慶應義塾高等学校 入試対策
2023年度「慶應義塾高等学校の国語」
攻略のための学習方法
出題されているような論理的な文章を短時間内に理解する読解力を身につけるためには、日頃から物事を自分の頭で考える習慣が不可欠である。自分の頭で考えるということは、ある事象に対する判断の基準を「その場で思いついたひらめき」や「自分の好き嫌い」に求めるのではなく、自分が導く結論に対して「説得力ある論理展開」を行っているかどうかの要素が不可欠である。
それでは「説得力」とは何か。一言でいうならば、誰が聞いても「納得できる」ということである。ある主張に対して自分の結論は、「賛成」でも「反対」でも構わない。大事なことは結論がどうであれ、その結論に至る「論理プロセス」の成熟度である。
このようなスキルは、試験の2週間前位に一夜漬け的に知識を詰め込んでも、合格点には届かないだろう。まずは自分の頭で考える。そして、次の段階では「頭で考えたこと」を「自分の言葉で書き出す」訓練である。
人間は、頭で考えたことが100だとすると、それが発言すると10になり、文章で表現するとわずか1になってしまうと言われている。それだけ、自分の考えを言葉として文章表現することの難しさを端的に表しているのだろう。
各出版社が発行している新書を読むのも論理的文章に親しむには効果的である。大きく分類すれば、自然科学系、社会科学系と分れるが、どの分野の新書を読むかは、基本的には「自分の好み」に基づいて選択すればいいだろう。ただ、文字だけを表面上で読むのではなく、じっくり筆者の論理展開を辿っていく姿勢が大事である。余裕があれば、要旨を紙に書き出してみるということも効果的である。
そのように、自分の考えをまとめあげる作業を行えば、必ず自身の論理的思考力を着実に高めてゆくことが可能となるだろう。
慶應義塾高校入試問題では、かなりの割合で知識問題が出題される。漢字の書き取り・読み、国文法(動詞の活用形、助詞)、文学史などである。現古融合問題の場合は、古文に対する現代評論文が出題される。古典文法の知識は欠かせないのは言うまでもないが、その古典作品に関する現代評論を読み解く力は現代文の読解力である。特に、現代文、現古融合の問題で扱っている話題が、言語論や芸術論の場合には性質上書かれている内容が抽象的にならざるを得ない。そのような抽象的文章を読み慣れていないと、試験当日に初見でそのような文章を読み解くことは不可能であろう。
ただし、そのような文章でも攻略するための手掛かりは必ずあるものである。例えば「キーワード」。何度も繰り返されている単語や表現があるかどうか。そのような単語があればチェックを入れ、本文全体の流れの中でその「キーワード」がどのような役割を担って使用されているかを考察すれば、論理の組み立てを正確に把握することができる。
また「接続詞」も大事である。接続詞を丁寧に辿ることにより、段落ごとの筆者の主張の流れの概略を理解することができる。
いずれにしても、論理性の高い文章の内容把握を正確に行うために、日頃から「自分の頭で考える」ことを念頭に置き、考えたことを「文章にまとめてみる」という学習習慣を身につけて欲しい。そのような作業を通じて、自分の理解力と表現力のレベルが認識できるものである。
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2023年度「慶應義塾高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、日本人に関する随筆文の読解問題<29分>。
内容把握問題や記述問題(20~40字)、漢字書取り(5題)が出題されている。正確な文章読解力・的確な記述力が求められる。
大問2は、日本語に関する説明文の読解問題<31分>。
内容把握、文法問題、漢字書取り(5題)・慣用句などの知識問題も配点が高いので確実に正解できるようにしっかり覚えるように。
【大問1】日本人に関する文化人類学的分野からの随筆文の読解問題
- 時間配分:29分
出典は、司馬遼太郎著『峠』。
問1は、内容把握問題である<2分>。
【A】「人間を興奮させ、それを目標へ駆り立てるエネルギー」とは「物欲、名誉欲」である、「形而下的」なものである。
【B】「幕末になると」「武士階級は…形而上的思考法が発達」したのである。
【C】「幕末になると」「…人物たち」は「形而上的思考法が肉体化」しているのである。
問2は、内容把握抜き出し問題である<5分>。
形而上的思考法の対極にある概念は、「物欲、名誉欲」である。「人はどう行動すれば美しいか」と「人はどう思考し行動すれば公益のためになるか」の2つである。
