慶應義塾志木高等学校 入試対策
2021年度「慶應義塾志木高等学校の数学」
攻略のための学習方法
難関校の数学の入試問題において、如何にしたら合格点を取れるのかについて考えてみたいと思います。そもそも、なぜ「数学」を学習しなければならないのでしょうか。数学が大嫌いで「世の中から数学がなくなればよい」と心底思っている受験生もいるのではないでしょうか。そのような受験生は、方程式の応用問題や、放物線などの関数に関する問題が解けたからといって「自分の生活の一体何が変わるのか」と素朴な疑問を抱いているかもしれません。社会人になって世の中には数学のように、スッキリ答えの求められない問題もあるということを初めて自覚する場合もあるでしょう。むしろ、そのような問題のほうが多いかもしれません。また、答えが複数ある場合もあるでしょう。
そのような状況の中で、改めて考えてみたいと思います。なぜ「数学」を学習しなければならないのでしょうか。それに対する明確な答えは一つではありません。ただ、一つだけ理解しておいてほしいのは、数学の醍醐味は「物事を論理的に考え結論を導くことの楽しさ」であり「論理的な思考の道筋を整えること」であると思います。
そのような数学の醍醐味を習得するために、「何をどのように」行えばよいのでしょうか。具体的は「自分の頭で考え抜く」ということです。数学の問題を解いている過程で、考えに行き詰まるとどうしても「解答・解説」を見てしまいたい誘惑に負けてしまいます。そのような誘惑をグッと堪えて、たとえ正解でなくとも「自分の答え」を導くことである。その際に、安易に公式等を利用するのではなく(もちろん、数学的思考基盤がしっかりした後は公式も活用し解答時間の短縮を図ることも可)、与えられた条件の中で「何が言えて」「何が言えないのか」を明確にしたうえで、式を考え論理的に思考を巡らして結論に至るという作業が大切である。そのような作業こそが「公式」を導くプロセスなのであり、そのようなプロセスを習得することで、根本的な「数学的思考力」が身につくのです。そのような「思考力」を体得することで、多少目先を変えられたり解法の切り口に変化が与えられても自在に対応が可能になるのです。
いずれにしても重要なことは、柔軟な発想力と論理的な思考力を培うことです。そのためにも、標準以上の問題に対しじっくり考え、安易に妥協せずに最後まで問題を自分の頭で考えぬくことです。そのような作業の繰り返しの中で、真の数学力が養成され磨き抜かれて行くことを忘れないでもらいたいと思います。
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2021年度「慶應義塾志木高等学校の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】は、小問集合問題<5分>。式の計算、場合の数からの出題。迅速で正確な方針を立てることが必要である。ケアレスミスはないように。
【大問2】は、方程式の応用に関する問題<5分>。与えられた条件から比例式を立て、内項の積と外項の積が等しいことより方程式を解く。
【大問3】は、さいころを用いた確率の問題<10分>。1の目の出る確率を文字でおく。
【大問4】は、関数(1次関数と2次関数)に関する問題<9分>。直線の式、比例定数の求め方をしっかり覚えておく。
【大問5】は、平面図形(論証)に関する問題<7分>。平面図形における合同証明を活用する。
【大問6】は、関数と図形に関する問題<12分>。三平方の定理などの定理を的確にあてはめる。
【大問7】は、空間図形(立方体)に関する問題<12分>。指定された平面で切り取られた立体の体積を求める。
【大問1】小問集合問題
- 時間配分:5分
(1)<2分>式の値の問題。与式=a(b+c)×c(a+b)×b(c+a)と変形し、条件式をあてはめる。最終的に与式は、-(abc)2となる。
(2)<3分>場合の数の問題。1のカードが3枚、その他に2・3・4のカードが3枚ずつありそれらのカードを用いて4桁の自然数は何通りあるかの問題である。同じ1のカードが3枚あるという点がポイントである。
【大問2】方程式の応用に関する問題
- 時間配分:5分
(1)<2分>黒鉛筆と黒ボールペン、その他の鉛筆・ボールペンの本数の比例式から方程式を立てる。
(2)<3分>ボールペンの本数が指定されている場合の鉛筆の本数を求める問題である。前問の結果を参考にして求められている本数を考える。
【大問3】さいころを用いた確率に関する問題
- 時間配分:10分
(1)<4分>さいころを1回投げたときに1が出る確率をaとすると、その他の目の出る確率をaを用いて表現する。
(2)<6分>さいころを3回投げて3の目が1回出る確率を求める問題である。1回目、2回目、3回目のそれぞれの確率を求め加える。
【大問4】関数(1次関数と2次関数)に関する問題
- 時間配分:9分
(1)<3分>座標を求める問題である。y=ax2上にあることから点A、Bの座標をaを用いて表す。同様に、y=bx2に点C、Dがあることからそれぞれの座標をbを用いて表す。
(2)<6分>。四角形ABCDの面積が指定されている場合、比例手数abを求める問題である。AC∥BDより四角形ABCDは台形である。
【大問5】平面図形(論証)に関する問題
- 時間配分:7分
△ABCにおいて与えられた条件から、点Qが辺BCの中点であることを証明する問題である。△ABCの内部に合同な三角形が2組あることを手掛かりに論証を進める。
【大問6】関数と図形に関する問題
- 時間配分:12分
(1)<3分>座標を求める問題。直線ℓとx軸でできる角度の2等分線は円A、円Bの中心を通ることが分かる。
(2)<3分>点Qのy座標を求める問題。△POQは直角三角形であるので三平方の定理を活用し、点Qのy座標を求める。
(3)<6分>円A、円Bにおける内接共通接線の式を求める問題。円A、円Bは直線ABについて対象であることを活用する。
【大問7】空間図形(立方体)に関する問題
- 時間配分:12分
(1)<2分>1辺がaの立方体を3点P、Q、Rを通る平面で切り取った場合の頂点Eを含む立体の体積を求める問題である。典型的な問題である。一度は演習した経験があるであろう。
(2)<4分>2つの平面で切り取った立体の体積を求める問題である。2回平面で切り取る作業の結果をイメージし、求める体積を単純な考えで導き出せるように様々な角度から立体をながめること。
(3)<6分>3つの平面で切り取った立体の体積を求める問題である。3回切り取ることになるが、切り取り面の交点について何がいえるのかを考える。
攻略のポイント
全体的には、難問の類の設問はない。一度は演習したことのある問題ばかりである。難関校用の受験数学問題集を丹念に、仕上げた受験生にとっては75%の得点は可能であろう。標準問題であるゆえに、少しのミスも命取りになってしまう。単純な計算ミスや「勘違い」をなくすような日頃の学習態度が重要である。特に、計算問題(式の値、方程式、平方根)、関数(1次・2次関数)、確率、平面図形(円に関する定理、三平方の定理)、空間図形(平面図形の定理の応用)などの分野は、徹底的に演習しておいてほしい。また、新傾向として、数の性質と確率の融合問題、統計などは今後も出題される可能性は極めて高いのでしっかり押さえておこう。