慶應義塾女子高等学校 入試対策
2019年度「慶應義塾女子高等学校の英語」
攻略のための学習方法
慶應女子高校の英語入試問題を攻略するための勉強法について考えてみたい。レベル的には非常に高いので、以下の内容をしっかりと理解し日頃の受験勉強に役立ててほしい。
① 英検2級に匹敵する程度の英語力
合格に必要な英語力としては、最低でも英検準2級、できれば2級に匹敵するレベルが欲しいところではある。単語力・イディオム力はいうまでもなく文法事項としては、関係代名詞、仮定法、話法、比較、文型、準動詞は高校レベルの文法書で内容を確認してほしい。
特に、文型については「子の英文は第何文型ですか」などのような問題は出題されないが、大事なことは文要素(SVOC)になり得る品詞は何か、つまり主語になり得る品詞は名詞・代名詞およびそれらに準ずる句・節である、という知識をしっかり理解することである。
難解な英文において散見される「倒置構文」における語順である「S+V+修飾語句」を「修飾語句+V+S」になった場合に、文要素には該当しない「修飾語句」が単純に「V」の前にあるからと言って、主語になるという判断はおかしいという決定ができなければならない。
そのためにも、文要素になり得る品詞に関する文型知識が必要である。
② 下線部訳における日本語訳出の工夫
下線部訳におけるポイントは、「日本語訳出上のこなれた日本語」の使い方における工夫である。
いくつか具体例を挙げてみる。
主語が人間などの生物以外の文章を「無生物主語」文章という。例えば、‘The experiment showed that ~ ’という英文において、「その実験は~をしめした」という訳を「その実験によれば~ということが明らかになった」という具合に、無生物である主語を「目的・手段」に変換させて訳出を行うことでより日本語らしい、つまり「分かり易い日本語」の訳になるのである。
また、‘some people did ~’という英文を「何人かの人々は~を行った」と訳しては‘some’のニュアンスを正確に反映していない訳になってしまう。‘some’は具体的な「数量」を表すものではないので、そのような英文については「~した人もいた」としなければならない。
③ 複数の意味を持つ英単語の根本的な意味
過去の大学入試問題にこのような問題が出題された。
英文の内容としては、紀元前における氾濫を繰り返していたエジプトのナイル川に関する文章であった。氾濫によって毎年のようにその「流れ」が変化する状況について述べた後で、‘the natural line’の‘natural’に下線が引かれ5個ある選択肢のなかで同様の意味を有する単語を選ばせる問題が出題された。
当然ながら当該文章における‘natural’に「自然な」という意味はあてはまらない。設問全文をここに引用することはできないが、要旨としては、氾濫で流れが目まぐるしく変容するナイル川の‘natural’な流れについての設問である。
そもそも‘natural’とは「人為的にいまだに手が付けられていない状態」のことを指しているのであるから、そこから「本来的な、根本の、原初の、最初の」というようなスタート時点での状況を指し示す意味を有するのである。
したがって、上記入試問題における‘natural’の意味は、「氾濫を繰り返す前の元来のナイルの流れ」を指し示すものである。そのような理解ができれば、選ぶべき選択肢は‘original’となるのである。
ちなみに‘natural’の名詞形である‘nature’は、手を付けていない原初の状態といういみで「本質、性質、元来」などの意味が出てくる。
慶應女子高校英語入試問題における単語の処理スキルにおけるポイントとして、英単語の持つ根本的意味をしっかり把握することが重要である。
では、そのような英単語の根源的意味をどの様にして習得するのかといえば、そのような意味を集約的に掲載している参考書があるので、一度目を通しておくべきである。
④ 整序問題の攻略
いわゆる与えられた語の並び替えである。特に、注意しなければならないのが「倒置構文」である。通常の語順が倒置されることにより、本来、動詞の前に置かれるべきは主語であるが、「倒置」が行われる条件(本来後ろに置かれるべき修飾語句を強調したいがために前に置く)が行われた場合、通常の「S+V」が「V+S」に逆転することに慣れなければならない。そのためには、整序問題に特化した問題集もあるので、事前に十分練習してほしい。
⑤ 英作文作成上のポイント
通常の英作とは異なり、英語で質問されたことに対して英作するという出題形式である。英作を行う前に、正確に与えられた英語での質問内容を正確に理解することが不可欠な前提条件であるが、そのうえで英作を行う上でのポイントは「自分が知っている簡易な英語表現にどのようにして課題文を落とし込むこと」が的確に迅速にできるか否かである。採点は、基本的は減点主義である。したがって、知識が曖昧な英語構文やイディオムは使わずに、平易な英語表現・確実に覚えている英単語を使って英作を行う習慣をつけよう。
以上、最低限の留意点を記載したので、受験生の皆さんの日々の学習につけ加えて合格へ向けて頑張ってもらいたい。
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2019年度「慶應義塾女子高等学校の英語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】はリスニングテストである。試験時間は10分程度と考えられる。
【大問2】ノンフィクションの長文読解総合問題<16分>。
【大問3】対話文の長文読解総合問題<11分>。
【大問4】説明文の総合読解問題<16分>。
【大問5】自由英作問題<7分>。
全体的には、単語・イディオム・文法事項のどれをとっても高校レベルである。
さらに、英文読解の速度についても1分間に100単語を上回るスピードがないと問題の英文を読み切り、設問に取り組む時間が無くなってしまうだろう。
