日本女子大学附属高等学校 入試対策
2016年度「日本女子大学附属高等学校の国語」
攻略のための学習方法
知識
前述のとおり「直接出題」も多いが、「本文読解」等でも必然的に問われることになる日女の「総合的知識問題」。いかなる「攻略法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されているし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
解法
「日女の国語」の「選択肢設問」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
「日女の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。30~40字程度で書いてみる(日女の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
速読
大学入試にも匹敵するボリュームの問題文を読まなくてはならない。全体で5000字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。日女に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
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2016年度「日本女子大学附属高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「随筆」、出典は志村ふくみ「一色一生」所収の「今日の造形〈織〉と私」(文字数約2000字)。小問は全9問(解答数9)。「選択肢」(「換言説明」「理由説明」「趣旨説明」)、「抜き出し」「事項記述」(1問)。問題文は3分弱で読み切り、設問を16~17分で解きたい。
大問二は「論説文」、出典は田口茂「現象学という思考――〈自明なもの〉の知へ」所収の「『確かさ』から『自明なもの』へ」(文字数約2800字)。小問は全6問(解答数7)。「選択肢」(「換言説明」「理由説明」)、「説明記述」(「字数指定なし」2問と「60~70字以内」指定1問)。問題文は4分弱で読み切り、設問を20分ほどで解きたい。
大問三は「総合的知識問題」。出典不詳の「明治・大正時代の文学史に関する説明文」(文字数約600字)からの出題。小問は全3問(解答数14)。「選択肢」(「作品名」)、「人物名記述」(「漢字」指定4問)、「漢字の書きとり」(6問)。5~6分で解きたい。
【大問一】随筆
- 時間配分:19分
自然界の恵みの色に惹かれ、望みの色を生み出すため一生をかける染色作家が、芸術と人生と自然の原点に佇んで思いをめぐらす――深い思索を詩的に細やかに語るエッセイ集の一篇。
本文では、過去と現在に揺らぎながらも、時代が鋭敏に発芽し明日を先取りする「生命の継承」こそが「伝統の姿」ではないかと思いを新たにしている。若干の専門用語や難解な語句もあるが、「注」を活用すれば内容は理解できるはずだ。本校特有の類型的な「選択肢設問」の中に「具体例記述」が紛れ込んでいる。
以下、いくつかの設問を検証する。
[問一] 「換言説明選択肢」(4択)。
傍線部(1)「まだ自分の仕事は、薄くらがりの中にあることを感じていた」について、「どういうことか」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。
「薄くらがりの中」という「比喩表現」の「原意」と、各選択肢の「文末」(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)が結びつかないものを「消去」する。
確認する。
(ア)「限界を感じていた」、
(イ)「限定を乗り越える意志を持っていた」、
(ウ)「方向性を見いだせずにいた」、
(エ)「行き詰まりを感じていた」。
もう分かったはずだ。
「薄くらがり」⇒「よく見えない」のだから、「方向性を見いだせずにいた」以外は瞬時に「消去」可能だ。
