力強い励ましの言葉に勇気づけられているのである。「無言で頷いている」とは「(恭平のことばを)じっくりと噛み締めている」のである。

問８は、内容把握選択問題＜3分＞。
恭平から送られてきた荷物は、山で遭難した時に履いていた登山靴であった。遭難の中で生き延びた思い出がよみがえり、「気持ちが高ぶった(＝体温が上がる)」のである。

問９は、内容把握記述問題＜5分＞。
恭平が送ってくれた山で遭難した時の登山靴をみて、その時の何としても生きぬこうとしたときの必死さを思い出し、今自分が患っている病気に負けずに必ず克服し生き延びていこうとする勇気がわいたのである。

標準的な漢字である。普段から知識問題としてしっかり練習を積み重ねて欲しい。完答を目指したい。