開成高等学校 入試対策
2021年度「開成高等学校の数学」
攻略のための学習方法
全体的に全く手が付けられないという問題ではない。1年間における受験勉強の流れを概観する。夏までの時期には、標準問題の徹底した演習が不可欠である。夏は、受験生にとって大事な時期であり、翌年の受験の合否を決定すると言っても過言ではない、まさに受験勉強の『天王山』である。この時期(夏)から全国レベルの難関校の数学の入試問題に挑戦して欲しい。夏の時期にしっかりとした基礎力と応用力を身に付けることに専念すること。
そのような『学力』を確実に習得することが、秋以降本番入試までの確かな実戦力を着実にする唯一の方法であることを認識して欲しい。そのためには、何をどうすればよいのかについて、具体的に分野を絞って以下に見てみたいと思う。
(1)数の性質に関する問題には要注意である。
小数点第2位を四捨五入して、というような条件を与えられた場合に、不等式を用いて式を立て、設問が求めている解答を導き出す手法がある。その際にも、闇雲に思考を進めては時間のロスは否めない。
適正な方向性をもって論理を組み立てられるかどうかは、どの問題においても必須な要件であり、その部分がぶれていては、自分で『素晴らしいアイデア』だと自画自賛したところで、それは単なる思い付きに過ぎず正解にはたどり着けないだろう。また、数の性質、特に整数解を求める不定方程式などの問題にも十分慣れておくように。
(2)関数の問題は必ず出題される。
放物線と直線、つまり2次関数と1次関数の融合問題は得意分野となるまで徹底的に演習を重ねて欲しい。この分野の問題は、特定の高校という訳ではなく、高校受験の数学においては必須分野である。何故か。それはこの融合問題によって、中学数学のほぼ全分野の知識とその理解とが確認できるからである。2~3点具体例を挙げてみる。
第1に、放物線と直線の交点の座標に関連した問題である。その交点のx座標は、放物線と直線との連立方程式(つまりxに関する2次方程式の解)となる。その際、単純に解の公式を用いてxの解を求めるというのではなく、その後の問題展開を考慮して『解と係数の関係』を用いた方が、端的にかつ確実に正解を求められる場合がある。
第2に、放物線と直線との2交点を用いて特定の図形(三角形の場合が多いが)と面積が同じになる、又は2倍、3倍となる場合における2交点以外の放物線上の第3点目の座標を求める問題も要注意である。様々な解法はあるが、基本的には『等積変形』の考え方を如何に効率よく設問に当てはめていくか、ここがポイントである。
また、上記2交点と特定の条件を付与された動点Pによって出来上がる図形におけるxとyの関係を基本とする問題、いわゆる『軌跡』に関しても事前準備はしっかりやっておくこと。
第3に、『格子点(x、y座標の値が整数値)』に関してもその特性を自在に扱えるようにしておかなければならない。
平面座標から格子点の個数を具体的に数えさせたり、文字を使って抽象的に条件を与えられ、格子点の数を所与の文字を使って表現させたりする出題も可能である。
第4に、確率の問題にも拡張できる。
例えば、点Pが原点をスタート地点としてサイコロを振り(振るサイコロは1個とは限らず、複数の場合もあり得る)、5回までは偶数目はx軸方向へ、奇数目はy軸方向へ進み、6回~10回目までは、偶数目はx軸方向と逆へ、奇数目はy軸方向と逆へ進みとして、最終的に点Pが再び原点に戻ってくる確率を求める問題などにも慣れておく必要がある。
以上、概観したように、放物線と直線との融合問題には数量編は当然のこととして、幾何・確率の分野までも出題可能なのである。ここに、この分野が高校入試において必ず出題される理由がある。
(3)立体図形(空間図形)に関する問題も繰り返し演習を行っておくこと。
立体図形の切り口を扱う問題は得意として欲しい。この問題は基本的には立方体を使う場合が多いが、原則的に同一平面に存在する2点を結ぶ作業を行い、次に対面に対し平行に直線を引くという手順で進めてゆくと手際よく切り口の形が見えてくる。その結果得られた『平面図形』において、三平方の定理・合同・相似・点対称移動などの考えたかを用いて解答する問題形式となる。