問3は、内容把握記述問題である<4分>。
幕末期に完成した武士という「人間像」について考える。「その結晶のみごとさ」とは「形而上的思考」のことであり、かつ「この種の人間(幕末の武士)」は、「私的な野望」や「個人的物欲」が全くないのである。
問4は、内容把握抜き出し問題である<4分>。
「個人的物欲」を肯定するからである。
問5は、古典知識問題である<1分>。
「越後」が現在の「新潟」のことである。
問6は、文学史問題である<2分>。
『武士道』の著者は「新渡戸稲造」である。
問7は、内容把握記述問題である<4分>。
「松蔵の怖れ」とは、旦那さま(継之助)から「(継之助の)骨のひろい方が足りないで、…おれの骨が一本足りぬ」と叱られる「怖れ」のことである。「骨が一本足りぬ」とはどのようなことを表現しているのかを考える。
問8は、内容把握記述問題である<5分>。
本文に「お母さまは女の身ゆえとやかく言われるかもしれませんが、このことお父さんに頼み参らせます」とある。
問9は、漢字の書き取り問題である<2分>。
「処理」・「教養」・「求道」・「保」・「接近」である。
【大問2】日本語に関する言語的分野の説明文読解問題
- 時間配分:31分
出典は、斎賀秀夫著『敬語の使い方』。
問1は、漢字の書き取り問題である<3分>。
「視界」、「印象」、「俳優」、「薬指」、「経験」。標準的漢字であるので完答を目指したい。
問2は、語句問題である<3分>。
A「面くらう」とは「あわてふためく」ことである。
B「シャクシ定規」とは「融通のきかないさま」のことである。
C「冗長」とは「長たらしく無駄が多いさま」のことである。
問3は、語句選択問題である<3分>。
【1】 常体の「だ」は、無礼な感じを与える。
【2】 常体の「である」は、少し堅苦しい感じを与える。
【3】 敬体の「であります」は、堅苦しくかしこまった感じを与える。
【4】 敬体の「でございます」は、丁寧な感じを与える。
問4は、文学史問題である<1分>。
日本最古の作品を選択する問題であるが『枕草子』である。『枕草子』は平安時代の随筆である。
問5は、内容把握問題である<4分>。
1「である」は常体である。
2「迎えました」「受けます」は敬体である。
3ところどころ「受ける」「食べる」と常体が混じっている。
4「ドラマでした」は敬体である。
5途中から常体に変化する。
6常体が表れた。
7元の敬体に戻すべきである。
8敬体に戻すことなく、最後まで常体で書いている。
9文章は敬体で始まっている。
10途中で常体になり、最後まで変わることなく常体で終わっている。
問6は、内容把握問題である<4分>。
「敬体文の中に…常体をまじえる」ことにより、「文章全体に張りを持たせ、快いテンポを生み出すこと」になる。
問7は、内容把握問題である<2分>。
X常体にするので「募集する」となる。
Y統括されるのである。
Z従属する地位にある。
問8は、歴史的仮名遣い問題である<3分>。
Ⅰ「おり」は「をり」である。
Ⅱ「いる」は「ゐる」である。
Ⅲ「やうやう」は「ようやく」である。
Ⅳ「ませう」は「ましょう」である。
問9は、内容把握抜き出し問題である<4分>。
「常体文の部分と、他の敬体文の部分とを見比べると、決して同じ次元では読者に対していない」のである。つまり「敬体文のところは、直接読者にはたらきかけているが、常体文は間接的」なのである。
問10は、内容把握記述問題である<4分>。
「書き終わったあとで一度でも読み返す用意」があれば「文体の混用」という「不統一」を発見できる。
攻略のポイント
出題されている文章を正確かつ迅速に「読み込む力」がないと、正解にたどり着くことが難しいであろう。さらに、試験時間と問題数と内容密度の濃さを考えると、見直す時間的余裕はないものと思ってもらいたい。したがって、合格するためには極めて高い読解力と解答力(特に、記述・論述能力)が必要となる。20~40字、25字以内の記述問題が出題されている。20~40字という字数で自分の考えをまとめるという作業には、高度な文章要約力が求められる。そのため、論理的な文章の文脈を常に自分の頭で追いながら、論点は何か、筆者の主張の展開はどうなっているのか、ということを最高度に意識することである。そして、自分の頭で考えたことを次の段階で、文章に表現してみることである。頭で考えたことのたった1%しか文章として表現できないと言われている。常日頃、文章を書く習慣を身につけ論理の整った文章作成力を習得して欲しい。