開成高等学校 入試対策
2017年度「開成高等学校の国語」
攻略のための学習方法
現代文
現代文に関しては、かなり高度な文章が出題される。
では、『高度な文章』とはどのような文章のことをいうのだろうか。結論から言えば、『抽象的で極めて論理的な文章』ということである。論理的文章であるので、しっかりと文脈を辿っていく文章読解力があれば、論点が何なのか、筆者の論証の進め方、つまり「筆者の考え方」の軌跡を明確にすることは、それほど困難ではないであろう。
その際には、何度も反復して使用されている『単語』が重要になってくる。
特に、『名詞』は重要であり、抽象名詞は筆者の考え方を補完するうえでその有用性は極めて高い。本文を一読する過程の中で、「これはっ…」と思う『言葉』はマルで囲んだり、傍線を引いたりしておく習慣を日頃の学習においても定着させるべきである。
また、各設問に解答する場合には、設問の対象となっている個所の前後をしっかり読み込むことが不可欠である。また、キーワードは何か、繰り返し使用されている「言葉」が、文章全体の中でいかなる役割と意味を持たされているのかを見抜く力が必要である。
その力を習得するためには、論理的文章に読み親しむことである。例えば、各出版社で販売している「新書」を読むことも論理的文章読解の力を養成するには最適であろう。「新書」はさまざまなジャンルを扱っているので、読む場合には「自分の興味のあるジャンル」を選択することが基本である。長期休暇とか土日など、時間に比較的余裕のある時期に読み込もう。
秋以降になって時間的に余裕がなくなってきた場合には、そのような「新書」を読むことは得策ではない。では、どうすれば論理的文章の読解力を向上させることができるのか。
その場合には、高度な論理的文章読解の演習を通じて、課題文である本文をじっくり読み込むことである。少なくとも、入試問題として出題される文章であるので、論理的分析に耐えられない文章ではないことだけは間違いないはずである。
したがって、入試までに時間的余裕のない状態で、論理的読解力を高めようとする場合には、演習の問題文を徹底的に分析することである。
小説問題に対する対策としては、登場人物の心情把握をいかに正確かつ迅速に行うかである。そのためには作者がその人物をどのように描写しているかを素早く見極めることである。
例えば、性格的に明朗なのか陰湿なのか、発言内容を通じてその人物の考え方や価値観などを把握するということである。そのような総合的な分析作業を経て、登場人物の人格やキャラクターを鮮明にすることが可能になるのである。
特に、小説の場合には、間接的な情景描写を通じて人物の心情描写を行なう手法を用いるのが一般的である。入試問題においても、そのような情景描写を把握し、そのような描写を通じて、作者が登場人物をどのような特性・人格として描こうと意図しているのかを理解することがカギとなる。
いずれにしても現代文については、本文の分量もかなり多く内容的にも高度(特に論説文)であり、設問内容も記述式であるため、正確な文章読解力は当然のこととして、その上で「高度な文章表現力」を高校側が求める『力』であるということを十分認識するべきである。
その様な要求に対応するためには、過不足なく簡潔にしかも説得力をもった文章を手際良く書き上げる練習を行わなければならない。そのような文章表現力を磨くには、自分が書いた文章を誰か他人に「添削」してもらうことである。他人の客観的評価が加わることで文章作成能力は飛躍的に向上する。
古文
古文についても、設問はほとんどが内容把握に関する問題であるので、古典(当然ながら漢文も含む)文法などの知識だけではなく、内容把握(当然ながら人物描写や心情描写の把握と理解)をしっかり行えるように近世の古典作品を扱った問題演習をしっかり行うことである。
将来的な大学入試を考えた場合、大学側が、というより社会が求める人材像の要件は、『自分で考え、説得力ある自分の言葉でいかに相手に自分の考え方を伝えるか』ということである。そのような意味では、現代文の問題文をじっくり読み込む作業を通じて自身の論理力を鍛えて貰いたい。