(ウ)は他の部分の説明も特に誤ってはいない。よって、「答え」になる。「一発消去」だ。
「選択肢設問」では先ず「原意消去」を試みること。
<時間配分目安:1分以内>
[問四] 「具体例記述」(「字数指定」なし、「20字ほど」の解答欄)。
傍線部(4)「生命の継承こそが伝統の姿」について、このような「伝統の姿」で「あなたの知っている具体例」を答える。
えっ? 「生命の継承」? 「伝統の姿」? 何それ? 戸惑うことは必至だ。
そこで、「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)でもう少し「手がかり」を探したい。
直前に、「永い歳月の風雪にもまれ、押しつぶされながら、その度に息を吹きかえし生きながらえてきた」「人間が常に愛し続けてきた」といった説明がある。
つまり、「伝統あるもの」が現代風にアレンジされたり、本来の用途とは別に現代のモノとして使われたりといったような「具体例」を挙げればいいわけだ。
「社会」で学習した「伝統的工芸品」などから思いつくはずだ。
「答え」としてはたとえば、「輪島塗の技法を生かした漆のスマホケース」「西陣織でつくったショルダーバッグ」「寄木細工が施されたマグカップ」「南部鉄器でつくったフライパン」……、あるいは最近よく目にする「東京オリンピックのエンブレム」も伝統的な「市松模様」をアレンジしたものだ。
本校では、こうした多角的な思考が求められる問題もあるので、柔軟に対応していきたい。
<時間配分目安:2分半>
[問五] 「比喩換言説明選択肢」(4択)。
傍線部(5)「アクロバットのような奇異にみちた冒険」について、「どのようなことか」を答える。
先ずは「原意消去」だ。ただ、ここで注意すべきは、傍線部が「二重の比喩表現」になっているということだ。
「アクロバット」は「ような」と言う「助動詞」が用いられているので、すぐに「直喩(明喩)」だと分かるが、「文脈」から「冒険」も実は「隠喩(暗喩)」だということを見逃してはならない。そうでないと、「冒険」⇒「危険な行為に没頭する」とある選択肢(ア)を「答え」にしてしまう恐れがある。
各選択肢の「文末」を改めて確認する。
(ア)「危険な行為に没頭すること」、
(イ)「革新的な表現に挑むこと」、
(ウ)「最先端技術を駆使した手法を用いること」、
(エ)「自分を押し殺して活動すること」。
前後の「文脈」から、「伝統の姿」に関する「表現行為」についての「比喩表現」だと判断できるので、(ア)(ウ)(エ)は「消去」して、「革新的な表現に挑むこと」とある(イ)が「答え」だと判別しなければいけない。
このような「罠」が仕掛けられている場合があるので、細部にまで十分に配慮することが肝要だ。
<時間配分目安:1分>
[問七] 「理由説明選択肢」(4択)。
傍線部(7)「みるものに確固とした実在感を与えることはあり得ない」について、それは「なぜか」を答える。
「原意消去」をするが、ここは「理由説明」なので「直接的理由」での「消去」になる。
各選択肢の「文末」の「~だから」⇒「あり得ない」と直接的につながるかどうかで「消去」したい。
確認する。
(ア)「不可能だから」、
(イ)「見失うから」、
(ウ)「感動させられないから」、
(エ)「満足させられないから」。
「あり得ない」の「直接的理由」であれば、「不可能だから」以外は「消去」できるはずだ。
(ア) は他の部分の説明も特に誤ってはいない。よって、「答え」だ。
「一発消去」、「理由説明」ても「原意消去」が十分に威力を発揮すると心得よ。
<時間配分目安:30秒>
[問八] 「比喩換言説明の抜き出し」(「始め」と「終わり」の「5字」指定)。
傍線部(8)「赤ランプ」について、「どのようなものか」を「具体的に述べた箇所」を本文中から抜き出し、「始めと終わりの五字」を答える。
「抜き出し」では、「抜き出すべき内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞っていくことが鉄則。
「具体的に」とあるので、「赤ランプ」は当然「比喩表現」になる。何の「比喩」なのか?
