慶應義塾高等学校 入試対策
2016年度「慶應義塾高等学校の数学」
攻略のための学習方法
基本的原理や定理などをしっかり理解することである。つまり、公式や定理についてもできれば、一通り自分の力で証明しておくことを勧める。
公式や定理はいうまでもなく『一つの考え方の結果』である。したがって、『結果』としての公式や定理を『道具』としてしか使うことができない場合、確かにスピーディーに正解を導くことは可能かもしれないが、それが本当の学力なのかを考えて欲しい。
受験生(特に慶應義塾高校を志望する受験生)には、『公式や定理』を導くプロセスにおける『考え方』を理解し、安易に『公式や定理』を暗記するという学習姿勢に陥らないようにしてもらいたい。とにかく自分の頭で『考えること』、そして『考え抜くこと』である。
さらに、極めて高いかつ正確な計算力が求められていることはすでに述べた。特に、連立方程式、因数分解において、文字の置き換えによる計算式の簡略化を図ることが正解への近道である場合がある。
この解法手法については連立方程式、式の展開、因数分解の問題演習においてしっかり事前準備を行うことである。しかも、入試問題全体を通じ、因数分解や展開の考え方を用いなければ徒に解答時間が長引いてしまう設問が多い。そのためにも、最高レベルの計算問題(式の展開、因数分解、連立方程式、平方根)を日々演習する必要がある。
場合によっては、高校数学Ⅰの問題集に掲載された式の展開および因数分解に関する問題(ただし、式の展開および因数分解の範囲は2次まで)を徹底的に行うことも必要になってくると思われる。
関数については1次関数、2次関数、そしてその融合問題は事前にしっかり練習を行っておくこと。
放物線と直線の交点に関する問題、放物線上の異なる点を結んでできる図形に関する問題など、放物線と直線に関する問題は単に関数の分野に限らず、方程式、相似、回転体(立体)とその表面積・体積を問う求積問題など出題範囲は多岐にわたる。
慶應義塾高校の入試問題は難問というよりも標準問題が多く出題される。しかも、その解法にあたってはオーソドックスな思考で十分正解可能な問題ばかりである。したがって、少しのミスも許されず手際よく解答できなければいけない。
また、論理的思考力を見る問題にも積極的に挑戦して貰いたい。高校数学では論証というジャンルであり、具体的には命題という内容である。一つの文章内容が反例(内容が間違っていることを示す例)もなく正しいかどうかを考える問題である。
受験生の「自分の頭で考え」そして「最後まで考え抜く」姿勢が大事であることは明白である。受験生の側においても根本的な設問の原理や仕組みを掘り下げて考えるという「骨太で逞しい地頭」というものを自分のものにするために、標準以上の問題を自分の頭でとことん考え抜くという練習に全力を注いでもらいたい。
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2016年度「慶應義塾高等学校の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は、小問集合問題<8分>。
全部で7題である。求められる力は「正確で迅速な計算力」と「正解へたどり着く着眼点」である。
大問2は関数に関する問題である<10分>。
大問3は関数に関する問題<10分>。
図形の面積について関数を用いて関係式を導き出す。
大問4は、確率の問題である<7分>。
求める関係式をいかに数量化するかがポイント。
大問5は、資料活用に関する問題である<5分>。
階級の階級値に関する知識はしっかり押さえておくこと。
大問6は、関数の問題である<7分>。
回転体の体積に関する問題であるが直線に関する概念は必要である。
大問7は、三角錐に関する空間図形の問題である<13分>。
平面図形における三平方の定理を空間図形に当てはめる。
【大問1】小問集合問題
- 時間配分:8分
(1)数の計算問題<1.5分>。
2乗の差が和と差の積である公式を用いて与式を簡略化する。
(2)2次方程式の問題<1.5分>。
置き換えを用いて与式を単純化する。
