慶應義塾女子高等学校 入試対策
2024年度「慶應義塾女子高等学校の英語」
攻略のための学習方法
慶應女子高校の英語入試問題を攻略するための勉強法について考えてみたい。レベル的には非常に高いので、以下の内容をしっかりと理解し日頃の受験勉強に役立ててほしい。
① 英検2級に匹敵する程度の英語力
合格に必要な英語力としては、最低でも英検準2級、できれば2級に匹敵するレベルが欲しいところではある。単語力・イディオム力はいうまでもなく文法事項としては、関係代名詞、仮定法、話法、比較、文型、準動詞は高校レベルの文法書で内容を確認してほしい。特に、文型については「子の英文は第何文型ですか」などのような問題は出題されないが、大事なことは文要素(SVOC)になり得る品詞は何か、つまり主語になり得る品詞は名詞・代名詞およびそれらに準ずる句・節である、という知識をしっかり理解することである。難解な英文において散見される「倒置構文」における語順である「S+V+修飾語句」を「修飾語句+V+S」になった場合に、文要素には該当しない「修飾語句」が単純に「V」の前にあるからと言って、主語になるという判断はおかしいという決定ができなければならない。そのためにも、文要素になり得る品詞に関する文型知識が必要である。
② 下線部訳における日本語訳出の工夫
下線部訳におけるポイントは、「日本語訳出上のこなれた日本語」の使い方における工夫である。いくつか具体例を挙げてみる。主語が人間などの生物以外の文章を「無生物主語」文章という。例えば、‘The experiment showed that ~ ’という英文において、「その実験は~をしめした」という訳を「その実験によれば~ということが明らかになった」という具合に、無生物である主語を「目的・手段」に変換させて訳出を行うことでより日本語らしい、つまり「分かり易い日本語」の訳になるのである。
また、‘some people did ~’という英文を「何人かの人々は~を行った」と訳しては‘some’のニュアンスを正確に反映していない訳になってしまう。‘some’は具体的な「数量」を表すものではないので、そのような英文については「~した人もいた」としなければならない。
③ 複数の意味を持つ英単語の根本的な意味
過去の大学入試問題にこのような問題が出題された。英文の内容としては、紀元前における氾濫を繰り返していたエジプトのナイル川に関する文章であった。氾濫によって毎年のようにその「流れ」が変化する状況について述べた後で、‘the natural line’の‘natural’に下線が引かれ5個ある選択肢のなかで同様の意味を有する単語を選ばせる問題が出題された。当然ながら当該文章における‘natural’に「自然な」という意味はあてはまらない。
設問全文をここに引用することはできないが、要旨としては、氾濫で流れが目まぐるしく変容するナイル川の‘natural’な流れについての設問である。そもそも‘natural’とは「人為的にいまだに手が付けられていない状態」のことを指しているのであるから、そこから「本来的な、根本の、原初の、最初の」というようなスタート時点での状況を指し示す意味を有するのである。したがって、上記入試問題における‘natural’の意味は、「氾濫を繰り返す前の元来のナイルの流れ」を指し示すものである。そのような理解ができれば、選ぶべき選択肢は‘original’となるのである。ちなみに‘natural’の名詞形である‘nature’は、手を付けていない原初の状態という意味で「本質、性質、元来」などの意味が出てくる。
慶應女子高校英語入試問題における単語の処理スキルにおけるポイントとして、英単語の持つ根本的意味をしっかり把握することが重要である。では、そのような英単語の根源的意味をどの様にして習得するのかといえば、そのような意味を集約的に掲載している参考書があるので、一度目を通しておくべきである。
④ 整序問題の攻略
いわゆる与えられた語の並び替えである。特に、注意しなければならないのが「倒置構文」である。通常の語順が倒置されることにより、本来、動詞の前に置かれるべきは主語であるが、「倒置」が行われる条件(本来後ろに置かれるべき修飾語句を強調したいがために前に置く)が行われた場合、通常の「S+V」が「V+S」に逆転することに慣れなければならない。そのためには、整序問題に特化した問題集もあるので、事前に十分練習してほしい。
⑤ 英作文作成上のポイント
