開智高等学校 入試対策
2021年度「開智高等学校の国語」
攻略のための学習方法
〇長文読解
説明的文章・文学的文章が各1問ずつ出題される。2021年度では論説文3400字・小説3400字の計6800字ほどの文量であった。
文章自体は高校受験の試験としては適した内容で、難し過ぎるということはない。小説の主人公も中学生の設定になっていたりする点、中学三年生向けの難易度で配慮されている。
形式は選択肢問題がやや多めで、書き抜き・記述・文中の内容を自分で考えて言葉にする問題なども見られる。記述は字数指定のないものや、50~60字ほどのものも出題されている。
【記述問題】 配点も大きく、字数指定の無いものもあり、やはり差がつくところであろう。 「簡潔に説明しなさい」という形で訊かれるものが多いので、何をどのようにどのくらい記述するのかは自分で判断することになる。
論説文であれば、要約の能力が必要である。設問で求められた点を過不足無くまとめなければならない。
小説の場合は、文中にはっきり表現されていない場合も多いので、文中の出来事・人物の言動や表情・情景などから、(おそらくは)人物の心情を感じ取って、説明しなければならない。
字数指定が無い問題は、解答欄の大きさからだいたいの行数を考え、1行につき20~25字くらいの見当で書ける文量を決める……など。類似問題で十分な練習を積んでおかないと対応できないことである。
20~30字・70~80字などの字数で要旨・要約をまとめたり、人物の行動理由や気持ちを自分なりに表してみたり、一定の字数で記述を整える感覚を体得しておいていただきたい。
【 読 解 】
記述問題に慣れておくことは当然のこととして、つまるところは文章の要約であり登場人物の心情理解が求められているわけである。長文読解の力が無ければ記述問題など手もつけられない。長文読解のテクニックを磨くこと。
形式段落と意味段落・段落のつながり・要点と細部・要旨のまとめ……論理の流れをしっかりたどる。場面の転換・登場人物の関係・言動や表情や情景などから心情を理解する……テーマを読み取る。同じような文量の問題でスピードをつけておくことももちろん必要となる。
〇古文
大学受験と同様の素材文が出されているが、難しい箇所には現代語訳がついていて難易度の配慮はされている。このレベルの試験だと助詞の接続による意味の変化を見分ける必要があったりするが、全体の筋が読めれば答えられるような問題にはなっている。
ともあれ、難易度としてはやはり高校で詳しく習うことなので、重要語句や基本文法・古典の知識を一通り覚えて古文を読みなれておかないと、十分な得点に結びつかないだろう。高校初級~標準レベルの教材で学習しておくことをお薦めする。
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2021年度「開智高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
論説的説明文3400字・小説3400字で計6800字ほどの文量で少なめであった。
総解答数は37問。記述問題が4問、その他は記号選択が多くなっている。
記述問題以外はあまり時間を取るような問題はないので、素材文を読むスピードが十分にあれば、時間は足りるだろう。
記述問題は20~70字ほどでまとめるもので、答える内容もそれほど難しくはなっていない。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:20分
民主化が進めば進むほど古い民主意識が現れてくるという皮肉な現実を解説している。
問1 b. 潮流――時勢の動きや時代の傾向。
c. 君臨――強大な力をもって他を支配すること。
d. 荒廃――荒れすさむこと。
問2 A.「民主化の度合いが高まること」の例としてアメリカ独立宣言を挙げている。
B. かつては参加の量の拡大が参加の質を高めると期待された。「しかし」質の向上と並行しなければそれは民主主義の病理を招来してしまう。
C. 「一層の民主化への逆風」の例がCの前で説明されているので、「こうして」。
D. 旧来のマスメディアには、ごく少数の言論世界のエリート「また」新聞・テレビの校閲や考査という抑制の仕組みがあった。
問3 ① 「一層の民主化」が進むと、それ以前の旧来の状態に戻そうとする意識が生じるという逆の流れが発生してしまうことが述べられている。