また、空間という三次元の世界を紙という二次元の思考の中で考えるために、有効な手段を示して置く。『立体を三方向からイメージする』ということである。三方面とは、『真上・真正面・真横』である。
これらの方向からのイメージを頭の中で一つの立体として完成させ、できれば回転させたり斜めにしたりできるような想像力を逞しくする訓練を積んで欲しい。そのためには、コンピュータ・グラフィックなどを実際に自分の目で見てみることも大事である。
(4)最後に規則性の問題も重要である。規則性には様々な出題形式があるが、数列の場合を考えてみると、第n項の値についてnを用いて数式化する訓練をしっかりつけること。項数との関係性も重要なファクターである。数列以外にも、規則性の問題は限りなく存在するので様々な問題形式に触れておくように。
総括として一言。
参考書や問題集には、特殊な受験テクニカルな公式が掲載されている場合が多いが、大事なことはその公式を丸暗記して目の前の問題の数値を当てはめて答えを出すのではなく、一度自分でその公式がどのようなプロセスで導き出されたのかを検証することである。公式はあくまで結果であって、大切なことはその結果に至る過程(プロセス)でどのような『考え方』を用いたかであることを忘れないでほしい。
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2021年度「開成高等学校の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】関数(放物線と直線)<11分>
(1)点のx座標を求める問題<2分>
(2)直線の傾きを求める問題<3分>
(3)条件に適合するtの数値を求める問題<6分>
【大問2】数の性質に関する問題<17分>
(1)指定された条件を満たすnの個数を求める問題<5分>
(2)数の性質に関する条件整理問題<12分>
【大問3】色球を用いた場合の数を求める問題<17分>
(1)場合の数に関する問題<3分>
以下の設問の基本となる問題である
(2)4個の色球の並べ方(指定条件あり)に関する場合の数<4分>
(3)5個の色球の並べ方(指定条件あり)に関する場合の数<3分>
(4)5個の色球の並べ方に関する場合の数<3分>
(5)6個の色球の並べ方に関する場合の数<4分>
【大問4】空間図形(円錐)<15分>
(1)線分の長さを求める問題<4分>
(2)線分の長さを求める問題<11分>
【大問1】関数(放物線と直線)に関する問題
- 時間配分:11分
(1)指定された点の座標を求める問題<2分>。
ポイントは点B、Cがy=x2にあることから、B(b,b2)、C(c,c2)とおけることであり、さらに与えられた直線に関する傾き条件を当てはめて点Cのx座標を求める。
(2)指定された直線の傾きを求める問題<3分>。
直線AD、CFの傾きを求める問題であるが、点Dが。y=x2にあることから、D(d,d2)とおける。設問で与えられた直線の傾きなどの諸条件を考慮して取り組むこと。
(3)指定された三角形の面積比となるような変数を求める問題<6分>
△PADと△QFCとの面積をそれぞれS1、S2としたときS1:S2=1:5になるようなtを求める問題であるが、ポイントは△PAD∽△QFCであることから、△PAD:△QFC=S1:S2=1:5となることに着目すること。その結果、AD:FC=1:√5 になることが解法への重要なプロセスである。
【大問2】数の性質に関する問題
- 時間配分:17分
【大問2】数の性質に関する問題<17分>。
本問で与えられている条件は以下のとおり。
『 を小数で表したとき、ちょうど小数第3位で終わる』
上記条件の意味は、『 ×1000が整数となり、かつ×100が整数とならない』ことである
(1)x=75のときに上記条件を満たすnの個数を求める問題<5分>。
条件から、nは75×1000の約数であり、75×100の約数ではない数となることを手掛かりに考えを進める。その際に、75×1000=23×3×55、75×100=22×3×54であるので、それぞれの約数の個数は、4×2×6=48個、3×2×5=30個になることより解法を進める。
