慶應義塾志木高等学校 入試対策
2022年度「慶應義塾志木高等学校の国語」
攻略のための学習方法
高校入試における頻出分野は論説文と小説である。この2分野の文章の攻略法について以下に述べてみたいと思う。
① 論説文を読み切るために
(1)「論説文は難しい」と受験生の多くは思っていないだろうか。なぜ、そのように受験生は思ってしまうのだろうか。理由は様々あるだろうが、本文に展開されている難解な論理や普段使い慣れていない用語などが、受験生の理解を阻んでいると思われる。「論説文は易しい」とまでは言わないが、入試問題として出題される論説文は、筆者の主張も明確で論理展開も整然としている。重要なことは、そのような特質のある文章を如何にしたら試験時間内に手際よく読み込むことができるかである。
(2)前項で確認したように、入試で扱う論説文は極めて論理性が高い。そのような文章を理解するためには、自分自身が論理的思考力を身につけなければならないということである。そのためには、日頃から物事を論理的に考える習慣を付けておくことが重要である。論理的思考力を付けるためには、「自分の頭で考える」ことが必須である。最近は、様々な情報伝達ツールが氾濫しており、必要な情報は手間暇掛けずに容易に手に入ります。そのような利便性の高い環境の中で、物事を論理的に考えるためには安直にそのような便利なツールに頼らず、自力で試行錯誤を繰り返しながら結論を導き出すことである。
(3)上記のような作業を繰り返すことで、「論理の道筋」を自分で組み立てられるのである。それができるようになれば、自力でも論理的な文章を書けるようになり、入試問題で扱われる論説文に対する対策も効率よく習得できるだろう。そして、その結果としては単に論理的文章が読めるようになるだけではなく、そのような論理的思考に裏付けられた記述問題における力も高まるのである。
(4)論理性を高めるためには、論理性の高い文章を読むことが必要であると述べた。具体的には、岩波書店や筑摩書房などから出版されている「新書」を読むことが効果的である。中・高生向けの「ジュニア・新書」も発行されているので、自分の興味のある分野の新書を実際に手に取ってみて中身をぜひ見てもらいたい。自然科学分野は言うまでもなく、社会科学系の内容もたくさん網羅されている。数冊で構わないので、気に入った新書を手に取り読了してもらいたい。さらに言えば、読書録のような文章(400語=原稿用紙1枚)にまとめ上げる訓練も必要である。その文章を他人(学校の国語の先生)に見てもらうと、自分の文章作成上の弱点補強にも役立つことは間違いない。
② 小説は心情把握を重点に
(1)高校入試で扱われる小説のポイントは「心情把握」である。登場人物の内面の心理状況がどのように変化してゆくのかを的確に押さえ、把握できるかが合否を分けると言える。その心情描写は、「そのとき太郎は、心から落胆したのである」という具合に「直接的」ではない。情景描写や他の登場人物との会話のやり取りを通じて推量するしかない。そのためにも自分の「感性」を研ぎ澄まさなければならない。
(2)「感性」を研ぎ澄ますためにはどうすればよいか。一口で言うならば「感動する心を失わない」ことである。物事を見て感動しない心では「感性」は磨かれない。小説の本文を読みながら、情景が浮かんできて登場人物の動きが手に取るように理解できるようになるためには「感動する心」が必要である。
(3)小説の文章を理解するためには、「比喩」の表現を活用したい。「比喩」には「直喩」と「暗喩」がある。文章中にあるこれ等の表現技法をしっかり理解し、内容が把握できるようになると小説の読解・理解力は格段に伸びる。日頃から文章を丁寧に読み込み、「比喩」、「擬人法」、「倒置」などの表現方法は意識して読むような習慣を付けることが重要である。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
2022年度「慶應義塾志木高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】芸術に関する論説文読解問題<14分>。
演劇に関する論説文である。漢字の読み書き問題も8題出題されている。
【大問2】古文(説話)に関する読解問題<13分>。
文学史、現代語訳、内容把握の出題である。
【大問3】小説の読解問題<19分>。
登場人物の心情把握を中心に出題されている。
【大問4】国語の知識問題<14分>。
漢字、語句に関する知識問題である。
【大問1】芸術に関する論説文総合読解問題
- 時間配分:14分
出典は、平田オリザ著『演劇入門』である。
筆者は「演劇とはすべての手の内をさらけ出したところから始まる芸術なのではないか」と疑問を呈する。演劇とは何か、それを筆者は古代ギリシャから近代・現代にいたる歴史を俯瞰しながら「演劇」の果たす役割を考察する。
