慶應義塾志木高等学校 入試対策
2022年度「慶應義塾志木高等学校の数学」
攻略のための学習方法
難関校の数学の入試問題において、如何にしたら合格点を取れるのかについて考えてみたいと思います。
そもそも、なぜ「数学」を学習しなければならないのでしょうか。数学が大嫌いで「世の中から数学がなくなればよい」と心底思っている受験生もいるのではないでしょうか。そのような受験生は、方程式の応用問題や、放物線などの関数に関する問題が解けたからといって「自分の生活の一体何が変わるのか」と素朴な疑問を抱いているかもしれません。社会人になって世の中には数学のように、スッキリ答えの求められない問題もあるということを初めて自覚する場合もあるでしょう。むしろ、そのような問題のほうが多いかもしれません。また、答えが複数ある場合もあるでしょう。
そのような状況の中で、改めて考えてみたいと思います。なぜ「数学」を学習しなければならないのでしょうか。それに対する明確な答えは一つではありません。ただ、一つだけ理解しておいてほしいのは、数学の醍醐味は「物事を論理的に考え結論を導くことの楽しさ」であり「論理的な思考の道筋を整えること」であると思います。
そのような数学の醍醐味を習得するために、「何をどのように」行えばよいのでしょうか。具体的は「自分の頭で考え抜く」ということです。数学の問題を解いている過程で、考えに行き詰まるとどうしても「解答・解説」を見てしまいたい誘惑に負けてしまいます。そのような誘惑をグッと堪えて、たとえ正解でなくとも「自分の答え」を導くことである。その際に、安易に公式等を利用するのではなく(もちろん、数学的思考基盤がしっかりした後は公式も活用し解答時間の短縮を図ることも可)、与えられた条件の中で「何が言えて」「何が言えないのか」を明確にしたうえで、式を考え論理的に思考を巡らして結論に至るという作業が大切である。そのような作業こそが「公式」を導くプロセスなのであり、そのようなプロセスを習得することで、根本的な「数学的思考力」が身につくのです。そのような「思考力」を体得することで、多少目先を変えられたり解法の切り口に変化が与えられても自在に対応が可能になるのです。
いずれにしても重要なことは、柔軟な発想力と論理的な思考力を培うことです。そのためにも、標準以上の問題に対しじっくり考え、安易に妥協せずに最後まで問題を自分の頭で考えぬくことです。そのような作業の繰り返しの中で、真の数学力が養成され磨き抜かれて行くことを忘れないでもらいたいと思います。
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2022年度「慶應義塾志木高等学校の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、小問集合問題<5分>。
2次方程式(解の公式と三平方の定理融合問題)、数の性質の問題である。
大問2は、関数(1次関数と2次関数融合問題)に関する問題<14分>。
内容としては頻出問題である。座標平面上に等積変形などの平面図形の基本的原理をあてはめる。
大問3は、平面図形(円と直線)に関する問題<13分>。
三平方の定理、相似などの概念を応用する。
大問4は、場合の数に関する問題<11分>。
立方体の各面を色で塗り分ける場合の数の問題である。
大問5は、2次方程式に関する文章題の問題<6分>。
何をxとするか、また求める数値ではないものを文字を使って立式することがポイントである。
大問6は、空間図形(正八面体)に関する問題<7分>。
立体を2等分する平面の切口の面積を求める問題である。
大問7は、作図に関する問題<4分>。
直線上にない同じ側にある2点と直線上の1点を結んだときの最短距離の考え方がベースになっている。
【大問1】小問集合問題
- 時間配分:5分
(1)解を利用した2次方程式の問題<2分>。
与えられた2次方程式は因数分解でき、求めた解に関して問題の条件を満たすことを前提に三平方の定理を用いる。機械的に公式にあてはめるだけではなく、条件(明示されていない条件:隠れた条件)に注意する。
(2)数の性質に関する問題<3分>。
自然数でありかつ素数であるx、y、zについて、z=80×2+2xy-y2を満たす(x、y、z)の組を考える。自然数、素数の性質を考えて与式を変形すること。
