慶應義塾高等学校 入試対策
2017年度「慶應義塾高等学校の国語」
攻略のための学習方法
出題されているような論理的な文章を短時間内に理解する読解力を身につけるためには、日頃から物事を自分の頭で考える習慣が不可欠である。
自分の頭で考えるということは、ある事象に対する判断の基準を「その場で思いついたひらめき」や「自分の好き嫌い」に求めるのではなく、自分が導く結論に対して「説得力ある論理展開」を行っているかどうかの要素が不可欠である。
それでは「説得力」とは何か。一言でいうならば、誰が聞いても「納得できる」ということである。
ある主張に対して自分の結論は、「賛成」でも「反対」で構わない。大事なことは結論がどうであれ、その結論に至る「論理プロセス」の成熟度である。
このようなスキルは、試験の2週間前位に一夜漬け的に知識を詰め込んでも、合格点には届かないだろう。
まずは自分の頭で考える。そして、次の段階では「頭で考えたこと」を「自分の言葉で書き出す」訓練である。人間は、頭で考えたことが100だとすると、それが発言すると10になり、文章で表現するとわずか1になってしまうと言われている。
それだけ、自分の考えを言葉として文章表現することの難しさを端的に表しているのだろう。
各出版社が発行している新書を読むのも論理的文章に親しむには効果的である。
大きく分類すれば、自然科学系、社会科学系と分れるが、どの分野の新書を読むかは、基本的には「自分の好み」に基づいて選択すればいいだろう。ただ、文字だけを表面上で読むのではなく、じっくり筆者の論理展開を辿っていく姿勢が大事である。余裕があれば、要旨を紙に書き出してみるということも効果的である。
そのように、自分の考えをまとめあげる作業を行えば、必ず自身の論理的思考力を着実に高めてゆくことが可能となるだろう。
慶應義塾高校入試問題では、かなりの割合で知識問題が出題される。漢字の書き取り・読み、国文法(動詞の活用形、助詞)、文学史などである。
現古融合問題の場合は、古文に対する現代評論文が出題される。
古典文法の知識は欠かせないのは言うまでもないが、その古典作品に関する現代評論を読み解く力は現代文の読解力である。
特に、現代文、現古融合の問題で扱っている話題が、言語論や芸術論の場合には性質上書かれている内容が抽象的にならざるを得ない。そのような抽象的文章を読み慣れていないと、試験当日に初見でそのような文章を読み解くことは不可能であろう。
ただし、そのような文章でも攻略するための手掛かりは必ずあるものである。
例えば「キーワード」。何度も繰り返されている単語や表現があるかどうか。そのような単語があればチェックを入れ、本文全体の流れの中でその「キーワード」がどのような役割を担って使用されているかを考察すれば、論理の組み立てを正確に把握することができる。
また「接続詞」も大事である。接続詞を丁寧に辿ることにより、段落ごとの筆者の主張の流れの概略を理解することができる。
いずれにしても、論理性の高い文章の内容把握を正確に行うために、日頃から「自分の頭で考える」ことを念頭に置き、考えたことを「文章にまとめてみる」という学習習慣を身につけて欲しい。
そのような作業を通じて、自分の理解力と表現力のレベルが認識できるものである。
志望校への最短距離を
プロ家庭教師相談
2017年度「慶應義塾高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、自然に関する論説文の読解問題である<28分>。出典は、高橋敬一著『「自然との共生」というウソ』である。語句、接続詞、漢字、内容把握などの典型的出題、要旨をまとめる練習もしっかり行っておくこと。
大問2は、自伝的分野の随筆読解問題である<22分>。語句や記述問題の主題形式である。記述式問題の割合が高いので自分の頭で考える訓練を積んでおくこと。
大問3は、古典和歌(五首)を季語を手掛かりに季節ごとに並び替える問題である。古典の知識(季語)をしっかり押さえておくこと。
【大問1】芸術・文学に関する論説文
- 時間配分:28分
自然科学分野に関する論説文の読解問題である<28分>。
出典は『「自然との共生」のウソ』(高橋敬一著)。里山の話題を手掛かりに、里山保全運動と「自然との共生」との関連性から真の自然保護とは何かを考察する。日頃から、新聞やテレビを参考に様々な事象に注意を払い、問題意識を深めていくこと。
