日本女子大学附属高等学校 入試対策
2018年度「日本女子大学附属高等学校の国語」
攻略のための学習方法
知識
前述のとおり「直接出題」も多いが、「本文読解」等でも必然的に問われることになる日女の「総合的知識問題」。いかなる「攻略法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。
過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。
要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されているし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。
特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
解法
「日女の国語」の「選択肢設問」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
「日女の記述対策」は「問題解説」及び「攻略ポイント」のとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。
そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。では、何を「書く」か? 「練習問題」や「過去問」にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。30~40字程度で書いてみる(日女の典型的な「記述」の練習にもなる)。
無論、内容は先生などに確認してもらう。「要約力」は文章の「理解力」にもつながるので一挙両得。次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。その際、20~30字程度をひとつのブロックとして考えるといい。
「記述設問」で得点を左右する「重要な要素」「必要な要素」は、それぞれその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしている「要素」がその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。ある程度「感覚」がつかめたら、「最重要な要素」を「文末」にして、他の「必要な要素」を下から積み上げていくように記述する練習をしていく。
速読
大学入試にも匹敵するボリュームの問題文を読まなくてはならない。全体で5000字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。
やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。日女に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
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2018年度「日本女子大学附属高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「随筆」、出典は永田和宏「あの午後の椅子」所収の「『自分らしく』なく生きる」(文字数約3000字)。小問は全9問(解答数15)。
「選択肢」(「換言説明」「理由説明」「趣旨説明」など)、「説明記述」(「40以内」指定1問)、「総合的知識問題」(語句の意味)、「漢字の書きとり」(5問)。問題文は4分弱で読み切り、設問を16~17分で解きたい。
大問二は「論説文」、出典は清水真木「新・風景論――哲学的考察」所収の「風景の『日本的』性格を再定義する」(文字数約3000字)。小問は全11問(解答数16)。
「選択肢」(「換言説明」「理由説明」「論旨説明」など)、「説明記述」(「25以内」指定1問)、「総合的知識問題」(語句の意味)、「漢字の読み書き」(「読み」2問、「書きとり」3問)。問題文は4分弱で読み切り、設問を20分弱で解きたい。
大問三は「総合的知識問題」。小問は全2問(解答数10)。
