明治学院高等学校 入試対策
2024年度「明治学院高等学校の国語」
攻略のための学習方法
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「明学の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。
「攻略」するにはいかなる「学習法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。
過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「内容理解」にも不可欠だ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からスタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)などがオススメ。
解法
「明学の読解」で勝利するための鍵は、「問題解説」でも触れたように「解法」をいかにうまく用いるかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」(随筆)、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
合計で7000~8000字程度を読解しなくてはならない。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。明学に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
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2024年度「明治学院高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は鎌田浩毅「知っておきたい地球科学――ビッグバンから大地変動まで」(文字数約2800字)。小問は全7問(解答数8)。「選択肢」(「不適切」、「整序」、「内容合致」あり/マーク式)、「選択肢」(「総合的知識問題」あり/マーク式)、「空所補充の語句記述」(「総合的知識問題」/(記述式)、「漢字の読み」(2問/記述式)。問題文は3分程度で読み切り、設問を10分ほどで解きたい。
大問二は「論説文」、出典は藤原辰史「縁食論――孤食と共食のあいだ」(文字数約3800字)。小問は全7問(解答数7)。「選択肢」(「空所補充」、「組み合わせ」、「不適切」、「内容合致」あり/マーク式)、「空所補充の漢字記述」(「総合的知識問題」/記述式)。問題文は5分弱で読み切り、設問を12分強で解きたい。
大問三は「小説」、出典は永井荷風「羊羹」(文字数約4100字)。小問は全11問(解答数12)。「選択肢」(「空所補充」、「総合的知識問題」あり/マーク式)、「漢字の読み」(2問/記述式)。問題文は4分強で読み切り、設問を15分強で解きたい。
【大問一】
- 時間配分:
宇宙や生命はどうやって生まれたのか? 地球のエネルギー資源はどう作られているのか? 気候変動や災害の原因は何か?――ミクロからマクロまで、地球に関わるあらゆる事象を丸ごと科学する学問である「地球科学」について論じている。
本文では四五億年前の月の誕生は、地球上で生命が進化するための貴重な条件を整えてくれたのであり、人類が持続的社会をつくる際に地球環境の成り立ちを知ることは重要だと指摘している。平易に述べられているので、内容は理解できるはずだ。
「整序問題」、2問の「本文(論旨)内容合致」、そして、「総合的知識問題」、本校ならではのバラエティーに富んだ小問が並んでいる。以下、いくつか検討してみよう。
[問甲] 「空所補充の漢字記述」(全2問/「漢数字」指定/複数完全解答/記述式)。
「総合的知識問題」。「四字熟語」だ。二重傍線部(Ⅰ)の空所に入る「漢数字」を答える。空所部は「破片が□方□方へ飛び散った」となっている。「破片」が「飛び散った」ときの様子なのだから、流石(さすが)に誰もが分かるはずだ。「答え」は「あらゆる方向。周囲の全て」を意味する「四方八方」だ。
ちなみに、「四方」は、東・西・南・北の四つ、「八方」は、「四方」に北東・北西・南東・南西を加えた八つのことだ。
<時間配分目安:全問で30秒>
[問乙] 「条件付き漢字記述」(全2問/「終止形」指定/記述式)。
「総合的知識問題」。「漢字の書きとり」と「口語文法」というハイブリッド問題。二重傍線部(Ⅱ)・(Ⅲ)のカタカナを漢字に改め、「終止形」で答える。それぞれをチェックして「答え」を特定する。
(Ⅱ)「四季は四~六年でやっとメグッてくる」⇒「促音便」になっている⇒五段活用の動詞「めぐる」の「連用形」の「めぐっ」⇒「終止形」は「めぐる」⇒「答え」は「巡る」。
(Ⅲ)「進化をトゲていた」⇒「接続助詞」の「て」に接続している⇒下一段活用の動詞「とげる」の「連用形」の「とげ」⇒「終止形」は「とげる」⇒「答え」は「遂げる」。
本校では、「口語文法」も頻出だと心得よ。
<時間配分目安:全問で1分以内>
[問3] 「年代整序選択肢」(4択/マーク式)。
「本文中で挙げられている出来事」を「古い年代順に並べ替えた時」に「三番目に来る出来事」を答える。まるで「歴史の問題」で、「国語」としてはユニークだ。それぞれの「出来事」の「年代」を本文から特定していく。
(A)「月の裏側が実際に確認された」⇒人類は「一九五九年」にソ連が打ち上げた「月探査機ルナ三号」によって初めて「月の裏側を見ること」ができた。