問1は、語句に関する問題<1分>。
「~でしかない」という意味の言葉を考える。
問2は、語句に関する問題である<2分>。
ダメになってしまった状態を表す表現、「なれのはて」である。
問3は、内容把握に関する問題である<2分>。
原風景とはどのようなものなのかを本文の内容から理解すること。
問4は、表現に関する問題である<2分>。
原風景は、まさに個人的であり個別具体的なものである。
問5は、文章解釈に関する問題である<2分>。
「遷移」とは本文に従えば、「人間の手を離れ」て「自然の歩み」を始めることである。
問6は、語句に関する問題である<3分>。
「錦の御旗」とは、朝廷軍の旗のことであり朝廷に敵対する勢力を制圧するために天皇から与えられたものである。そのような背景より、自己の主張に「権威付けを行うもの」という意味がある。
問7は、文章内容に関する問題である<3分>。
これまでの「伝統」とは、「過去に体験」しており「今も続けようとしている」ものであり、「伝統を守る」ということは「自分の生存を守る」ということであった。これと今の若い人たちにとっての「伝統」とは何かを本文からしっかり読み取ること。
問8は、文章内容に関する問題<4分>。
山里はかつて「生活基盤」としての「役割」を果たしていたのであり、山里を復活させたければ我々が手に入れた「快適な生活」を手放さなければならないのである。
問9は、文章内容正誤把握問題である<5分>。
1.山里とはどのようなものであるのか。
3.「追跡調査」を行うべきとは書かれていない。
4.「自然保護」も最終的には「自分保護」である。
5.原風景とはきわめて「個人的」なものであり、「万人に通じるスタンダード」ではないのである。
問10は、漢字に関する問題である<4分>。
本文の前後の脈絡を踏まえて、知識が曖昧な漢字は確実に類推しなければならない。紛らわしい漢字はあるものの、完答を目指したい。
【大問2】自然科学分野(科学)に関する論説文読解問題
- 時間配分:22分
自伝的分野に関する随筆文読解問題である<22分>。
出典は、『留学生と見た日本語』(佐々木瑞枝著)。
問1は、表現に関する問題である<4分>。
a.外国人が日本映画を見る場合の気持ちは、どのようなものであるかを考える。
b.映画が始まって我々がどのような存在であると気が付いたか。
d.自分にとって聞き取りにくいということは、言うまでもなく留学生にとって苛立ってしまう。
問2は、語句に関する問題である<2分>。
f.「食い入るような状態」である。
g.物事を一番初めに行うことを「口火を切る」と表現する。
問3は、敬語に関する問題である<4分>。
「いただく」は「食べる」の謙譲語である。敬語に関する基本的知識と事項をしっかり押さえておくこと。
問4は、内容記述問題である<6分>。
「それ」とは何かを考えれば、登場人物の「階級」であり、それによって使用する日本語に違いが生じるということである。
問5は、内容把握問題である<6分>。
日本人が特に気にしない点を留学生が注目していたのである。そのような留学生の物の見方が「全く違った角度」ということになる。
【大問3】
- 時間配分:10分
季語を踏まえて5首の和歌を季節ごとに順番に並び替える問題である。
ⅰ.蝉は夏、白雪は冬、梅の花の匂いは早春、山吹の花が散って蛙が鳴くのは晩秋、木の葉が錦を織るとは秋のこと。
ⅱ.蘆の枯葉は秋、蛍は夏、岩つつじは晩春、桜は春、梅の花は早春である。
ⅲ.藤の花は晩春、山桜は春、彦星は秋、きりぎりすが弱るのは晩秋、朽葉に雪が積もるのは冬である。
攻略ポイント
出題されている文章を正確かつ迅速に「読み込む力」がないと、正解にたどり着くことが難しいであろう。さらに、試験時間と問題数と内容密度の濃さを考えると、見直す時間的余裕はないものと思ってもらいたい。
したがって、合格するためには極めて高い読解力と解答力(特に、記述・論述能力)が必要となる。
50字以内の記述問題が2題出題されている。50字という字数で自分の考えをまとめるという作業は、高度な文章要約力が求められる。
そのためには、論理的な文章の文脈を常に自分の頭で追いながら、論点は何か、筆者の主張の展開はどうなっているのか、ということを最高度に意識することである。
そして、自分の頭で考えたことを次の段階で、文章に表現してみることである。