「傍線部(空所部)一文一部の法則」で「内容」を捉えたい。直前から、「吾々の仕事」は「靑ランプ」で「新しい一連の仕事」が「赤ランプ」だと分かる。
「抜き出し範囲」は、「随筆」なので「直前直後」となる(「小説」「随筆」では「同一場面の直前直後に手がかり・根拠あり」)。
確認する。
すると、2行後に「人工の粋をきわめ技巧に身をかためた仕事を前者とすれば、人間の心理や情報をさかなぜするような特異な衝撃のみをあたえる仕事を後者といえる」とある。
「赤ランプ」は「後者」であって、「人間の心理や情報をさかなぜするような特異な衝撃のみをあたえる仕事」という「内容」も「新しい一連の仕事」に合致する。
従って、「答え」は「人間の心理~たえる仕事」となる。
「抜き出し設問」ではその「範囲の絞り込み」が肝要だ。あてどなく探していても単に時間の無駄になる。
<時間配分目安:1分半>
[問九] 「趣旨説明選択肢」(4択)。
傍線部(9)「彼等が再びふりむくことはあり得ないように、吾々もまた時を越えることはあり得ない」について、ここから「読み取れる筆者の考え」を答える。
「趣旨説明」(ここでは「主題説明」)なので、単純には「原意消去」できない。ただ、傍線部の「原意」と合致しない説明があれば「消去」してもいいはずだ。
先ずは、「彼等」とは誰かだ(「代名詞」なので一種の「指示語」だ。「指示語」が出たらすぐに開くこと)。
直前から「吾々」の「次の世代」だと分かる。
つまり、「次の世代」が「吾々」を「ふりむくことはあり得」ず、「吾々」も「次の世代」を「越えることはあり得ない」⇒「両者は交わることはない」、だから……と筆者は考えているはずだ。
各選択肢の「文末」を確認する。
(ア)「ためらわず進んでゆけばよい」、
(イ)「相互に干渉しないで取り組みたい」、
(ウ)「(「次の世代」の)存在を否定し続けてゆく」、
(エ)「各々が道を究めればよい」。
無論、(ウ)は「交わること」になるので「消去」できる。残り「3択」だ。前後の「文脈」からさらに「手がかり」を探す。
3行前に「次の世代」である「織の旗手は吾々と全く違った環境と教育をうけ」「発芽した時点でその色彩を異にしている」と説明されている。
(ア)の前半には「次の時代へ技術を伝える」とあり、結局「「交わること」なので「消去」、また、(エ)は「目的は同じであり」となっているが、「発芽した時点でその色彩を異にしている」のだからやはり「消去」となる。
これらに対して、(イ)は「各々の手段で」「方向性を異にしている以上」と的確に説明されている。よって、「答え」だ。
「趣旨説明」(「主題説明」)であっても、「原意消去」を先ずは試みること。
<時間配分目安:3分>
【大問二】論説文
- 時間配分:24分
日常においてはいつも素通りされている豊かな経験の世界、「自明」であるがゆえに眼を向けられることのないこの経験の世界を「現象学」は精査していると指摘し、われわれにとっての「現実」が成立する構造を考察している。
本文は「序章」として、「自明」であるはずの「問い」に対して、「現象学」は不安に呑み込まれずに冷静に「一歩一歩、徒歩で」近づいてゆく道を指し示していると論じている。「哲学論」だが、平易な言葉で論じられているので内容は理解できるはずだ。
「指示語」ではない「具体的指示事項記述」という新機軸の設問があり、戸惑うかも知れない。それも含め、以下、いくつか確認してみたい。
[問二] 「条件付き具体的指示事項記述」(2問/「字数指定」なし、各「10~15字ほど」の解答欄)。
傍線部(2)「同じ教え方で、違うものを教えられる子供は、結局自分で答えを見つけ出すしかない」について、「『同じ教え方』と『違うもの』とはそれぞれ具体的に何をさすか」を答える。
「条件」は「この段落中の語句を使う」こと。何やら奇妙な問題だ。先ずは冷静に設問内容を的確に読み解きたい。
要は、「子供」に対して「A」という「教え方」で「B」と「C」といった「違うもの」を教えている⇒「A」「B」「C」をそれぞれ答えるということだ。
傍線部は「一文全部」で「傍線部(空所部)一文一部の法則」は使えないので、「同一意味段落」に「手がかり」を求める(「論説文」では「同一意味段落に根拠・手がかりあり」、これは「論説文」の「最重要解法」だ)。