「四字熟語の用法判別および書きとり」(全5問)、「対義語の空所補充判別および漢字記述」(全5問)。5分ほどで解きたい。
【大問一】随筆
- 時間配分:
歌人である作者が繰り広げる心躍り胸を打つ言葉の宇宙――個人の日常と、歌という表現を持つこととの関係を、しなやかな視線で描いている珠玉の随筆集の一篇。世の中に氾濫する「らしく」という言葉には「かくあるべし」という規範を強要する響きがあるのでなじめないと指摘し、「らしくなく」と意識し生きることが、自分の殻を破り可能性を広げていくと述べている。
難解な語句が散見されるが、内容が理解できないというほどではないはずだ。「選択肢設問」での各選択肢の説明が、とても似通っていて紛らわしいものが多いので要注意だ。
以下、いくつかの設問を検証する。
[問一] 「漢字の書きとり」(全5問)。
本文中の二重線部(A)~(E)の「カタカナ」を「漢字」に直す。
例年よりはやや平易だ。「全問正解」を目指したい。確認する。
(A)「後ろがダツラクして」=「脱落」⇒何ら問題なし、
(B)「ヒンパンに使われてきた」=「頻繁」⇒定番ではあるが、「細部」まで丁寧に記すこと、
(C)「世の中にルフしている」=「流布」⇒「広く世間に知れ渡ること」という意味も覚えておきたい、
(D)「ホガらか」=「朗(らか)」⇒無論、「郎」と混同しないこと、
(E)「センザイ的に持っていた」=「潜在」⇒「文脈」を考え「同音異義語」に要注意。
本校では、レベルを問わずあらゆる漢字をマスターしておくことが求められる。
<時間配分目安:全問で1分半>
[問二] 「語句の意味の選択肢」(全3問/各3択)。
「総合的知識問題」。本文中の波線部(a)~(c)の「語句」について、「本文中の意味」をそれぞれ答える。
「答え」を確認していく。
(a)「さしずめ」=「今の局面で、つまり」なので、「答え」は選択肢(イ)の「さしあたって」、
(b)「うさん臭く」⇒「胡散(うさん)臭い」=「どことなく怪しい。疑わしい」、「答え」は選択肢(ウ)の「疑わしく」、
(c)「いきおい」⇒ここでは「副詞」で「その時のなりゆきで。必然的に」という意味、「答え」は選択肢(ア)の「なりゆき上」となる。
「本文中の意味」なので確かに「文脈」を捉えることも必要なのだが、あまりそこに引きずられて、「原意」を見失っては本末転倒だと心得よ。「原意絶対優位の原則」(=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)を常に意識していることが肝要。
<時間配分目安:全問で1分弱>
[問四] 「換言説明記述」(「40字以内」指定)。
傍線部(2)「『かくあるべし』という規範を強要する」について、「どういうことか」を説明する。
先ずは、「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要」という「重要解法」)で「手がかり」を探したい。直前に「『らしい』が『らしく』に変化すると、途端にそれは状態を記述する接尾辞から」とあり、直後は「(~強要する)接尾辞にニュアンスを変えてしまう」となっている。つまり、「『かくあるべし』という規範を強要する」=「らしく」だと分かる。
では、「らしく」にはどのような意味があるのか? 「同一意味段落」を確認する(「論説文」「随筆」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。次段落で「『らしく』の前にくる名詞を一つの規範として、それに倣(なら)え、自分をそれに近づけよという強制が『らしく』の響きのなかに含まれる」と説明されている。あとは、「指定字数」に応じて的確にまとめていくだけだ。
たとえば、「ある特定のひとつの規範に倣って、自分をその規範に近づけよと強制するということ。」といった「答え」になる。
「説明記述」では、正否のポイントとなる「最重要要素」を必ず「文末」としてまとめること。
<時間配分目安:2分>
[問五] 「換言説明選択肢」(4択)。
傍線部(3)の「世間が持っているイメージの最大公約数」とは「何か」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは、「原意絶対優位の原則」から「原意消去」をしたい。ここは「換言説明」なので、「イメージの最大公約数」の「原意」と、各選択肢の「文末」(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)が結びつかないものを「消去」したい。無論、「最大公約数」は「比喩表現」だ。確認する。