(2)上記条件を満たす正の整数nの個数が20個である2桁の正の整数xを求める問題<12分>。
設問の回答を求めるために思考のプロセスが示されており、その中で必要な空欄に当てはまる数または式を答える問題である。k、lを0以上の整数として、x=2k×5l×Aと表されたとする(ただし、20=50=1とし、Aは2、5を約数に持たない正の整数)、という指定された条件を以下に解法へ当てはめてゆくかが重要。また、整数を因数分解したときの各素数の指数に1を加えた数の積がその整数の約数の個数であることは、重要事項として理解し使いこなせるようにしておくこと。
【大問3】色球を用いた場合の数の問題
- 時間配分:17分
たくさんある赤球、白球、青球を取り出し並べた場合、何通りの並べ方があるかを問う問題である。
(1)4個の球を並べたときに「異なる3色」の並べ方の総数を求める問題<3分>。
並べる場所を左からA、B、C、Dとおいて考えるのが定石であろう。色球は3個であるのに対し、置く場所は4ヶ所であることの条件整理をしっかり行うこと。
(2)4個の球を並べたときに「異なる3色」が並ばない総数を求める問題<4分>。
左から3個目と4個目が同じ色の場合と異なる色の場合をそれぞれ何通りであるかを求める問題である。(1)同様に、置く場所を左からA、B、C、Dとおいて考える。まずは、「異なる3色」が並ばない場合の数を求めよう。
(3)指定条件のもとでの5個の球を並べる場合の数を求める問題<3分>。
5個の球を並べるとき左から3個目、4個目、5個目に「異なる3色の並び」ができて、他に「異なる3色の並び」ができないという事象の意味を具体的に考えてみる。
(4)5個の球を並べたときに「異なる3色」の並べ方の総数を求める問題<3分>。
考え方としては「4個並べた色球に、左から5個目の色球を並べて『異なる3色の並び』」ができる場合の数を考えること。
(5)6個の球を並べたときに「異なる3色」の並べ方の総数を求める問題<4分>
前問の(4)の考え方を準用しつつ、左から6個目に色球を並べた場合について考えてみる。
【大問4】空間図形(円錐)に関する問題
- 時間配分:15分
(1)円錐の側面に対し平面を用いて斜めに切った場合の特定の線分の長さを求める問題<4分>
条件より△MEB∽△DHBであり、点MはBDの中点であることを利用すると、ME:DH=BM:BD=1:2となる。また、条件を整理してFG∥AOとなることより△FGI∽△AOIであるので、GI:OI=FG:AO=X:10 =x:20となることより、OGの長さをxを用いて表すことが可能となる。
(2)円錐の切り口に関連した辺の長さを求める問題<11分>。
DH∥AOであるので、△DHC∽△AOCとなる。したがって、HC:OC=DH:AO=x:10となる。また、△MEBにおいて三平方の定理を当てはめ、BM2=BE2+ME2となることとMF= BMという条件のとき、(MF)2=(BM)2となることより導かれるxについての2次方程式を解く。
攻略のポイント
柔軟な発想とイメージコントロールを要求される多種多様な問題設定である。全く手が付けられないという問題はないであろうが、限られた時間の中で手際よく正解を導くためには、相当な演習量をこなし発想力や着眼点を日頃の学習において最高に磨かなければならない。
演習問題のレベルは、当然ながら全国最難関校以上の過去問題であり、単純なスキル演習を数多くこなして対応できる問題レベルではない。正解へ向け、瞬間的に解法への適切な方針を立てられるか、この点が最重要である。さらに、方針を立てる場合に、3手先、4手先まで見通すことのできる「眼力」が必要である。先々まで想定できる力こそ、真の数学思考力であると認識して欲しい。
また、図形問題や整数の性質問題などにおいては、事象の本質的領域に関わるような発想ができるかどうかが正答を導けるか否かのカギである。図形問題では、空間における複眼的な見方(2方向から見た平面図を頭の中で一体化する見方)の練習をしっかり行うこと。