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慶應義塾高等学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2021年度「慶應義塾高等学校の国語」
攻略のための学習方法

出題されているような論理的な文章を短時間内に理解する読解力を身につけるためには、日頃から物事を自分の頭で考える習慣が不可欠である。自分の頭で考えるということは、ある事象に対する判断の基準を「その場で思いついたひらめき」や「自分の好き嫌い」に求めるのではなく、自分が導く結論に対して「説得力ある論理展開」を行っているかどうかの要素が不可欠である。
それでは「説得力」とは何か。一言でいうならば、誰が聞いても「納得できる」ということである。ある主張に対して自分の結論は、「賛成」でも「反対」で構わない。大事なことは結論がどうであれ、その結論に至る「論理プロセス」の成熟度である。このようなスキルは、試験の2週間前位に一夜漬け的に知識を詰め込んでも、合格点には届かないだろう。まずは自分の頭で考える。そして、次の段階では「頭で考えたこと」を「自分の言葉で書き出す」訓練である。人間は、頭で考えたことが100だとすると、それが発言すると10になり、文章で表現するとわずか1になってしまうと言われている。それだけ、自分の考えを言葉として文章表現することの難しさを端的に表しているのだろう。
各出版社が発行している新書を読むのも論理的文章に親しむには効果的である。大きく分類すれば、自然科学系、社会科学系と分れるが、どの分野の新書を読むかは、基本的には「自分の好み」に基づいて選択すればいいだろう。ただ、文字だけを表面上で読むのではなく、じっくり筆者の論理展開を辿っていく姿勢が大事である。余裕があれば、要旨を紙に書き出してみるということも効果的である。そのように、自分の考えをまとめあげる作業を行えば、必ず自身の論理的思考力を着実に高めてゆくことが可能となるだろう。
慶應義塾高校入試問題では、かなりの割合で知識問題が出題される。漢字の書き取り・読み、国文法(動詞の活用形、助詞)、文学史などである。現古融合問題の場合は、古文に対する現代評論文が出題される。古典文法の知識は欠かせないのは言うまでもないが、その古典作品に関する現代評論を読み解く力は現代文の読解力である。特に、現代文、現古融合の問題で扱っている話題が、言語論や芸術論の場合には性質上書かれている内容が抽象的にならざるを得ない。そのような抽象的文章を読み慣れていないと、試験当日に初見でそのような文章を読み解くことは不可能であろう。ただし、そのような文章でも攻略するための手掛かりは必ずあるものである。例えば「キーワード」。何度も繰り返されている単語や表現があるかどうか。そのような単語があればチェックを入れ、本文全体の流れの中でその「キーワード」がどのような役割を担って使用されているかを考察すれば、論理の組み立てを正確に把握することができる。また「接続詞」も大事である。接続詞を丁寧に辿ることにより、段落ごとの筆者の主張の流れの概略を理解することができる。いずれにしても、論理性の高い文章の内容把握を正確に行うために、日頃から「自分の頭で考える」ことを念頭に置き、考えたことを「文章にまとめてみる」という学習習慣を身につけて欲しい。そのような作業を通じて、自分の理解力と表現力のレベルが認識できるものである。

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2021年度「慶應義塾高等学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

【大問1】は、科学に関する論説文の読解問題<33分>。内容把握問題や記述問題(30字・50字程度)、漢字書取り(5題)などが出題されている。正確な文章読解力・的確な記述力が求められる。
【大問2】は、生活に関する随筆文の読解問題<27分>。内容把握、文法問題、漢字書取り(5題)・文学史・現代仮名遣いなどの知識問題も配点が高いので確実に正解できるようにしっかり覚えるように。