(ア)「誰もが思い描く要素」、
(イ)「現代人が広げていく連想」、
(ウ)「現代人が抱く過度な期待」、
(エ)「誰もが備えるべき基礎知識」。「イメージ」⇒「思い描く」、
「最大公約数」⇒「誰もが」と結びつくので、(ア)以外は「消去」できるはず。他の部分の説明は、各選択肢全て「ある事物に対して」となっている。よって、「答え」は(ア)でいい。畏るべし! 「一発消去」で「正解」だ。
「選択肢設問」では先ず「原意消去」を試みること。
<時間配分目安:1分弱>
[問七] 「換言説明選択肢」(4択)。
傍線部(5)「自らのなかにあるさまざまな突出点を一つ一つ剥(は)いでいかざるを得なくなる」について、「どういうことか」を答える。
当然、最初は「原意消去」。「一つ一つ剥いでいかざるを得なくなる」の「原意」と、各選択肢の「文末」を照合して「消去」していく。各選択肢は、
(ア)「一々そぎ落とさなければならなくなる」、
(イ)「少しでも抑えなければならなくなる」、
(ウ)「一つずつ矯正しなくてはならなくなる」、
(エ)「少しずつ取り去らなくてはならなくなる」。
「一つ一つ剥いで」いくのだから、(ア)と(エ)以外は「消去」できる。2択になった。
次は、「突出点」で「消去」したい。(ア)「自分の卓越した部分」、(エ)「社会が要求する若者像に収まらない個性」となっている。「同一意味段落」に「消去」の根拠を求める。次文から、「突出点」=「他の〈若者〉には見られない特質」だと分かる。であれば、(エ)が残ると判別できるはずだ。
念のために「同一意味段落」を確認すると、前段落の最後に「あらかじめ求められた(若者の)理想像の範囲内に行動の規範を置き、着地を試みざるを得ない」とある。大丈夫だ。したがって、「答え」は(エ)になる。
本問のように、「段階的消去」が必要となる「選択肢設問」もあるということだ。
<時間配分目安:2分>
【大問二】論説文
- 時間配分:
川越、祇園、白川郷……、不自然なまでに「和風」に統一された美しいだけの風景を求めていても、「風景の秘密」には到達できない――風景を眺めるとは何をすることなのか? 「風景の秘密」に到達するにはどうすればいいのか? そうした問いに対して西洋精神史をたどりながら、哲学的な観点から考察している。本文では、類型化された日本的風景は観光資源としての「和風テーマパーク」でしかないと指摘し、「和風」の呪縛から逃れ、「風景の日本的性格」を形式的な観点から規定することが必要だと論じている。
「風景論」というなじみのないテーマに戸惑うかも知れぬが、内容は理解しやすい。この大問は、まるで「選択肢設問」の見本市だ。各選択肢の説明方法が小問ごとに視点が異なり、しかも、文字数が20字程度から170字以上までと実に多彩なのだ。
以下、いくつか確認してみたい。
[問一] 「漢字の読み書き」(「読み」2問、「書きとり」3問)。
本文中の二重線部(A)・(B)の「漢字の読み」を「ひらがな」で書き、(C)~(E)の「カタカナ」を「漢字」に直す。
【大問一】同様に本年度は比較的易しい。是が非でも失点は避けたい。「答え」だけを確認する。
(A)「万物」=「ばんぶつ」、
(B)「家屋」=「かおく」、
(C)「『和風テーマパーク』のゾウセイ」=「造成」、
(D)「入場料をチョウシュウ」=「徴収」、
(E)「サイゲンなく複製し続ける」=「際限」。
ひとつでも不安なものがあった諸君は、漢字の習得が不十分だと心得よ。
<時間配分目安:全問で1分半>
[問五] 「換言説明選択肢」(4択)。
各選択肢の説明60字ほど。傍線部(3)「いわゆる『街づくり』の刺戟(しげき)とする」について、「どういうことか」を答える。
「原意消去」からだ。
「『街づくり』の刺戟」の「原意」と、各選択肢の「文末」を照合して「消去」していきたい。確認する。
(ア)「歴史的価値を生み出すということ」、
(イ)「利便性を向上させるということ」、
(ウ)「街の価値を高めるということ」、
(エ)「地区の復興を進めるということ」。