【大問1】リスニング
- 時間配分:10分
リスニングの解答形式が自由英作形式である。珍しい出題形式である。
単にリスニングの訓練を行うだけではなく、解答も英作である点を踏まえライティング力もつけるようにすること。
【大問2】ノンフィクションに関する長文読解総合問題
- 時間配分:16分
2006年5月15日にニュージーランドの男性がエベレスト登頂に成功したノンフィクションの英文である。
問1.適語選択・語形変化問題<2分>。例えば、アは「すさまじい吹雪が山を襲った」という文章にしたい。「襲う」は‘hit’である。
問2.指示語問題<2分>。直前にある‘artificial legs’を手掛かりにする。
問3.英文和訳問題<4分>。適切な日本語を訳出するためには、関係副詞の知識、even if ~「たとえ~でも」などの文法・イディオム知識をきちんと当てはめられるようにすること。
問4.要旨把握問題<3分>。問題となっている下線訳は「たぶん、彼が思っていたより20年以上遅れて」である。これを設問の内容に適合させることができるようにすること。
問5.英問英答問題<2分>。質問内容は「マーク・イングリスが2000年シドニー・パラリンピックに参加しなかった」理由を聞いている。
問6.内容真偽問題<3分>。頻出される出題形式。本文の内容をしっかり把握しなければならないのは言うまでもない。よくありがちな下線部分の前後だけしか読まない把握では太刀打ちできない。
例えば、選択肢の①の内容は「エドモント・ヒラリーは義足でエベレストを登頂した世界で初めての人物であった」であるが、本文第一段落から義足でエベレストを登頂したのは、マーク・イングリスであることが分かる。
【大問3】対話文に関する長文読解問題
- 時間配分:11分
田舎暮らしと都会での生活との比較に関する対話文である。コミュニケーションとしての対話の内容を口語表現もしっかり理解したうえで把握すること。
問1.単語意味解釈問題<1分>。英単語には様々な意味を含んでいる。‘country’には「田舎」という意味があるので覚えておこう。
問2.適文選択問題<3分>。本文中の空欄に適切な文章を選択する問題である。対話の流れと選択肢の内容を正確にかつ迅速に読み取らなければならない。
空欄Dの直後には「5年間乗馬をやっている」という英文が続くので、空欄Dに入る選択肢としては⑤の「この村でやってみ見れば?」となる。
問3.適語補充問題<2分>。前後の文脈から適切な英単語を考える。(い cー)は、「人も少なく交通渋滞もない」田舎の様子を描いている部分である。その後に「(田舎の込んでいない状況を踏まえて)フラストレーションを感じない」場所について語っている。
問4.書換適語補充問題<2分>。本文の‘It’s nice of you to try to cheer me up.’は「自分を元気づけてあなたは素晴らしい」=「元気づけてもらってありがとう」となる。
また、It is ~ for … to ―に馴染んでいるかもしれないが、「~」の部分が人に関する評価(優しい、親切だなど)の場合は、‘for’ではなく‘of’になることも常識として押さえておきたい。
問5.内容真偽問題<3分>。本文の内容を把握したうえで各選択肢の真偽を検討しなければならないが、何度も本文を読み返す時間的余裕はない。一度読み込んだ本文の英語をしっかり記憶する訓練も日頃から積んでおくべきである。
【大問4】説明文の長文読解総合問題
- 時間配分:16分
時間を‘resource’(資源)と捉えて、他人とのコミュニケーションに関する人間関係論にも言及する説明文になっている。
問1.英文和訳問題<2分>。基本的なイディオムの知識は不可欠であるが、それを踏まえると下線部訳で需要なスキルは「より分かりやすい日本語訳」の工夫である。例えば、下線部中にある‘your time resource’をどのように訳出するかが大事である。
問2.整序問題<5分>。毎年出題される形式である。整序問題で大事なことは、
①文脈を考えてどのような英文にするか、
②与えられた語群から部分的に結合できる個所を考える、
③前後の英語を考えてイディオムにつながる前置詞などの有無について考える、ということである。
問3.適語選択問題<2分>。本文第3段落で述べられている‘A to-do list’についての内容を十分考えること。
問4.指示語問題<2分>。指示している内容は、直前の「時間」である。
問5.和文英訳問題<3分>。下線部の日本語を自分が理解している英語表現に適合するように趣旨を逸脱しない範囲で「翻訳」しなければならない。そのうえで「を比べることによって」、「今後の計画の立て方」などを如何に分かりやすい日本語に翻訳してうえで英訳できるかがポイントである。
問6.適語句選択問題<2分>。本文は「時間管理がよりうまくなるにつれて、時間を守ることが~になる」という意味になる。適語は、形式主語構文を構成する選択肢を選ぶこと。
【大問5】自由形式英作文問題
- 時間配分:7分
約50語を用いて作成する英作文である。
与えられた課題は「よく見るウェブサイトについて、なぜそのサイトを見るのか」という内容である。
しかも、「解答用紙の余白に単語数」を記載することも要求されている。
攻略のポイント
試験レベルとしては相当に高い。英検レベルとしては、準2級は当然でありできれば2級レベルの英語力があればより高得点が望めるであろう。
特に求められる英語力としては「記述力」である。純粋な「和文英訳」だけにとどまらず、英質に対して英語で答えるなどの出題形式に対しても十分な事前の練習が必要である。
また、下線部訳の日本語表現における「記述力」も工夫が必要である。普段使用する問題演習用のテキストは、単に選択肢を選ぶ形式の問題種ではなく、500単語の英文を50~80語に日本語でまとめるスキルが積めるテキストが最適である。
また、下線部訳における日本語訳出の「自然な日本語」を心掛けることが大事である。