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2017年度「開成高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、現代社会に関する社会学的観点からの論説文読解問題である。漢字の書き取り問題以外はすべて記述式問題。地方都市再生のための要諦は何かについて、要点を押さえて内容・論旨の展開にしっかり確実に把握することである。<15分>
大問2は、小説の読解問題である。出典となった小説は最近の芥川受賞作品であり、受賞当時はマスコミ等で頻繁に取り扱われた。主人公の心の内面について会話等を通じて読み取ることが必須である。<22分>
大問3は、古文の読解に関する問題である。松尾芭蕉の紀行記。古語の知識、古典文法の知識は必須事項である。<13分>
【大問1】論説文の読解問題
- 時間配分:15分
現代社会に生じた事象を社会学的観点からの論説文である。出典は平田オリザ著『下り坂をそろそろと下る』。夕張市、芦別市また富良野市などの旧産炭地に対して行われた様々な政策の結果についての論説である。常日頃からニュースや新聞等で、社会で起きる事象に対して関心を持つようにしながら自身の考えをまとめておきたい。
(問一)漢字の書き取り問題である。この問題は完答したい。<2分>
(問二)内容把握記述問題。夕張市も芦別市もともに旧産炭地であり、その再生へ向けた政府(国)主導の様々な政策が講じられた。しかし、地域の再生にとって何が一体最重要であるのか。筆者の主張もしくは結論は、最終段落にある。キーワードは「自主再生」とその前提となる「創造性」である。<5分>
(問三)内容把握記述問題。筆者の論旨に基づき「自己決定能力」とは何かを正確に把握すること。『自分たちの誇りに思う文化や自然』に対し、『付加価値』をつけなければ、『自分たちで判断できる能力』を欠くことになり、『中央資本』に『収奪』される。<6分>
【大問2】小説の読解問題
- 時間配分:22分
小説の読解問題である。出典は、村田沙耶香著『コンビニ人間』。芥川賞受賞作品である。
(問一)内容把握記述問題である。白羽さんと私の抱いている『宗教観』の違いを見極めること。上からの押し付けなのか、または自分を変える手段なのかを考える。<6分>
(問二)内容把握記述問題である。「ああいう人」とは、白羽さんのような人のことである。経験もないのにコンビニでの業務について熟知しているような発言をするが、実際には真逆であり、口だけは一人前なのである。<7分>
(問三)内容把握記述問題である。コンビニにおける「変わらない」状況とは何であろう。商品棚に陳列されている品物は、時々刻々入れ替えられるが、そこには依然と同じ商品が並んでいるのである。
【大問3】古文の読解問題
- 時間配分:13分
古文の読解問題である。出典は、松尾芭蕉著『更科紀行』。名古屋から木曽路を通り、江戸に至るまでの紀行である。
(問一)内容把握選択問題。仏さまから見た人間世界も危ないことが満ち溢れていると感じているのであろう、と芭蕉は感じている。<3分>
(問二)内容把握記述問題。「風情」とは俳句を詠むことであり、さわりとは『邪魔』ということである。<4分>
- (問三)俳句の季語・語法の問題。基本的知識があれば完答はできるはず。
①「月」は秋の季語である。<2分>
②わびしい宿で月見をしていると、月の光が月見酒の盃を照らしとても美しく感じたのである。
攻略のポイント
大問1の論説文は、今日的社会事象に対する社会学的観点からの考察である。本文の論旨を丁寧かつ迅速に把握することが合格解答作成のためには不可欠である。一見すると論旨展開の把握が不明瞭になるかもしれないが、極めて論理的文章であるので複数回使われる単語(キーワード)などを手掛かりにアプローチを試みること。
大問2は小説である。人物の内面理解が重要である。そのためには、会話の内容や情景描写の把握・理解がポイントである。
大問3の古文問題は、基本的古文法の知識があれば比較的解きやすい。「鑑賞せよ」という問いに対しては、自分の主張の論点を明確にしたうえで的を絞り込んだ記述が必要である。