「街」なのだから、(ウ)以外は「消去」でいいはず。
以上終了だが、何か不安だな、という諸君のために、一応、「同一場面」を確認しておく。2文後に「小布施町は、多くの観光客が訪れる観光名所になり、この意味(=『街づくり』の刺戟にする試みという意味)において『成功』した事例である」とある。(ウ)で説明されている「観光客を多く集めて地区を活性化するために」という説明と合致している。よって、「答え」は(ウ)だ。実に端的な「一発消去」ではないか。「原意消去」、フル活用したい。
<時間配分目安:30秒>
[問六] 「換言説明選択肢」(4択)。
各選択肢の説明は本大問最少の、なんと19字。傍線部(4)「事情は基本的に同じ」について、「どういうことか」を答える。
さてこの小問、瞬時に何か気づくはずだ(気づかなければ困る!)。そう、各選択肢の説明の違いが、たった2文字だけなのだ。「どの地区の修景も○○的であるということ」、この「○○」の部分だけが異なっている。
(ア)「画期(的)」、(イ)「急進(的)」、(ウ)「内向(的)」、(エ)「局所(的)」。
これはもう、ほぼ「知識問題」と言っていい。では、どのような「事情」なのかを「同一意味段落」から読み解きたい。3行前から、「事情」=「(対象となる面積は)町域全体の一パーセント以下に過ぎないという事情」だと分かる。ということは無論、「局所(的)」なので、「答え」は(エ)だ。
本問はさほど難しくはなかったが、今後もこうした出題が考えられるので、しっかりと意識しておくことが肝要だ。
<時間配分目安:1分以内>
[問九] 「理由説明選択肢」(4択)。
各選択肢の説明70字弱。傍線部(7)「本質的にうしろ向きの作業」について、「それはなぜか」を答える。
先ずは「原意消去」だが、ここは「理由説明」なので、各選択肢の「文末」が傍線部の「直接的理由」として成立しているかどうかで「消去」していく。要は「(文末)だから」⇒「本質的にうしろ向きの作業」とつながるのかということだ。確認してみたい。
(ア)「意味や必要性を排除しているから」⇒「本質的にうしろ向きの作業」、
(イ)「環境破壊を招いているから」⇒「本質的にうしろ向きの作業」、
(ウ)「多額の費用を負担させているから」⇒「本質的にうしろ向きの作業」、
(エ)「異なる景色を生じさせているから」⇒「本質的にうしろ向きの作業」。
さあ、どうだろうか? 「うしろ向き」ということは、単に「違う向き」や「間違っている向き」なのではない。本来「進むべきところ」を「うしろに戻っている」、「プラスではなくマイナスに向かっている」ということだ。であれば、前に進むべき「必要性」を「排除」している(ア)以外は「消去」していいと判別したい。他の部分の説明も特に誤っていないので、「答え」は(ア)となる。
「理由説明選択肢」では、「間接的理由」に惑わされることなく、「直接的理由」を厳密に把握することが肝要。
<時間配分目安:1分>
[問十一] 「論旨説明選択肢」(4択)。
各選択肢の説明は本大問最多で、驚愕(きょうがく)の170字以上(全ての選択肢を吟味しようとしたら、700字ほども読み込まなくてはならない)。傍線部(9)「もはや惰性以外の何物でもない」について、「そこから筆者のどのような考えがうかがえるか」を答える。
「どのような考え」かということは単純な「原意消去」は通用しない。傍線部は本文(論説文)の「結論部」になっているので、要は「論旨」を問われているのだ。「論旨」に合致しているかどうかで「消去」していくことになる。では、「論旨」を確認したい。
本文は「尾括型」なので「結論部分」で「論旨」が述べられていることは分かるはずだ。中でも、最後の一文に集約されている。そこには「和風の呪縛から逃れ、風景の日本的性格を形式的な観点から規定することが必要」と述べられている。
次に、各選択肢の「文末」と照合するのだが、それぞれ三文もあるので「最後の一文」との照合だ。確認する。
(ア)「万人が……、各自に合った風景を模索すべき」、
(イ)「日本古来の生活へ回帰した時にこそ、和風の風景を真に活用することが可能となる」、
(ウ)「現代の日本的風景を再考し形にする中で、……風景の個性や意義が真に立ち現れてくる」、
(エ)「景観が近代化していく様子を無責任に傍観してはならない」。
さあ、どうだろうか?
