慶應義塾女子高等学校 入試対策
2019年度「慶應義塾女子高等学校の数学」
攻略のための学習方法
全体としては、いわゆる「難問・奇問」の類は出題されていない。受験生にとっても、初見の問題も少ないだろう。それゆえ、解答にあたっては確実にかつ迅速に問題を解く必要がある。しかも、解答は記述式である。そのような入試問題の対策について、以下に何点か対策としての学習法について述べてみたい。
① 出題傾向のある分野の問題を何度も繰り返し演習を行うこと
よく出る分野としては、計算問題(展開・因数分解の応用、式の値、平方根に関する計算、指数法則を用いた計算)、関数(直線(1次関数)と放物線(2次関数)の融合問題)、方程式の応用問題(方程式を用いた文章問題)、場合の数と確率、平面図形(円に関する各種定理、三平方の定理)、空間図形(立体の切口の形状・面積)は、繰り返し演習をしておく必要がある。
特に、放物線に関する問題は関数に関する設問はいうまでもないが、y軸に関して対象移動した場合のグラフの式や回転させて出来上がる立体の体積を求める問題には十分慣れておく必要がある。
さらには、xy座標面において、ある図形(三角形である場合が多い)と面積が等しい図形を考えるような問題(等積変形や相似・合同の考え方を駆使する)にも対応できるようにしておきたい。
図形問題(幾何問題)については、参考書に掲載されているような定理や原理などを暗記するのではなく、根底から理解しておくこと。
確かに、公式などは道具としてそのまま使い正解を求めるためには非常に便利である。しかし、暗記した公式は時間がたてば記憶も薄くなり、やがて忘れてしまうものである。そのような状況を回避するためには、定理・公式を暗記するのではなく、そのような定理などがどの様なプロセスを経て導き出されるかを自分の手を使って確かめることである。
その中で大事なことは、定理・公式という「結果」がどのようにして得られたのかを理解することである。その理解こそが、あらゆる問題に適応可能な発想力を生み出すのであり、確実で柔軟なヒラメキを約束するものである。
② 解答における記述の内容とボリューム感が適正になるように十分な練習を積むこと
慶應女子の入試問題は記述式問題である。答えは分かるが、それをどの様にして(ボリュームと論理展開)解答用紙に表現していくかが合否を分けるといっても過言ではない。
答案は、他人(採点者)に読んでもらう、ある意味では受験生からのメッセージである。
であるならば、自分の考えが相手に正確に伝わらなくては意味がない。つまり、自分の考えが伝わらないのである。そのような事態を回避するために、普段の学習においてしっかりと解法の手順を書くことである。
また、解法のボリュームの点でも留意が必要である。基本的には、スタートの発想(立式)を明確に書き、結論(解答)に至る論理展開を全て書くのではなく、途中の考え方は重要なターニングポイントの式だけ書き、最後に結論となる式を書くというのが原則である。いずれにしても、適度な記述式の解答を書くには十分な練習を積む必要があり、必要最低限の内容にする判断基準を確実に身につけたい。
③ 数学的発想力を確実に習得すること
数学的発想とは何か。いろいろと考え方・捉え方はあろうかと思うが、一口で言うならば「客観的な根拠に基づく判断」を下せることが数学的発想であるといえよう。
特に、図形(幾何)の問題においては顕著に表れてくる。解答にたどり着くために障壁となっている三角形が、特に設問上の条件は全くない状態で、この三角形は設問上の設定条件は全くないが「なんとなく正三角形っぽいな~」という憶測に基づいて問題を解いてはいけないということである。この三角形が、どうして正三角形なのであるかを根拠づけなければならない。三辺がすべて等しいか角度がすべて等しいという事実が証明できない限り、この三角形は正三角形とは言えないのである。図形を見かけだけで判断するのではなく、しっかり根拠に基づく判断ができるようにしよう。
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2019年度「慶應義塾女子高等学校の数学」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問1は<7分>、小問題(平方根・角度)であるが、基本問題であるので確実に得点したい。
大問2は<10分>、関数の融合問題である。
大問3は<7分>、2次方程式の応用問題である。
大問4は<18分>、三角形に関する角度・線分・作図に関する問題である。
大問5は<18分>、立方体を用いた空間図形に関する問題である。
【大問1】小問題(平方根・角度)
- 時間配分:7分
(1)<2分>平方根の計算問題である。展開の公式における和と差の積は2乗の差を多用すること。
(2)①<2分>円周角の定理より、中心角が180°の円周角は90°になることを利用すること。
②<3分>円の面積に関する問題である。与えられた図形の中におうぎ形を特定し解法の手掛かりとする。
【大問2】1次関数と2次関数の融合問題
- 時間配分:10分
(1)<2分>。△OABが正三角形であることと、特別な直角三角形の辺比を利用すること。
(2)<2分>。座標を求める問題である。与えられた点と傾きのグラフを連立して解き、交点の座標を求める。
(3)<3分>。xy平面上に、与えらた条件に一致するように直線を書き込み、実際に正三角形を描いてみよう。
(4)<3分>。一見すると、少々複雑に思えるかもしれないが、求める体積は単純な円柱になることに気が付くこと。
【大問3】食塩水の濃度に関する2次方程式の応用問題
- 時間配分:7分
(1)<3分>。食塩水の濃度に関する問題であり、受験生にとっては極めて馴染みのある問題であろう。容器Aに入っている食塩水の量をxで表すことを始めに考えよう。
(2)<4分>。xとyに関する方程式を連立して解き、条件に一致するx、yを求めること。
【大問4】平面図形(三角形)に関する問題
- 時間配分:18分
(1)<2分>。三角形を折り返した図形であるので、同じ角度や同じ辺の長さをもつ線分の存在を確認し、さらに相似な三角形を見つけ対応する角度が等しくなるという事実を見つけよう。
(2)<3分>。長さが等しい線分を求める問題である。∠ADE=∠AEDであることから、△ADEは二等辺三角形であるが分かる。そこから解法の手掛かりを見つけること。
(3)<3分>。作図の問題である。△ADEは二等辺三角形であることより、四角形ADA′Eはひし形であることが分かる。
(4)<10分>。三平方の定理を用いた問題である。
①AからBCに垂線AHを引き△ABHと△ACHにおいて三平方の定理をあてはめ問題を解いていく。
②相似な三角形を見つけ出し求める辺の長さを導くこと。
③三平方の定理を用いて辺の長さを求めよう。
【大問5】立体図形(立方体)に関する問題
- 時間配分:18分
(1)<4分>。PとQは毎秒a㎝の同じ速さで動くのであるから、どちらも2a㎝動く。そのことを踏まえて条件に合致する場合を求めて確率を求める。
(2)<4分>。5秒間でPとQは5a㎝動く。具体的に、5a㎝動く場合をすべて考えること。
(3)<10分>。与えられた条件で立方体を切った場合の切口は台形となることを手掛かりに解法の手掛かりとしよう。
攻略のポイント
解答は、途中の計算式を書かせる方式である。記述式の解法において何をどの程度まで書くかが重要なポイントである。
あまり詳しすぎても答案用紙のスペースの関係で書ききれなくなってしまうし、短すぎても採点者へ自分の考えを正確に伝えることができなくなってしまう。
その意味でも、日頃から時間を決め記述答案の作成に関する準備をしっかり行っておくべきである。
また、図形の問題も出題されるので、作図に関してもさまざまなバリエーションの問題を事前に経験しておくことが大切である。