傍線部と同じ段落から(これは「条件」でもある)、「子供」が教えられている「B」「C」は「〈重い〉ってどういうこと?」と「石って何?」という「問い」に対する「答え」で、「教え方」である「A」は「石を手に持たせる」ことだと分かる。
よって、「答え」としては、たとえば、『同じ教え方』=「石を手に持たせること。」、『違うもの』=「重いとはどういうことかの答え。」と「石とは何かの答え。」となる。
「新傾向」の設問に対しても焦らず、的確に「解法」を用いて解いていくことが重要。
<時間配分目安:3分半>
[問三] 「理由説明記述」(「60~70字以内」指定)。
傍線部(3)「この『語らなくてもわかっている』ということは、現実を言葉で切り取って整理しようとする思考にとっては、曲者である」について、「曲者であるのはなぜか」を説明する。
「この」という「指示語」があるのですぐに開いておく。直前から「語ることが難しい『あたりまえのこと』」だと分かる。
無論、「曲者」の「原意」も押さえておく必要がある。「盗賊などの怪しい者」という意味もあるが、ここではそうではなく「表面には現れていない何かがありそうで、油断できないこと」だと「文脈」から判断できる。
つまり、「語らなくてもわかっている」「あたりまえの」「現実を言葉で切り取って整理することは油断できない」のはなぜかを説明するわけだ。
「手がかり」を「同一意味段落」に求める。
直後で、「わかっているがゆえに」「簡単に」「実際に語ってしまう」「それで通じたかのようにも思われる」「だが、語られようとしていたものが決定的に変質してしまっていることに、われわれはしばしば気づかない」といったことが説明されている。
「語られようとしていたものが決定的に変質」しても「われわれは気づかない」⇒「だから」⇒「油断できない」、「直接的理由」として結びつく。
これを「文末」として「過不足なく」まとめていきたい。
たとえば、「あたりまえの現実をわかっているがゆえに簡単に言葉で語ってしまうと、語られようとしていたものが決定的に変質してもわれわれは気づかないから。」といった「答え」になる。
「説明記述」では、正否のポイントとなる「最重要要素」(「理由説明」では「直接的理由」)を「文末」としてまとめること。
<時間配分目安:3分半>
[問五] 「換言説明選択肢」(4択)。
傍線部(5)「問いに蓋をするのは、怖いからである」について、「どういうことか」を答える。
「原意消去」からだ。各選択肢の「文末」を確認する。
(ア)「解決すべき疑問に対して見て見ぬふりをする」、
(イ)「疑問を持つこと自体をやめてしまう」、
(ウ)「頭に浮かんだ疑問をなかったことにする」、
(エ)「疑問を自ら解決することをあきらめてしまう」。
傍線部の「問いに蓋をする」⇒「疑問はあるが蓋で閉じてしまう」のだから、 (イ)(エ)は「消去」できるはずだ。
次に残りの選択肢の「前半」に着目する。
(ア)は「望むような答えを示してくれる人がいないことに怖さを感じ」、
(ウ)は「生を営む上で前提としている事柄が不確かになるのが怖いので」となっている。
どちらかを「消去」だ。根拠となる「同一意味段落」を確認する。
すると、前段落から、「『自分』とは何か」「『他人』とは何か」「『世界』とは何か」「『生』がなぜ営まれているのか」「『死』が何を意味するのか」といったことが「わからなくなったとき」「問いに蓋をする」ということが分かる。であれば、(ア)は「消去」となる。
よって、「答え」は(ウ)だ。
「原意消去」をした上で、「解法」を用いる「段階的消去」も習得しておくこと。
<時間配分目安:1分半>
【大問三】総合的知識問題
- 時間配分:5~6分
「明治時代から大正時代にかけての日本文学についての説明文」からの出題。
「文学史」に関する「人物名記述」「作品名選択肢」と「漢字の書きとり」(6問)だ。難問ぞろいだ。心してかかること。如何に失点を防げるかが合否に直結する。しっかりと確認しておきたい。
[問一] 「人物名の空所補充選択肢」(4問/「漢字」指定)。
本文中の A ~ D に「あてはまる人名」を「漢字」で答える。
空所前後を「ヒント」にして「人物」を特定したい。
A は「明治時代」に活躍し「飼い猫の目を通して世相を風刺的に描いた」とある=「吾輩は猫である」⇒「夏目漱石」、
B も「明治時代」で「軍医」で「作家」、「高瀬舟」とある⇒「森鷗外」、
C は「明治期の女性作家」で「たけくらべ」を発表⇒「樋口一葉」、
