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慶應義塾高等学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2014年度「慶應義塾高等学校の数学」
攻略のための学習方法

基本的原理や定理などをしっかり理解することである。
つまり、公式や定理についてもできれば、一通り自分の力で証明しておくことを勧める。公式や定理はいうまでもなく『一つの考え方の結果』である。したがって、『結果』としての公式や定理を『道具』としてしか使うことができない場合、確かにスピーディーに正解を導くことは可能かもしれないが、それが本当の学力なのかを考えて欲しい。
受験生(特に慶應義塾高校を志望する受験生)には、『公式や定理』を導くプロセスにおける『考え方』を理解し、安易に『公式や定理』を暗記するという学習姿勢に陥らないようにしてもらいたい。とにかく自分の頭で『考えること』、そして『考え抜くこと』である。

今年度の慶應義塾高校の入試問題を個別にみてみよう。全体的に、極めて高いかつ正確な計算力が求められていることはすでに述べた。
特に、連立方程式、因数分解において、文字の置き換えによる計算式の簡略化を図ることが正解への近道である場合がある。この解法手法については連立方程式、式の展開、因数分解の問題演習においてしっかり事前準備を行うことである。しかも、入試問題全体を通じ、因数分解や展開の考え方を用いなければ徒に解答時間が長引いてしまう設問が多い。
そのためにも、最高レベルの計算問題(式の展開、因数分解、連立方程式、平方根)を日々演習する必要がある。場合によっては、高校数学Ⅰの問題集に掲載された式の展開および因数分解に関する問題(ただし、式の展開および因数分解の範囲は2次まで)を徹底的に行うことも必要になってくると思われる。

関数については1次関数、2次関数、そしてその融合問題は事前にしっかり練習を行っておくこと。放物線と直線の交点に関する問題、放物線上の異なる点を結んでできる図形に関する問題など、放物線と直線に関する問題は単に関数の分野に限らず、方程式、相似、回転体(立体)とその表面積・体積を問う求積問題など出題範囲は多岐にわたる。

慶應義塾高校の入試問題は難問というよりも標準問題が多く出題される。しかも、その解法にあたってはオーソドックスな思考で十分正解可能な問題ばかりである。したがって、少しのミスも許されず手際よく解答できなければいけない。
また、数学的思考を与えられた条件の下で適切にあてはめられるかどうかも求められる力である。今年度の大問3のダイヤグラムから1次関数の式を導き出し、設問内容に応じてその交点を求めるための連立方程式を立てられるかどうかもその一例であろう。大問5においても、解答を導く過程において因数分解の原理をあてはめ、さらに設問の条件から正解を得るために数学的気付きが思い浮かぶかどうかである。
また、数学的原理の理解度を問われる問題として、大問7(2)における『aを自然数とする』ことがどのような意味を持ち、そのことにより何が言えて、何が言えないのかをしっかり識別をすることができるかどうかは、『自然数』に対する原理的な部分での理解がキチンと出来ているかどうかにかかっている。また、大問6の歯車の問題も、解答へ向けどのようなアプローチが必要か戸惑った受験生も多かったのではないだろうか。結論から言えば、歯車Aの一回転が最終的に歯車Fの何回転になるのかについて関係式をうまく導き出せるかどうかを高校側は見ているのである。その関係式が導き出せれば、(2)はたちどころに正解が得られる。

入試問題がある意味で、入学してもらいたい生徒の特性を確認する手段であると捉えるならば、原理を根底から理解し自らの力で様々な事象にその原理をあてはめ、正解を導くことができるかどうかを確かめるには、平成26年度入試問題はよく考えられた良問揃いと言えるだろう。数学を得意とする受験生であれば85%、あまり得意でない受験生も65%は得点したい。

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2014年度「慶應義塾高等学校の数学」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問1は小問集合問題で、小問は全部で5題。全て標準問題であり、完答を目指したい。
大問2は、2次関数と1次関数の融合問題。(1)に少し戸惑うかもしれないが条件整理でクリアして欲しい。(1)が完答できれば(2)・(3)の完答は容易であろう。
大問3は、1次関数の決定の問題と交点の問題。
大問4は、三角錐に関連した問題である。4分で完答を目指したい。
大問5は、与えられた条件を利用して推論を立てて考察する。
大問6は歯車の回転に関する問題であるが回転数と歯数の関係を迅速に捉えること。
大問7は、回転体の体積を求める問題。正確でスピーディな計算力が必要。

