城北埼玉高等学校 入試対策
2022年度「城北埼玉高等学校の国語」
攻略のための学習方法
長文読解
例年、文学的文章と説明的文章の計2問が出題される。古文・漢文は出題されていないので、古典を苦手とする人には受けやすい学校である。
選択肢・穴埋め・抜き出し・空欄補充・並べ替えと設問の形は多彩であるが、以前は出されなかった長めの記述問題が2019年度以降出題されるようになった。全体としてはオーソドックスな試験であると言える。選択肢問題が多く、書き抜きが数問といった割合になっている。
難易度についても特別な難問は出されていない。選択肢の内容も無理に迷わせるようなものは無く、適正な実力があれば正解できる、クセのない試験問題となっている。
したがって、特別変わった対策を取る必要は無い。小説や論説文の読解の基本に則った訓練を積めば良い。
文学的文章ならば、やはり普段から数多くの小説に触れ、さまざまな登場人物の考えや行動を体感しておくことである。読書を通じて多種多様な考え方や物の見方に触れておくこと、いわば「人間心理体験」のようなものを積んでおくことが、人物の心情理解に役立つのである。
その上で、長文読解の技量を磨く。時間経過や登場人物の変化で場面・段落の変わり目をマークする。人物・筆者の言動や表情をチェックし、気持ちや筆者の考えを汲み取る。そこから作者・筆者の言いたいこと・主題に迫る。その際、矢印や傍線などを使って重要点をすぐ探せるようにしておくと、時間短縮できる。
説明的文章はやはり論理の流れを見誤らないことが重要である。自然科学・社会科学に関する本などを、序論・本論・結論や、段落のつながり、細部説明と要点の区分けなどを意識しながら読んでみると良いだろう。
そして実践。形式段落と意味段落の整理、この時、意味段落の内容をまとめてタイトルとしてつけてしまうとわかりやすい。段落の最初と最後に特に注目しながら要点を確認、それらをまとめて要旨・結論を抽出。本文を読み進めながら矢印・傍線を用いて目立つようにしておくことはここでも有効である。
同じような出題傾向の学校も多いので、他校の過去問なども良い練習になる。同レベルの入試問題などもこなして、長文に慣れておいていただきたい。
文章量
2021年度では約7300字、2022年度では約6600字の文章量であった。近年文章量が増える傾向にある。他の難関校でも同様の傾向が多く見られるので、文章を読むスピードは重要である。過去問に取り組む時はもちろん、普段の読書においても、意識して速く正確に読む訓練をしておかれたい。
本校の場合、使われる文章の難しさはさほど難解なものではないので、無理に大人向けの書物に挑戦する必要は無いだろう。高校生対象レベルの本で自分の興味の持てる内容のものを多く読んで、よく現れるテーマやストーリーに触れておくと良い。
知識問題
長文読解の問題と合わせて語句の意味や文法などの知識問題も出題されている。基本レベルで良いので、しっかり練習しておくこと。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
2022年度「城北埼玉高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
現代文の読解2問で合わせて約6600字。総解答数は35問。大問2の漢字・ことばの知識・文学史などを手早く終え、長文読解に十分な時間を確保したい。
2022年度では35~45字の記述が3問出題されており、ここで10分前後の時間をみておく必要がある。
素材文を速めに読み、要点のハイライトが上手く出来ていれば、大幅に時間が足りなくなることはないだろう。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:24分
情報社会に生きる若者にとって、かつてのような尊敬・反抗すべき大人がいなくなってしまった、という現代の状況について述べられている。
問1 今日の社会では大人と子供を明確に区分けする理由がなくなってしまっているので、若者からみれば、成人式は「形骸化した儀式」にうつると述べられている。
問2 日本における成人式が形骸化してしまっているという現代の状況を、他の文化の社会的な通過儀礼を例に挙げて補足・説明している→選択肢エ。
