開成高等学校 入試対策
2015年度「開成高等学校の数学」
攻略のための学習方法
全体的に全く手が付けられない問題という訳ではない。
1年間における受験勉強の流れを概観する。
夏までの時期には、標準問題の徹底した演習が不可欠である。夏は、受験生にとって大事な時期であり、翌年の受験の合否を決定すると言っても過言ではない、まさに受験勉強の『天王山』である。この時期(夏)から全国レベルの難関校の数学の入試問題に挑戦して欲しい。夏の時期にしっかりとした基礎力と応用力を身に付けることに専念すること。
そのような『学力』を確実に習得することが、秋以降本番入試までの確かな実戦力を着実にする唯一の方法であることを認識して欲しい。
そのためには、何をどうすればよいのかについて、具体的に分野を絞って以下に見てみたいと思う。
(1)数の性質に関する問題には要注意である。
小数点第2位を四捨五入して、というような条件を与えられた場合に、不等式を用いて式を立て、設問が求めている解答を導き出す訳である。
その際にも、闇雲に思考を進めては時間のロスは否めない。適正な方向性をもって論理を組み立てられるかどうかは、どの問題においても必須な要件であり、その部分がぶれていては、自分で『素晴らしいアイデア』だと自画自賛したところで、それは単なる思い付きに過ぎず正解にはたどり着けないだろう。
また、数の性質、特に整数解を求める不定方程式などの問題にも十分慣れておくように。
(2)関数の問題は必ず出題される。
放物線と直線、つまり2次関数と1次関数の融合問題は得意分野となるまで徹底的に演習を重ねて欲しい。
この分野の問題は、特定の高校という訳ではなく、高校受験の数学においては必須分野である。
何故か。それはこの融合問題によって、中学数学のほぼ全分野の知識とその理解とが確認できるからである。2~3点具体例を挙げてみる。
第一に、放物線と直線の交点の座標に関連した問題である。
その交点のx座標は、放物線と直線との連立方程式(つまりxに関する2次方程式の解)となる。その際、単純に解の公式を用いてxの解を求めるというのではなく、その後の問題展開を考慮して『解と係数の関係』を用いた方が、端的にかつ確実に正解を求められる場合がある。
第二に、放物線と直線との2交点を用いて特定の図形(三角形の場合が多いが)と面積が同じになる、又は2倍、3倍となる場合における2交点以外の放物線上の第3点目の座標を求める問題も要注意である。
様々な解法はあるが、基本的には『等積変形』の考え方を如何に効率よく設問に当てはめていくか、ここがポイントである。
また、上記2交点と特定の条件を付与された動点Pによって出来上がる図形におけるxとyの関係を求めさせる問題、いわゆる『軌跡』に関しても事前準備はしっかりやっておくこと。
第三に、『格子点(x、y座標の値が整数値)』に関してもその特性を自在に扱えるようにしておかなければならない。
平面座標から格子点の個数を具体的に数えさせたり、文字を使って抽象的に条件を与えられ、格子点の数を所与の文字を使って表現させたりする出題も可能である。
第四に、確率の問題にも拡張できる。
例えば、点Pが原点をスタート地点としてサイコロを振り(振るサイコロは1個とは限らず、複数の場合もあり得る)、5回までは偶数目はx軸方向へ、奇数目はy軸方向へ進み、6回~10回目までは、偶数目はx軸方向と逆へ、奇数目はy軸方向と逆へ進むとして、最終的に点Pが再び原点に戻ってくる確率を求める問題などにも慣れておく必要がある。
以上、概観したように、放物線と直線との融合問題には数量編は当然のこととして、幾何・確率の分野までも出題可能なのである。ここに、この分野が高校入試において必ず出題される理由がある。
(3)立体図形(空間図形)に関する問題も繰り返し演習を行っておくこと。
立体図形の切り口を扱う問題は得意として欲しい。
この問題は基本的には立方体を使う場合が多いが、原則的に同一平面に存在する2点を結ぶ作業を行い、次に対面に対し平行に直線を引くという手順で進めてゆくと手際よく切り口の形が見えてくる。
その結果得られた『平面図形』において、三平方の定理・合同・相似・点対称移動などの考え方を用いて解答する問題形式となる。
また、空間という三次元の世界を紙という二次元の思考の中で考えるために、有効な手段を示しておく。『立体を三方向からイメージする』ということである。三方面とは、『真上・真正面・真横』である。これらの方向からのイメージを頭の中で一つの立体として完成させ、できれば回転させたり斜めにしたりできるような想像力を逞しくする訓練を積んで欲しい。
そのためには、コンピュータ・グラフィックなどを実際に自分の目で見てみることも大事である。
(4)最後に規則性の問題も重要である。
規則性には様々な出題形式があるが、数列の場合を考えてみると、第n項の値を、nを用いて数式化する訓練をしっかりつけること。項数との関係性も重要なファクターである。数列以外にも、規則性の問題は限りなく存在するので様々な問題形式に触れておくように。