(B)「月のクレーターの観察がはじめて行われた」⇒「ガリレオ・ガリレイ」は「一六〇九年」に世界で初めて望遠鏡で「月のクレーター」を観察した。
(C)「『溶岩チューブ』と呼ばれる巨大な空洞が発見された」⇒日本が「二〇〇七年」に打ち上げた「月探査機かぐや」によって、月に「『溶岩チューブ』と呼ばれる巨大な空洞」があることが判明した。
(D)「『ジャイアントインパクト説』が提唱された」⇒「ジャイアントインパクト説」は「一九八四年」に提唱された。
「年代順」に整理すると、(B)→(A)→(D)→(C)となる。よって、「答え」は(D)だ。こうした設問に遭遇しても、冷静に対処することが肝要だ。
<時間配分目安:2分強>
[問4] 「論旨内容合致選択肢」(4択/マーク式)。
「筆者の主張」を答える。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。
だが、残念ながらこの段階では流石(さすが)に無理だ。本文は「論説文」なので、「筆者の主張」=「論旨」だと判断できる。
では、「論旨」はどこに述べられているか? 「頭括型」では「序論部分」、「尾括型」では「結論部分」、「双括型」では「序論部分」+「結論部分」だということは知らなくてはいけない。
本文は明らかに「尾括型」だと分かる。「結論部分」はどこからか? これも判断しやすい。最後の形式段落だ(2行しかない)。そこから「筆者の主張」を読み取ると、「人類が持続的社会をつくる際に地球環境の成り立ちを知るべきである」ということになる。ここで各選択肢を「消去」していきたい。
各選択肢の「文末」と照合する(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。
(A)「地球環境の変化や生物への影響を知っておく必要がある」。
(B)「今の地球環境に感謝して生活を営んでいかなければならない」。
(C)「緑地帯である地域が砂漠化してしまうなど必ずしも良いことばかりではない」。
(D)「先人たちの功績を知ることは非常に重要である」。
何ら悩むことなく、(A)以外は「消去」だと即決できなくてはいけない。念のために、「同一意味段落」を確認する(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。他の部分の説明も特に誤っていないと分かる。
したがって、「答え」は(A)だ。
尚、「論説文の構成」については確実に理解し、定着させておかなければいけない。
<時間配分目安:2分>
[問5] 「本文内容合致選択肢」(4択/マーク式)。
「本文の内容に合致するもの」を答える。前問で確認したように、本文は「論説文」なので、「本文内容合致」=「論旨内容合致」だと捉えなくてはいけない。
となると、要は前問同様に「結論部分」で各選択肢を判別することになる。[問4]での「筆者の主張」以外では、「四五億年前の月の誕生は、地球上で生命が進化するための貴重な条件を整えてくれた」というのが要となることが分かるはずだ。そして、「月」と「生命が進化」が「キーワード」だと判断できる。
各選択肢の説明を確認すると、(C)だけが「月」と「生物の進化」との関連に論及している。他の選択肢では一切「生命の進化」に触れていないのだ。したがって、「答え」は(C)になる。
尚、「論説文」として、「筆者の主張」=「論旨」、「本文内容合致」=「論旨内容合致」なので、[問4]と[問5]は「同じ設問」だと気づくことが肝要だ。
<時間配分目安:2分>
【大問二】
- 時間配分:
世界人口の9人に1人が飢餓で苦しむ地球、義務教育なのに給食無料化が進まない島国日本――ひとりぼっちで食べる「孤食」とも、強いつながりを強制されて食べる「共食」とも異なる、「あたらしい食のかたち」を歴史学の立場から探り、論じている。本文では、現在は「食」を中心とした「近代家族モデル」が成り立たなくなっているので、「ちゃぶ台」の拡大、家族以外の人間が座ることのできる「ちゃぶ台の開発」がかつてなく求められていると指摘している。内容は難なく理解できるはずだ。【大問一】と比べるとオーソドックスな小問構成。いくつかの「設問」を考えてみたい。
[問丙] 「空所補充の漢字記述」(全2問/「漢字一字」指定/複数完全解答/記述式)。
「総合的知識問題」。「慣用句」だ。本文中の空所X ・ Y に入る「漢字一字」をそれぞれ答える。空所部は「家族で一緒に食べよ、というテーマが X を変え Y を変え、繰り返されている」となっている。「文脈」から即座に「手を変え品を変え」という「慣用句」と結びつけたい。「さまざまに方法・手段をかえて」という意味だ。よって、「答え」はX =「手」、 Y=「品」になる。
尚、本校では「四字熟語」や「慣用句」だけではなく、「故事成語」「ことわざ」等のあらゆる「言語的知識」が求められていると心得よ。
<時間配分目安:全問で30秒>
[問6] 「理由説明選択肢」(4択/マーク式)。
傍線部①「家族が大事」について、「日本の政治家たちが『家族が大事』と言い続けるのはなぜか」を答える。無論、「原意消去」を先ずは試みる。ここは「理由説明」なので、「『家族が大事』と言い続ける」ことの「直接的理由」として結びつかない「理由」を「消去」する。
各選択肢の「文末」⇒「だから」⇒「『家族が大事』と言い続ける」とつながるかどうかだ。
確認する。(A)「家族単位の協力がなくてはならないと考えているから」、(B)「(家族は)子どもを産み、育てる場でもあるということを重視しているから」、(C)「孤食の解決には家族内の役割を見直す必要があると認識されているから」、(D)「家族の絆を強化すれば現代社会の問題の多くは解決できると信じているから」。さあ、どうだろうか?