【大問1】科学に関する自然科学的分野からの論説文の読解問題

  • 時間配分:33分

現代社会における科学と社会との関わり方を論じた論説文。科学者における倫理規範についても言及している。

問1は、文章内容把握記述問題である<4分>。「経済一辺倒」である現代社会にあって「役に立つ科学」と認識されているが、「文化のみに寄与する営みを取り戻す」にどのようにすればよいのか、また「今必要」なことは「『文化としての科学』を広く市民に伝えること」であり「科学の楽しみを市民と」共有することである。
問2は、内容把握抜出問題である<2分>。第3段落目「それでいいのか…」で始まる中に、「『(科学は)無用の用』にすらならない無駄も多いだろう」とある。
問3は、内容把握抜出問題である<2分>。「原初的な科学」とは「世の中に役立とうというような野心を捨て、自然と戯れながら自然の偉大さを学んでいく科学」のことである。
問4は、内容把握抜出問題である<2分>。「見返り」とは利益のことであるので、「大きな利益」または「社会的利得」である。
問5は、内容把握抜出問題である<2分>。「社会の要求」に応える科学でなければならない。つまり「役に立つ科学」である。
問6は、内容把握記述問題である<2分>。科学の行為は「科学者という人間の営み」なので、「そこには数多くのエピソードがある」のである。
問7は、内容把握抜出問題である<2分>。科学が「文化としての科学」として発展し豊かになっていくためには「物語」が必要であり、「『物語』を貫く一つの芯」が必要である。
問8は、内容把握問題である<2分>。「扇動」と同音異義語を考えよう。先頭に立って導くことを「先導」という。
問9は、内容把握記述問題である<5分>。「そのような行動」とは「『安全神話』を生み出す原因の一つにもなった」こうどうであり、その内容は「原子力ムラの人々は原発の良さばかりを喧伝」したのである。
問10は、文章内容記述問題である<5分>。「事前の警告を与えることは科学者のなし得る社会への大きな貢献」である。「事前の警告を与える」ということは何かを考える。
問11は、適文選択問題である<2分>。5は、「いかなる人間も正確な情報を得る」ために「科学者」は何をしなければならないかを考える。7は、科学者が従わなければならないことは「真実」である。
問12は、適語選択問題である<1分>。「情報の隠蔽や虚偽は科学者の倫理」に背く行為である。背くことを「もとる」という。
問13は、漢字の書き取り問題である<2分>。標準的な漢字である。「ぎゅうじる」=「牛耳る」も書けるようにしておこう。

【大問2】生活に関する随筆文の読解問題

  • 時間配分:27分

出典は、泉鏡花著『鏡花随筆集』。
問1は、漢字の書き取り問題である<2分>。標準的漢字であるので完答を目指したい。
問2は、漢字の読みに関する問題である<2分>。すべて標準レベルではあるが「数珠」=「じゅず」も読めるようにしておこう。
問3は、語句問題である<2分>。茸の季節を問う問題である。「茸」は秋の季語でもある。
問4は、語句解釈選択問題である<3分>。語句の意味を問う問題であるが、例えば「蜘蛛手」とは蜘蛛の巣が八方に広がっている(放射状)のことである。
問5は、文章内容把握問題である<2分>。「書院づくりの一座敷」という個所より判断する。
問6は、文章内容把握記述問題である<2分>。直後に「ちりぬるをわかンなれ」とあることを手掛かりにする。
問7は、文法問題である<3分>。「退治する」という動詞について活用変化を考える。
問8は、古典知識問題である<1分>。「加賀藩」が今のどの都道府県に該当するかを問う問題。「石川県」である。
問9は、内容把握記述問題である<3分>。「鉄心」とは「鉄のように強い心」という意味である。「鉄心」の持ち主は誰かを考える。
問10は、慣用句に関する問題である<2分>。本文における「仇」の適切な読みを問う問題である。この場合は「あだ」が正解。
問11は、古典文法に関する問題である<2分>。「などか」は後ろに打消しの語を伴って反語表現を形成する。
問12は、慣用句に関する問題である<2分>。元気がよくて勢いがある様子を表わす慣用句である。「気を吐く」という言葉を覚えておこう。
問13は、文学史に関する問題である<1分>。消去法で考えても正解を選択できる。「高野聖」である。

攻略のポイント

出題されている文章を正確かつ迅速に「読み込む力」がないと、正解にたどり着くことが難しいであろう。さらに、試験時間と問題数と内容密度の濃さを考えると、見直す時間的余裕はないものと思ってもらいたい。したがって、合格するためには極めて高い読解力と解答力(特に、記述・論述能力)が必要となる。50字前後と30字以内の記述問題が出題されている。30~50字という字数で自分の考えをまとめるという作業は、高度な文章要約力が求められる。そのためには、論理的な文章の文脈を常に自分の頭で追いながら、論点は何か、筆者の主張の展開はどうなっているのか、ということを最高度に意識することである。そして、自分の頭で考えたことを次の段階で、文章に表現してみることである。頭で考えたことのたった1%しか文章として表現できないと言われている。常日頃、文章を書く習慣を身につけ論理の整った文章作成力を習得して欲しい。

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