③ 少数派が政治参加することは民主主義の目指すところであるが、それによって旧多数派(安定的な民主政治システム)が文句を言いだすという民主的には逆行する事態となったのである。
問4 直前の「飽きや反発」を説明している部分を探す。疎外されていた少数派が政治参加するようになると、従来の多数派の影響力が相対的に低下し置き去りにされたような被害者意識が生まれ、以前の状態こそが秩序があり安定した時代だとする的外れな考えが広まりだしたと書かれている。
問5 エの後半部分は多数派がそう思っているだけのことで事実とは異なるので選ばない。
問6 イとウは前段落のアメリカの白人男性の傾向と合致する。エは直接言及されている。
問7 ネット上では差別発言や虚偽情報が校閲や考査を経ずに不特定多数の目にさらされ、言論空間が劣化してしまった。
問8 かつてはアメリカにおける白人男性のような多数派が民主主義の中心的存在だったが、少数派が権利を獲得するようになって民主主義の性質や範囲が変化してきている。「社会は多様化した」(第二段落)のである。
【大問二】説明的随筆文の読解
- 時間配分:20分
アボリジニの社会の変化を通して、現代社会と伝統意識との間で「カミ」に対する認識もかつてのように一律なものではなくなっていることを筆者は痛感する。
問1 a. 「侮る」は相手をバカにし低く見ることである。
b. 単純な「感激」が冷やされてしぼんでしまった、というイメージであろう。
c. 「はにかむ」は恥ずかしそうな笑い顔をうかべることである。
問2 原因はアボリジニの男性の死をきっかけとした傍線④の「激しい衝撃」にある。それは現代の生活において伝統意識とぶつかりあうアボリジニの不安定さ・苦しさに愕然としたという経験であった。
問3 オーストラリアのごく普通の人々と同じような生活を営んでいる様子が述べられている部分があるので、そこを抜き出す。
問4 「最後の五字」という通常とは異なる指定があるのは、最初の五字に記号などが含まれていて数えるのに迷う場合が考えられ、ここもそうなっている。設問自体がヒントのひとつになる場合もあるので注意してみよう。ただし、大事なのはそうした「形」ではなく、あくまで正確な答えとしての「中身」であるので、そこは十分に確認しよう。
問5 街中で普通の暮らしを送るアボリジニたちにおいては「伝統的な生活や言語をある程度でも守って生きている人びとは少数派」だと筆者は思っていたのだが、ある男性の死に際して別の現実に遭遇し、ショックを受けている。
問6 「個人の感情」として男性は長年暮らした「この町の墓地に埋めてほしい」と思っていた。しかし、その願いは故郷の親族たちの「彼の属する土地に埋葬されねばならない」という「伝統意識」に阻まれてしまったのである。
問7 オ. 「他のカミを拒絶する」という性質は示されていない。
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:10分
太郎入道は猿の親子を弓で射落としてしまい、その情愛に打たれてそれ以降は猿を狙わなくなった。
問1 A. 「あやまつ」は「まちがえる」。ここは打消しの語がついて「失敗せず」の意。
問2 矢が当たった大猿が何かを木のまたに「置く」ようにしたのを太郎入道が見ると、それは子猿であった。
問4 自分(大猿・母)は傷を負って地面に落ちようとしているので。
問5 ② 子猿を背負っていた、(その)子猿を助けようとして。
③ 「離れじ」の「じ」は打消し意志の助動詞で、未然形に接続する。
問6 子どもだけは何とか助けようとした母猿と、それでも母親から離れずにともに落ちてしまった子猿。その親子の情愛に打たれた太郎入道は、その後長く猿を射ようとはしなかったのである。
問7 『今昔物語』以外の説話集では、『宇治拾遺物語』『十訓抄』(ともに鎌倉時代)などが有名である。
攻略のポイント
長文読解の対策として読むスピードをつけて、読解の技術を磨いておくこと。
記述問題に対しては同程度の字数で要約や心情の説明をまとめる練習を積み重ねる。
今年度も古文の配点は約2割と大きいので、苦手な人も諦めずに勉強に取り組むこと。古文の教材でやや高いレベルの古文演習をこなしておきたい。
全体としてはオーソドックスな内容で得点しやすい問題も多いので、難しい問題にとらわれすぎない冷静さも必要である。できる問題から確実にこなすこと。