問1は、漢字の読み書き取り問題である<2分>。
どれも標準的な漢字である。「隔離」「奴隷」「猛獣」はしっかり覚えておこう。
問2は、表現に関する問題である<2分>。
空欄Aは、「メディアリテラシー」とはなにかを本文より読み取る。空欄Bは、「表現するための複合的な能力」とは何を指すのかを考える。
問3は、内容把握抜出し問題である<2分>。
「演劇が観客の側にも参加するものとして捉えられる状況」は「ある種の市民社会」に見られるのである。
問4は、内容把握に関する選択問題である<1分>。
空欄Cの前後は「歌舞伎を支えた江戸の庶民たちは、歌舞伎を観客として」「観ていたわけ」ではないのでなく、「確かにそこに参加」していたのである。
問5は、語句問題である<2分>。
空欄Dは全体を見た場合に全体に繋がっている一部のこと。空欄Fは同じ方向性のこと。
問6は、内容把握に関する選択問題である<1分>。
本文では「全体主義国家では…芸術は参加するもの」としてではなく「単純な娯楽の道具として存在」するのである。つまり、芸術は国家にとって「主義やイデオロギーの宣伝」として利用されるのである。
問7は、内容把握問題である<2分>。
甲の直前は「手品を見せる前に種を明かされているのだから…私の芝居を観るときには興ざめ」するのである。乙に記載されている「これらの表現形態」とは「オペラ」や「サーカス」のことである。
問8は、内容把握選択問題である<2分>。
「江戸期の歌舞伎」は庶民たちが参加していたが、「ローマ帝政時代の剣闘試合」は「演ずる側と観る側が、完全に隔離」されていたのであるから、エが正解。
【大問2】古文の読解問題
- 時間配分:13分
出典は、『宇治拾遺物語』である。
問1は、文学史の問題である<2分>。
『宇治拾遺物語』のジャンルは説話集である。
問2は、現代語訳の問題である<2分>。
「今五日ありて」は「もう五日たって」という意味であり、「おはせよ」は「おいでください」である。
問3は、内容把握選択問題<3分>。
「あとうが曰く『…いかでか、やむごとなき人に、…おのが恥なるべし』」の個所を手掛かりに考える。
問4は、現代語訳の問題である<2分>。
「決してそれまで、待つことはできないでしょう」となる。「さらに」は、打消しの語を伴って「~することができない」という否定の表現になる。
問5は、内容把握記述問題<4分>。
内容を正確に読み込み適切な語句を抜出すこと。
【大問3】小説の読解問題
- 時間配分:19分
出典は、新美南吉著『花をうめる』である。
問1は、内容把握記述問題<4分>。
「私たち」は「私」と「林太郎」と「ツルさん」である。この3人で、花を隠す者とその花を探す者に分かれたのである。
問2は、内容把握記述問題<3分>。
傍線②の直後に「とうとう私はかぶとをぬいだ」とある。
問3は、心情把握問題である<3分>。
ツルは花を隠してはいなかったのであり、「私」に隠してもいない花を探させようとしていたのである。
問4は、表現方法等に関する問題である<4分>。
(一)は、語順を逆にする表現方法である。
(二)は、「そこへかけつけ、さがしまわる間の希望」が「なににもかえ難かった」という本文の個所を手掛かりにする。
問5は、内容把握記述問題<3分>。
「私」は「ツルのつくった花の世界のすばらしさに、おどろかされた」だけではなく、「私」は「ツル」のことをどのように思っていたかを考える。
問6は、心情把握問題である<2分>。
「私」が「ツル」と再会したときに、「私」が「ツル」に関してどのような感情を抱いたかを考察する。
【大問4】国語の知識問題
- 時間配分:14分
漢字や語句に関する知識問題である。
問1は、なぞなぞ問題である<4分>。
①「紅」の「糸」が「虫」に代わるので「虹」になる。
②「ふろ」の中に「とこ」があるので「ふところ=懐」となる。
③山の上に山となるので「出」となる。
問2は、「回文」の問題である<4分>。
上から読んでも下から読んでも同音で意味のある言葉を考える。①は「うらないならう」である。
問3は、語句に関する問題である<6分>。
語句の微妙なニュアンスの違いに関する問題である。例えば、①「余り」と「残り」の意味を問う問題である。
攻略のポイント
論説文、小説、古文から各大問1題ずつ、そして国語の知識問題(漢字や語句)の出題である。記述問題が多いので的確に過不足なくまとめ上げる記述力を高めることがポイントである。本文の文章を読み、内容を把握するだけではなく、設問の意図をしっかり理解したうえで自分の考えをまとめ上げなければならない。設問の答えが自分で理解できたとしても、それを如何に手際よく的確にまとめ上げるかは、日頃から記述力向上の練習を積み上げておく必要がある。また、漢字の読み書き・語句・慣用表現なども比較的出題数が多いので、このような知識問題も怠りなくしっかり押さえておきたい。