D は「大正時代」の「新思潮派」で「『今昔物語』などを近代的に構築し直した作品」とある=「羅生門」「芋粥」など⇒「芥川龍之介」。
「夏目漱石」の「漱」、「森鷗外」の「鷗」など特に「漢字」には注意すること。
「作家名」「作品名」は必ず「漢字」で的確に覚えておくこと。そうでないと得点できないと心得よ。
<時間配分目安:1分半>
[問二] 「作品名の選択肢」(4問/15択)。
傍線部(1)~(4)の作家の「作品名」を答える。
(1)=「与謝野晶子」、(2)=「志賀直哉」、(3)=「高村光太郎」、(4)=「宮沢賢治」、
これらの作家は当然知っているはずだが、各選択肢にはなじみの薄い「作品名」もいくつかあるので判別は一筋縄ではいかない。「消去法」なども駆使して何とか特定したい。
「答え」は、
(1)=(シ)「君死にたまふこと勿れ」、
(2)=(カ)「暗夜行路」、
(3)=(コ)「道程」、
(4)=(ウ)「よだかの星」だ。
尚、他の選択肢も確認しておく。
(ア)「怪談」=「小泉八雲」など、
(イ)「ごんぎつね」=「新美南吉」、
(エ)「月に吠える」=「萩原朔太郎」、
(オ)「金色夜叉」=「尾崎紅葉」、
(キ)「舞姫」=「森鷗外」、
(ク)「道草」=「夏目漱石」、
(ケ)「赤い蝋燭と人魚」=「小川未明」、
(サ)「富嶽百景」=「太宰治」、
(ス)「浮雲」=「二葉亭四迷」、
(セ)「元始、女性は太陽であった」=「平塚らいてう」が雑誌「青鞜」の冒頭に記した一節、
(ソ)「若菜集」=「島崎藤村」となる。
本校では、「文学史」でも相当に「ディープな知識」が求められているということだ。
<時間配分目安:2分>
[問三] 「漢字の書きとり」(全6問)。
二重線部(a)~(f)を「漢字」に直す。
(a)「好評をハクした」=「博(した)」⇒「好評を博す」(好ましい評判を得る)は「慣用表現」として知らなくてはいけない、
(b)「ゼヒを問うた」=「是非」⇒「是非を論じる」という表現も覚えておきたい、
(c)「解放的なフウチョウ」=「風潮」⇒「潮」は「同音異字」に要注意、
(d)「人間のシュウアクさ」=「醜悪」⇒「醜」は訓読みの「みにく(い)」も要チェック、
(e)「優れた詩人がハイシュツされた」=「輩出」⇒「出る順」上位の熟語、
(f)「不安をトロした」=「吐露」⇒「気持・意見などを隠さずに他人にうちあけ述べること」
という意味も押さえておくこと。
やはり本校では、平易から難解までの確実な「漢字力」を培っておくことが必須だ。
<時間配分目安:1分半>
攻略ポイント
●「換言説明」「理由説明」などが連なる「選択肢設問」。同じような「設問」が続き惰性で解いてしまう恐れがある。どう「攻略」するか?
ポイントはいかに「解法」を的確に用いるかだ。「設問内容」の「細部」にまでこだわり、それぞれに応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが重要。基本的「解法」を完全に習得し適切に応用できるようにしておくこと。
●多種多様な「総合的知識問題」はどのように「対策」すべきか?
「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」、さらには、多彩な「副詞」の「意味」までも押さえておきたい(「オノマトペ」なども頻出)。無論、「文学史」などの「国語常識」も必須事項だ。
「国語」の「合格ライン」は6割強(6年間の「合格者平均得点率」は61.5%、本年度は下がって54.2%)で他の2科目に比べて低い(「英語」は67.5%、「数学」が63.2%)。「配点」が大きい「知識」での「高得点」は合格に大いに貢献する。
●「説明記述」にも対策は不可欠。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。「内容」から優先順位を特定し、高いものから積み上げていく。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習すること。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は5000字程度。速く正確に読み取ることが求められる。分速700字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。