慶應義塾女子高等学校 入試対策
2021年度「慶應義塾女子高等学校の英語」
攻略のための学習方法
慶應女子高校の英語入試問題を攻略するための勉強法について考えてみたい。レベル的には非常に高いので、以下の内容をしっかりと理解し日頃の受験勉強に役立ててほしい。
① 英検2級に匹敵する程度の英語力
合格に必要な英語力としては、最低でも英検準2級、できれば2級に匹敵するレベルが欲しいところではある。単語力・イディオム力はいうまでもなく文法事項としては、関係代名詞、仮定法、話法、比較、文型、準動詞は高校レベルの文法書で内容を確認してほしい。特に、文型については「この英文は第何文型ですか」などのような問題は出題されないが、大事なことは文要素(SVOC)になり得る品詞は何か、つまり主語になり得る品詞は名詞・代名詞およびそれらに準ずる句・節である、という知識をしっかり理解することである。難解な英文において散見される「倒置構文」における語順である「S+V+修飾語句」を「修飾語句+V+S」になった場合に、文要素には該当しない「修飾語句」が単純に「V」の前にあるからと言って、主語になるという判断はおかしいという決定ができなければならない。そのためにも、文要素になり得る品詞に関する文型知識が必要である。
② 下線部訳における日本語訳出の工夫
下線部訳におけるポイントは、「日本語訳出上のこなれた日本語」の使い方における工夫である。いくつか具体例を挙げてみる。主語が人間などの生物以外の文章を「無生物主語」文章という。例えば、‘The experiment showed that ~ ’という英文において、「その実験は~をしめした」という訳を「その実験によれば~ということが明らかになった」という具合に、無生物である主語を「目的・手段」に変換させて訳出を行うことでより日本語らしい、つまり「分かり易い日本語」の訳になるのである。また、‘some people did ~’という英文を「何人かの人々は~を行った」と訳しては‘some’のニュアンスを正確に反映していない訳になってしまう。‘some’は具体的な「数量」を表すものではないので、そのような英文については「~した人もいた」としなければならない。
③ 複数の意味を持つ英単語の根本的な意味
過去の大学入試問題にこのような問題が出題された。英文の内容としては、紀元前における氾濫を繰り返していたエジプトのナイル川に関する文章であった。氾濫によって毎年のようにその「流れ」が変化する状況について述べた後で、‘the natural line’の‘natural’に下線が引かれ5個ある選択肢のなかで同様の意味を有する単語を選ばせる問題が出題された。当然ながら当該文章における‘natural’に「自然な」という意味はあてはまらない。設問全文をここに引用することはできないが、要旨としては、氾濫で流れが目まぐるしく変容するナイル川の‘natural’な流れについての設問である。そもそも‘natural’とは「人為的にいまだに手が付けられていない状態」のことを指しているのであるから、そこから「本来的な、根本の、原初の、最初の」というようなスタート時点での状況を指し示す意味を有するのである。したがって、上記入試問題における‘natural’の意味は、「氾濫を繰り返す前の元来のナイルの流れ」を指し示すものである。そのような理解ができれば、選ぶべき選択肢は‘original’となるのである。ちなみに‘natural’の名詞形である‘nature’は、手を付けていない原初の状態といういみで「本質、性質、元来」などの意味が出てくる。慶應女子高校英語入試問題における単語の処理スキルにおけるポイントとして、英単語の持つ根本的意味をしっかり把握することが重要である。では、そのような英単語の根源的意味をどの様にして習得するのかといえば、そのような意味を集約的に掲載している参考書があるので、一度目を通しておくべきである。
④ 整序問題の攻略
いわゆる与えられた語の並び替えである。特に、注意しなければならないのが「倒置構文」である。通常の語順が倒置されることにより、本来、動詞の前に置かれるべきは主語であるが、「倒置」が行われる条件(本来後ろに置かれるべき修飾語句を強調したいがために前に置く)が行われた場合、通常の「S+V」が「V+S」に逆転することに慣れなければならない。そのためには、整序問題に特化した問題集もあるので、事前に十分練習してほしい。
⑤ 英作文作成上のポイント
通常の英作とは異なり、英語で質問されたことに対して英作するという出題形式である。英作を行う前に、正確に与えられた英語での質問内容を正確に理解することが不可欠な前提条件であるが、そのうえで英作を行う上でのポイントは「自分が知っている簡易な英語表現にどのようにして課題文を落とし込むこと」が的確に迅速にできるか否かである。採点は、基本的は減点主義である。したがって、知識が曖昧な英語構文やイディオムは使わずに、平易な英語表現・確実に覚えている英単語を使って英作を行う習慣をつけよう。
以上、最低限の留意点を記載したので、受験生の皆さんの日々の学習につけ加えて合格へ向けて頑張ってもらいたい。
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2021年度「慶應義塾女子高等学校の英語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】グラフを見て答える問題(長文読解)<7分>。
【大問2】説明文の長文読解総合問題<12分>。
【大問3】対話文の長文読解総合問題<17分>。
【大問4】説明文の総合読解問題<16分>。
【大問5】テーマを与えられた自由英作問題<8分>。
単語・イディオム・文法事項のどれをとっても高校レベル(中には大学受験レベルもあり)である。さらに、英文読解の速度についても1分間に100単語を上回るスピードがないと問題の英文を読み切り、設問に取り組む時間が無くなってしまうだろう。
【大問1】グラフを読んで答える長文読解問題
- 時間配分:7分