「大事」なのだから、「重視しているから」以外は「消去」できるはずだ。念のために、「同一意味段落」で他の部分の説明を確認しても、特に誤っていないと判断できる。よって、「答え」は(B)だ。実に清々しい「一発消去」ではないか。
「原意消去」を徹底的に練習し、応用できるようにすべし。
<時間配分目安:1分強>
[問7] 「空所補充の語句組み合わせ選択肢」(4択/マーク式)。
本文中の空所【 イ 】~【 ハ 】に「当てはまる語の組み合わせ」を答える。選択肢にある候補は「接続詞」と「副詞」、本校に限らず定番の問題だ。「接続詞」では「逆接」以外には十分に注意しなくてはいけない。「逆接」以外だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「文脈」を確認する必要がある。
また、段落冒頭の「接続詞」は前段落全ての内容を受けているので注意すること。各空所にあてはまる「語」を特定していきたい。
【 イ 】には「逆接」の「接続詞」である「けれども」、【 ロ 】には「添加」の「接続詞」である「しかも」、【 ハ 】には「論じる必要のないほどはっきりしているさま」を表す「副詞」の「もちろん」がそれぞれあてはまると分かる。したがって、その「組み合わせ」になっている選択肢(A)が「答え」だ。
「接続詞」「副詞」などの「空所補充」は必出だ。失点は致命傷になると心得よ。
<時間配分目安:2分>
※尚、[問11]は「論旨内容合致選択肢」(4択/マーク式)。「筆者が中心的に述べていること」を答える問題で、【大問一】の[問4]と同じだ。本文も「尾括型」なので「結論部分」と照合することで判別できるはずだ。果敢にチャレンジしてほしい。
【大問三】
- 時間配分:
太平洋戦争中、銀座の小料理屋で修行していた主人公「新太郎」は、疎開を機に見切りをつけて満州に渡り、復員後は戦後の混乱も手伝って金に不自由しない身となり、かつて近親者に見下された憂さを晴らすために羽振りのいい自分を見せつけていたが……。誰しもが持つ優位に立ちたい気持ちや、それを打ち砕かれる惨(みじ)めな気持ちを描いている短編小説の全文だ。
時代背景が終戦直後なので、馴染みの薄い語句が多々あるに違いない。「*注」を活用して内容を理解したい。
「内容読解問題」にはさまれ6問もの「総合的知識問題」があるといった大問だ。以下、いくつかの「設問」を確認する。
[問12] 「語句の意味の選択肢」(4択/マーク式)。
「総合的知識問題」。傍線部①の「手蔓(てづる)を求め」の「意味」を答える。「手蔓」、知っているだろうか? 「すがって、頼りにするもの。頼りにすることができる縁故。手がかり。糸口」のことだ。
各選択肢は、(A)「お金を積んで」・(B)「つてを頼って」・(C)「合格通知を手にして」・(D)「いい生活を期待して」。もちろん、「答え」は(B)。
ちなみに、「つて」=「伝手」=「手蔓。頼り。手がかり」についても知らなくてはならない、
本問は、本校が求める「語彙力の高さ」のひとつのメルクマール(物事を判断する基準や指標)となる。曖昧(あいまい)だった諸君は猛省して、精進せよ。
<時間配分目安:30秒弱>
[問丁] 「漢字の読み」(全2問/記述式)。
「総合的知識問題」。傍線部③「祝儀」・⑦「軒下」の「読み」を「ひらがな」で答える。平易だ。本校志望者であれば2問とも正解が必須。確認する。
③「祝儀」=「しゅうぎ」⇒「祝いの儀式。婚礼。その際に贈る金銭や物品」のこと。⑦「軒下」=「のきした」⇒「家の屋根の張り出した部分」。
<時間配分目安:全問で1分>
[問15] 「空所補充の語句選択肢」(4択/マーク式)。
「総合的知識問題」。「接尾語」の判別。傍線部④「道( X )」の空所( X )に「入れる語句」を答える。空所前後の「文脈」から、「道の途中」という意味になると分かるはずだ。
各選択肢は、(A)「ながら」・(B)「がてら」・(C)「なりに」・(D)「すがら」。無論、「答え」は(D)の「すがら」になる。「道すがら」は必須定着語句のひとつだ。
尚、他の「接尾語」についても怪しいものがある諸君は、しっかりと確認しておくこと。
<時間配分目安:30秒>
[問18] 「心情説明選択肢」(4択/マーク式)。
傍線部⑧「土産物を出しおくれて、手をポケットに突込んだまま」について、「この時の新太郎の心の動き」を答える。
先ずは「原意消去」から。ここは「心情説明」なので、「手をポケットに突込んだまま」の「原意」と結びつかない「心情」を「消去」していく。各選択肢の「文末」を確認したい。
