慶應義塾志木高等学校 入試対策
2020年度「慶應義塾志木高等学校の国語」
攻略のための学習方法
出題された文章は、論説文と小説である。この出題傾向は、今後しばらくは大きな変更はないと思われるため、上記2分野の文章の攻略法について以下に述べてみたいと思う。
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論説文を読み切るために
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(1)「論説文は難しい」と受験生の多くは思っていないだろうか。なぜ、そのように受験生は思ってしまうのだろうか。理由は様々あるだろうが、本文に展開されている難解な論理や普段使い慣れていない用語などが、受験生の理解を阻んでいると思われる。「論説文は易しい」とまでは言わないが、入試問題として出題される論説文は、筆者の主張も明確で論理展開も整然としている。重要なことは、そのような特質のある文章を如何にしたら試験時間内に手際よく読み込むことができるかである。
(2)前項で確認したように、入試で扱う論説文は極めて論理性が高い。そのような文章を理解するためには、自分自身が論理的思考力を身につけなければならないということである。そのためには、日頃から物事を論理的に考える習慣を付けておくことが重要である。論理的思考力を付けるためには、「自分の頭で考える」ことが必須である。最近は、様々な情報伝達ツールが氾濫しており、必要な情報は手間暇掛けずに容易に手に入ります。そのような利便性の高い環境の中で、物事を論理的に考えるためには安直にそのような便利なツールに頼らず、自力で試行錯誤を繰り返しながら結論を導き出すことである。
(3)上記のような作業を繰り返すことで、「論理の道筋」を自分で組み立てられるのである。それができるようになれば、自力でも論理的な文章を書けるようになり、入試問題で扱われる論説文に対する対策も効率よく習得できるだろう。そして、その結果としては単に論理的文章が読めるようになるだけではなく、そのような論理的思考に裏付けられた記述問題における力も高まるのである。
(4)論理性を高めるためには、論理性の高い文章を読むことが必要であると述べた。具体的には、岩波書店や筑摩書房などから出版されている「新書」を読むことが効果的である。中・高生向けの「ジュニア・新書」も発行されているので、自分の興味のある分野の新書を実際に手に取ってみて中身をぜひ見てもらいたい。自然科学分野は言うまでもなく、社会科学系の内容もたくさん網羅されている。数冊で構わないので、気に入った新書を手に取り読了してもらいたい。さらに言えば、読書録のような文章(400語=原稿用紙1枚)にまとめ上げる訓練も必要である。その文章を他人(学校の国語の先生)に見てもらうと、自分の文章作成上の弱点補強にも役立つことは間違いない。
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小説は心情把握を重点に
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(1)高校入試で扱われる小説のポイントは「心情把握」である。登場人物の内面の心理状況がどのように変化してゆくのかを的確に押さえ、把握できるかが合否を分けると言える。その心情描写は、「そのとき太郎は、心から落胆したのである」という具合に「直接的」ではない。情景描写や他の登場人物との会話のやり取りを通じて推量するしかない。そのためにも自分の「感性」を研ぎ澄まさなければならない。
(2)「感性」を研ぎ澄ますためにはどうすればよいか。一口で言うならば「感動する心を失わない」ことである。物事を見て感動しない心では「感性」は磨かれない。小説の本文を読みながら、情景が浮かんできて登場人物の動きが手に取るように理解できるようになるためには「感動する心」が必要である。
(3)小説の文章を理解するためには、「比喩」の表現を活用したい。「比喩」には「直喩」と「暗喩」がある。文章中にあるこれ等の表現技法をしっかり理解し、内容が把握できるようになると小説の読解・理解力は格段に伸びる。日頃から文章を丁寧に読み込み、「比喩」、「擬人法」、「倒置」などの表現方法は意識して読むような習慣を付けることが重要である。
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2020年度「慶應義塾志木高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、教育に関する論説文の読解問題<33分>。