(3)数の性質問題<1分>。
一の位は7と3の累乗を考えていくと同じ数字の周期性から、それぞれ2016乗の一の位は容易に導き出せる。
(4)正多面体の問題<1分>。
正多面体において構成する平面図形の特性を理解して、求められる辺の数と頂点の数を求める。
(5)平面図形における角度と面積の問題<1分>。
△ABOが正三角形になることから∠AOB=60°であることから、円周角の定理を当てはめて解答を導く。
(6)式の計算に関する問題<1分>。
与式を展開した場合の求める項の係数を手際よく求めること。
(7)整数の性質に関する問題<1分>。
末尾に0が並ぶということは、5の倍数がどのくらいあるかを考えること。
【大問2】2次関数と1次関数の融合問題
- 時間配分:10分
(1)交点の座標を求める問題<1.5分>。
2点A、Dは2次放物線と直線の交点であるので連立方程式を解くと2次方程式の解になる。
(2)交点の座標に関する問題<1.5分>。
△ABDと△ACDは面積が等しいのでBC∥ADであることより問題を解いてゆく。
(3)三平方の定理を用いた長さの問題<3分>。
BCを斜辺とする直角三角形BECを作成し、三平方の定理を当てはめてBCの長さを求める。
(4)長さを求める問題<4分>。
△ABCの面積に着目する。△ABC=△FBC=△FBG+△FCGであることより正解を求める。
【大問3】関数と図形・運動に関する問題
- 時間配分:10分
(1)関係式の問題<4分>。
折り曲げて移動した点Oを点O´とすると、AP=O´P=OPであることを手掛かりに問題を解く。
(2)長さの問題<6分>。
(1)で導き出した解答を用いて考察する。
【大問4】確率の問題
- 時間配分:7分
(1)確率の問題である<3分>。
ある日がW日で次の日がC日となることをW⇒Cとあらわすとき、2月12日がC日で2月14日がW日となる場合は、C⇒W⇒W、C⇒C⇒Wの2通りあることから考えを進めていくこと。
(2)確率の問題である<4分>。
(1)の正解を利用して本問の確率を求める。
【大問5】資料活用の問題
- 時間配分:5分
人数合計が100人であることと各階級の階級値を求め、連立方程式を解いて正解を求める。
【大問6】図形の求積と関数の問題
- 時間配分:7分
平面図形に関し直線を回転軸として回転させた場合の回転体の体積を求める問題である。与えられた平面図形(正方形)にとらわれずに、直線で分断された図形を回転させて、どのような回転体が出来上がるかを始めにイメージしながら問題に取り組むこと。
【大問7】三角錐に関する空間図形の問題
- 時間配分:13分
(1)特別な三角形を利用した三角錐に関する問題<3分>。
三角錐ABCDの体積=△BCD×AK×1/3で求められる。また、△BCJの3辺の比を考えること。
(2)三平方の定理を利用した長さを求める問題<5分>。
△FLGにおいて三平方の定理を当てはめること。
(3)体積を求める問題<5分>。
三角錐ABCDを点E、F、G、Hで通る平面で切断したときの立体図形をイメージすること。
攻略ポイント
全体的には、難問奇問の類はない。極めて標準的なレベルの出題である。ただし、試験時間との関係で考えると見直しをする時間的余裕はないと考えた方がよい。
対策としては、正確な計算力と正解を得るための解法に対する見通しの良し悪しが重要なカギとなる。例えば、計算も展開公式を応用すれば解答時間を大幅に減らすことも可能になる。
大問1の(1)において(1-1/22)(1-1/32)(1-1/42)…(1-1/9992)=(1+1/2)(1-1/2)×(1+1/3)(1-1/3)×(1+1/4)(1-1/4)×(1+1/5)(1-1/5)×……×(1+1/999)(1-1/999)と変形する(乗法の展開公式である和と差の積は2乗の差を利用)ことにより、計算時間は短縮され結果の精度は飛躍的に高まる。
また、図形問題に関する基本的事項も必須である。特に、平面図形における各種定理(三平方の定理、中心角と円周角など)をしっかり自分のものにすることである。なぜならば、それらの定理は必ず立体図形にも応用できるからである。