(A)お金はどのようにして人々を幸せにするか、というテーマについての実験結果をグラフ化した英文。「自分のために使うのか」または「他人のために使うのか」をグラフ化している。
(B)2007年と2014年における自分の生活に満足していると感じた人の割合を表わすグラフに関する問題である。先進国、新興国、途上国の3グループで特徴を把握すること。
【大問2】 説明文に関する長文読解総合問題
- 時間配分:12分
問1.適語選択問題<2分>。
ア.furでおおわれた、という意味の表現にしたい。文法的には「過去分詞の形容詞的用法〈後置修飾〉」である。
イ.call A B ⇒「AをBと呼ぶ」という形を考え、for(前置詞)の後に置くのでcallを名詞化(動名詞 ~ing)する。
ウ.直後にawayがあるので、keep ~ away=~を遠ざける、の意味にしたい。to不定詞にしたいのでkeepは変化しない。
エ.文脈から「パンダの数が徐々に増えている」としたい。isがあるので~ingにする。
問2.和文英訳問題<2分>。
「~ほど…とても-」は‘so-that~’を使って表現する。‘rich’を指定されているので、和文の「豊富」にあてはめて‘rich in’とする。
問3.英文和訳問題<2分>。
文全体の構造を捉え、関係代名詞目的格の省略、giveの用法、to不定詞(目的の副詞的用法)など、基本的文法事項に基づき和訳を考える。
問4.書き換え問題<2分>。
下線部の主語はtoo much attention であり、和訳は「ジャイアントパンダにとても沢山の注目が向けられる結果、助けが必要な他の種に対する世話がほとんどできなくなってしまう」となる。本文litttleは「ほとんど~ない」という否定語である。これを書き換えるので、Aは「ジャイアントパンダにあまりに注目しすぎるので」、Bは「助けが必要な他の種に対する世話がほとんどできなくなる」としたい。
問5.語句解釈問題<2分>。
直後の文がumbrella speciesの説明になっている。適切な選択肢は③「その保護が他の種の保護につながる」である。
問6.内容正誤問題<2分>。
パンダの遺伝子情報、パンダの目の周りが黒い理由についての本文の内容をしっかり把握すること。
【大問3】 対話文に関する長文読解問題
- 時間配分:17分
問1.適文選択問題<2分>。
A.直後に、バーナーの用途について説明していることを手掛かりに考える。
B.諸葛亮孔明という答えに対する質問であると考える。
C.直後にYou should =「そうするべきである」とある。会話を成立させるためには、⑧が適切である。
D.熱気球の方向性を操作できるかどうかを尋ねられた返答である。
問2.適語句選択問題<1分>。
本文の内容から「それらは~と言われている」となるので選択肢は必然的に③になる。
問3.内容説明記述問題<3分>。
下線部の前後に述べられているので、その個所をまとめるとよい。name ~ after … =「…にちなんで~と名付ける」は基本イディオムである。
問4.和文英訳問題<3分>。
該当箇所の和文にある「何千人もの」「700」の英語表記、「世界中からやってきた」などの表現に注意する。
問5.内容把握問題<4分>。
(A)本文を熟読し、風はどこから吹くか。高度の違いに注意する。
(B)(う)は「下降」を指名している。
問6.英問英答問題<4分>。
英問に意味はそれぞれ以下のとおり。
1 ケイトが熱気球に乗って怖いと感じたときに、どのようなイメージを思い描いたか。
2 エマは一日のうちでいつ天灯が空に上がるのを見たか。
【大問4】 説明文の長文読解総合問題
- 時間配分:16分
問1.英文和訳問題<2分>。
“this”が何を指しているかを具体的に解答しなければならない。このような「指示語」の内容を具体的に書かせる問題は頻出である。
問2.適語補充問題<3分>。
アは、前後の関係から「~が欠けている」という英単語を解答する。イは、on the other hand =「一方で」という基本イディオムを考える。
問3.整序問題<3分>。
[Ⅰ]は、haveを用いた使役用法、前置詞としてのlikeなどの知識をもとに英文を組み立てる。
[Ⅱ]は、間接疑問文に関する文法知識(why以下の語順が重要)を理解し整序を適切に考える。
問4.和文英訳問題<3分>。
「~によると」は‘according to ~’などを用いる。「3分の2」などの分数に関する英語表記も確実に覚えておくこと。「もともと買う予定のないもの」の英訳について、関係代名詞‘what’を有効に使いこなす。
問5.内容把握選択問題<2分>。
直後にある‘in an opposite way’に注目すること。
問6.内容把握選択問題<3分>。
直後の文(調査結果)から「アンケートの内容」を判断する。スーパーでの行われた実験は、フランスとドイツの音楽を1日おきに流したのである。
【大問5】自由形式テーマ英作文問題
- 時間配分:8分
約50語を用いて作成する英作文。昨年と同様な出題形式である。与えられた課題は「国内外のニュースのうちで一番興味のあるニュースは何かをのべたうえで、そのニュースについて説明をしなさい」という内容である。しかも、「解答用紙の余白に単語数( words)」を記載することも要求されている。字数としては55単語程度で書きたい。
攻略のポイント
試験レベルとしては相当に高い。英検レベルとしては、準2級は当然でありできれば2級レベルの英語力があればより高得点が望めるであろう。特に求められる英語力としては「記述力」である。純粋な「和文英訳」だけにとどまらず、英問に対して英語で答えるなどの出題形式に対しても十分な事前の練習が必要である。また、下線部訳の日本語表現における「記述力」も工夫が必要である。普段使用する問題演習用のテキストは、単に選択肢を選ぶ形式の問題種ではなく、500単語の英文を50~80語に日本語でまとめるスキルが向上できるテキストが最適である。また、下線部訳における日本語訳出の「自然な日本語」を心掛けることが大事である。