問3 取り上げられている二つの実例に共通しているのは、若者が子供時代と断絶して大人になるという通過儀礼である点である。
問4 「既成社会で自分を押し殺して働く大人」になんかなりたくないと、「幻影の中の大人」にかつての若者たちは激しく反抗した。若者側からの認識(=幻影)に過ぎないにしろ壁としてたしかに存在していたのである。
問5 かつては長い人生経験を持つ老人は何でもよく知っていて、かれらだけが持つ情報価値が存在したのであるが、現代の情報社会では若者の方がむしろ多くの情報を得てしまっているのである。
問6 ア. 現代の情報社会では若者が知っていることが「社会的に価値のある情報」だということになっている。
イ. 情報は現実そのものではないので、情報だけで人とコミュニケートする若者は「大人社会の常識がない」ということになってしまう。
問7 がむしゃら――後先を考えずに夢中で行動するさま。
問8 皮肉――欠点や弱点を遠回しに非難すること。
問9 どちらも「逆説」の接続詞が入れば意味がつながるので、「にもかかわらず」が選べる。
問10 かつておじいさんは何でも知っている存在として家庭内で「尊敬」されていたのである。
【大問二】漢字・言葉の知識
- 時間配分:7分
問1 ① 担(う) ② 安泰 ③ 萎縮 ④ 貸与 ⑤ じゅんしゅ ⑥ まいぼつ
問2 1. 助動詞「う・よう」に接続する未然形。五段活用の動詞で検証すると何形で接続するかを見分けやすい。
2. 接続助詞「て」に接続する連用形。「行く」で考えると「行って」と音便になることからも連用形接続であることがわかる。
3.助動詞「ず・ぬ」に未然形で接続している。
問3 1. 以心伝心 2. 傍若無人 3. 明鏡止水
問4 1. 後悔先に立たず 2. 亀の甲より年の功 3. 石の上にも三年
【大問三】随筆文の読解
- 時間配分:19分
手紙の形式をとった随筆文。筆者が高村千恵子の心情を推察した内容が語られている。
問1 深く感動したという意味で、「心・胸」などが入る。
問2 「生活」といった物理的なことではなく、「幸太郎との恋愛に生きることと、表現者智恵子として生きることの二つが、激しくせめぎ合っていたのではないでしょうか」と、筆者は考えている。
問3 芸術生活と家庭生活の食い違いという場合、生活の雑用に追われて芸術を追求する余裕がないという「物理的な仕事量・時間のなさ」が原因として考えられるということであろう。
問4 短歌という芸術を追求する女性である筆者は、女性の立場から見て苦しい恋愛をしている智恵子の存在が、男性の光太郎の芸術に結実してしまうことに「嫉妬」を覚えてしまうのである。
問5 普通に考えれば悲しい出来事で創作意欲がわかなくなったということだろうが、「表現者光太郎にとって、智恵子は『必要な』存在」でそれがなくなって創作が止まるのは当然だったと、筆者は考えている。
問6 妻を亡くしたことよりも、妻が亡くなったことで自分の表現が失われることを悲しんでいるように筆者には感じられた、とある。それはある意味、自分の表現のためにすべてを賭けている芸術家のあるべき姿なのかもしれないのである。
問7 本来愛し合って一緒に暮らすのが夫婦というものであるが、「光太郎」にとって「智恵子」の存在理由は「彼の創作の現場とむすびつくもの」であった。そのために智恵子は光太郎の傍らに存在していたのだと考えると、芸術を突き詰める人間の在り方に筆者は畏怖を覚えざるを得ないのである。
問8 作品『智恵子抄』には彼女の存在が感じられる→「息づいている」。
問9 結語には「敬具・敬白」などがあるが、女性の場合には「かしこ」も多く用いられる。
攻略のポイント
古文・漢文が出題されない試験であるだけに、現代文読解の得意な生徒が多く受けることは予想される。形式・内容ともにスタンダードな試験なので、堅実な長文読解力を養って臨むのが得策である。
記述問題が出されたことは新傾向として留意しておく必要がある。論説タイプではなく、読解がしっかりできていれば書けるので、同タイプの記述問題で練習しておこう。
また、問題数は多くないが文法や言葉の知識も出題されている。標準レベルの問題集で良いので言語事項なども油断なく学習しておくこと。