(A)「得策だと考えている」、(B)「プライドを傷つけられている」、(C)「身の程をわきまえ恥じている」、(D)「逡巡(しゅんじゅん)している」。「手をポケットに突込んだまま」⇒「どうしていいか分からず困っている」わけだ。となれば、「決心がつかず、ためらうこと。しりごみすること」を表す「逡巡」以外は「消去」できて当然だ。
念のために、「同一場面」で他の部分の説明を確認する(「小説」では「同一場面の直前直後」に「手がかり・ヒント」がある)。特に誤ってはいないと判断できる。したがって、「答え」は(D)になる。驚異の「一発消去」だった。
「小説」であっても、やはり「原意消去」が有効だ。絶対に活用できるようにしておきたい。ちなみに、本問では「逡巡」の「原意」が未定着だと、厄介なことになる。「語彙力」はこうした局面でも重要だというわけだ。
尚、「小説」での定番である「心情把握」は、「セリフ」⇔「ト書き」⇔「動作」⇔「情景」の連関で捉えるのが定石だ。
<時間配分目安:1分強>
[問21] 「理由説明選択肢」(4択/マーク式)。
「新太郎が『羊羹(ようかん)』を買い求めたのはなぜか」を答える。
「原意消去」を試みたいが、この設問文だけでは困難だ。傍線部でもないので「傍線部一文一部の法則」(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という読解の基本となる解法)も活用できない。「新太郎が『羊羹(ようかん)』を買い求めた」場面を確認する他ない。その場面は本文最後だと分かる。
チェックすると、「新太郎」が「林檎(りんご)の一番いいやつを貰(もら)おうや。それから羊羹は甘いか。うむ。甘ければ二三本包んでくれ。近所の子供にやるからな」と店員に注文している。ここで判別したい。各選択肢の説明が短文なので、全文と照合する。
(A)「とびきり甘い高値の品を口にすることにより、傷ついた自分の心を慰めたかったから」。(B)「これ見よがしに手に入れひけらかすことにより、自らの虚栄心を満たしたかったから」。(C)「子どもたちの施しを与えることにより、不条理な社会を見返してやりたかったから」。(D)「時代が変わろうとも富める者が幅を利かせている世の中に、一石を投じたかったから」。「近所の子供にやるから」と言っているのだから無論、(C)以外は「消去」だと即決できるはずだ。
念のために、「同一場面」で確認して、他の部分の説明も特に誤っていないと分かる。したがって、「答え」は(C)になる。本問は変則的だった。本校ではこうした問題もあるということだ。
<時間配分目安:2分半>
攻略のポイント
●あらゆることが問われる「総合的知識問題」。
出題数が多く、難問も多い。しかも、直接的な出題だけではなく、問題文の内容理解でも「高度な語彙力」等が問われる。いかに「攻略」するか?
本校を志望したその時点から、独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが重要だ。学校や塾での学習だけでは全く不十分。「独習」は欠かせない。本校の「合格ライン」は7割強(男女合計の過去6年間の「3科目合計合格最低得点率」は71.5%、本年度は一気に上昇して78.7%)。「知識」での失点は致命的になると心得よ。
●なかなか一筋縄ではいかない「読解問題」。
どうするか? 「選択肢」「空所補充」「抜き出し」などの「形式」で、「換言説明」「理由説明」「指示語説明」「文脈」などの「内容」が問われる。とにかく、「設問内容」を正確に捉え、それぞれに応じた「解法」を的確に用いることが最優先。そのためには、基本的「解法」を完全に習得して、自分自身の「ツール」としておくことが重要だ。「読解問題」での「失点」を防ぎ、「得点力」を安定させなくてはならない。
●「解答形式」にも注意する必要がある。「マーク式」と「記述式」が混在しているので、「解答」する際には確認が欠かせない。また、「マークミス」が往々にしてあるので、十分に「マークシート」に慣れておくこと。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文はこれまで7000~8000字ほどだったが、3年前、唐突に増加して10000字超となり、本年度も約10700字(要注意だ)。当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速800字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。