通常の英作とは異なり、英語で質問されたことに対して英作するという出題形式である。英作を行う前に、正確に与えられた英語での質問内容を正確に理解することが不可欠な前提条件であるが、そのうえで英作を行う上でのポイントは「自分が知っている簡易な英語表現にどのようにして課題文を落とし込むこと」が的確に迅速にできるか否かである。採点は、基本的には減点主義である。したがって、知識が曖昧な英語構文やイディオムは使わずに、平易な英語表現・確実に覚えている英単語を使って英作を行う習慣をつけよう。
以上、最低限の留意点を記載したので、受験生の皆さんの日々の学習につけ加えて合格へ向けて頑張ってもらいたい。
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2024年度「慶應義塾女子高等学校の英語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】説明文の長文読解総合問題<8分>。
【大問2】説明文の長文読解総合問題<18分>。
【大問3】対話文の長文読解総合問題<11分>。
【大問4】説明文の総合読解問題<15分>。
【大問5】テーマを与えられた自由英作問題<8分>。
単語・イディオム・文法事項のどれをとっても高校レベル(中には大学受験レベルもあり)である。
さらに、英文読解の速度についても1分間に100単語を上回るスピードがないと問題の英文を読み切り、設問に取り組む時間が無くなってしまうだろう。
【大問1】洞窟に描かれた壁画に関する長文総合問題
- 時間配分:8分
問1.要約文完成問題<6分>。
本文の要約文に当てはまる単語を本文中より抜き出して答える問題である。本文の文脈をしっかり把握し要約文の該当箇所に的確にあてはめること。
問2.適文選択問題<2分>。
本文の内容を踏まえると空欄Aには「女性たちはなぜ洞窟にpaint(この場合は「~塗る」であり「手形を残す」という意味)したのであろう」となる。
【大問2】 説明文に関する長文読解総合問題
- 時間配分:18分
問1.適語補充問題<2分>。
①本文はas the cost of solar panels continues to ( ), they will become more popularであるので、( )には「より普及するための要因」があてはまるであろう。
②直後の文にa lot of other expensive will be neededとあることより判断する。
問2.指示語問題<2分>。
下線部のthereは、前文に場所が示されている。つまり、a world of clean energyである。
問3.適語選択問題(語形変化)<2分>。
(あ)この段落は地球上では雲などによって光が遮られるが、宇宙ではそのようなことはない、という趣旨の英文であるのでshines(三単現)にするのが適切である。
(い)solar panels は solar energy を地球に送る目的があるので、そのためにはまずsolar energy をcollectsしなければならない。
(う)文の流れから判断すると「太陽光発電所が必要である=建設する必要がある」という内容になるであろう。
問4.整序問題<3分>。
[A]直前の文を受けてThis is why ~「というわけで~だ」とつながる。… the large amount of space dust damage themをヒントに語順を考える。
[B]空欄Bの直前のItが何を指しているのかを考える。このItは直前にあるthe ISSのことであると考え、与えられた語群と併せて考えると「取り付けられた太陽パネルからISSは電力を受け取る」という英文にしたい。
問5.適語選択問題<2分>。
(ア)~(エ)の段落は太陽光パネルを宇宙に搬送する際の問題について論じている(One of the problems is how to transport all those solar panels into space)。パネルの大小に関する問題点を考える。
問6.適語補充問題<2分>。
Unless new and cheaper technology is found, this energy source might remainとあるので、「新しくて安価な技術が発見されないと」どうなるかを考える。
問7. 内容真偽問題<3分>。
① 太陽光を地球上で集めることは宇宙で集めるよりもより効率的ではない。
⑥ 宇宙に建設される太陽光発電を現実のものにするために、科学者たちはよりよい太陽光パネルの作り方を理解しなければならない。