【大問2】関数(1次関数と2次関数)に関する問題
- 時間配分:14分
(1)条件を満たす点の座標と四角形の面積を求める問題<4分>。
本問のような問題を的確に解くコツは、グラフの概形を描き与えられた条件を書き込み導き出せる「事実」を考える。平面座標上に平行な直線の関係より等積変形の考え方をあてはめ、四角形APBQの面積を求める。
(2)点C(3,0)を通る直線で四角形の面積を2等分する直線の式を求める問題<10分>。
等積変形の考え方、また正方形・長方形・平行四辺形・ひし形などの四角形の面積を2等分する直線とは各四角形の対角線の交点を通る直線であることを利用しよう。
【大問3】平面図形(円と直線)に関する問題
- 時間配分:13分
(1)辺の長さを求める問題<8分>。
与えられた条件より図形の中で三平方の定理、相似の考え方を的確にあてはめることができるようにすること。
(2)辺の長さを求める問題である<5分>。
△QOQ’∽△ROBを利用する。また、合同または相似な三角形の組を見つけだし、対応する辺の比からxの値を求める。
【大問4】場合の数に関する問題
- 時間配分:11分
(1)立方体の6面を6色で塗り分ける場合の数を求める問題<3分>。
すでに演習済みの受験生も多いのではないであろうか。初めに、どこかの面(例えば上の面)の色を確定し、その対面(平行な面)も違った色で確定する。残った4面を4色で塗り分ける場合の数を考えるのが基本となる。
(2)立方体の6面を5色で塗り分ける場合の数を求める問題<4分>。
ただし、隣り合う面は異なる色で塗らなければならないので、立方体という立体の特性から同じ色は向かい合う面(平行な関係にある面)になる。
(3)立方体の6面を5色で塗り分ける場合の数を求める問題<4分>。
ただし、隣り合う面は異なる色で塗らなければならない、という条件はない。したがって、(2)の場合の数に、隣り合う2つの面が同じ色になる場合の数を加えて答えを求める。
【大問5】2次方程式の文章題に関する問題
- 時間配分:6分
(1)売買における販売額の値上げ率を求める問題<2分>。
値上げ前価格=a円/1g、販売量=bg、求める値上げ率=x%とする。価格を20%値上げしたときに販売量(b)はどのように変化するかを初めに考える。次に、20%値上げしたときの販売額を考えると正解が求められる。
(2)価格を求める問題<4分>。
(1)と同様に、a、b、xを定めて題意にある条件(販売額の増減がなかった)を踏まえて立式する。式の途中でa、bは消去される。
【大問6】空間図形(正八面体)に関する問題
- 時間配分:7分
(1)面積を求める問題<3分>。
求める平面は、AD、AE、BE、BF、CF、CDの各中点を結んだ平面(正六角形)になる。また、各辺の中点を結ぶと中点連結定理より求めた平面である正六角形の辺の長さが求められる。正六角形は6つの正三角形が合体していることを利用する。1つの正三角形の面積は容易に求められるであろう。
(2)面積を求める問題<4分>。
AB上の点P、AC上の点QをAP:PB=AQ:QC=2:1とするときに、線分PQを含む平面で立体の体積を2等分する平面の切口の面積を求める問題である。求める平面は正方形BCDEの対角線の交点(Oとする)を通り、△ABCの対面△PEDはOに関して対称な位置関係にあることをヒントに考えをまとめる。さらに、図形の中に辺の比が1:2:√3 の直角三角形を探し出し三平方の定理をあてはめよう。
【大問7】作図(平面図形)に関する問題
- 時間配分:4分
攻略のポイント
全体的には、難問の類の設問はない。一度は演習したことのある問題ばかりである。難関校用の受験数学問題集を丹念に、仕上げた受験生にとっては75%の得点は可能であろう。標準問題であるゆえに、少しのミスも命取りになってしまう。単純な計算ミスや「勘違い」をなくすような日頃の学習態度が重要である。
特に、計算問題(式の値、方程式、平方根)、関数(1次・2次関数)、確率、平面図形(円に関する定理、三平方の定理)、空間図形(平面図形の定理の応用)などの分野は、徹底的に演習しておいてほしい。また、新傾向として、数の性質と確率の融合問題、統計などは今後も出題される可能性は極めて高いのでしっかり押さえておこう。