【大問Ⅰ】小問集合問題

  • 時間配分:7分

(1)連立方程式。x+y=A、x−y=Bと置き換えて計算する。
(2)多角形の外角の和が360度であることを利用する。
(3)確立と方程式の融合問題。x=−1を代入し、a、b、cに関する等式を考える。
(4)因数分解。aに関する2次式とみてまとめる。
(5)三角形の外角と直角三角形の辺の比を利用する。

【大問Ⅱ】2次関数と1次関数の融合問題

  • 時間配分:3分

(1)は1次関数の直線の傾きの問題である。傾きが1であるという条件からa+b、c+dの値が求められる。解答時間は0.5分。
(2)線分ADの傾きはa+dでありこれをmとして線分BCの傾きが求められる。
(3)mの2次方程式を解き、mの条件(正数)であることより正解が求められる。

【大問Ⅲ】1次関数の決定の問題と交点の問題

  • 時間配分:9分

(1)グラフにおいて縦軸をy軸、横軸をx軸とする。さらに、x軸の1目盛りを20としB、Cに関する1次関数の式を求める。それに気が付けばxの変域も当然に気付く。
(2)はBとCの直線の交点を求めるため連立方程式を解く。解答時間は2分。(3)A、B、Cの1次関数の式にx=mを代入しyの座標を求め、条件に従ってmに関する方程式を解く。

【大問Ⅳ】三角錐に関連した問題

  • 時間配分:4分

(1)円錐の高さを求め、底面の半径、高さ、母線の間で成立する三平方の定理より母線の長さを求め、円錐を回転させた円の円周(母線×2が直径)を求める。解答時間は3分。
(2)底面積は容易に出る。円錐の側面積が母線×底面の半径×πを知っていれば簡単に正解が求められる。

【大問Ⅴ】与えられた条件を利用して推論を立てて考察する

  • 時間配分:12分

大問5は与えられた条件から論理を組み立て、因数分解の手法を用いて正解を求める。2乗の差に関する因数分解(和と差の積に因数分解)を利用する問題であるが、そこからいかにして正解への糸口を見つけるかがポイント。見通しをつけないといたずらに時間だけが過ぎてしまう。

【大問Ⅵ】歯車の回転に関する問題

  • 時間配分:9分

(1)歯車の回転数において、A、B、・・・、Fの関係と接しているPとQの関係を等式で考える。結果、Aの1回転がFの何回転に当たるかが判明する。回転数において、F=P=Qが成り立つことも手掛かりに問題にあたること。
(2)Aの回転数とF(=P=Q)の回転数に関する式を立てる。

【大問Ⅶ】回転体の体積を求める問題

  • 時間配分:10分

(1)回転体の求積問題。回転軸を変えて異なる立体に関する体積を求める問題だが、切り取られた正方形によってできた立体内部の空間をしっかりイメージできるかどうかが正答を導くことができるかどうかの分かれ目。手際の良い正確な計算力が必要。少しの計算ミスや正解へ向けた方針を見誤ってしまうと挽回するための時間的余裕はないはず。
(2)aの自然数条件とbに関する変域条件から正解を導き出す。

攻略ポイント

いわゆる難問の類の問題は出題されていない。初見の問題は極めて少ないであろう。標準的な問題演習をしっかり行うことである。
問題数に対して解答時間は少々タイトな感じがする。したがって、出題分野を問わず、問題を見て瞬間的に解答方針を決定し、式を立て計算をし始めなければならない。そのためには、発想の柔軟性と正確な計算力が不可欠である。
その上で、出題の意図は何なのか、つまり何をどのように問われているのかを理解できる数学的発想の土壌を豊かにすることである。
そのためには、標準から最高水準までの問題演習を中心に、正解へ至る効率良い解法に関する着眼点のつけ方、与えられた条件の活用法、効率の良い計算方法(いずれ約分を行い既約分数化しなければならないことを見通して計算をせずに積の形のままで考えを進める)について、自信がつくまで繰り返しひたむきに取り組むことが大切である。

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