⑧ アメリカ以外の国々も宇宙に建設される太陽光発電を自国のエネルギー需要の源として注目している。
問8.英問英答問題<2分>。
英問の内容は「カリフォルニア工科大学の科学者たちは、どのようにして無線でエネルギーを伝送したのか」という内容である。
【大問3】対話文に関する長文読解問題
- 時間配分:11分
問1.適文選択問題<3分>。
A 直後の英文にあるone of themが何を指しているのかを考える。
B 直後のMany rainforest plants were producing fruit at that timeが手掛かりである。
C 直後のThe jungle was too thick with plants so it was hard for them to move aroundが理由になっている。
問2.英問英答問題<3分>。
英問の内容は以下の通り。
1 次のうち本文についてどれが正しくないか。
2 次のうち子供たちが生き延びた理由でないものはどれか。
3 STOPに基づけば次のうちどれが行うべきではないか。
問3.内容把握問題<3分>。
本文の文脈に従って選択肢の順番を考える。初めはThey stayed next to the plane.である。
問4.英問英答問題<2分>。
英問の内容は以下の通り。
対話によると、子供たちは自分たちを天候から守るために何をしたのか。英語で4語で答えよ。
【大問4】 説明文の長文読解総合問題
- 時間配分:15分
問1.要旨把握問題<2分>。
与えられた見出しの意味はそれぞれ以下のとおりである。
1.「労働市場データに関する入念な調査」は段落[D]
2.「性別間の賃金格差縮小」は段落[G]
3.「驚くべき歴史的発見」は段落[E]
4.「母親にとっての職場の困難」は段落[H]
問2.英文和訳問題<2分>。
Some ~ , others …は「~する人もいれば、…する人もいる」という形であることを押さえておこう。
問3.内容把握問題<2分>。
理由は直後のas women’s work was frequently not respectedに明確である。
問4.内容把握問題<1分>。
直後のas they often observed their mothers staying at home, even after their children had grownが理由である。
問5.書き換え問題<2分>。
設問の意味は「より多くの女性が働いたり大学へ行ったりし始めたので、男女間の賃金格差はより小さくなっている」という文にしたい。
問6.適語選択問題<2分>。
該当する接続詞の前後の文章の関係は「逆接」である。
問7.内容真偽問題<2分>。
② 専門家たちは、多くのスキルを持った女性たちが職場へ参入できないことは問題であると信じている。
⑥ 結婚は20世紀の初頭において女性の雇用における重要な要因であった。
問8.英問英答問題<2分>。
英問の内容は以下の通り。
本文によれば、女性が育児と仕事上の責任のバランスを取るのに何が必要であるか。
【大問5】自由形式テーマ英作文問題
- 時間配分:8分
約50語を用いて作成する英作文。昨年と同様な出題形式である。
与えられた課題は「あなたにとって『多様性』とは何を意味するか。あなたの生活の中で経験した事例を挙げなさい」という内容である。
しかも、「解答用紙の余白に単語数(words)」を記載することも要求されている。字数としては55単語程度で書きたい。
この類の自由英作は自分の意見(賛成でも反対でも)をしっかり合理的な根拠に基づいて述べることである。また、難解な構文や単語は使用せずなるべく平易な英語表現を使用し、ミスをしないことを心掛けること。
攻略のポイント
英文レベルとしては相当に高い。英検レベルとしては、準2級は当然でありできれば2級レベルの英語力があればより高得点が望めるであろう。特に求められる英語力としては「記述力」である。純粋な「和文英訳」だけにとどまらず、英問に対して英語で答えるなどの出題形式に対しても十分な事前の練習が必要である。
また、下線部訳の日本語表現における「こなれた日本語表現力」も工夫が必要である。普段使用する問題演習用のテキストは、単に選択肢を選ぶ形式の問題種ではなく、500wsの英文を50~80語に日本語でまとめるスキルが向上できるテキストが最適である。また、下線部訳における日本語訳出の「自然な日本語」を心掛けることが大事である。