開成高等学校 入試対策
2019年度「開成高等学校の国語」
攻略のための学習方法
現代文に関しては、かなり高度な文章が出題される。では、『高度な文章』とはどのような文章のことをいうのだろうか。
結論から言えば、『抽象的で極めて論理的な文章』ということである。論理的文章であるので、しっかりと文脈を辿っていく文章読解力があれば、論点が何なのか、筆者の論証の進め方、つまり「筆者の考え方」の軌跡を明確にすることは、それほど困難ではないであろう。
その際には、何度も反復して使用されている『単語』が重要になってくる。
特に、『名詞』は重要であり、抽象名詞は筆者の考え方を補完するうえでその有用性は極めて高い。本文を一読する過程の中で、「これはっ…」と思う『言葉』はマルで囲んだり、傍線を引いたりしておく習慣を日頃の学習においても定着させるべきである。
また、各設問に解答する場合には、設問の対象となっている個所の前後をしっかり読み込むことが不可欠である。また、キーワードは何か、繰り返し使用されている「言葉」が、文章全体の中でいかなる役割と意味を持たされているのかを見抜く力が必要である。
その力を習得するためには、論理的文章に読み親しむことである。例えば、各出版社で販売している「新書」を読むことも論理的文章読解の力を養成するには最適であろう。「新書」はさまざまなジャンルを扱っているので、読む場合には「自分の興味のあるジャンル」を選択することが基本である。長期休暇とか土日など、時間に比較的余裕のある時期に読み込もう。
秋以降になって時間的に余裕がなくなってきた場合には、そのような「新書」を読むことは得策ではない。では、どうすれば論理的文章の読解力を向上させることができるのか。
その場合には、高度な論理的文章読解の演習を通じて、課題文である本文をじっくり読み込むことである。少なくとも、入試問題として出題される文章であるので、論理的分析に耐えられない文章ではないことだけは間違いないはずである。
したがって、入試までに時間的余裕のない状態で、論理的読解力を高めようとする場合には、演習の問題文を徹底的に分析することである。
小説問題に対する対策としては、登場人物の心情把握をいかに正確かつ迅速に行うかである。そのためには作者がその人物をどのように描写しているかを素早く見極めることである。
例えば、性格的に明朗なのか陰湿なのか、発言内容を通じてその人物の考え方や価値観などを把握するということである。そのような総合的な分析作業を経て、登場人物の人格やキャラクターを鮮明にすることが可能になるのである。
特に、小説の場合には、間接的な情景描写を通じて人物の心情描写を行なう手法を用いるのが一般的である。入試問題においても、そのような情景描写を把握し、そのような描写を通じて、作者が登場人物をどのような特性・人格として描こうと意図しているのかを理解することがカギとなる。
いずれにしても現代文については、本文の分量もかなり多く内容的にも高度(特に論説文)であり、設問内容も記述式であるため、正確な文章読解力は当然のこととして、その上で「高度な文章表現力」を高校側が求める『力』であるということを十分認識するべきである。
その様な要求に対応するためには、過不足なく簡潔にしかも説得力をもった文章を手際良く書き上げる練習を行わなければならない。そのような文章表現力を磨くには、自分が書いた文章を誰か他人に「添削」してもらうことである。他人の客観的評価が加わることで文章作成能力は飛躍的に向上する。
古文についても、設問はほとんどが内容把握に関する問題であるので、古典(当然ながら漢文も含む)文法などの知識だけではなく、内容把握(当然ながら人物描写や心情描写の把握と理解)をしっかり行えるように近世の古典作品を扱った問題演習をしっかり行うことである。
将来的な大学入試を考えた場合、大学側が、というより社会が求める人材像の要件は、『自分で考え、説得力ある自分の言葉でいかに相手に自分の考え方を伝えるか』ということである。そのような意味では、現代文の問題文をじっくり読み込む作業を通じて自身の論理力を鍛えて貰いたい。
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2019年度「開成高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、随筆の読解問題である。漢字の書き取り問題以外はすべて記述式問題。将来、人類が必然的に直面するであろうAI(人口知能)との関わり合いに関する随筆である。<20分>
大問2は、小説を題材とした読解問題である。人物の心情把握に関する記述問題。<15分>
大問3は、古文読解問題である。物語に関する内容である。<15分>
【大問1】随筆の読解問題
- 時間配分:20分
人間と人工知能に関する随筆読解総合問題である。
出典は、黒川伊保子著『アンドロイドレディのキスは甘いのか』。
(問一)漢字書き取り問題である。
設問にもあるように「一画ずつ丁寧に書く」ことを心掛けること。完答を目指したい。<2分>
(問二)内容把握記述問題である。
AIは人間の知能を超えられるのか、という問いが何故提起されるのかに対し、本文に即して記述解答を求めている。
問題意識としては、常日頃からAIについては関心をもって関連記事などに注目しておこう。<5分>
(問三)内容把握記述問題である。
「痛みがない人口知能」という記述の「痛みがない」とはどういう意味なのか、「痛みを感じる」人間的視点で考察しよう。<6分>
(問四)内容把握記述問題である。
本文にある「王道」とは何を意味しているのか。既成の社会通念(学歴崇拝・偏差値優先)にとらわれない生き方であり、それゆえにAIに脅かされる心配もしない逞しい生き方である。<7分>
【大問2】小説を題材とした読解問題
- 時間配分:15分
小説に関する総合記述問題である。
出典は、清岡卓行著『船の中の裁判』。
(問一)人物の心情把握問題である。
「私」が取った行動が「不可抗力」であると認識している。そこから、心情を読み取ろう。<7分>
(問二)人物の心情把握問題である。
「地に足がついていなかった」状況を夜の場面の「人間たち」との比較を基に記述する。夜になると昼の「興奮」は冷めるのである。<8分>
【大問3】古文読解問題
- 時間配分:15分
古文の物語読解問題である。
出典は、『平家物語』。
(問一)古文の内容把握問題。
「及ばず」とは、できないということである。<2分>
(問二)古語意味問題。
「評定する」も「あはひ」もともに基本古語である。<2分>
(問三)古文内容把握問題。
「よき大将軍」の戦のやり方に関する考え方について本文から読み取ること。<3分>
(問四)古文内容把握問題。
「片趣」とは一事にただ意識を向け、他のことを考えようとしない状況のこと。
攻略のポイント
大問1の随筆文は、昨今の注目を集める話題でもある「AI」と人間との関りに関する随筆である。人間は、現状行っている仕事の大半が近い将来AIに「奪われる」のではないかと心配するが、AIにはなくて人間にしかない「言葉の中にこそ(人間の)尊厳」があるという認識に立って解答する。
大問2は小説の読解問題である。登場人物の心情把握が重要。そのためには本文に記載されている情景描写をしっかり理解し、特定の表現が何を意味しているのかを明確に把握すること。
大問3の古文問題は、基本的古文法の知識が必須であることは言うまでもない。基本古語・文法は確実に習得し、様々な古典問題を演習しておこう。