慶應義塾女子高等学校 入試対策
2019年度「慶應義塾女子高等学校の国語」
攻略のための学習方法
全体的に言えることは、圧倒的に的確で迅速な「記述力」が必要であるということである。
したがって、いかにして合格できる「記述力」を自分のものにできるか、さらにそのスキルを飛躍的に向上させることが可能になるのかを、一緒に考えてみたい。
① 合格のための読解力とは
いわゆる「読書」とは違って、入試における文章読解力は単に「読書量」を増やせばよいということではない。設問として選ばれた文章は、入試問題のために選択された文章である。したがって、その文章とは初めから最後まで極めて「論理的」であり「説得力」のある文章である。
そのような文章を確実に読み解くための練習は、日頃の勉強の中で同様な文章を読む中で特に留意しなければならないポイントは「比喩」である。比喩には大別すると「直喩」と「暗喩」とがあり、合格答案作成するうえで暗喩に関して的確に把握することが重要であり不可欠な要素である。
また、「論理を正確に追う力」も必要である。設問の文章のジャンルが如何なるものであろうとも、入試問題に採用されるような文章は基本的には論理展開が明確な文章である。したがって、文章を読み進めながら形式段落ごとの文頭にある接続詞(順接と逆接)を意識することが文章の流れを把握するうえで絶対に必要である。
さらには、キーワードを明確に押さえておくことである。キーワードの把握方法は、一つには何度も繰り返し使われている単語であること、筆者が主張したい内容を端的に表現している単語であることがそのポイントである。
② 合格のための文章作成力とは
設問の文章をしっかり把握できたとしても、問題は「合格できる適切な答案」つくりである。筆者の主張は理解できても、その理解に基づく設問に対する記述答案作成力が必要であるからである。
ここで考えなければならないことは「合格可能な記述答案」とは、「第三者に対する説得力ある文章」ということである。
答案は、基本的に他者である「採点者」が読むものである。せっかく本文の内容を正確に理解・把握していたとしても、設問に適合する答案を書くには「採点者」にしっかり自分の考え方を伝えなければ、合格は獲得できない。密度の濃い、無駄のない文章を書きあげなければならない。
具体的には、文章をより豊かな内容のあるものとするために自分の語彙力を向上させなければならない。語彙力はいかにして向上するのか。それは、日頃から日本語を意識することであり、深みのある言葉を自分の知識の中にしっかり蓄積していくことである。そのような練習を継続して行うことで、自身が書く文章が説得力があり魅力的なものになるのである。
③ 作文(小論文)を書く上で大切なこと
600字以内の作文(小論文)を課題として出題されている。小論文対策は、必ず行うこと。そのような対策を講じないで入試本番で対応しようとしても、合格答案は作成できない。
半年前くらいから、あるテーマに対する小論文(500~700字)を書く練習を始めなければならない。その際重要なことは、自分の主張を論理的に矛盾も飛躍もなく客観的に書けるか否かということである。自己満足の文章であっては合格答案とは言えない。
重要なことは、自分の主張を如何にして相手(採点者)に納得してもらうかということである。論理の展開、言葉の的確な選択、柔軟な発想力などを有機的に結合させる力が必要である。
そのような文章を書けるようになるためにも、常に身の回りのことに問題意識をもって捉える「癖」をつけることである。これまでは、何気にやり過ごしてきた事象を自分の中で捉え、咀嚼したうえで「文章」という形で説得力をもってアウトプットするのである。友人の発言、先生との会話、社会で惹起する様々な事件・事故。自分の頭で考える素材は身の周りにあふれている。
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2019年度「慶應義塾女子高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
試験時間は60分。
大問1は、随筆に関する読解問題<16分>
大問2は、古文(説話)に関する読解問題<12分>
大問3は、論説文に関する読解問題<32分>
9割以上が記述問題である。各設問とも字数指定があるわけではなく「説明しなさい」という設問であるため、どの程度の記述をしなければならないかについて迅速にかつ適切に判断しなければならない。