漢字、語法、語句、慣用句、古典知識、文学史の出題形式である。記述式問題対策をしっかり行っておくこと。
大問2は、小説の読解問題<27分>。
内容把握、語句、人物の心情把握に関する出題である。大問1と同じように、記述式問題対策を確実に行っておくこと。
【大問1】教育に関する論説文の読解問題
- 時間配分:33分
出典は、天野貞祐『学生と音楽』である。
問1は、漢字の書き取り問題、全部で25題である<4分>。どれも標準的な漢字であるが、知識が曖昧な場合はしっかり確認し、漢字の問題での高得点を目指そう。
問2は、品詞に関する問題である<2分>。断定、使役、打消し、受け身、可能を表す助動詞についての知識を確実にしておこう。
問3は、品詞に関する問題である<2分>。xの「なお」は強調であり、yの「なお」はそのうえという意味である。
問4は、内容把握に関する選択問題である<3分>。本文をしっかり理解し、「個性」や「一般」などの言葉が、どのような意味をもって本文中で使用されているかを考えること。
問5は、接続語選択問題である<3分>。例えば、選択肢の「オ まして」を考える。本文では、「音楽」は「学問ではない」、それ以上に「自然科学」ではない、となっているので、「それ以上に」という意味を選択するので「まして」となる。
問6は、内容把握表現問題である<3分>。甲と乙には、直後にある「自己矛盾」を起こしてしまうような文言が入る。つまり、「鳥」は飛ばない、「魚」は泳がない、という本来の機能と矛盾する文言を選択する。
問7は、語句に関する問題である<2分>。「宇宙」とはコスモのことである。
問8は、古典に関する知識問題である<3分>。古語の読み方、文学史、語句に関する知識問題である。
問9は、内容把握に関する問題である<5分>。「放埓(ほうらつ)」とは、自由気ままに快楽を追い求めようとすることである。
問10は、内容把握問題である<2分>。なぜ、学生一人ひとりの人生を豊かにすることが「社会の進歩」につながるのかを本文に即して考えること。
問11は、内容把握記述問題である<4分>。本文によれば、音楽は人間の人生を豊かにし、更に社会全体を豊かにするのである。また「自ら音楽を練習する学生」は、音楽の練習に時間を費やし、学問を行う時間が圧迫されてしまう恐れがあるため注意が必要なのである。
【大問2】小説の読解問題
- 時間配分:27分
出典は、『雨』(林芙美子著)。
問1は、語句に関する問題である<3分>。「祖国」とは日本のこと、「故国」とは故郷である松代のことである。
問2は、内容把握に関する問題である<3分>。本文をよく読んで適切な選択文を選ぶこと。例えば、Ⅰは、無謀な戦争へと自分たちを駆り立てたことに対して、腹立たしさを感じているのである。
問3は、内容把握問題である<3分>。孝次郎が拾った「煙草の空き箱」は、日本と比較し豊かな国であるアメリカを象徴するものである。「豊かさ」の逆を表現している箇所を抽出する。
問4は、文章内容把握問題である<3分>。孝次郎の戦争に対する、そしてそれを進めてきた日本に対する「心情」をしっかり押さえること。
問5は、文章内容把握問題である<3分>。悲惨で過酷な戦場での経験を通して、孝次郎たちの感覚はどのように変化していったのかを把握すること。
問6は、文章内容把握問題である<2分>。孝次郎が戦場で考えていた「人間としての生き方」が、戦争で廃墟となった祖国へ帰ってきたときにどのように変化したのかを正確に捉えよう。
問7は、心情把握記述問題である<6分>。孝次郎は、自分が戦死していると父から聞かされた。このことによる孝次郎の心情変化をしっかり理解して、把握することが重要である。
問8は、文章内容把握問題である<4分>。孝次郎の心に強い印象を残した「大きい駱駝の絵」は、彼が拾ったアメリカの煙草の空箱に描かれていたものであり、彼にとってそれはアメリカの豊かさの象徴であると同時に、どのような精神的影響を当時の孝次郎の置かれた状況と併せて考えてみよう。
攻略のポイント
論説文と小説の大問2題の出題である。50~70字の記述式問題がポイントである。本文の文章を読み、内容を把握するだけではなく、設問の意図をしっかり理解したうえで指定された字数内で自分の考えをまとめ上げなければならない。設問の答えが自分で理解できたとしても、それを如何に手際よく的確に指定された字数でまとめ上げるかは、日頃から記述力向上の練習を積み上げておく必要がある。また、漢字の読み書き・語句・慣用表現なども結構な比率で出題されているので、このような知識問題も怠りなくしっかり押さえておきたい。