総括として一言。参考書や問題集には、特殊で受験テクニカルな公式が掲載されている場合が多いが、大事なことはその公式を丸暗記して目の前の問題の数値を当てはめて答えを出すのではなく、一度自分でその公式がどのようなプロセスで導き出されたのかを検証することである。
公式はあくまで結果であって、大切なことはその結果に至る過程(プロセス)でどのような『考え方』を用いたかであるということを忘れないでほしい。
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2015年度「開成高等学校の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】は独立小問題。
(1)は数の性質<3分>、(2)は連立方程式<5分>、(3)は数の性質<5分>、(4)は幾何・平面図形<5分>。
【大問2】は空間図形。
(1)と(3)は各<1分>、(2)は<2分>、(4)は<6分>で解答したいところ。
【大問3】は2次関数に関する融合問題。
(1)~(3)は全て座標を求める問題。大問としての解答は<13分>以内に終わらせたい。
【大問4】は整数の性質に関する問題。条件整理をいかに手際よく的確に行うかがポイント。
(1)は<2分>、(2)は<3分>、(3)は<5分>、(4)は<8分>。
【大問1】雑小問題群
- 時間配分:
独立小問題。どれも標準問題であるので完答したい。
(1)数の性質に関する問題。不等式を用いて平均値を表し、求めるEの範囲を特定する。
<時間配分目安:3分>
(2)連立方程式である。基本問題でありこれは絶対に落とせない。
<時間配分目安:3分>
(3)数の性質の問題であり、分子の和については等差数列の和を求める基本問題である。
また、既約分数の和とは分子が7と13の倍数以外(91=7×13なので)の和となる。
その場合、分子が7の倍数の和と13の倍数の和の合計を求めるのであるが、その際に91が7と13の公倍数であることを考慮する(分子が91の分数を1個分引く)ことを忘れずに。
<時間配分目安:5分>
(4)平面図形(幾何)の問題である。
設問の平面図形に相似、合同関係を見出し手際よく当てはめられるかどうかが重要。
また、設問の角度や辺の長さを適宜文字に置き換えられるかもポイントである。日頃から十分な練習が必要である。
<時間配分目安:5分>
【大問2】空間図形
- 時間配分:
空間図形の問題。必須分野と考えてもらいたい。(4)以外は完答しなければならない。
(1)頂点及び辺の数の問題である。
初見の問題ではないので、迷いは許されない。
<時間配分目安:1分>
(2)直角二等辺三角形の特徴(三辺の長さの比)を利用した問題。
慌てずに図形を吟味すれば解法は見えてくる。
<時間配分目安:2分>
(3)立体の体積の問題。
これは問題を一読したら正解への道筋が見えてこなければいけない。基本問題である。
<時間配分目安:1分>
(4)一見、どこからアプローチするかが見えてこないかも知れないが、立方体の対角線の交点(中点)が球の中心であることに気が付けば、糸口もつかめるはず。
<時間配分目安:6分>
【大問3】二次関数
- 時間配分:
放物線と直線に関連し、座標平面にできた図形に等積変形の考え方を当てはめて解答する問題。
全ての設問にいえることは、求めたい点の座標を文字(しかも1種類の文字)で表現することに慣れておくこと。
(1)垂直条件を用いて座標を求める問題。
垂直に交わる2直線の傾きの積は、-1になることは常識。
<時間配分目安:2分>
(2)∠ABC=90°であることより、ACが円の直径になることを手掛かりに解法を進める。
<時間配分目安:4分>
【大問4】整数の性質
- 時間配分:
整数の性質に関する問題である。
(1)約数の個数を求める問題である。
約数の個数については、素因数分解し、Pa×Qb×Rc となった場合に次の式で求められることは基本的重要事項。
(a+1)×(b+1)×(c+1)個
<時間配分目安:2分>
(2)条件合致の整数を求める問題である。
〈x〉=6からxの約数は6個となることを手掛かりに論理を組み立てれば、正解へたどり着けるであろう。
<時間配分目安:3分>
(3)条件に合う整数を求める問題。
〈〈y〉〉=2より〈y〉は素数となる。
このことから解法を進め5分以内には完答したいところ。
<時間配分目安:5分>
(4)条件に合う整数の個数を求める問題である。
〈〈z〉〉=3より〈z〉は平方数である。
与えられた条件を整理しうまく問題に当てはめないと、徒に時間が過ぎていく。
<時間配分目安:8分>
攻略のポイント
標準的問題から大問4の(4)のように思考力を試される問題まで、バラエティにとんでいる。
大問1は1問も落とせない。完答は必須である。
大問2の(4)は立体(3次元)の世界を紙面上(2次元)で考えなければならない。その場合に必要な観点は『3方向(真上・正面・真横)からのイメージを一つの画像として結び付け、頭の中で回転させてみる』ことができるかどうかにかかっている。
大問4の(4)は正確で手際のよい条件整理を行なうことができるかどうかがポイント。
何れにしても、標準以上の問題演習を日々継続的に行うことが合格への王道である。