【大問1随筆に関する読解問題】
- 時間配分:16分
出典は、いしいしんじ著「この世のみんなが『子』になる祭」である。
我々の暮らし・生活と「祭」との関りを独自の視点で分析する随筆である。文章のボリュームとしては標準的ではあるが、哲学的考察が行われているため十分な読解力が求められる。
問一は、漢字の書き取り問題<2分>
「軌跡」、「鼓膜」などしっかり書けるようにしておくこと。
問二は、内容把握記述問題<2分>
比喩的に表現されている内容を本文の内容に沿って読み解くこと。
問三は、内容把握記述問題<3分>
傍線Bの段落内に解答への手掛かりがある。
問四は、内容把握選択問題<1分>
「お盆」のもつ意味について、本文に沿って理解する。
問五は、指示語特定問題<2分>
「それ」とは傍線Dを含む段落の冒頭にある「死」である。お盆では、「死」はどのように受け止められているのかを考える。
問六は、内容把握記述問題<3分>
「浮きあがってきてる」とは、どのようなことを意味しているかを筆者の考えに沿ってまとめる。
問七は、内容把握記述問題<3分>
「あの親たち」とは何か、「溶け合う」とは何かについて思いが及べば比較的まとめやすい。
【大問2古文(説話)に関する読解問題】
- 時間配分:12分
出典は、「宇治拾遺物語」である。基本的な古典文法知識や読解力があれば合格答案は作成できるであろう。
問一は、内容把握選択問題<1分>
「悪」と「善」をどのように読むかを考えること。
問二は、内容把握記述問題<2分>
「子」の読み方を考える。
問三は、古語知識問題<2分>
「内裏」の読みとその意味を問う問題である。基本的問題である。
問四は、内容把握記述問題<2分>
「無悪善」をどのように読むかがポイントである。
問五は、内容把握選択問題<2分>
「無悪善」の読みを学のある篁は読めたことで、帝がどのように思ったかを考えること。
問六は、内容把握記述問題<3分>
基本的な古語に関する知識問題である。
【大問3論説文に関する読解問題】
- 時間配分:32分
出典は、川合康三著「漢詩のレッスン」である。内容的には、杜甫が追い求めていたテーマを人間と自然との関係において明らかにしようとする内容になっている。
問一は、漢字書き取り問題<2分>
「起伏」や「希求」もしっかり書けるようにしておきたい。
問二は、知識問題<2分>
漢詩の形式に関する知識問題である。
問三は、内容把握記述問題<4分>
杜甫の詩をしっかりと読み込み、そこに込められた杜甫の心情を理解したうえで、適切に自分の考えを過不足なくまとめること。
問四は、知識問題<2分>
文学史などの知識問題である。確実に得点したい。
問五は、知識問題<2分>
基本的な知識問題。当該問題に関する知識がなくとも、「文章の構成」を示す表現は「起承転結」であると類推できる。
問六は、知識問題<2分>
慣用表現に関する知識問題である。
問七は、内容把握記述問題<4分>
自然と人間との対比の中における認識が基本となっていることに基づき、自分の考えをまとめること。
問八は、内容把握記述問題<3分>
杜甫の詩に込められた感情をどのように読み取るか、単に「帰還への強い願い」だけではないのである。
問九は、内容把握記述問題<4分>
「白鳥」とは牧水自身のことであり、空と海の青さに染まることがない白鳥に、牧水は自身のどのような思いを重ねたのかを考える。
問十は、内容把握記述問題<5分>
杜甫のテーマについて押さえておく必要がある。そのうえで、具体的にそのテーマとは何かについてその内容を考えること。
問十一は、文法問題<4分>
品詞に関する古典文法の問題である。基本文法知識である。
攻略のポイント
高度な記述解答力が必要である。解答の殆どが記述問題であるため、本文の内容をしっかり把握することはいうまでもないが、そのうえで自分の考えを的確にまとめ上げる力が必要である。字数指定がないため、適度な解答のボリューム感が必要であり、短かすぎず長すぎない解答を心掛けなければならない。
そのためにも、日頃から自分の考えを「文章化」する習慣をつけておくことが必要となる。わずかな時間を利用して、その日のことを50~70字程度でまとめる練習を行い、確実に文章を書くスキルを高めていきたい。
また、漢字、古語、古典文法に関する知識問題も散見されるため、類似の知識問題は得点源として確実にしておきたい。