(ア)では「各自に合った風景」、(イ)は「日本古来の生活へ回帰」、(エ)は「景観が近代化」という部分が「論旨」と合致しないと判別できる。よって「消去」だ。
他の部分の説明も特に誤ってはいないので、「答え」は(ウ)になる。本問のように極端に各選択肢の説明が長い場合は、如何(いか)にショートカットして「消去」するかがポイントとなる。
尚、「論説文」では、「論旨」を直接問われていなくても、「序論部」「結論部」での問題は「論旨直結」だと考えよ。
<時間配分目安:2分半>
【大問三】総合的知識問題
- 時間配分:
例年【大問三】は「総合的知識問題」。本年度は昨年度(「敬語」などの「文法」)とは打って変わって、「四字熟語」と「対義語」だ。無論、本校らしく一筋縄ではいかない。特に[問二]の「対義語」は問題の趣旨を理解するのにも苦心するはず(ここでも「読解力」が問われている)。以下、確認してみよう。
[問一] 「四字熟語の用法判別選択および書きとり」(全5問/12択)。
示されている(1)~(5)の「各文の内容を言い表すものとしてふさわしい四字熟語」を選び、「漢字に直して」答える。
各文の要点から内容をとらえ、「四字熟語」を特定していきたい。「答え」は以下のとおりだ。
(1)「よく考えもせず周りの人の主張に同調してばかり」⇒「フワライトドウ」=「付和雷同」、
(2)「彼とはその日が初対面であったが、……すっかり打ち解け」⇒「イキトウゴウ」=「意気投合」、
(3)「大国を支配した英雄がかつての力を失ってはかない最期をとげた」⇒「エイコセイスイ」=「栄枯盛衰」、
(4)「思いがけない展開によって一挙に動き出した」⇒「キュウテンチョッカ」=「急転直下」、
(5)「様々な実験を行い、失敗を繰り返しながらも着実に成果をあげていった」⇒「シコウサクゴ」=「試行錯誤」。
「四字熟語」だけではなく、「慣用句」「故事成語」なども確実に定着させておくこと。
<時間配分目安:全問で2分半>
[問二] 「条件付き対義語の空所補充判別選択および漢字記述」(全5問/10択)。
示されている(1)~(5)の「対義語の関係にある熟語」の中の【 】に「ふさわしいもの」を選び、「漢字一字に直して」答える。
「条件」は「選択肢には【 】または□に入るものが並んでいるが、□に入る漢字を答える必要はない」というもの。要は、【 】だけを答えるわけだが、□も「選択肢消去」のヒントとなるわけだ。そのことを的確に把握しておく必要がある。では、「答え」をチェックする。
(1)「斬【 】」⇔「□腐」⇒「斬【シン】」⇔「チン腐」=「(斬)新」、
(2) 「□厚」⇔「軽【 】」⇒「ジュウ厚」⇔軽【ハク】」=「(軽)薄」、
(3)「□新」⇔「【 】守」⇒「カク新」⇔【ホ】守」=「保(守)」、
(4)「【 】遠」⇔「親□」⇒「【ソ】遠」⇔「親ミツ」=「疎(遠)」、
(5)「怠□」」⇔「【 】勉」⇒「怠ダ」」⇔「【キン】勉」=「勤(勉)」。
ちなみに、それぞれの□は順に、「陳腐」・「重厚」・「革新」・「親密」・「怠惰」となる。尚、本問の熟語の意味も当然ながら知っていなくてはいけない。本校では、「類義語」「同音異義語」「同訓異字」なども頻出だと心得よ。
<時間配分目安:全問で2分半>
攻略のポイント
●「換言説明」「理由説明」などが連なる「選択肢設問」。同じような「設問」が続き惰性で解いてしまう恐れがある。どう「攻略」するか? ポイントはいかに「解法」を的確に用いるかだ。「設問内容」の「細部」にまでこだわり、それぞれに応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが重要。基本的「解法」を完全に習得し適切に応用できるようにしておくこと。
●多種多様な「総合的知識問題」はどのように「対策」すべきか? 「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」、さらには、多彩な「副詞」の「意味」までも押さえておきたい(「オノマトペ」なども頻出)。当然、「敬語」も含め「文法」も完璧に。さらに、「文学史」などの「国語常識」も必須事項だ。「国語」の「合格ライン」は6割強(7年間の「合格者平均得点率」は64.8%、本年度は昨年度より7ポイント上がって67.4%)で、他の2科目より比較的低い傾向なので、「配点」が大きい「知識」での「高得点」は合格に大いに貢献する。
●「説明記述」にも対策は不可欠。正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。「内容」から優先順位を特定し、高いものから積み上げていく。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習すること。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は5000字程度(本年度は一気に増えて約6000字)。速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。